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新型ロードスター(NB)のデザイン検討でコンペに勝ち残ったカリフォルニア(MRA)案と広島(MC)案。今回ご紹介するのは、その片翼を担った広島案のご紹介です。
次世代ロードスターのあり方として、ライトウェイト・スポーツカーを作るという信念を持った広島本社のデザインチームは、検討モデルでもNAロードスターのボディサイズを変更することはありませんでした。
「広島案」一次クレイモデル
「ロードスターらしさ」を具体的に表現するためには「ファン、フレンドリー、シンプル」という方向性が示されています。
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そこで本社チームは、リトラクタブルヘッドライト灯火時をNAロードスターの「表情」と捉え、その丸目とハッピースマイルフェイスを受け継ぐ方向で造形を行っていきました。
シンプルなベルトラインはNAロードスター譲りですが、クレイモデルはフロントのリップスポイラーからサイド~リアにかけてキャラクターラインを入れています。ここはNAロードスターでチッピング塗装されていた部分で、同じく腰高に見えないようなデザイン処理になります。
「広島案」二次クレイモデル
二次クレイモデルは下回りの造形もプレーンなものになりました。ロードスターのキャラクターを表すハッピースマイルフェイスのアイコンが、さらに柔らかく表現されています。
ヘッドライトからフロントフェンダーにかけてのキャラクターラインの峰も強調されており、ボンネットのパワーバルジはNAロードスター由来の造形として残されています。
ドアの開口ラインはNAロードスターと比較しても色気のある分割に変更されています。面白いのはサイドシル(ロッカーパネル)部分で、エッジを効かせてたラインを中へ織り込んで、ボディシェイプを強調しています。なお、三角窓がないのはクレイモデルだからかと思われます。
リアビューはまさに「ロードスター」そのものです。バンパーの開口部のアクセントが若干目を引きますが、シルエット全体でみればモデルチェンジしていないのではないか・・・位の印象です。
「広島案」ファイナルクレイモデル
そしてこれが、MRA案と最後まで協議されたファイナルクレイモデルです。今までと大きな違いは、ハッピースマイルフェイスがマツダファミリーフェイス(五角形グリル)になっています。
ウインカーパーツも含めてつくっている「顔」はとても「ファニー」であり、「愛着」の方向により針を振ったデザインであることが分かります。
ただ、バンパーの造形が若干重く、シンプルでライトウェイトなデザインか・・・となると、判断しづらいものがあります。
プロの仕事に偉そうなことはいえませんが、デザインで軽さやスピード感を表現するという点では、対抗するMRA案の方がわかりやすかったかもしれません。
この時代はデザインクリニックも国内外で行われており、広島案は「かなりいい線まで競っていた」という話を貴島さんからお聴きしています。しかし協議を経た結果、MRA案がウィナーとなりました。
丸目案が残したもの
NBロードスターのフルモデルチェンジで一番ネガティブな意見だったのは、リトラクタブルの廃止でした。
ただ、固定ライトになるのは既に決定事項でした。そのうえでこの「丸目案」が採用されていたら・・・NCもNDも現在は「違う顔」になっていたと想像できます。そう考えると、このデザインコンペはロードスターの「特異点」だったのかもしれません。
また、NAロードスター自体も2000年まではデザイン変更は行わないとアナウンスされていました。しかし、モデル継続のために早急な安全対策が迫られ、致し方なくフルモデルチェンジを行なった・・・というエピソードも残っています。なお、2000年のマイナーチェンジでNBロードスターは後期型のフェイスリフトを行いました。
NA8の時代(1994年)からNBロードスターの検討に入り、NBの発表時(1998年)にはNCロードスターの開発が決定していた・・・なんて話もありますが、2023年デビュー予定のNEロードスターデザインは、既にカタチになっているのかもしれませんね。
さておき、そんなロードスターの歴史のひとコマが、この「丸目モデル」の存在です。