NBロードスター幌の話 その1(NA幌)

NBロードスター幌の話 その1(NA幌)

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今回はロードスター(オープンカー)のアイデンティティを表すパーツであるコンバーチブルトップ・・・「幌」の話です。

初代NAから4代目NDまで、ロードスター(MX-5)の幌は、クラス世界一の性能を目標にしています。それまでのオープンカー、特に旧ライトウェイトスポーツは雨漏りが当たり前で、バスタオルを持参することが「風情」とされていました。

そのような「自嘲」に満ちた伝統を覆すほどMX-5シリーズの幌は完成度が高く、それ以降の他社オープンカーにまで品質向上のベンチマークとして影響を与えたことは、過言ではありません。


ちなみに開発当初の指示では「オープン状態のデザインを重視して、屋根が閉まればよろしい」とされていたそうですが、そこはマツダエンジニアの執念。既成概念を覆すため、様々な工夫がされていきました。

周知の通りNBロードスターのベースは先代NAロードスター。そこでNAロードスターの「幌」の完成度から紐解いていきましょう。

構造と軽量化


ルーフは軽量化を目標としつつも、積雪強度基準を満たすことと、側面強度も普通車の仕様条件に十分耐える「30kgの荷重でも変形しない」という条件を満たすために、フレーム構造が採用されました。

ヘッダー部は鉄板、ルーフ部は積雪強度に耐えられるパイプ材、シール部分にはウェザーストリップを取り付けるための薄板の鉄板を採用。これらを8節のリンク構造で組み上げます。幌の構造材はリアデッキ内に収まり、トランクスペースを無駄にすることもありません。


また、軽い(気軽な)操作力を演出するために、運転席から手動で開閉可能なロックレバーを採用しています。実際に着座したままの開閉を行うと、幌も自分の身体も破損が怖いですが・・・

世界一を目指した、雨漏れ対策

雨天での放置や通常の走行状態でも「一滴の雨水も漏らさない」という要件を満たす、世界一の耐候性を目標としました。結果、普通車と同じホーステスト(大量の水をかぶせる)をクリア出来るものになっています。


幌材であるトップクロスは耐候性とともに劣化しない「質感」を求め、ドイツのサプライヤーを採用しました。理由は単純で、最も寒い国(北欧)で乗られるオープンカーと「同じ素材」を使用することで、信頼性を得るためです。クロスの素材は綿織布(基布)とPVC(表面)の二重構造で、約1mmの厚さになります。

バックウインドウは軽量化と透明度(&コスト)を担保するためポリ塩化ビニールを採用。こちらも信頼性を確保するため、当時世界一だったスイス製を採用しました。


シール構造も特徴的です。オープンカーはAピラー上端の作りこみが一番難しく、ソフトトップとドアの開閉により「水」の進入方向がばらばらになってしまいます。つまり、この部分の設計が最も苦労したそうです。


実車はこの3箇所の集中する部分に樋(とい)を設け、浸水をコントロールしています。


また、リアデッキからリアフェンダー内にレインレールを設け、左右のショルダー部分に集中させて下に水が抜けていきます。

走り以外には最小限のコストしかかけないイメージがあるロードスターですが、幌はとても贅沢に造られているのです。

オープンはもちろん、クローズでも美しいデザイン


当時は珍しかった、キャビン側から幌が組み込まれていることが特徴です。結合部の無骨なラインが表面に出ない結果、世界でもまれに見る美しいオープンスタイルになりました。オープン時にはベルトライン(ボディ横から隠れる)に収まるからです。

また、バックウィンドがジッパー式でセパレートできるのも、折りたたんだ時に幌の厚さを最小限にするための処置になります。一応、ジッパーを外さなくても幌を畳むことは出来ますが、寒い日などに割れます(※経験しました・・・)。


また、クローズ時にも軽快感をそこなわないというコンセプトで、「チビTシャツ」のように張りのある布材を使うことで、幌自体のプロポーションを担保しています。


初期型では付属品だったブーツカバーですが、こちらにもこだわりがあります。

装着時のシワをなくし、フラット感を出すためにレザー素材で作られており、走行時のバタつきをなくすために、ハードトップ装着時の「シール」となるベルトラインモールに噛ませる構造です。また、内装側は取付けを簡単にするためホックにしています。

バリエーションを見越した生産性


ロードスターはデミオなどと同じ混流生産ラインで組まれるので、組立工数やパーツの簡素化も必要でした。

特徴的なのはレインレールまで含めた一体構造です。これによりアッセンブリー装着が可能になりました。また、パッケージマット(内装)、ベルトラインモール(ブーツ装着部兼ハードトップシール部)も別工程で組まれるので、バリエーション展開にも容易に対応します。


トップクロスのPVCレザーは耐久性が高く汚れに強いことと、水や中性洗剤で汚れを拭く事ができる為、メンテナンス性にも貢献します。経年劣化も想定内なので(当初は5年を見越していたとか)、パーツ単位で容易に交換出来るようにもなっています。

オープンカーの不安要素である「雨漏り」を高いレベルで解消していたことも、ロードスターがヒットした要因のひとつではないでしょうか。次回は更に進化した、NBロードスターの「幌」について触れていきます。

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NBロードスター幌の話 その2(NB幌)

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