NBのバリエーション(C-5)

NBのバリエーション(C-5)

この記事を読むのに必要な時間は約6分です。

元主査である貴島孝雄さんのインタビュー共有続きです。NBロードスターは歴代シリーズで一番バリエーションのある車種でした。しかし、後期型のスペック情報はカタログ程度の記載しか存在しません。何故でしょうか。

貴島さんのプロフィールはこちら

スペックの情報が少ないのはなぜ


これは、スペックで謳うことをロードスターではやめたから。ロードスターは馬力がどうこうではなくて「気持ちよく走れるか」という指標でしか話さないようにした。だからスペックは「カタログに書いてあります」位しかいわなくなった。


NBで馬力が上がったのは社会的な要件があった。特にアメリカは完全なクルマ社会なので、クルマが無いと生活ができない。クルマの根本的な部分には、動物として速く動きたいという感情がある。スピード狂もいるし、敵から逃げる本能といえるかもしれない。だから、アメリカに行ったらリッター100馬力のSUV、V8エンジンのでかいクルマが凄い速さでフリーウェイを走っている。


そんな彼らは必ずセカンドカーを持っているので、セカンドである二人乗りのロードスターに乗り変えた際、非力過ぎては話にならない。ランプウェイ(※高速出入口)の流れに乗るために、最低限のトルクや馬力が必要で、踏んでも進まないクルマはとても危ない。

1.8リッター、2リッターと排気量をあげていったのは、クルマ社会でやっていくために絶対に必要な事だった。なぜここまでするのかというと、ロードスターはアメリカで一番売れるので、絶対に無視できない。

NBの低馬力仕様


海外市場、特にヨーロッパは税金の問題があった。例えばドイツ人は本当に倹約家で、スポーツカーとはいえ位置付けはかなり違う。使い切れない馬力を持つことはクレバーではないという国民性がある。

国によって諸元表示の差分もあるけど、一定馬力を超えたり、排気量によって税金が高くなるので1600ccが必要になったし、馬力も抑えてある。ハイパワーではなくともアウトバーンではベタ踏みすれば行ける。(※この理由でNC欧州仕様には1.8リッターがあります)

ロードスターターボ(海外名Mazdaspeed)


NBロードスターでターボを出したのは、アメリカ文化でスポーツカーは、サーキットを走りたいクルマでもある。アメリカのマーケットのボスが、「レースに勝ちたい、しかし自分でポン付けしたターボは壊れてしまう、だから貴島来てくれ」といってサーキットに連れていかれた。するとやはり速いのがいて「貴島、あいつらに勝ちたいだろう?」といってくる。その前に、彼にはもっと痩せてくれといいたかったのだけど(笑)。

ただ、アメリカで10,000台売るというのでこっちもやる気になった。それでも人馬一体感を崩すわけにはいかないから、ドッカンターボで馬力を上げるのではなくて、下からトルクフルなチューニングを行った。しかし7,000台しかさばけなかったので文句いったら、モデル末期だから仕方がないといってきた(笑)。日本では今、プレミアがついているが・・・

クーペやMPS


クーペは本体(マツダ)としては関わっていない。あれは福田さん(※)の趣味。オープンボディが前提のクルマで、そのままルーフを付けるなんてアレはいけない。後付けのハードトップやRF(※ND)みたいなモノならばまだ分かるけれど、ボディのバランスが崩れてしまう。

※福田成徳氏:マツダデザイン本部長を経て、マツダE&Tデザイン顧問にてロードスタークーペのデザインを行った

MPS(コンセプトモデル)?そんなの出すわけがない、あれはモーターショーでのお遊び。マツダスピードはフォードからやめろと指示されて、消滅してしまった。(※用品ブランドとして継続)

ボディカラーに関して


基本的に、塗装ラインのタンクの数は(マツダ)全車種に使える色しか用意していない。例えばNDで限定のクラシックレッドをやったけれど、新色を限定車で打つならば、それを期間内に何台売るか・・・300台くらい塗れないとタンクの設定が出来ない。

また、それをやったら、その後のパーツも全部出さなければいけなくなる。M2みたいな事をやってお客さんを困らすわけにはいかないから、企画として成立させなければいけない。オーダーメイドで色を作るなんてのもあるけれど、企業としてのマツダではできないだろう。


私の時代でも70万点の部品があって、それを10年間やらなければいけなかった。すぐにサプライ(供給)するならば在庫を持たなければならないし、色のバリエーションを増やすとそれだけ管理部品が増していく。何ヶ月も在庫を置くのは管理コスト的に「とんでもない」となった。

今の日本でも倉庫を持たないモデルになりつつあるし、アマゾン式にオーダーしたら製造元から送ってもらうのが普通になりつつある。そういう意味でも派生車種、特にボディカラーというのはハードルが高い。「WebTuned」がやれた時代からは特に変わった。

最近のマツダは利益率がいい。お金を使わないようにして、企業として存続性があるような仕組みに変えていったはずだから。

次回に続きます

NEXT → 変えないために、変えた、NB(C-6)

変えないために、変えた、NB(C-6)

インタビュー企画カテゴリの最新記事