この記事を読むのに必要な時間は約11分です。
エンスージアストの国イギリスで100年以上続いている自動車雑誌「AUTO CAR」。今回は2003年8月(JP10月号)の「ベストハンドリングカー」企画において、ポルシェ911(996)を差し置いて、世界一の評価を頂いたお話です。
また、貴島主査もこの話をNB担当の”嬉しかったエピソード”として話されます。
世界一の「ベストハンドリング」を受賞したのは海外名「MX-5(Miata)」。受賞した時期は遡ること2003年8月ですから、時期的にNB2~3になります。
よくよく調べてみると、かなりの強豪ひしめく中での評価で、ロードスター乗りとしてだけでなく、日本車乗りとしても嬉しくなってしまいます。
AUTOCAR「ベストハンドリングカー」とは
この評価を下したのは、エンスージアスト御用達の国、英国で100年以上刊行されている「AUTOCAR」誌。この雑誌では毎年、その年で最良の「ベストハンドリングカー」を発表しているのです。ちなみにこのAUTOCARは日本版もありましたが、残念ながら2015年の3月に休刊(Webでは続いています)になってしまいました。
さて、時に2003年。先ずは各ジャンル(スポーツカー、ホットハッチ、ラリーカー、サルーン、スーパーカーなど)から32台が選ばれました。リストにしてみたのですが、中々の顔ぶれですよね!なにげに日本車としてはMX-5の他にRX-8やインプレッサ、ランサーエボリューションもエントリーされています。
そして、その中で選ばれたファイナリストが7台。ポルシェ911 GT3、ノーブルM12、ケータハムR400、ランボルギーニムルシエラゴ、スバルインプレッサスペックC 、BMW Z4 そしてマツダMX-5(ロードスター)です。ラップタイムの表記がありますが、なにげに一番(ダントツで)遅いのはMX-5。でも、それでいいんです・・・
さらに、最良の2台としてガチンコバトルになったが、ポルシェ911GT3と、MX-5になります。ちなみに、この年のベストハンドリング・テスターは下記6名。肩書きは当時のもので、そうそうたるメンバーです!
ジャスティン・ウィルソン(ジャガーF1ドライバー)
佐藤琢磨(BARのF1ドライバー)
マイケル・ベントウッド(BMW BTCCドライバー)
フィル・ベネット(プロトンBTCCドライバー)
マーティン・アンダーソン(ロータス車両力学のテクニカルマネージャー)
そして、2003年のベストハンドリングで選ばれたのが「MX-5 Miata 1.8」でございます!それでは、当時のコメントを意訳してみました。
当時のコメントを意訳してみた
既にAutoCar「£15K未満(15,000ポンド)」のタイトルホルダーでもある”マツダ・ロードスター。思う存分振り回せるし、パワーウェイトレシオもまずまずで、ほかにはない満足感を与えてくれます。ステアリングは正確で申し分なく、ターン院はスパッと決まり、そのとき4輪はしっかりと地面を捉えているのです。
コーナーリング時のバランスをこれほど自由自在に操れるクルマは他にありません。明確な節度感と短いストロークのシフトは操作も軽快です。クルマ全体の独自のフィーリングが溢れ、それがドライバーを虜にします。ドライバーの操作とクルマからのフィードバックが完璧にシンクロしているのです。したがって我々はMX-5をクラスの勝者とすることにしました。
ボルシェ911と拮抗したNBロードスター
テスターはポルシェGT3で限界まで「走り」に徹することができます。しかし、MX−5はあらゆる領域でクルマを「楽しむ」事ができたのが、勝因になりました。また、MX−5はイギリスで1990年にリリースされて以来、長期間販売されていますが、£15K未満のクルマの中では今に至るまで、常にベスト・ハンドリング・カーの位置づけでもあります。
“Here is a photograph of former F1 racer Tiff Needell driving a Mazda MX-5 quite beautifully. It’s perfectly balanced on the throttle, drifting gently towards the apex of the corner with a trace of opposite lock to keep things in check.
You can be sure Tiff is enjoying himself, because he loves driving the MX-5.
We all do – that’s why it beat a Lamborghini Murcielago and a Pagani Zonda to win our Best Handling Car award this week”
この写真は、元F1レーサー「ティフ」ニーデルがマツダMX-5を華麗に操舵しています。絶妙なスロットル操作によって完璧なバランスを保ちつつ、ドリフト姿勢で次のコーナーをチェック。ティフが愛してやまないMX-5を楽しんでいる姿を見れば、確信できませんでしょうか。これが、ランボルギーニ・ムルシエラゴやパガーニ・ゾンダを打ち破り、ベストハンドリング・カーを勝ち取る事ができたことの全てであると、我々は確信します。
マツダMX-5は、導入以来13年間で全世界に60万以上販売しています。MX-5のクラシックなデザインとFRレイアウトは、手頃な価格のスポーツカーセグメントにおけるブームの再燃を呼び起こし、他メーカーもそれに追随していきました。
Popular for its looks and driving dynamics the Mazda MX-5 brought fun back into motoring; no longer were motorists enclosed in a ‘tin box’, there was the freedom to throw off the roof and enjoy the sunshine. Suddenly motoring became more than just getting from A to B and owners started driving just for fun, an emotion long forgotten.
MX-5のルックスとドライビングダイナミクスは、多くのファンに所有する喜びをもたらしました。 かつて「ブリキの箱」に囲まれていたドライバー達は、屋根を開け、太陽の光を楽しむ自由がありませんでした。しかし、突然あらわれたMX-5を手に入れることのできたオーナーは、長いあいだ忘れていた感情「走る歓び」を取り戻し、楽しさの虜になってしまいました。
“The Mazda MX-5 offers as much pleasure as a Porsche 911 GT3 regardless of how fast you drive it,” enthused Autocar.
「最速のドライブはならばポルシェ911GT3、それ以上にマツダMX-5は普通の道を走っていても運転の喜びを提供してくれる」Autocarからの、本音のコメントです。
まとめ
いかがでしょう!?頭の方でラップタイムの話を書きましたが、そうではなくどこでも、どんな場所でも「走る歓び」が得られるのがMX-5という、自動車文化では恐らく世界一の英国でこのような評価を頂いたという事実。嬉しくなってしまいます。実は欧州ではNAよりもヒットしたといわれるNBロードスター、NAからずっと熟成していった賜物でもあります。
ちなみに近年のマツダ車は、全車で「人馬一体」をキャッチフレーズにしていますが、フィッシュボーンチャートのハンドリング項目においてはNBロードスター(J07を上まらない)が評価基準だったりします。そして伝説のDNAは今日のロードスターにまで繋がるのです。