AZ-1車評(PG6SA)オーナー愛が試されます

AZ-1車評(PG6SA)オーナー愛が試されます

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1999年から10年以上所有していた「オートザム・AZ-1」。2012年に現在の愛車NBロードスターと入替になったのですが、忘れないうちにレビューを残しておきます。

AZ-1の開発主査は初代ユーノスロードスターと同じ、平井敏彦氏。開発スタッフもロードスターチームが手弁当でお手伝いしていたとか・・・グレードは1994年式のAZ-1 マツダスピードバージョンです。

新車価格 1,498,000円

AUTOZAM AZ-1(PG6SA)MSV(Mazdaspeed version)
車格: 軽自動車 乗車定員: 2名
全長×全幅×全高: 3295×1395×1150mm 重量: 720kg
ホイールベース: 2,235 mm トランスミッション: 5MT
ブレーキ: ディスク タイヤ: 155/65R13 73H
エンジン型式: F6A 657cc 種類: 水冷直列3気筒ターボ
出力: 64ps(47kW)/6500rpm 燃費(10・15モード) 18.4km/l
トルク: 8.7kg・m(85.3N・m)/4000rpm 燃料 無鉛レギュラーガソリン

AZ-1 走行性能


OEM供給されたスズキF6Aエンジンの良好なレスポンスは、3000回転からドッカンターボの鬼加速を楽しめます。背中から響くブローオフ交じりのエグゾーストサウンドはMRであることを実感でき、とてもテンションが上がるはずです(静寂性なんて気にしてはいけません)。実はノーマルでもカタログスペック(64馬力)以上出ているという話もあるとおり、ボディの軽さもあいまって、状況によってはNA6ロードスターよりも速く走れます。

また、厚いサイドシルにも垣間見える通り、フレームが堅牢なのでボディ剛性(感)が高く、それがシャープなハンドリングに繋がっています。るノンパワステではありますが、車重が軽いので何も問題ありません。軽では絶滅危惧種になりつつあるマニュアル・トランスミッションも、寒い日は渋い事が多々ありますが、ダブルクラッチで丁寧に繋げてあげれば何とかなります。

恐ろしくクイックなハンドリングはAZ-1独特の操舵感です。ステアリングの遊びが少ないからこそ、切っただけダイレクトに動くボディは感動すら覚えます。

気を付けたいのは、エンジンが腰高にあるからか一定の速度領域を超えると、「振り子」のようにリアがあとから付いてきます。特に限界付近では、いきなりグリップを失うのでサーキット以外ではマージンを持った安全運転がお勧めです。また、スペアタイヤを【本来あるべき場所】に戻すだけで、挙動が安定するのもポイントです。(定番モデファイですが、自己責任で)

AZ-1 乗り心地


サイズの割に速いクルマなので、ちょっと乱暴に扱うだけで周囲のドライバーの反感を買いやすいです。つまり走行性能の問題ではなく、公道ではジェントルに乗らないと敵を作りやすい気がします。これはスポーツカーに乗る当然の流儀かも知れません。

車高はノーマルでもかなり低いので、乱暴に車庫入れしようものなら、オーバーハング部分(リップスポイラーなど)を擦ることになります。それ以外は驚くほど普通に日常で使えるレベルです。車内がエグゾーストサウンドなどで騒々しいのはミッドシップ車のご褒美なので、気にしてはいけません。

純正フルバケットシートも、フレームがマツダスピード製(NAロードスターオプション)なので腰のおさまりが良く、下手な社外品に変えるよりも優秀です。慣れれば寝ることだって可能です。

AZ-1 ユーティリティ


燃費

キチンと回しても16~18Lは行けます。極端に燃費が下がっているときは、不調が起きる前兆なので、原因追及&メンテナンス準備をお勧めします。

積載性

軽の2シーターであることを踏まえても、想像以上に積載力があります。ふたりで2泊3日のボストンバック+土産位は全然大丈夫です。座席の後方にはスペアタイヤのスペースがありますが、これをパンク修理キットに置き換えるだけでもラゲッジスペースを稼げますし、助手席は「ボルト止め」なので、いざという時は外すことも可能です。某S660が全然モノを詰めないことを考えると、安全性能に関する現在のレギュレーションは、本当に厳しくなったと感じます。

AZ-1 故障経験


スズキスポーツのECUを過信し、回しすぎてエンジンブローを起こしましたが、これは自分の管理不足です。しかし、持病のエキマニボルト緩み対策が必要だったり、振動でバッテリーターミナルが外れてエンジンが止まったり、Aピラーから雨漏りを起こして溶接個所を補強したりと、ネタに尽きることはありません。

一番衝撃だったのは、背中が熱いので車内メンテハッチを開けたら、純正エキゾーストマニホールドが割れていて、火を噴くところを見た事です。これを笑って許せる勇者だけがオーナーとして生き残れます。

AZ-1 満足していた点


当時の軽自動車レギュレーションに併せて、どこまでやれるのか挑戦した意欲作です。他の何にも似ていない凄まじい個性のため、商業的には失敗しましたが、毒気にやられてしまった熱心なフォロワーが大勢いるのも頷けます。

実際、基本的には「走るため」の基本装備しか付いていません。窓はレギュレーターハンドルですし、パワーステアリングもありませんし、シートのリクライニングもありませんし、オーディオは1DINのみです(ただし、エアコンはガラスキャノピーなので標準装備です)。

そんな素性もライトウェイト・スポーツと捉えると納得できる選択であり、むしろ希少なミッドシップ(MR)レイアウトであることだけでも、オーナーシップを感じるはずです。内装を剥がしてアクセスハッチを開きメンテナンスを行うなんて、普通のクルマでは出来ない体験です。

エクステリアはガルウイングが注目されがちですが、適度にファニーなマスクも飽きませんし、ボンネットを交換するだけでも顔つきがガラリと変わります。しかし本当の見どころは、サイドからみた時の(ノーズからフロントガラスにかけた)ワンモーションフォルム。量産車でここまでウェッジ・シェイプを貫いているのはスーパーカー以外でなかなか見かけません。停まっていても「速そう」に見えるのが素晴らしいです。

AZ-1 不満だった点


年式相応の経年劣化が起こっているので、油脂類のお漏らしはしますし、乱暴に扱うとパーツがポロリと取れたりします。したがって、それを笑って許せる器量が無いと、正直キツいかも知れません。ただし、希少車であるからこそ”熱いオーナー”が多く、ネットなどに対策のノウハウが蓄積されているので、いざという時の情報は万全です。

また、ハンドリングにステータスを振っているので直進安定性は最悪で、高速域では舵角修正が必要になります。そこでバンプする瞬間は隣の車線に飛んで行ってしまう緊張感があり、まさに死を予感させます。クイックで楽しいハンドリングも限界を超えた瞬間にグリップが抜け、一気にスピンモードへ移行します。経験上、性能の高すぎるタイヤは踏ん張ってしまって逆に危ないので、適度なグリップのエコタイヤなどの方が安全運転できます。

私自身、10年以上オーナーとして色々な体験をしましたが、緊張感を持って運転することに疲れてしまいまして・・・それで降りてしまいました。いわゆる根性無しですね。

AZ-1 総評


自動車に何を求めているかで評価が大きく変わるクルマです。

当時のAZ-1位置づけは、コスモ(FR)、セブン(FR)、ロードスター(FR)、プレッソ(FF)、MX-6(FF)と当時のマツダ・スポーツカーラインナップのなかで、ひとつのクラスを担う存在でした。そのうえで駆動方式はMR、軽だから価格はアフォータブルという高難易度な企画をやりきった、凄いクルマです。「異次元ハンドリング」というキャッチフレーズにキャラクター要素が集約されている気がします。

コンセプトカーだったAZ-550TypeAのリトラクタブルヘッドライトを惜しむ声もありますが、軽さとコスト削減のために廃止は必然でした。つまり「異次元」なソリッド・ハンドリングを重視して、それ以外は全てを捨てています。

従って、イメージ通りに走れると脳内麻薬が出るほど楽しい反面、ある意味シビアな操舵はクルマにいつ裏切られるかヒヤヒヤします。ドライバーのテンションが極端に表れるので、気持ちにマージンを持ちながらドライブする必要があるはずです。しかし、それを乗り越えた先には、唯一無二の存在であるAZ-1を駆り、そして所有する満足感を得ることが出来ます。

実際に乗り続けていると、ガルウイングは見掛け倒しではなく昇降性や剛性など、機能的に必要なものだと分かってきます。決められたレギュレーションのなかで最大限の「なにか」に特化したパッケージングは、大げさな例えかも知れませんがユーノスロードスターやランチア・ストラトスの様な哲学さえ感じます。

小難しい話は置いといて、カッコいい軽スポーツに乗りたい!でも十分楽しめますが、クルマを心意気で乗りたい方や、じゃじゃ馬を乗りこなしたいという方にはうってつけの存在です。また、経年劣化でそれなりにヤレているので、それが笑って許せれば最高の相棒になるでしょう。

二度と世界的にも販売されない迷車(※褒め言葉)なので、運転する機会があれば、そのチャンスを絶対に逃さないでください。ちょっと走るだけでヤバい子だと分かりますよ!

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