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ロードスターには様々なボディカラーが存在しますが、その中でも「緑色」に特別な思いを寄せている人は多いのではないでしょうか。
なぜなら、ライトウェイトスポーツ発祥の地イギリスのナショナルカラーは緑色。その「ブリティッシュグリーン(濃いめの緑色)」がロードスターに似合わないわけがなく、初代NAロードスター最初の限定車「Vスペシャル」には、専用色としてブリティッシュグリーン系のボディカラーである「ネオグリーン」が設定されました。(しかも、人気がありすぎてカタログモデルに昇格しました)
それ以降のロードスターは定番の「深緑:だけでなく、様々な緑系の設定がありました。今回は、これを紐解いていこうと思います。
NAロードスターの「緑」
NA6~NA8:カタログカラー【ネオグリーン】HU
NAロードスター最初の限定車「Vスペシャル」専用に設定されたネオグリーンは、ナルディウッド内装と明るいタンレザーシートのトータルコーディネートでばっちり決まったモデルでした。ちなみに、色味のソースは海外名の「British Racing Green」の通り、イギリスのナショナルカラーである深緑をモチーフにしています。
実車のネオグリーンはソリッドで赤味も入った深い緑色で、日差しを浴びるとより温かみを感じる文句なしのカッコよさ。国内でNAロードスターといったら、クラシックレッド(赤)かこの色!というファンも多いのではないでしょうか。実は、ロードスター専用色のイメージがありますが、のちにキャロル(軽自動車)にも採用されました。ちなみにソリッド塗装は、磨きすぎるとウエスに色が移るので注意です・・・
トミカのレギュラーラインナップになっていたロードスターは当初「赤」で設定されていましたが、後期は「緑・タン内装」に変更されたくらい、ロードスターの裏テーマカラーといってもいい偉大な存在です。
小ネタとしては、NA8では濃色系のディカラーのサイドシルがツートーン設定ではなくなったので、黒く塗られていません。また、国内ではずっとVスペシャル専用カラーだったのですが、NA8シリーズ2では標準グレードでも選択できるようになり、ファブリック内装のネオグリーンも稀に見かけます(海外では普通に存在します)。
参考リンク→https://mx-5nb.com/2020/10/26/wood-interior/
NA8:限定カラー【エクセレントグリーンマイカ】11Q
NA8ロードスターの限定車、VRリミテッド・コンビネーションBに採用されたボディカラーで、マツダ車ではカペラやデミオにも採用されていました。色味はネオグリーンよりも明度のトーンを落とした、より深い緑色になっています。また、名前に「マイカ」と付く通り塗料にフレークが入っているのでリフレクションが際立ち、清潔感のある色味を演出してくれます。
VRリミテッドはSスペシャルをベースにブラックレザーシートやアルミパーツ、緑幌、専用ホイールなどが架装された「走り」に振った限定車で、とってもシブいロードスターに仕上がっています。
なお、VRリミテッドにはコンビネーションAというアールヴァンレッドマイカ(ワインレッド)のボディカラーでタン内装の兄弟車がいるのですが、この「A/B」という組み合わせはNB3以降のロードスターでカタログモデルとして復活します。
参考リンク→https://mx-5nb.com/2019/11/02/na8-impression/
NA8:限定カラー【スパークルグリーンメタリック】11R
NAロードスター最後の限定車「SRリミテッド」に採用されたのが、スパークルグリーンメタリックです。他のマツダ車ではレビューやAZ-3、デミオにも採用されており、そもそもはランティスのテーマカラーとして開発されたボディカラーです。
主張しすぎない派手さとでもいいましょうか、一目で鮮烈に印象が残るスピード感のある緑色です。そもそも、SRリミテッド自体が「在庫一生セールのオプション全部盛り」というお得感溢れる仕様だったのですが、NBロードスターのスパイショットをみて「今のうちにロードスターを買っておかなければ」と、心して購入された個体が多く、今でも大事に乗られている印象です。
なお、英国仕様では兄弟車の「バークレー」というモデルがあり、そちらも日本と同じく「オプション全部盛り」で販売されました。純正トランクキャリーが付いているロードスターは、バークレーのみです。
参考リンク→https://mx-5nb.com/2021/01/11/eunos_srlimited/
NA8:限定カラー【マリーナグリーンマイカ】13C(日本未発売)
NAロードスター最後の限定車として北米で設定された「Mエディション」最終型には、専用のボディカラー「Marina Green」が設定されました。色味としてはネオグリーンをマイカ塗装により近代改修したイメージです。タッチペンなどのカラーコードでは日本語でマリーナグリーンと表記されていますが、これはNA6のマリナブルーを意識した色名であることは、なかなか燃えポイントですよね。なお、専用アルミホイールは、のちにNBロードスターNR-A用として復活されることになります。
こちら、日本のマツダ車には設定されていないカラーであり、当時の親会社フォード(マツダが組み立てていた)用に設定されていた緑色になります。国内ではテルスター(カペラの兄弟車)などで見かけることができました。
NBロードスターの「緑」
NB1~4:カタログカラー【グレースグリーンマイカ】18J
海外名「Emerald Mica」の通り、宝石のような輝きを持つボディカラーです。NBのオーガニックシェイプ(オーガニックフォーム)デザインにベストマッチする美しい緑色であり、基本的にはNAロードスターVスペシャルの後継グレード「VS」専用ボディカラーです。ただ、NB後期のカスタマイズモデルWebTunedでは標準グレードに組み合わせることもできました。
ちなみに、NBロードスターのテーマカラーとしてはエボリューションオレンジマイカが専用色として開発されましたが、このグレースグリーンもNBロードスターを起点に開発された色であり、同時期にカペラ、ファミリア、デミオ、アテンザスポーツワゴンと他のマツダ車へ流用されています。色味としては、ネオグリーンの彩度をあげて、より色気と高級感をだした感じです。日陰に入ると暗く見えますが、太陽光が反射すると無敵のカッコよさを誇ります。
実は、国内のNBロードスターでは約11%(3,203台)と最も流通した色で、NB1からNB4まで引き継がれた息の長いボディカラーでした。
NB2:限定カラー【ブリティッシュレーシンググリーン】A3V(国内未発売)
北米NB2の限定車「MX-5 Miata Special Edition」に用意されたボディカラーで、実は「ネオグリーン」そのものです。もともとはVスペシャル用に開発されたソリッドカラーでしたが、さらにクリアコートが施されています。
ちなみに、A3系として引き継がれたマツダボディカラーといえばピュアホワイト、クラシックレッド、ブリリアントブラックがあり、NBロードスターでも塗られていますが、日本ではこのネオグリーンの設定はされませんでした。とはいえ、国内独自の限定NBロードスターも多数存在したので、取捨選択の結果と思われます。
北米の限定車はVS以上に「Vスペシャル」している架装で、タンレザーやウッドインテリアに加え、NA8のVスペシャルⅡよろしくメッキ加飾された16インチホイールが装着されます。
NB3:カタログカラー【スプラッシュグリーンマイカ】25R
NB3ロードスターに1年だけ設定されたボディカラーで、カタログモデルでありながら限定車よりも流通が少ない、とてもレアなボディカラーです。(国内流通台数は74台(NB販売全体の0.2%))
もちろん専用開発ではなく、2代目デミオのテーマカラーとして開発された色で、ミントグリーンのようなある意味毒気のある色味であり、マイカ塗装でありながらも明度が高いので、ボディの抑揚はあまり目立ちません。でも、この派手さはある意味でスポーツカーっぽいといえるでしょう。
よく、NB2のクリスタルブルーメタリックと混同されることがありますが、実車を見ると全然違うことがより分かります。ちなみに、クリスタルブルーは当時のトレンドカラーとして流行りましたが、その翌年はこのミントグリーン系がトレンドカラーに設定されており、携帯電話(ガラケー)等の2003年モデルでよく見かける色でした。
注文時のスプラッシュグリーンは「VSコンビネーションB」や「RSⅡ」の設定できず、ファブリックもしくは「VSコンビネーションA」の黒い内装のみが選択可能でした。(のちにWebTunedで選択できるようになる)
参考リンク→https://mx-5nb.com/2020/04/17/splash-green/
NB3:限定カラー【セリオンシルバーメタリック】24V
国内では「SGリミテッド」に設定され、世界各国の限定車でも採用されたセリオンシルバーメタリック。マツダ車ではデミオやMPVにも設定されたボディカラーです。ちなみにSGリミテッドの「SG」とは「Silver Green」の頭文字から取っていると思われます。
「Cerrion Silver Metallic」という色名のセリオンとは、スペイン語で「氷柱」を指しますが、「神格的」な意味も含みます。つまり、荘厳な銀色・・・となるのですが、実はとても珍しい「緑がかった銀色」の色味になっており、実車を目にすれば、その意味がより分かるはずです。
緑のロードスターというカテゴリ的にはスレスレかもしれませんが、あえて掲載させていただきます。NBロードスターモデル後期に設定されたので、当時はセールの広告にレギュラー掲載されるほどの不人気でしたが、中身はRS(1800モデル)とNR-A(1600モデル)といった、走りのグレードをベースにしていますので、生き残っている個体は大切に乗られている印象です。
NB4:カタログカラー【ノルディックグリーンマイカ】27C
NB4ロードスター最後期に「グレースグリーン」と入れ替わりで設定されたのがノルディックグリーンマイカです。色味はグレースグリーンに近しいですが、ワントーン明度を落とした感じで「よく見ると緑色」な色味になっています。
NBロードスター自体がモデル末期だったこともあり、国内流通数は34台と激レアであり、NCの25周年記念車並みに見たら拝むレベルのボディカラーです。ただ、決して不人気だったわけではなく、RX-8やアテンザセダン、アクセラにも設定されていた由緒正しいボディカラーでもあります。
参考リンク→https://mx-5nb.com/2019/12/07/green-nb/
NCロードスターの「緑」
NC1:カタログカラー【ノルディックグリーンマイカ】27C
ノルディックグリーンはカタログカラーとして、NBロードスターからキャリーオーバーされました。しかし、VSグレードのテーマカラーとして設定されたわけではなく、あくまでカタログラインナップのひとつとしての位置づけになりました。
理由としては、モダン寄りに振ったNCロードスターの「VS」グレード内装に採用されたのが、NB後期のベージュからサドルタンに変更されたことでベストマッチングととならず、NCのVSグレードにおける推奨テーマカラーは、かつての緑色からカッパーレッド(濃赤)やマーブルホワイトになったのでした。実際、RHTの登場する1年後にノルディックグリーンは(ウイニングブルーメタリックと同時に)カタログ落ちしてしまいます。
また、深緑とベストマッチするとされたウッドインテリアも純正オプション扱いと格下げされており、時勢的にも流行らなくなっていたことも、カタログ落ちの要因かもしれません。そもそも、ウッドは事故の際に割れて「ささくれ」が起こり危険とされており、ナルディの経営不振に繋がるなどの不運も重なっていた背景もあります。
でも、一周回って今眺めると、レトロモダンなNCロードスターにはとても似合う、素敵な緑色といえるのではないでしょうか。
NC1:限定カラー【ハイランドグリーンマイカ】35K
NCロードスターのお洒落な限定車「ブレイズエディション」「プレステージエディション」に設定されたボディカラーで、その色味はズバリNBロードスターの「グレースグリーンマイカ」の復活です。
特に、ブレイズエディションはボディ内装色を明るいサンドベージュに戻した、まさにVRリミテッド/NB3VSコンビネーションを復活させような限定車であり、プレステージエディションはブラック本革内装といった「大人のロードスター」を演出してくれました。
NC2:限定カラー【スピリティッドグリーンメタリック】36A
NC2モデル末期にリリースされた限定車「ブラックチューンド」に設定されたのが、ロードスター史上もっとも鮮やかな緑であるスピリティッドグリーンです。この色は、3台目デミオのテーマカラーとして開発された印象深い緑色でしたが、まさかのロードスターの採用にファンは驚いたことが記憶に残っています。
ちなみに、はじめてRHTをボディ同色ではなく「黒く」塗装したモデルになりますが、これはRHTオーナーが行う定番のモデファイとして後に定着します。また、国内だけでなく欧州でも「SPORT BLACK」として提供されました。
もともと、NC2はサンフラワーイエローなど、スポーツカーらしい「攻めた」ボディカラーを積極採用していましたが、結果としてはリーマンショックや東日本大震災などの影響で、スポーツカー不毛の時代を迎え、結果を残すことができませんでした。
そして、これ以降のロードスターは「無難なボディカラー」しか設定されない、冬の時代を迎えることになります。
NDロードスターの「緑」は誕生するか
ロードスターの「緑色」の歴史がNC2で絶えてしまった理由は単純です。
まず、前提として世界の自動車トレンドカラーにおいて、「緑色」はかつてほどのニーズがなってしまったことがあります。
また、ここまで並べた緑色は基本的に「専用色」ではなく、他マツダ車(特にデミオ)から色を借りていたという状況があり、近年のマツダラインナップには「緑色」が存在していないので、復活には時間がかかることが類推できます。
ボディラインが妖艶なNDロードスターを始めとして、魂動デザインのマツダ車はあまりソリッドカラーが似合わないので、おのずと「パール」「マイカ」「プレミアムメタリック」など、キラキラした色とのマッチングが多くなっている実情もあります。
しかし、赤、グレーと凄い色を開発したのですから、デザインチームが「緑」を視野に入れていないとは思えません。本当に納得できる緑が開発されれば、NDロードスターに「Vスペシャル」みたいな名前がついて、最後の限定車で復活するかもしれませんね。
そんな妄想を交えつつ、緑色のロードスターのご紹介でした。
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