NBロードスター幌の話 その2(NB幌)

NBロードスター幌の話 その2(NB幌)

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今回もコンバーチブルトップ「幌」の話です。前回はNAロードスター幌の特徴を書きましたが、今回はNBロードスターになって、どう進化したのかをご紹介します。

なお、NB幌の基本構造はNAと近しいので、NAロードスターにもアッセンブリー装着ができることも大きな特徴です。ビニール幌の良さもありますが、NB幌の特徴であるガラススクリーンによる視界確保は、「安全運転」を担保できる定番のモデファイです。NAロードスターオーナーの方も、よろしければご参考ください。

進化した構造と軽量化


基本構造はNAロードスターの幌に準じていますが、細かなリファインがされました。


NA幌はオープンカーとして出色の構造でしたが、ポリ塩化ビニール製だったリアウインドウは紫外線による経年劣化(茶色く曇る)が起こることと、寒い時に割れてしまうという欠点がありました。そこで劣化防止と視界確保を兼ね、リアスクリーンはガラス製に変更となりました。(※余談ですが、ビニールウインドウの曇りは車外ではなく、車内を磨くことで解消できることがあります)


ガラスウインドウには(NA時代からハードトップ用に配線してありましたが)熱線プリント式のリアデフォッガーを採用しました。悪天候時に曇ってしまっても、視界確保に役立ちます。NBロードスター前期型のみの構造として、デフォッガー配線は幌をたたむと自動的オフになる機能がありました。残念ながら後期型は廃止されています。

また、ウインドウまわりのファスナーを廃止、開閉操作がより簡単になりました。


ウインドウの重量はガラスの採用で若干重くなっているのですが、開閉機構のリファイン、リンクの小径化により幌全体で1.3kg軽量化することに成功しました。

さらに、雨漏り対策


シール性能に関して、水漏れが発生しやすいウェザーストリップ形状はさらにリファインされました。樋(とい)の形状変更による容量アップなどを行っています。


また、リンクとトップクロスの合わせ面にリンクシールを追加したり、ウェザーストリップ自体の大型化とともに、パーツ同士の継ぎ目は斜めにカットして、わざと「段差」を付けることでシール性を高めました。密度が増したことは、高速走行時の幌のバタつきを低減させる効果も生みます。


レインレール自体の素材もNBロードスター後期型からアップデートされ、それまでは再利用がほぼ不可能だった硬い素材から、柔軟性のある素材に変更されました。

新たな素材とこだわりのデザイン


基本的にはNAロードスターと同じくPVC(塩化ビニール樹脂)のものを採用しています。ベルトライン下に構造材が収まるのも同じで、美しいオープン状態を保ちます。


また、リアガラスの重みによる幌の撓(たわ)み解消のため、Cピラーにあたる内装部分にベルトが装着されています。NB幌は外からよく見ると、そこにぴんと張ったラインがあるのがわかります。


加えてNB3(2003年以降)からは、VSグレードを中心にアクリル繊維のクロス生地(きじ)も選択することが可能になりました。これはアクリロニトリルを主原材料にした合成繊維で、PVCとは違った「布っぽい」質感がポイントです。いわゆる「クロス幌」とよばれるものです。


これは表地と裏地の間にラバー層が存在する三重構造で、水が染み込むことはありません。また、寒暖の差による縮みが少なく、寒い日でもすぐに幌を開けることができることも特徴になります。


オリジナルロードスターのビニール幌にも味はありますが、利便性以上に質感の良さでいっても「純正クロス幌」の完成度は一見の価値があります。機会があればぜひチェックしてみてください。

しかし、欠点もある


全てが完璧にアップデートされたわけではありません。

ウインドウ周りのファスナー廃止による、NAロードスターの「味」であったリア部分だけ開ける「NA開け」が出来なくなったことや、幌を畳んだ際、ガラス部分のクリアランスを確保しなければならず、ロールバーデザインの自由度が若干減りました。一般的に「NB用」というパーツでなければ干渉してしまい、装着不能になります。


また、完璧に見えるガラスウインドウですが、脱落防止のために生産段階で幌前後から樹脂でガッチリ圧着しています。黒い幌では目立ちませんが、明るい色の幌だと「黒枠」が目立ってしまいます。また、経年劣化により接着面が剥がれてしまうことも多々あります。


ちなみに2020年前後から、NB純正クロス幌の「黒枠」は廃止されています。発売後にパーツがアップデートされるのも珍しいですよね!2022年現在、ビニール幌は廃止されていますが、クロス幌はまだ生産してもらえるようです。

開けても閉めてもカッコいい、ロードスター

NAロードスターの幌からより進化した、NBロードスター幌の特徴をまとめますと・・・

①より簡単になった幌の開閉
②後方視界の確保
③軽量化

といったものがあり、NA/NBと続くロードスター「幌」の完成形になります。ちなみに、あまり語られることがありませんが、車内から(おそらく)世界一早く幌を開けることが可能です。

最後にオープンカーの「ロードスター」と「カブリオレ」の語源を少し解説します。どちらも馬車時代の用語から来ている名前ですが、明確な定義があります。


「カブリオレ」は屋根を開けることが出来る馬車。つまり、普段は閉じている屋根が、いざとなったら「開けることが出来」るもの。


「ロードスター」は屋根をいざとなったら閉めることができる軽馬車。デフォルトが「空いている状態」です。

「空いている状態」が当たり前のロードスターにおいて、雨天時は(幌なので)傘の中に包まれているような、天井からボタボタ雨の音が聞こえてきます。まさにオープンカーに乗っていることを実感する瞬間ですが、これって考えてみると凄いことで・・・雨の日も安心してオープンカーに乗れるのはマツダ・ロードスターの開拓新たな世界なのです。

また「幌」は金属や樹脂と違う、軟質な素材です。そんな「ナマモノ」を扱うことも、オープンカーが古くから愛される(愛車よりも愛馬!)要因のひとつではないかと感じます。

さて、マツダ・ロードスター(MX-5)の幌は、メイドインジャパン・クオリティでウィークポイントの解消だけでなく、ライトウェイトスポーツの信念(軽さ、コスト)とデザインに踏み込んだ、マツダ・エンジニアの意欲作ではないでしょうか。

その魂は現行型に至るまで続いています。「開けても閉めてもカッコいい」のがマツダ・ロードスターなのです。

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