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元主査である貴島孝雄さんインタビューの続きです。NB型、第二世代ロードスターになった理由の一つには安全性の強化がありました。それを先代と同一のボディサイズで実現させた苦労や、やっぱりそうか・・・な6MTの話です。あばたもえくぼ、笑って読んでください。
安全性強化
一番困ったのは、欧州の民間でやっている安全実験だった。クルマを台車に乗せてブレーキをかけ、Aピラーを変形させずに居住スペースが確保できるか、横方向に横転させるテストになる。そうしたら困ったことに、NAはクチャっとつぶれてしまった(笑)。同時にゴルフのカブリオレ辺りもやっていて、あれはロールバーが入っているし、VWはAピラーも頑丈だった。転がしたゴルフは十分スペースがあるけれど、NAロードスターはないとなった。
だから、NBはAピラーに太いパイプが入っている。これは正式なレギュレーションではなかったけれど、テスト結果が雑誌に大きく書かれてしまったから、万が一横転しても潰れないように補強を入れた。リアにファッションバーが入っているだけでも回ったときに違う。後のNC時代には要求が厳しくなるから、後ろにロールバーが入っている。
参考:
サイドエアバック(後期型)
サイドエアバックの導入は、やり切れなかったというよりも、入れたほうが障害値が大きいのでやめた。エアバックが膨らんだ時の寸法確保、ストロークが少し足りなかった。現在はカーテンのように上に行くようになっているけれど、当時は横に開くので、むしろ腰の負担が増えてしまう。そういう意味では、5ナンバーの限界になっていた。
内装に枠がついているのは、キャラクターラインではなくエアバックを入れるラインの名残になる。先にデザインだけ決まっていたので、後から変えることはできなかった。
剛性について
NAは全体の車体剛性が低いからタイヤはグリップしないものにした。しかし85km/hくらいで車体振動が出るレベルだから、補強をするとどこかバランスが崩れて別の振動が出てくる。あの時代の味付けは、そうやってバランスを取っていた。
NBも当然補強をしたけれど、リアのブレースバーを付ける・付けないで検討したら、ないほうがいいとデータが出た(※その場所にはエアロボードが付いています)。どれか一つを良くして(剛性が)高いとなっても、全体で見たときに乗り味のバランスがうまく取れていないと意味がない。NBの外販は変えたけれど、サイドシルの断面だって同じ大きさだし、骨組みも一緒なので限界がある。補強は全体のバランスで考えてやらないといけない。
6速マニュアルミッションの採用
6速を採用したのは、6速という「記号性」と、燃費という側面が大きかった。多ギアは太いトルクのものに使うことは分かっていた。ただ、シフトが6速だと高性能なイメージが付加される。しかし6速を単にオーバードライブにしても、きつい勾配だと5速に入れ直して、また6速に戻して・・・となると煩雑になる。
実は、一番NBが売れるアメリカでもスポーツ走行をする人は数%もいない。99%は街乗り、つまり買い物や通勤に使う。某メーカーのように、サーキット以外ではトルクが無いなんていけない。だから、6速に入れても加速していける条件をマツダで決めて、そのうえでレシオのセッティングをおこなった。
結果としてオーバードライブとしても使えたので燃費が良くなった。ロードスターは普段使いが多いから、燃費も良くしてあげないといけない。そういう意味では、実は5速と6速にあまり差がなくて、5速でも十分使えるミッションと思っている。
しかし、購入先のA社6速ミッションが駄目だった。アル○ッツァと基本同じだけど、そこの親会社はモノを安く作ろうとして、シフトフォークの一本をマツダよりも軽量にしているところがあり、剛性が出ない構造なのでグニッとなってしまう。もちろん時代によって改良もしていくから、後期型では幾分マシになったけれど、社内でも駄目なことは解っていた。
だから主査として、NCの為にミッションの開発を社内にお願いした。ロードスターの人馬一体「感」はここが肝だといって、予算がないというから5億の予算を獲得してきて、開発に乗ってもらった。
実は社内製の方がダイレクトなフィーリングだから、NBのシフトフィールは5速がいい。シフトはシンクロのチャンファー(※面取り加工)、吸い込み感、荷重、部品精度などがどうしても「味」になるので、それが安定するようにバネの強さをコントロールするなどの試行錯誤をおこなう。それをほっておくと、熟成されたものにならない。
それでも採用をしたのは6速という響きと、オーバードライブ・燃費改善の効果を出したかったから。実際に私が乗っていたNBは高速でリッター16出せた。(注:当時の6速開発エピソードには、開発ドライバーのスピードシフトに対応させるため、かなりの修正指示を出したというものがあります)
先行採用した技術は?
例えばホットスタンピングっていう、高張力鋼板のプレス打つ為に、材料を事前に温めておいて整形する技術がある。これはサプライヤーが設備投資をしていないと使えないわけで、莫大なお金が必要になる。ロードスターの生産だけでそれを回収することは出来ないので、デミオのクロスメンバーと一括でやってほしいとお願いして、先行してロードスターに使ってくれるような事はある。(※結果NCで採用されてました)
ただ、サプライヤーも自分たちの経営がある。これで上手くまとまればいいけれど、ずるい会社は投資の約束を守らない。クルマの販売なんて水物だから、売れ行きが怪しいとサプライヤーも信用してくれない。ロードスターはずっと売り続けて、やめる事がないという信用があるから投資してくれることもある。
しかし、これは本当に色々な「からくり」があって難しい。細かなパーツ、例えば電子部品の8ビットが16ビットになるのは規模としては小さくて、大物への投資が本当に効果のある新技術になる。
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