ロードスター 和名限定車(海外)

ロードスター 和名限定車(海外)

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ロードスターといえば様々なリミテッドエディション・・・限定車があります。手堅いカタログラインナップも大切ですが、定期的に投入される限定車は、販売促進のカンフル剤になるのです。

ちなみにロードスターの限定車は、米国や欧州など市場ごとに企画が立ち、広島へオーダーをしてくるそうです。そして、メーカーオプション(シート変更やボディカラーなど)相当の組立ては広島で行われますが、ホイールなどのディーラーオプション架装は現地で行われるそうです。

和名限定車


近年でいえば、日本で期間限定受注販売されたNDロードスターの「RedTop」と同じく、ダークチェリーカラーの幌、ライトタン内装、BBSホイールを履いた仕様が「MX-5 Z-Sport」として英国で限定販売されました。「限定」って響き、射幸心を擽(くすぐ)りますよね・・・

さて、限定車といえば米国では「〇〇エディション」というネーミングになるのですが、欧州では「和名」が付けられる事が多々あります。その響きがけっこう素敵なので、今回はその子たちをご紹介です。


2018
Sakura「桜:さくら」(ドイツ/オランダ) 幌1.5&幌2.0
Takumi「匠:たくみ」(オーストリア、他) 幌1.5

日本の「RedTop」相当の架装になる、赤・淡茶のオーガニックな色味のコーディネートを「さくら(=cherry)」にかけたネーミングの限定車です。オーストリアの「匠」は、クラフトマンシップを謳うマツダならではのネーミングですね。


ちなみにイタリアでは同モデルを「Cherry Edition」、ハンガリーでは「Cherry vászontetős(チェリーキャンバスの屋根)」と、同じく桜にちなむ洒落たネーミングです。

日本との違いといえば、欧州仕様なので2リッターの設定があったり、青(エターナルブルーマイカ)の選択は不可でした。

さて、この「和名」が付けられたのはNCロードスター時代に遡ります。とくに海外ではイヤーモデル(年次)制なので、専用カラーを纏った限定車として毎年リリースされていました。

NC時代の和名限定車


2007
Niseko「ニセコ」(イギリス/ドイツ) 1.8&2.0 800台限定

「ニセコ」とは北海道の地名で、語源はアイヌ語の「切り立った崖(の下を流れる川)」という意味になります(厳密にはアイヌ語です)。


クールな専用色「アイシーブルーメタリック(33Y)」に加え、寒色系のカタログカラーも選択が可能な限定車でした。米国では定番の「Miata SE」シリーズとして販売されています。


2010
Miyako「宮古:みやこ」(イギリス)1.8&2.0 1000台限定

NC2ロードスターのベロシティレッド(もしくはアルミニウムメタリック)の限定車です。ライトウェイトの本場、イギリスで販売されました。ネーミングルールから鑑みると、「都」ではなく南国「宮古」をイメージしているかと思います。国内のカタログカラーでは華やかな色が少なくなっていた時期ですが、華やかな「赤」はハッとするカッコよさです。


2011
Iruka「海豚:いるか」(スペイン) 1.8
Nekki「熱気:ねっき」(フランス) 1.8 150台限定
Kaminari「雷:かみなり」(ドイツ) 1.8 900台限定
Kendo「剣道:けんどう」(イギリス) 1.8 2.0 1100台限定

これらは2011年のイヤーモデルになります。日本国内では「ドルフィングレーマイカ(39T)」が新色としてカタログに加わるのみでしたが、スペインでは色名そのままに「海豚(いるか)」という名前が設定されました。RHTのクローズはイルカのごとく生物的なフォルムになるので、いいセンスだと思います。


フランスではドルフィングレーマイカに加え、国内のロードスターには設定されていない専用色「スパークリングブラックマイカ(35N)」を纏った、その名も「熱気」がリリースされました。ドイツ仕様はレビンでもトレノでもなく、「雷(カミナリ)」です。スポーツカーのソリッドなハンドリングは、ビリっとした言葉が似合います。

因みにNCロードスターのMZR1800ccエンジンは125馬力の設定です。欧州では、使いきれない馬力を持つことはクレバーではないという文化があります。従って限定車も1.8リッターの設定が主になります。

MX-5が大好きなイギリスのみ2リッターが選べるのもポイントです。武士道精神をモチーフにした「剣道」なのか、いつもの道を流すだけでもでも楽しめる「県道」なのか、果たして!?


2011
Karai「花蕾:からい」(ドイツ) 2.0 200台限定

国内では「ブラックチューンド」としてリリースされていた、若葉色「スピリテッドグリーンメタリック(36A/41J)」が眩しかった限定車は、ドイツでは花蕾(からい)という渋いネーミングでした。ちなみに花蕾とは「花と蕾(つぼみ)」を指し、ブロッコリーやカリフラワー、キャベツなどの緑色の野菜を意味しています。

日本と同く、赤、白も選択できる限定車でした。


2012
Hamaki「葉巻:はまき」/kaiteki「快適:かいてき」(ドイツ) 1.8
Kyudo「求道:きゅうどう」(オランダ) 1.8 75台限定
Shizuka「静:しずか」(フランス) 1.8

2012年のイヤーモデルは、マツダ車のなかでは息が長い「ラディアントエボニーマイカ(28W)」を纏った限定車から始まりました。同じ架装でも販売国によって名前が異なり、「葉巻」「快適」「求道」「静」という設定がされています(ここまでペットネームが増えるとフォローしきれないです・・・)。カラーリングに併せて、エレガントに振った仕様です。


2012
kuro「黒:くろ」(イギリス) 1.8 2.0 600台限定
Sensyu「千秋:せんしゅう」(ドイツ) 2.0 200台限定

ボディカラーの黒は、国内ではNAロードスター由来になる「ブリリアントブラック(A3F)」であり、海外名は「クラシックブラック」という色名になります。まさにMX-5ファンの心をくすぐるネーミングです。架装自体は黒、白、赤(ベロシティレッド)のボディカラーが選択可能でした。


「黒」の名の通り、ミラーやRHTルーフが黒に変更されている(※日本のブラックチューンドに近い)のですが、ボディサイドにストライプのカッティングチューンがされます。こういったセンスある純正グラフィックって、国内ではなかなか見ないですよね。

ドイツの「千秋」はクラシックブラックにちなんで「長い年月」を指す言葉が付けられました。MX-5好きのイギリスでは2種のエンジン、ドイツでは2リッターのみのグレード展開です。


2013
Hanabi「花火:はなび」(ベルギー、オランダなど) 1.8
Tanoshi「愉しい:たのしい」(スイス) 1.8
Kenko「健康:けんこう」(ドイツ) 1.8

2013年イヤーモデルは、「カッパーレッド(32V)」をテーマカラーにしたNC3ロードスターです。国内のVSグレードに準じたインテリアが採用されています。それにしても「走る喜び」の感性を表現した秀逸なネーミングは、漢字のステッカーなどを張りたくなってしまいます。なお、カッパーレッドを塗る最後のマツダ車でもありました。

国内にはないカラーラインナップも


2014
Sendo「鮮度:せんど」(ドイツ) 1.8 2.0
Sakura「咲楽:さくら」(スペイン) 1.8 2.0
Zen Edition「禅:ぜん」(ポルトガル) 1.8

2014年、NC型最後のイヤーモデルは、これまた国内仕様にない「チタニウムフラッシュマイカ(42S)」をテーマカラーにした、ほぼ全部入り・総決算仕様のVSに準じた内容です(※ちなみに設定は5MTのみ)。


「さくら」でもカラーにそのエッセンスが無い事から花の桜ではなく、禅に即した「ほほえみ」の「咲楽(さくら)」ではないかと、勝手に字を充ててみました。スピリテッドグリーンを「花蕾(からい)」と呼ぶセンスがありますし・・・真相は如何に?


以上、ロードスターに採用された和名のご紹介でした。

さて、日本ではミーティングなどで互いの愛車をグレードを呼びあったりします。これって結構盛り上がりますよね。

海外のMX-5オーナーがミーティングなどで日本と同じように「サクラ」「ケンコー」「イルカ」などを語り合っているのは、想像するだけでも楽しい気分になれます。逆に日本では「熱気」「健康」なんて和名グレードが無いのが悔やまれます。


グローバル販売するロードスターも販売当初は、旧来のライトウェイトスポーツをオマージュするモデファイが重視され、そういった限定車が設定されていました。

ただ、NC以降の時代は「日本のスポーツカー」というブランドを確立し、和名を積極的に使えるステージに立てたというのを感じます。約30年の歴史を刻む中で「スポーツカー」のスタンダードとして認知された証拠ですね。

「限定車」はこの倍以上存在するので、またの機会に紹介していきます

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