M2 1001(NA6CE改)試乗記

M2 1001(NA6CE改)試乗記

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クルマはじっくり乗ってみなければわからない、お友達のロードスターをお借りするシリーズ。今回はNA6ロードスターの限定モデル・・・というか、M2というマツダ系列の会社から販売された「M2 1001」をお借りしてきました。

通称ゼロワンとかマルイチと呼ばれるこの子は、NAロードスターの中でも全国300台のレアモデル。ウルトラざっくり解説しますと、メーカーがチューニング(型式番号:NA6-CE改)を施したロードスターです。

この「M2 1001」は、NAにおけるチューニングやドレスアップのベンチマークとして様々な場面で紹介されることでも有名です。でも、個人的な話でいうと、私が社会人になった頃はすでにNBがリリースされていて、M2社は既に解散済みでしたので・・・そんなに思い入れはありません(失礼!)。でも、NB6オーナーの私としては、B6-ZEエンジンをメーカー本気で弄ると、どんな味付けなのか気になって仕方がありませんでした。

プレミアまで付いている名車といわれる割には、ネットでも雑誌でもスペックの紹介ばかりで乗り味の評価などが少なく、折角の機会なので私の独断と偏見で、その辺りをレポートさせて頂ければと思います。

M2とは


M2(エムツー)とは、マツダの商品企画を行うグループ会社でした。

「商品企画において、商品プランナーがお客様とのダイレクトコミュニケーションの中から、クルマの新しい価値創造を目指す」として、世田谷のM2ビルで開発メンバーと意見交換しながら、クルマを開発する・・・という事でいくつものマツダ車のコンプリートカーを企画開発。そこから市販されたモデルもあり、その最初の1台が「M2 1001」です。

活動期間は1991年~1995年で、マツダ経営危機により休眠会社となっています。その後在籍していたメンバーは、マツダに戻りマツダスピード事業部に行かれたり、某オーナーズクラブを作られたり、独立されたりと様々ですが、現在のロードスター業界(?)でも有名な方も多いようです。

M2 1001とは


コンセプトは「CAFÉ RACER 」。カフェレーサーとは「公道レースを速く、カッコ良く」という趣旨でクルマやバイクをモデファイするスラングです。

以下、プロモーション文章より抜粋。

M2から最初に発表する1001は、「走るときめき」の提案です。飾らない風貌に潜在能力を感じ、わずか数メートル転がした瞬間に、別物であることがご理解いただけるものと思います。このM2 1001を御すためには、いささかの鍛えも必要かと思いますが、これもスポーツカーオーナーだけの悦楽であろうと考えて居ります。

その開発総指揮は立花啓毅氏。氏はマツダのシャシー実験部のリーダーとして、M2在籍以前からメディアでインタビューの露出が多く、マツダスポーツカーの顔であったといっても過言ではありません。そんな方が、自身の”走り”に対するアイデンティティを「1001」に注ぎ込んだとなれば、クルマの仕上がりが気になる処ですね。

M2 1001 スペック

ユーノスロードスターベースのチューニングカーで形式はNA-6CE改。最大の特徴はチューニングエンジンB6-ZE(RS)改:1600cc。

ノーマルよりも圧縮比を上げ(9.4→10.67)ハイオク仕様にして、ハイカムにハイコンプピストン、専用エキマニ(4−2−1)、軽量フライホイール、専用マフラー(HKS)を架装。出力は130ps/6500rpm(ノーマル比+10)、トルク15.1kg-m/5500rpm(ノーマル比+1.1)といったスペックです。

足回りも素性はマツダスピード製ですが、専用数値で再セッティング。ロードスター初の15インチ純正採用。アルミ製のタワーバーやロールバーでボディ補強を行っています。

また、専用のフォグランプ内蔵エクステリアやリアスポイラー、砲弾型ドアミラー、専用マッドフラップ等を標準装備。ボディカラーはブルーブラックというこれまた専用色です。インテリアに関しては後述。

M2 1001 乗り込んでみる


実際に乗り込んでみると、先ずはバーン!と閉まるドアの軽さと、シンプルな装飾に驚きます。

クラシックなスタイルの専用バケットシートに腰を埋めるとかなりタイトで、乗り手を選ぶでしょう。意外に座高が高くヘッドレストがないので、運転中は首の筋肉を使うことになりますが、これは幌を開けた時に理由がわかりました。首が自由なので圧倒的に全体を見渡すことが可能です。

内装は最小限のシンプルなもので、センターコンソールすら取り外されています。トランクやフェルリッドのオープナーも廃され、そこには専用の小物入れが付きます。本当に、必要最低限のモノしか存在しません。

座席から目につくのはこれまた専用のメーター類。ひとまわり小さくドレスアップ目的なのかと思っていたのですが、NA純正よりも座面からの視認性が良く、クルマからの情報を確認できるメリットになりました。純正と回転計、速度計が左右入れ替わっています。

ちなみにオーナー様のアドバイス通り、燃料計は増えたり減ったりと、結構適当な動きをします!(タンク内で上下するガソリンに影響を受けるのかな?)

砲弾型のサイドミラーも十分とはいえませんが、なんとかなる視認性。実は左右非対称でセットされており、助手席側にはミラーの位置にシリアルナンバーのブレートが配置されています。

M2 1001 珠玉のチューニング・エンジン


エンジンのイグニッションを入れると、NAのノーマルエンジンよりも野太いアイドリングが始まります。たまにラフな音もありますが、温まると安定します。水温は75℃〜85℃の間で推移し、走っている方が冷えるのはロードスターのお約束ですね。ちょっとアクセルを踏むと元気なエンジンなのがすぐ判ります。

トルクに関してはNA8の方が太いですが、吹け上がりの良さはこちらの方が圧倒的に上なので、トルクに頼らずともパワーが出て常用回転域(街乗り、2000rpmあたり)で普通に流せて、むしろ意外に乗りやすくて驚きです。
同じB6エンジンのイメージでは、NB6はブロロウォーンって感じの吹け上がりですが、1001はヴォン!と軽快過ぎるほど吹け上がります。ただしパワステレスなので、ステアリングは速度が出ていないと結構重いです。

では、踏み込んでみるとどうでしょう。

専用マフラーの音は意外にジェントルではありますがいい音で、3000rpm辺りから音が盛り上がり、4500rpmでめっちゃいい音になり、上まで吹き抜けていつの間にか”速い”ので、シフトアップが忙しい!しかし、雑さは全くなく丁寧に調律されていることを感じます。慣性走行に入ると3000rpm辺りで「終わっちゃうの?」って感じで尻の下(キャタライザー辺り?)で共鳴音が生じ、申し訳ない気分になります。

NB8と同じ130psでも排気量の差があるとはいえ、この味付けはかなり印象が違います。特にNB6乗りとしては同じエンジンでもここまで官能的になるのかとマジにショックを受けました。それ位”踏みたくなってしまう”フィーリングの良さを感じさせてくれます。

M2 1001 コーナーリングに関して


エンジンが凄いだけでは勿体ないので、曲がってみることにします。

最初は重ステに警戒感を持っていたのですが、パワステ特有の遊びが無いので剛性感があるとでもいうのでしょうか、軽いボディと官能的なエンジンがコラボして想像以上にコントローラブルに軌道します(ほぼ修正舵を出すことはありませんでした)。

また、ものすごく感動したのがボディが全くといっていいほどミシリともいいません。NA特有の腰砕け感といいますかそれが全くなく、腰の後ろで踏ん張ってくれます。ロールバーを確認すると床面の溶接だけでなく、ハードトップ用のサイドフック基部にまでボルト留めして剛性確保する拘りぶり。

脚回りもいい仕事をしていて、低くなった車高に併せて適度にストロークしてくれて、ギャップを乗り越えても何処かに飛んでいくような不安感はありません。正直、ハードトップ付きの純正車高NB(NR-A)よりも脚とボディのバランスがよく、乗り心地も1001の方が上です。

私の甘ちゃんな走り方位では全然信用して踏むことができ、NBに近しいハンドリング(しかし速度領域が高い!)を味わえました。機械式LSD採用のせいか、意地でもグリップ走行をさせるセッティングは好みが分かれるかもしれません。通常のNAよりもシャープなハンドリングの印象です。

過去の1001の評価では、アンダーからいきなり限界がきて危ないということですが、私自身はそんな場面まで踏み込むことは出来ませんでした・・・ヘボですからね。

ボディが信用出来るので直進安定性も全く問題がなく、むしろエンジンを回したくなるので別の意味で危ないです。余談ですが、NA開けをするよりも素直にオープンにした方がヒーターは効きます!

ちなみに燃費は満タン法で、302キロ走行で給油量27.12L。リッター11.13キロでした。※ハイオク指定です。

M2 1001 気になったこと


甘ちゃんだと笑われるでしょうが、あえて書きます。

低速度領域でパワステレスは結構きついです。車庫入れ、峠道での転回、低速度(20キロ以下)での、交差点90度ターンは普段使わない筋肉を使いました(慣れの問題かな)。それに伴ってでしょうか、特に夜間走行は気疲れが有りました。

小型のバケットシートはヘッドレスト部分(頭の支え)がないので、リラックスモードで走る時に首が凝ります。あと、恐らくエアコンレスは夏場キツいんだろうな・・・

また、メーカーの威信をかけて作ってくれた各種純正パーツは、生産保証期間が終了しているのでオリジナルを保つためのカロリーは大変だろうと余計も心配をしました。

M2 1001 どこに価値をみいだすか


M2という純メーカー組織が販売し、立花氏という生粋のエンスージアストが1001の陣頭指揮を執った事実は、開発者が「ここまでライトウェイトスポーツやりたかった!」と示した事実の受け取り方で、評価は大きく変わると思います。

1001モデファイは一見ドレスアップ目的に見えますが、全て理詰めで施されています。

内装レスを突き詰めたからフェルリッドオープナーも車内から無くし、従って鍵付きのフェルリッドになり、ダイレクト感と軽量化を得るためのパワステレス。メーターは座高に左右されずインフォメーションを伝えるために小型化し、バケットシートはオープン時の視界確保のために古き良き小型タイプ。

空力重視の砲弾型ミラー、実はフォグランプだけでも走れちゃう(リトラクタブルを開かなくても明るい)エアロバンパー。パワーを出すのであればロータリーだ、ターボだという方向もあったでしょうが、フィーリングに拘ったメカチューンのエンジン。

これらを個人で、イチから始めるとしたらどれ位のコストがかかるのか。

NA6という素材を「ここまでやっちゃってもいいんだよ」と示し、クルマを楽しむ”スタイル”の提案だけでなく、メーカー保証までしてしまったという、その心意気にハマってしまったら、もう逃れられません。

実際にM2が”メーカーとして”発売したお陰でマツダがパーツ供給し、フォロワーのモデファイに活かされたことも大きなポイントです。となれば、オリジナルの示した価値は車両販売だけでは無くモデファイのアイテムの提供にまで至ります。

実際に1001を返却し、愛車のNB6に乗り込んだ際気付いたのが「1001はクルマを小さく感じた」です。
ぶっちゃけボディサイズもインテリア寸法ほぼ変わらない筈のロードスターなのですが、エンスージアスティックに演出され、走りのみを本気で楽しめる環境はスペシャルだったのです。NB6のブロロウォーンとノンビリ吹け上がるエンジンで日常に帰ってきたなぁと感じたのでした。

実際、ホンダVTECとかスカイアクティブとか素晴らしいエンジンはもっと存在しているでしょうが、この感覚はロードスター乗りだからこそ判る、筆舌しがたい良さだと思います。

まとまりのない文章で恐縮ですが、現代に蘇ったライトウェイトのベンチマークを体感したという、非日常なロードスターだったのが「M2 1001」。最初はうわべだけのクルマかと思っていましたが、未だにロードスター業界に影響を残しているその実力は納得いくものでした!

当サイトでは、ロードスターオーナーの生の声を記事にする、インタビュー企画を考えています。我こそはという殊勝な方がいらっしゃれば、ご一報いただけるとありがたいです!
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