NBロードスターの酷暑対策

NBロードスターの酷暑対策

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年々暑さが厳しくなっている日本列島。酷暑の日はムンバイ(インド)やドバイ(サウジアラビア)よりも暑いそうで・・・

そうなると心配になるのが愛車のコンデション。ボンネットの下にあるエンジンは常に燃焼していますから熱くなるのも当然で、いくらコンピュータ制御とはいえども雑に扱うとオーバーヒートのリスクが生じます。

一番の対策は「暑い日に乗らないこと」かも知れませんが、どうしても走りたくなる日もあるはず。そうはいっても、とても効果が高いとされるボンネットダクトを備えるのはなかなか敷居が高いですよね。

そこで今回は、暑いなかでも安心して走るための予防整備を行っていきます。NBロードスターが話の軸にありますが、他のロードスターも応用的にとらえていただければ幸いです。

クルマの状況を把握する


クルマへかかる負担を定量的に知る手段として存在するのが、メーターに配置されている「水温系」です。しかし、純正状態の水温系がリニアに動くことはほぼありません。むしろ、いつも止まっている針がH(ヒート)のいくのは既に「やばい状態」になっているとされています。

もちろん、代替手段として後付けメーター(機械式のものやOBD2接続(※NB3以降))を取り付けるも良し、純正水温系のリニア化工作を行う方法もあります。実際、リアルタイムで動く水温系は意外に安定しないので心臓に悪いのですが、純正メーターのリニア化はコストをあまりかけずにできる割には、とても効果が高いモデファイです。

ちなみに、オーバーヒートのトラブルでは、起こしてしまった人の大半が「水温計を見ていなかった」事例が圧倒的だそうです。

参考→https://mx-5nb.com/2019/11/20/water-info/

また、五感を活用すればある程度の状況把握が可能です。

例えば「甘い匂い」はクーラント液が漏れている合図だし、「焦げた匂い」は何かが溶けたり焼けたりしている状態です。「明らかな異音」や「ボンネットから白煙」は、誰がどう見ても良くない状態であることが分かりますよね。つまり、ポイントになるのは「違和感」です。人間の感覚って意外と鋭いので、やばいと感じたらすぐに対処していきましょう。

ちなみに、マツダのマニュアルにおいてオーバーヒートの際は、下記対策が記されています。

次のようなときはオーバーヒートです

水温系の針がH付近を示し(※近年のクルマはエンジンチェックランプ、または高水温警告灯 (赤) が点灯する)、エンジンの出力が急に低下したとき。またはエンジンルームから蒸気が出ているとき。


【対策】
1)安全な場所に車を止めます。

2)エンジンルームから蒸気が出ていないかどうかを確認します。

・エンジンルームから蒸気が出ているときはエンジンを止めてください。蒸気が出なくなるまで待ち、風通しをよくするためにボンネットを開け、エンジンを始動してください。

・エンジンルームから蒸気が出ていないときはエンジンをかけたままボンネットを開け、エンジンを冷やします。(※クーリングファンが作動していることを確認し、高水温警告灯 (赤) が消灯したらエンジンを止めます。)

3)エンジンが十分に冷えてから、冷却水の量を点検します。冷却水量が不足しているときは①ラジエーター、②リザーバータンクの順に冷却水を補充してください(冷却水がない場合は一時的に水を補充してください)。補充後はキャップを確実に取り付けてください。

4)早めに最寄りのマツダ販売店で点検を受けてください。

【警告】
エンジンルームから蒸気が出ているときは、ボンネットを開けない。エンジンルーム内が熱いとき、ボンネットを開けると、蒸気や熱湯が噴き出してやけどなど、重大な傷害につながるおそれがあります。また、蒸気が出てない場合でも高温になっている部分があります。ボンネットを開けるときは十分に注意してください。

エンジンが十分に冷えるまではラジエーターとリザーバータンクのキャップを開けない。エンジンが熱いときにキャップをはずすと、蒸気や熱湯が噴き出してやけどなど、重大な傷害につながるおそれがあります。

エンジンルーム内を点検するときは、ファンやベルトなどの回転部に触れない。特に、エンジンルームが高温のときは、エンジンが止まっていてもファンが回転することがあるため、手や衣服などが巻き込まれるなど、重大な傷害につながるおそれがあります。

ラジエーターまわりの予防整備


クルマの性能を安定させるには、エンジンが発する熱をなんとかする必要があります。「燃焼」や「金属の摩擦」が常に起きているエンジンでは、オーバーヒートになると潤滑のためのエンジンオイルが機能しなくなり、場合によってはパーツが焼き付きます。

そのための冷却装置がラジエーターになので、ラジエーターを大型で効率のいいものへ交換する考え方もあります。ただ、その前にできる対策として、定期メンテナンスを行うことで得られる安心感は大きいと思います。そこで、水回りの予防整備をご紹介します。


1)冷却水量のチェック
エンジンが冷えている状態でリザーバータンク内のクーラント(冷却水)が規定内にあるかチェックしましょう。減っている場合は補充が必要ですし、極端に減っている場合は漏れている可能性があります。ちなみに規定量を超えていると、リザーバータンクやラジエーターキャップから吹き出しますので、やり過ぎ注意です。

ちなみにクーラント液は消耗品です。マージンを持っている純正LLCであっても「2年ごとの交換」が推奨されています。車検時のリフレッシュは商売ではなく、理にかなっているメンテナンスタイミングでもあるのです。


2)ラジエーター本体や各種ホースのチェック
停車中の下回りを見て、クーラント(冷却水)が漏れていないかチェックをしましょう。液だまりやシミがあった場合は、漏れている場所を特定します。液漏れの発生しやすい場所は「ラジエーター本体」「ラジエーターホース」「ウォーターポンプ」などが挙げられます。漏れ止め剤や専用の補修テープで簡易的に補修することも可能ですが、対処後はプロに診てもらう方が安全です。また、ロードスターのラジエーターは上部が樹脂製ですが、経年劣化すると分かりやすく艶消しでカサカサに変色していきます。ひとつの目安になれば幸いです。


なお、エンジンの水回りは高熱・高圧力がかるので、どうしても経年劣化が起きやすい箇所になっています。近年はエアコン効率化のために水回りのラインをモデファイをするノウハウもあるようですが、NA/NBロードスターのB型エンジンは「なるべく水回りのラインを強固に、シンプルにしたい」というエンジニアの信念において設計されています。パイピングのアレンジは注意されたほうがいいと思われます。

参考→https://mx-5nb.com/2020/12/14/radiator-replacement/

ラジエーターに風を当てる


ロードスターのラジエーターはフロントグリル、つまり「口」の中に配置されています。走行風を正面から取込み、ラジエーターでクーラント液を冷やして、さらにエンジンを冷やすサイクルを繰り返しているのです。つまり、グリルに入る風を遮らないことが重要です。


ちなみに、米国ミアータ(NAロードスター)のテクニカルサービス(リコールの手前)では、純正オプションだったグリル内の「プロジェクターフォグランプ」は冷却効率を著しく下げるものとして、AT車に限り取り外し指示が推奨されています。そりゃ、あそこを塞いだらMT車でも風が入らないですよね・・・


また、走行中であれば水温は比較的安定しますが、ストップアンドゴーや停車をしていると(もしくは峠などでエンジンに負担がかかっていると)、水温計はみるみる上がっていきます。そういった時のために、ロードスターのラジエーターには二つのファン(扇風機)が付いていて規定温度で始動するようになっていますが、実は片側(運転席側)はエアコンを使わないと回らない仕様になっています。

逆に考えると、暑い日はエアコンを使った方が(ファンが常に回っているので)水温は安定するのは大きなポイントです!


また、折角ふたつのファンを備えていますので任意のタイミングで回すことが可能なリレーキットや後付けファンなどもショップ販売されていますが、サーキットユースでもなければ素直に「エアコン付けっぱなし」の方がコストパフォーマンスがいいかも知れません。

そもそも酷暑で「エアコンが効かないこと」自体がドライバーの熱中症リスクを高めるので、エアコンメンテナンスも重要です。

エアコンガスは「足す」よりも「入れ替える」方が恐ろしく効くようになるので、カーショップに依頼するならばそちらをお勧めします。ちなみに、NA/NBロードスターのエアコンは効かないという話もありますが、メンテナンスされているエアコンはガンガン効きます。

ひと工夫をおこなう


冷却効果を高める意外なアイテムはバンパー上部にある整風プレートです。

これはNA8から純正装着されるようになったパーツで、NAではバンパーシール、NBではフロントバンパーリテーナーという名前になります。後付けで「完全に穴を防ぐ」カッコいい社外パーツ(クーリングプレート等)もでていますが、要はこの「隙間」を埋めてあげるだけで冷却効果が高まります。私は余っていたクリアファイルと隙間スポンジテープで塞いでみました。

ちなみに、NBロードスターでここに穴が開いているのはサービスホールかもしれませんが、実は寒冷地域のためのオーバークール対策かも知れません。この穴は走行時には影響が少なく停車時にエンジンの熱が前に回り込んで、熱い空気がラジエターに当たる状況になっているようです。ただ、暑い日はたかだか数センチを防ぐだけで、恐ろしく水温が安定してくれます。冬季にエンジンの温まりが悪ければ、戻そうと思います。


なお、純正状態のラジエーターはフロントパネル(ヘッドライト左右を繋げるフレーム)との隙間にスポンジテープが貼られています。経年劣化でボロボロの場合は、それを張り直すだけでも冷却効果が高まります。また、ラジエーーターを交換した際に気づいたのですが、上部だけでなく隙間全般にテープが貼られていたので、余裕があれば全体をフォローしたほうがいいかも知れません。

また、意外に重要なのは下回りを保護するアンダーカバーで、(極端な破損をする場所ではありませんが)バキバキになっていると冷却効果が下がります。割れていたらきちんと塞いであげましょう。


実は、ロードスターでは冷却に有効な手段として、かつてはナンバープレートのオフセット(グリル横に移動)を行うことが定番モデファイがありました。

しかし、2021年10月の道路交通法改定でナンバープレート取り付け位置が厳格化されたことで話が変わりました。新基準対象は2021年10月以降に新車登録をするクルマ(つまり後期NDロードスター)であり、取付け角度を守れば旧車でも車検はクリアできる規定なはずですが、実際はディーラーや車検場でNGを出されることが多いようです。


また、ボンネットのヒンジ部分を浮かせて排熱させる手段は「クルマが静止しているとき」は効果絶大ですが、走行中はフロントガラス付近に正圧がかかるので排熱が厳しく、極端な効果は期待できないようです(風が抜けない)。一番効率のいい「高さ」が存在するはずですが、定着していないことを鑑みると・・・それが答えなのかもしれません。

同じく、エンジンの排熱効果をねらってバルクヘッド手前(ワイパー下)の隔壁にあるゴムシールを外し抜けをよくする手法もありますが、ロードスターはエアコン用のフレッシュエア―をその個所から引き込む関係上、クーラーが効かなくなる(同時に悪天候時にエンジンルームに水が入る)リスクがあるので、あまりお勧めできません。

逆に、ボンネットダクト付近(中央)は走行中でも負圧がかかるので排熱効果が高く、理にかなった性能を発揮します。

なお、ロードスターは鉄と比較して3倍の熱伝導があるアルミニウム製ボンネットが採用されていますが、軽さだけでなく排熱という点でも恩恵は大きいでしょう。代わりに年中陽炎が見えたり、塗装の経年劣化を促進しますが…


NBロードスター後期ならではのモデファイとしては、フォグランプの穴を使ってエアダクトのパイピングをおこなう手法も存在します・・・が、これは排熱効果ではなく、エアクリーナーにフレッシュエア(密度の高い空気)を引き込みパワーを維持する手法なので、今回は割愛しています(NAロードスターのリトラクタブルヘッドライト・ダクトも同じです)。

以上、いつ何時も頑張っている愛車に対し、酷暑メンテナンスの参考になれば幸いです。

関連情報→

ロードスター、白煙を吹く(備忘録)

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