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AUTOCAR誌2003年6月(JP8月号)の企画記事「300万円以下のベスト・ハンドリング・カー」、そして2ヶ月後の2003年8月(JP10月号)の企画記事「ベスト・ハンドリング・カー2003」にて、NBロードスターは価格・クラスを飛び越えてBEST1の評価を得ることができました。
この記事は貴島主査のNBロードスター回顧録や、山本主査(※当時は副主査)のNC開発エピソードでもお聴きすることのできる、素敵なエピソードです。
その内容に関して、以前私が翻訳したものをご紹介しましたが、今回は「日本語版AUTOCAR誌」における翻訳をご紹介します。
ベストハンドリングカー企画とは
内容をおさらいすると、スーパーカー、GTカー、ラリーカー、ホットハッチ、スポーツカーなど各分野にて【その時代に販売されている】クルマが、価格・クラスを超えて評価されるという企画です。つまり、その年の「一番愉しいクルマ」を選定するのです。
ティフ・ニーデル(元F1ドライバー/BBCトップギアのキャスター)
ジャスティン・ウィルソン(ジャガーF1ドライバー)
佐藤琢磨(BARのF1ドライバー)
マイケル・ベントウッド(BMW BTCCドライバー)
フィル・ベネット(プロトンBTCCドライバー)
マーティン・アンダーソン(ロータス車両力学のテクニカルマネージャー)
2003年の選定方法は、上記ハンドリングテスター7名がワインディングやサーキットなど様々なステージをガチンコで走り込み、全32台から7台を選出、そこからさらに2台に絞り込みました。
次項は最終ジャッジからの引用です。
AUTOCAR 2003年8月(JP10月号)より引用
スポーツカークラス予選3区では、エリーゼが善戦。Z4もなかなかでした。
しかしMX-5のハンドリングの良さは頭一抜けていました。
決勝にコマを進めたのはポルシェ911GT3(996)とマツダMX-5(ロードスターNB8C)でした。この2車が決勝に勝ち残ったのです。しかし、片や現行のポルシェ911の中でも最も硬派で、最もドライバー指向のモデル。片や200万円台で買える日本車。それを直接比較などできるのでしょうか。
ただ、結局のところ、その作業は思いのほか簡単でした。この2台のどちらに軍配を揚げるか、我々は長い時間をかけて議論を交わし、結論が出ないままテストコースを後にしました。しかし編集部に戻った時には腹が決まっていたのです。
純粋にハンドリングのみを評価するという今回のテストの原点に立ち返ったとき、すべては明白に見えてきました。我々が求めていたのは、ドライバーの意志に対してリニアに反応し、喜びを与えてくれるクルマです。その両方を、ドライバーの資質やコーナリングスピードに左右されることなく提供してくれるクルマこそ、このハンドリング・テストの勝者なのです。
この視点に立ち戻ったとき、GT3の持つアドバンテージ・・・素晴らしいドライブトレーンが生む途方もないスピードと、そのスピードがもたらす喩えようのない興奮・・・は意味を持たなくなりました。つまり911GT3を走らせる愉しみは、そのスピード自体から得られる愉しみの分を差し引いて考えねばならないという事なのです。純粋なハンドリングの観点からいって、911GT3は極めて満足ができるクルマです。しかし、その醍醐味を味わい、リアの荷重を保ち、クルマを走行ラインから外さないようにするには、然るべき腕前と然るべき場所を必要とします。
一方、マツダMX-5は、ワインディングロードを愉しく走りたいと思う普通の腕前のドライバーに対しても従順で、大きな満足感を与えてくれるのです。その素晴らしい特性は、今回我々が招いた類い希な才能を備えたドライバー(彼らはその直前までGT3を本気になって走らせていた)をも大いに愉しませてくれたのです。
したがって勝者はマツダMX-5です。“300万円以下で買えるベスト・ハンドリング・カー”は、究極のベスト・ハンドリング・カー世界チャンピオンでもあったのです。
以上が、2003年ベストハンドリングカーの最終評価です。
その感激できる内容は以前のブログでも書いていますので、今回はほかの視点で。
1989年から続く「ベストハンドリング」評価
このAUTOCAR誌の企画は1989年から現在まで続いています。近年では「Britain’s Best Driver’s Car」と名称が変わりましたが、歴代企画とも厳選なる判定を秋に行うのが恒例となっています。
歴代優勝車を眺めてみると、なるほど納得な面子です。日本車も健闘していて「NAロードスター」「初代NSX」「R35GT-R」「86」といったメンバーが連なっています。異色なのは日本ではなかなか見る機会がないアリエルで、「ノマド」はホンダのiVTECエンジンを積んでいたりします。※余談ですが、NCもNDもノミネート内には入っています。
このランキングの面白いところは、自国車を贔屓(ひいき)にするのではなく、価格や性能でもなく、あくまで「今年最高に愉しかったクルマ」をテーマにすることです。
ポルシェやフェラーリの名が連なる歴代優勝者の中でも「MX-5(ロードスター)」が飛び抜けてアフォータブルな存在ですが、「愉しさ=Fun」はロードスターの開発テーマにもあった言葉。その開発思想と作り込みが歴史のある英国の自動車文化でも評価をされていた事実は、本当に嬉しい話ですね。
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