変えないために、変えた、NB(C-6)

変えないために、変えた、NB(C-6)

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元主査である貴島孝雄さんのインタビュー続きです。NB編のラストは、当時何かにつけて出てきた「重箱のスミを突く話」で締めたいと思います。今思うとそりゃそうだよね・・・という内容です。

貴島さんのプロフィールはこちら

ロータリーエンジンは乗せないの?


お客さんの声としてはたしかにあったから、乗せてもいいのだけど・・・NB時代のロータリーは13Bだったかな。ただ、それをロードスターに付けたらブレーキの補強をして、ラジエター容量も多くしてと、どんどん大きくなって、ライトウェイトではなくなる。つまり、13BのRX-7になってしまう。


そうなったらセブンのオープンカーだから、セブンの存在意義が無くなってしまう。セブンとロードスターが同じエンジンでひとつのボディ、ロータリーを「セブン」と呼んで、普通のエンジンを「MX-5」としたら、カニバリゼーション、つまり市場の食い合いをしてビジネスが成り立たない。お遊びで乗せるのはいいけれど、そんな馬鹿な商品作りはおこなわない。


4代目まで100万台を達成したペースをみたとき、どのようなコンセプトで、何が支持されたかを考えると、「パワーが手頃である」こととか、「燃費もそこそこ」であるとか、マツダもそれが一番だったことを知っている。だからロータリーエンジンを付けて自らを崩すなんてことは絶対にしない。

マツダは何度もレシプロとロータリーを同時に乗せたクルマをやっているけれど100%失敗している。あの失敗は2度とやらない。ロータリーはロードスターに乗せないと最初から決めていた。

適度なパワーっていうのがロードスターには一番大事になる。パワーがあればいいというのはアメリカ人のマッチョな考えであって、そういう人はアメ車を買えばいい。ロードスターっていうのはライトウェイトの不文律を守っているわけだから。


だからパワーがあってもせいぜい170〜180馬力。世界の道路を走るため、エアバック(安全要件)の関係で3ナンバーサイズになるのは仕方がなかった。しかし、時代が変わっても「道路の幅」は変わらないから、そんなに大きくする必要もない。ロータリーはその良さを生かすクルマ作りをしないと成功しないし、そう決めないと成り立たない。

S2000に部品提供していた


彼らはFRのデフが無いから「売ってくれ」と来た。ロードスターとセブン(FD)用が有るからどうしますか?と聞いたら、ロードスターでは小さいしセブンだと大きいとなった。そこで中間を作ってくれといってきたので、それならこのお値段で・・・と伝えたら「いいですよ」となった。

それは(ロードスターより)100万円以上高いクルマだからお金が出せたのだと思う。グリーソンの歯切り(※精密加工機器)はマツダにもあるから、ホンダさんが要求する数だけ作って、下請けになってあげた。


でも「FRを作る」ことに対して意見をするのは少し傲慢(ごうまん)だけど・・・FRで負ける気がしなかった(笑)。だから、セットしたクルマを出してくれば比較されて面白いと思っていた。エンジンでは負けているけれど乗り味で勝負ができる。


ゴツゴツとサーキット用にセットされているものが好きな人ならいいけれど、普通の人はそんなチャンスに恵まれない。コンビニからビューっと出るのか、低速トルクがなくてエンストをしてしまうか。その良し悪しも分かった上で、それでもスポーツカーの仲間が増える方がいいと思ったし、結果ロードスターの地位が確保出来るとも思った。

ベストハンドリング賞に関して


イギリス(※AutoCar誌)で「ポルシェはサーキットで楽しいけれどロードスターは一般路でも楽しい、ポルシェと上回る」という評価をいただいた。

実はあの時期、イギリスの雑誌で自動車業界300傑というものがあって、私が258位で掲載された。そこにエスティメートサラリーというのもあって、ロードスターを開発した責任者の価値は10万ポンドくらい貰えると記載されていた。当時の為替換算で2,500万円くらいの資産になるんだけど、給料そんなに貰っていなかった(笑)。

その時に、世界のレベルはこんな感じか、マツダの給料は安いな・・・とガックリしたのと、ともあれ258位に入れてもらったのでいいかなと思った(笑)。

参考:

世界一になったNBロードスター

変えないために、変えた。(まとめ)


日産の「フェアレディZ」にミスターK、片山さん(※)といういう方がいらっしゃった。彼が東京モーターショーに展示してあったNBをみて「このクルマを買いたい」といってくれた。当時100歳近かったんだけど本人は買う気で、60歳くらいの息子さんが止めていた(笑)。

※片山豊氏:元米国日産社長 フェアレディZの生みの親として知られる 参考リンク


その時に片山さんが「貴島さん、アメリカがメインの市場でよくこのクルマ(NB)を辛抱されましたね。ハイパワーにしろ、大きくしろってアメリカからいわれたでしょう?」「私はいわれるがままにやったけれど、Zも240、260、280とサイズがどんどん上がっていって、その度にクルマから楽しさが無くなっていった」「ミスターKといわれながら、フェアレディは失敗の面があるけれど、ロードスターは排気量とサイズをよく守りましたね」っていってくれた。


ご存知の通りNBはNAの熟成モデルになる。それまでの日本は、本質的なクルマの熟成をやったことがなかった。

フルモデルチェンジは先代から変えることが目的になってしまって、「本質的な良さ」よりも「技術的に惹かれた目線」のものいいで、全部変わっていないと駄目だという風潮があった。だから、日本で同じクルマを15年以上熟成させたのはNBが初めてになる。


発表会の時、かなり有名なジャーナリストが「人馬一体はもう古いんじゃないですか?」と私にいってきた。そこで「人馬一体で得る楽しさの感覚は普遍的なもので、飽きのこないものですよ」と伝えてやった。

ジャーナリズムは主張をしないとライターの存在意義が無いから、私に対して吹っかけたのかも知れない。でも私は人馬一体、つまり「楽しさの本質」で作ることを変える気は全くないと伝えた。

私はライトウェイトを守る信念を持って、アフォータブルで楽しいクルマが間違いないと、それをずっと続けていこうと思っていた。それが哲学ってものだと思う。

次回に続きます

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NCはなぜキジマじゃないのか(D-1)

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