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古いクルマに乗っていると【突然やってくる】トラブルのひとつが電装系です。それが機器の故障であれば交換検討を行う必要がありますが、意外な原因として存在するのが「ヒューズ」の経年劣化による断線。
そこで、10年10万キロ以上走っている愛車のヒューズ状態を確認するとともに、予防整備の交換作業を行っていきます。
そもそも、ヒューズの役割とは
ヒューズ(fuse)の役割は一般的に、定格以上の大電流が生じたときに電気回路を保護するものです。つまり、加熱や発火といった電気火災事故を防止するための電子部品を指します。
通常では電気回路のなかにある導体として機能しているのですが、何らかの異常で「定格以上の電流」が流れると、ジュール熱により内蔵する合金部品が溶断(ようだん)され、回路を保護します。
ちなみに自動車メーカーではヒューズの必要耐久回数を設定しており、供給パーツメーカーはそれ以上の機能と寿命を発揮できる部品を開発、供給しています。すなわち、それなりに放置されても機能できるバッファを備えているのです・・・が、逆にヒューズ切れが起こった際は、何らかの電気的トラブルが発生しているといえます。
また、自動車用のヒューズは規格品となっているので、共通の色で規定アンペアが分かるような設定になっています。ホームセンター等でも購入できる、ありがたい互換パーツですね。
ヒューズ寿命は10年って本当?
ヒューズの「寿命」はざっくり10年といわれますが、実際はクルマの使用頻度(運転日数)により耐久年数は変わってきます。使用電圧、通電時間、使用頻度、耐久性等を総合すると「負荷率」が変わってくるからです(※パーツメーカーから計算式も掲示されています)。
ただ、繰り返し通電が行われる構造上、古くなってくるとヒューズの内部抵抗は変化していきます。なぜなら、ヒューズは熱に対して非常に敏感に出来ているからです。(※自動車用のヒューズにおいて連続通電は70%以下の負荷率が推奨設定といわれています)
電流の発熱に反応して回路がやわらかくなり、「定格以上の電流を流す」と溶けるようになっている構造なので、実は「定格以下の電流」でも構造材は柔らかく変形し、断面積が痩せていきます。断面積=定格電流なので、例えば10Aのヒューズを長く使用しているうちに9A、8A、7A・・・と溶断電流のバッファが低下していくのです。
銅線などの配線材はほとんど変形しないので100年持つとされていますが、ヒューズは定格内の電流でも熱によって変形してしまうので、それが「10年程度が目安」といわれる寿命の根拠になるのです。
NBロードスターのヒューズを確認する
NBロードスターの場合は、エンジンルームと運転席の足元にヒューズボックスが設置されています。※ちなみに、左ハンドルのMiata/MX-5は、右ハンドル仕様と左右対称で設置されています。
ヒューズの指定アンペア(A)や機能は、ボックスの外箱やヒューズボックス自体に記載されています。今回は私の愛車(NB3)の事例として、参考程度に捉えていただければと思います。
なぜなら、同じNBロードスターでも生産時期(世代)によりヒューズ配置が異なります。他のロードスターにお乗りの方が作業検討される際は、実物を確認されることをお勧めします。
エンジンルームのヒューズボックス
エンジンルームのヒューズボックスはボンネットを開けて正面から左側(運転席側)に配置されています。使用されているヒューズは規格品の「平型(大き目のもの)」と、「ヒューズリンク」、そして専用部品のパワートレイン・コントロールモジュールが刺されています。
ちなみにコントロールモジュールは現時点で12万円以上するパーツなので、触らない方がいいでしょう。
表示 | 容量(A) | 保護装置 | 形状 |
HEAD | 40 | ヘッドランプ | ヒューズリンク |
FUEL INJ | 30 | インジェクター フューエルポンプ EGIユニット |
ヒューズリンク |
MAIN | 100 | メインヒューズ | ヒューズリンク |
IG KEY | 60 | ACC イグニッションスイッチ |
ヒューズリンク |
BLOWER | 30 | ブロアモーター | ヒューズリンク |
FAN | 30 | クーリングファン アディショナルファン |
ヒューズリンク |
BTN1 | 30 | フォグランプ 尾灯 |
平型 |
BTN2 | 20 | オーディオ パワードアロック 非常点滅灯 |
平型 |
ABS | 20 | ABS | 平型 |
STOP | 15 | 整備灯 シフトロック |
平型 |
キャビンのヒューズボックス
キャビンのヒューズボックスは運転席足元のカバーを開けると、その奥に配置されています。使用されているヒューズは規格品の「ミニ平型」と「スローブローヒューズ」が刺されています。
ちなみにNB3以降のロードスターにはボックスの上にOBD2(車載故障診断装置)コネクターが設置されています。
表示 | 容量(A) | 保護装置 | 表示 | 容量(A) | 保護装置 | |
WIPER | 20 | ワイパー | TAIL | 15 | 尾灯 イルミネーション |
|
P.WIND | 30 | パワーウインドー | ENGINE | 15 | メインリレー ファンリレー |
|
A/C | 7.5 | エアコンリレー ブロアリレー |
METER | 15 | メーター シフトロック |
|
HAZARD | 10 | 非常点滅灯 方向指示灯 |
TURN | 7.5 | フラッシャユニット | |
D.LOCK | 10 | パワードアロック | A/B | 10 | A/Bユニット ABSユニット |
|
AUDIO | 20 | オーディオ | AD FAN | 20 | アディショナルファン ※1 | |
DEFOG | 15 | リヤウインドー デフォッガー |
SEAT | 20 | シートヒーター ※2 | |
ROOM | 10 | ルームランプ オーディオ |
R.FOG | 10 | リアフォグランプ ※2 | |
CIGER | 20 | シガーライター | HEAD.RH | 15 | ヘッドランプ右 | |
RADIO | 10 | オーディオ 電動ミラー |
HEAD.LH | 15 | ヘッドランプ左 | |
F.FOG | 15 | フォグランプ | 基本形状 ミニ平型 | |||
※1スローブローヒューズ ※2海外仕様のみ |
ロードスターのヒューズ交換をしてみる
ちなみに交換するヒューズはモノタロウでまとめて購入した(超普通の)規格品です。世間一般ではチューニングヒューズも存在するようですが、個人的にはベーシックなもので十分かと思います。ちなみに購入費用は各種ヒューズ+コンタクトスプレー(接点復活剤)で、3,000円もしませんでした。
作業に当たり、大きめのヒューズは指で引き抜くこともできますが、小さいヒューズ(ミニ平型)はボックスにあるヒューズクリップよりも、確実に「まっすぐ引き抜く力」が伝わるラジオペンチで作業することをお勧めします。また、強引に引き抜きボックスが破損すると笑えないので、ボックス本体を抑えながらペンチで引き抜くのが安全でしょう。
エンジンルーム側のヒューズは、そんなに目立つほどの経年劣化は感じませんでした。ただし、ヒューズリンクは目に見えて緑青(ろくしょう:緑錆)っぽいものが発生していました。
ヒューズを外したのち、コネクター部分にコンタクトスプレーを塗布し、新たなヒューズを刺し直して作業完了です。ちなみに100Aのヒューズリンクは見つからなかったので交換は行わず、コンタクトスプレーのみのメンテにしました。でも、このパーツは見た目で分かる劣化が最も少ないパーツでもありました。
また、先にも書きましたがコントロールモジュールは破損が怖いので触りませんでした。
キャビン側のヒューズはアンペア(色)ごとに抜いていき、状態を確認しました・・・が、なんと15Aがひとつ「切れて」いました。まとめて抜いたので、どの箇所が破損していたのか分からなかったのですが、全然気づかずに運転していました・・・ショックです。
また、熱伝導による「焼け」が結構ひどく、このヒューズを磨いて刺し直す勇気はありませんので、まとめて交換を行います。
ちなみにスローブローヒューズは単品販売が少なく、amazonの謎メーカーから購入するのも嫌だったので無交換です。ただ、ボックスに刺し直す前に、コンタクトスプレーを塗布しておきました。
また、ヒューズから電源確保をおこなっているものは、コンタクトスプレーのみの対処を行っています。一ヵ所だけ20Aであるべき場所に15Aの電源ヒューズを刺していた場所は、20Aのものに交換を行っています。
ついでの作業
ついでの作業として、エンジンルームで目に見えるカプラーを外しウエスで汚れをふき取り、コンタクトスプレーを塗布しておきました。
交換後のインプレッション
ヒューズ交換の作業自体はパワーアップをするものではなく、元に戻す作業といえます。したがって、目に見える変化があったかというと、恩恵はプラシーボ程度にしか感じませんでした。
しかし、10年10万キロ以上経ったヒューズは焼けてして、しかも切れていたというだけで、交換後の安心感が違ってきます。また、交換作業の敷居は高くないし、ヒューズ自体も高価なものではないので、可能であれば点検されることをお勧めします。
旧車では定番のメンテナンスということですが、ロードスターも相当ですよね・・・皆様も愛車を可愛がってあげてください。何か参考になれば幸いです。
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