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かつてのユーノス乗りであれば一度は憧れた(と思われる)、ホビーメーカー京商による1/18ビッグスケール・ダイキャストカー「ユーノスロードスター」。
同社は今でこそ高精細なミニカーを提供するブランドとしての地位を確立していますが、古くはR/Cカー(ラジコン)で名を馳せたメーカーでした。90年当時、満を辞してミニカー業界へ参入する足掛かりとして選ばれた一台が、当時大ヒットをしていた「ユーノスロードスター」でした。ミニカーメーカーとしては後発ながら、いきなりハイクオリティなモデルを発表したことからファンの心をがっちり掴み、現在に至ります。
ちなみに当時のラインナップは「クラシックレッド」と「ネオグリーン(Vスペシャル)」があり、海外向けの左ハンドルミアータ仕様も提供されました。国内販売価格は12,000円と(当時としては)結構いい値段だったので、購入のハードルはそこそこあった記憶があります。ある意味で高嶺の花というか、伝説のミニカーだったのです。
もちろん京商もそれを分かっていたようで、後年には付属品やカラーリングの省略を行った廉価版モデルや逆輸入版「マリナーブルー(MX-5ミアータ)」が販売されました。また、ユーノスロードスターのモデル終了時(98年)に、若干異なる仕様の復刻販売も行われました。
1/18 ユーノスロードスター「Vスペシャル」(京商)
私はかつてユーノスの「Vスペシャル」に乗っていたことから、ボーナス時に自分のご褒美と奮発してこのミニカーを購入しました。
大きめなグロスの箱にパッケージされており、店頭では本体が取り出されてディスプレイされていない限り「出来」を確認することができません。「知っている人」しか買わなくていいよ!という潔さと敷居の高さを感じていました・・・
中はこのように格納されており、ミニカー本体、ハードトップ、ハードトップスタンド、そしてダイキャストボディを拭き上げるウエスが付属しています。ちなみに、ハードトップはソフトトップカバーと差替えで装着することが可能です。
今の目で見ると少し甘い造形もありますが、おおむねユーノスロードスターの雰囲気を再現しているのではないでしょうか。
内装が実車よりも明るく見えるのは写真のせいではなく、こういったカラーだからです。手に持つとダイキャストボディのずっしりした重量があり、このミニカーが特別であることを実感できます。
ただ、実車では黒くチッピング塗装されているサイドシルの下端が塗装されていないのが、価格を鑑みると残念なところ。ミニカーとしてそれを行うと「細く」見えすぎてしまうからでしょうか(もちろんコストアップも)。
また、ビッグスケールならではのギミックとして、エンジンルーム再現やリトラクタブルヘッドライトやドアの開閉、さらに・・・
トランクルームも空けることができます。
モケット生地で再現された内装はお洒落ですが、スペアタイヤが無いことや、そもそもVスペシャルのトランクは「黒内装」なので、再現度といったところでは残念なところです。
ハードトップは初期の熱線無として造形されており、オープンカーがカッコいいいクーペになるのは実車と同じです。
ただ、ガラス部分のエッジがだるかったり、後端の取付けラッチが無かったりするのが惜しいところ。また、ソフトトップカバーと差替えでハードトップを取り付けるのですが、キャビンに「畳んだソフトトップ」の造形はないので、リアガラスから覗く車内は幌レス(すかすか・・・)になってしまいます。
価格相応の要望が他にあるとすれば、(無い方がカッコいいとしても)フロントのナンバープレートも脱着式でいいので再現して欲しかったところです。また、ボンネットもトランクも固定されていないので、逆さまにするとぱかっと開いてしまうのも気を使います。現在なら磁石とか仕込まれると思います。
また、このミニカー最大の弱点は、近年のミニカーであれば台座固定できるような(下面のビス穴など)配慮があるのですが、このモデルにはそれが存在しません。したがって、飾る際には固定方法を検討する必要があります。何もしないと角度があればタイヤは転がるし、地震が起きたらすっ飛んでいきます。
まぁ細かいツッコミはさておき、ビッグスケールであることは正義ですし、リトラクタブルのギミックが再現されているロードスターのミニカーは少ないので、それだけでも貴重なことは間違いありません。
今では絶版になっているので若干プレ値が付いていますが、良いところも悪いところもあるので、手元に招くことを検討される方は参考になれば幸いです。
某オークションにてカスカスの状態で再会・・・
ある日、某オークションを徘徊していると、この伝説のミニカーがとても悲惨な状態で出品されていました。説明文によると「パーツ破損があるのでジャンク扱い」となっていますが、それ以上にボディの汚れが気になります。
ちなみに、クラシックレッドのボディでステアリング、シフト、サイドブレーキがナルディウッド(っぽい)造形なのは、ユーノスロードスターの初期からショップオプションで用意されていたので解釈の間違いではありません。むしろ、このミニカーが京商の初期ロット仕様である証でもあります。
なんだかんだいっても伝説のミニカーなので手元にあって困りませんし、破損したパーツは作ればいいのです。そんなわけで、驚くべき格安で無事落札して我が家にお招きしました。
京商のロードスターを分解する
手元に届いたロードスターはずっしり重く、そして大きいことに改めて感動できました・・・が、やはり汚い。
びっしりと全体に汚れ(一部油っぽい・・・)が付着しています。エアダスターで何とかなるレベルではありませんでしたが、ヤニ臭さが無かったことは幸いでした。そこで、可能な限り分解そて洗浄をすることにしました。
分解自体は単純で、ボディ下面にあるビスを可能な限り外していけばオッケーです。
このミニカーはビッグスケールであることを活かして、可能な限りパワープラントフレームなどの「ボディ下側」も再現されています。しかし、ブレーキディスクやサスペンション、ダブルウィッシュボーン上側のアームなど、見えないところは省略されていました。
接着されているところは見極めて、パーツオープナーを用いて外していきます。
熱で潰して固定されていたステアリング連動機構のピンはカットし、リアのサブフレームにあったネジはドライブシャフトを曲げて外しました。もともと、どう組まれていたのかが気になります・・・
パーツを分解していくと、ボンネットの裏まで埃でびっしりでテンションはがた落ちしました・・・また、ドアの開閉機構のネジはなめそうだったのでいじりませんでした。
面白かったのはタイヤで、ホイール再現はもちろんユーノスロードスター専用タイヤ「SF325」の刻印がされていました。
可能な限り分解したパーツたちを・・・
がっつり水洗いして乾燥させて、なくさないように小分けにしておきます。
ちなみにソフトトップカバーとシートはゴムっぽい材質で出来ていましたが、加水分解(べたべた)していなかったので助かりました。
汚れを落とす&あえて汚す
見えない部分ではありますが、造形されているこれらのパーツが奇麗すぎると思い、折角なのでタミヤのウェザリングマスターで煤汚れや焼けなど「金属っぽい質感」を乗せていきました。
このままだと「汚れ」が定着しないので、一通り作業を終えたらGSIクレオスの艶消しスプレーでトップコートを行います。また、色の足りなかったリアデフやエンジンの下廻り(ベルト類)やシャフトのブーツも塗装をしておきました。マフラーテールの穴も深く・薄く開口して煤汚れを描き込みました。
折角B6エンジンも再現しているので仮組すると、面白い形に仕上がりました。飾るだけじゃなくて、分解しても楽しいミニカーって面白いですね。
ボディは4段階の処理を行います。
まずは模型用コンパウンドの「粗目」と「細目」で丁寧に磨き上げていきます。トランクとボディの艶の差が分かるでしょうか?
大分マシになってきたところで、仕上げに「自動車用コンパウンド8000番」で磨き上げていきました。これはダイキャストの塗装がしっかりしていたからできた荒業です。最初の状態からは驚くくらいピカピカになってくれました。
ちなみにボディと車台の接続は、フロントバンパー裏(ラジエターの造形に隠れている)ネジで留まっています。ここは何度も回すとなめてしまうので注意です。
塗装はそれなりに「欠け」もあったので、エナメルのグロスレッドでリタッチをおこないました。こういう時に先が細い筆が便利ですが、用意できない場合は爪楊枝等でもOKでしょう。また、コンパウンドで消えてしまったドアハンドルなど「銀」の部分もリタッチしています。
折角なので、このモデルの弱点である台座固定を行います。
とはいっても大層なことはせず、100円ショップで購入してきた強力なネオジム磁石を利用しました。ボディ下部に瞬間接着剤とUVレジンで磁石を固定して、台座の裏から磁石で張り付けます。けっこうな重量のミニカーですが、それなりにがっつり固定できます。
ちなみに、台座もカーボンシートも100円ショップで手に入れることができました。
最後に、ホコリ防止や艶の保護のためにタミヤの「モデリングワックス」で塗面の保護を行います。これ、本当にヌルヌルボディになるのでミニカーのコンディション維持にお勧めです。
1/18 ユーノスロードスター(協商)レストア終了
そんな訳で、カスカスだったユーノスロードスターを何とかここまで持ち直すことができました。細かいツッコミどころはあれども、ビッグスケールが手元にある満足度は高いです。
リアビューのアンテナ部分は改めて描き込んでいます。テールランプは実車の方がもっとキュートな気がしますね。
もちろんドアを開けることもできます。ヒンジが目立っているので、黒塗装をすればよかったかなぁ・・・スカッフプレート等、まだまだ造り込みできるところはありそうですね。
エンジンルームは艶消しになるだけで、それっぽい雰囲気がでてきます。ここもパイピング等、もっとできることはありそうです。改めてSF325のタイヤパターンが可愛いです。
そんな訳で、伝説のミニカー、1/18「ユーノスロードスター」レストアでした。
このミニカーが面白いのは、繰り返しますが「重さ」と「大きさ」に圧倒されることです。また、リアデフがツルツルではなかったのでモデルにされたのは極初期型ではないんだなぁ・・・とか、色々考察する楽しみもあります。ともあれ、カスカスに汚れていたミニカーが奇麗になって良かったと思います。
なお、こんな苦労はせずとも近年京商から1/18「ユーノスロードスター」が新ブランド(SAMURAI)で発売されています。こちら、リトラクタブルの開閉はありませんがビッグスケールならではの正義があるので、早めに手に入れることをお勧めします。私は・・・NBロードスターだったら買ったかなぁ。
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