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2018年、NBロードスター20周年を迎えた
1989年にデビューしたロードスターは2019年に30周年を迎え、そして次世代にもバトンをつないでいくでしょう。そのようななか、(忘れられがちですが)1998年1月にデビューした第二世代のNBロードスターは、その前年である2018年に【20周年】を迎えていました。
1998年といえば、DOSコンソールがGUI化(ウインドウズ98)され、記録メディアの主力だった2HDフロッピーディスクが大容量CD-ROMに移行し、ISDN回線ではありますが、インターネットが一般化した時代です。
そして現在、これら全ての機能がとてつもない演算能力とともに片手で収まるスマートフォンでまかなえる時代に進化しています。つまり、20年はそれくらいインパクトがある時間です。
なお、今後20年後の未来予想では、第4次産業革命ともいわれるAIや5GといったIOT技術を中心に進化がひろがり、その恩恵を受ける電気自動車や自動運転技術・・・つまりクルマは「道具としての利便性」が加速し、より豊かなヒトの生活を加速させるようです。反面、残念なことに内燃機関パワーユニットの開発中止もカウントダウンに入っているなんて報道も耳にします。
NBロードスターという特異点
思い起こすと、約20年前に現役だったNBロードスターは、名車・ユーノスロードスターの後継車種ではありますが、「MR-S」「S2000」「バルケッタ」「MG-F」「Z3」「ボクスター」とライバルひしめく中で、今では考えられませんが【キープコンセプト】であったことに賛否両論がありました。
しかし、「人馬一体」のコンセプトをブレることなく継承できた事実が、ロードスターの今に繋がる価値に繋がったことは間違いありません。そして、このコンセプトはパワーユニットがモーターに変わっても不変なものになるでしょう。
だからこそ、20周年を迎えたNBロードスターの包括を行うべく、NB・NCロードスターの開発主査をされていた山口東京理科大学の貴島孝雄教授に20周年企画の打診をおこなうと、快諾をしていただけました。そこで前年に続き「ものづくり工房(貴島研究室)」へお邪魔をしてきました。
貴島孝雄氏プロフィール
→ https://mx-5nb.com/2019/12/29/kijima2017-0/
貴島さんかく語りき・・・
主査というのは、いわば会社の社長の様なものだよ。ロードスターという会社を取り仕切り、生産から販売、アスターフォローまですべて行う。だからプランに対する方向性を示したり、会社の承認を取り付ける。
平井さん(※初代ロードスター主査)は全体をみて、何を守って何を捨てるのかという哲学を持ち、理論の裏付けを持って語れる方だった。私がヨー慣性(モーメント)の低減を唱えると「そうじゃのう!」といって、樹脂バンパーを作ってもらおうと(野球の)バットを持って生産技術部門に足を運び、素振りの重さで現場にヨー慣性を体感してもらう。それでキーパーソンを説得してくれた。
フォードから来た方たちはイランことをいってきたけれど、ロードスターを止めろとはいってこなかった。ロードスターは収益率も高いし人気のあるクルマだからね。それがスポーツカーであれば、誰でも自分の実績にしたいわけだ。
ただ、マスタングみたいなクルマでオープンを作れば売れるなんていうから、私が苦労したのはそこだね。その通りにやっていたら、ロードスターは2代目で終わっていたよ。拡大パワーアップの路線そのものだからね。(談)
二律背反の先に価値が生まれる
宮本喜一さんの著書「ロマンとソロバン」にもありますように、脱フォードから世界一を目指してブレイクスルーをした、スカイアクティブ世代からのイメージアップが著しいマツダですが、貴島さんが現役でNB/NCを作っていた頃はフォードアンブレラ(グループ経営)のまっただ中でした。
その状況で「楽しさ」を主眼に置いた「趣味車」をキープコンセプトで継続させた労力は如何なものだったのか。
「二律背反を乗り越えれば、それは価値に繋がる」
これはご本人からいただいた言葉ですが、そんな「エンジニアの葛藤」をNBロードスター20周年企画として、皆様に共有をしたく思います。気が向いたらご一読頂ければ嬉しいです。また、貴重な時間を頂いた貴島教授には、改めて心よりお礼申し上げます。
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