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人類の英知のひとつとして誕生して約100年、自動車は革命的な移動手段として生活に密着しています。一般層にまで普及した用途は多岐にわたり、運転そのものを楽しむために「スポーツカー」というジャンルのクルマが生まれました。
もちろんわれらがロードスターも、その中の一台です。しかし、ドライビングプレジャーに振ったことで、失ったものや叶わないものが存在します。小難しく書きましたが、要するに一般的なクルマと比較して不便に感じる点があるのです。
スポーツカーは「不便も楽しむ」という考え方もありますが、あえて今回はロードスターの不便な点、困る点(と思われる部分)を書き上げていきます。今乗ってる方は「そんなことないけどなぁ」と思うこともあるでしょうが、客観的にものを見る参考になれば幸いです。
ロードスターの使い勝手で困る事
二人しか乗れない
当たり前ですが、二人しか乗れないので複数人の移動・・・友人や家族たちとの行楽やショッピングにはあまり向いていません。「そういうものだ」と割り切れば、自分のファーストカーとして何とかなりますが、家族共有のファーストカーにはならない(むしろ、したくない・・・)存在であることを認識された方がいいかも知れません。
リクライニングしない
キャビンは適度なタイトさであり、決して窮屈ではありませんが、シートの裏にはリアバルクヘッド(隔壁)があるので絶望的にリクライニングしません。ドライビングポジションの調整をする余地くらいはありますが・・・睡魔に襲われて休憩しようものなら、目が覚めた時に身体がカチコチにこわばってしまいます。ロードスター乗りなら慣れてしまうのでリフレッシュ可能ですが、助手席の方がロードスターに慣れていなければ、申し訳ない気分になってしまいます。(休憩所に行く口実になるかも知れませんけどね・・・)
車内が汚れる
自然と一体になるオープンカーは最高ですが、逆に遮蔽するものがないことにより、チリや埃などで意外に車内が汚れます。一応、雨が溜まっても水抜きはできるし、濡れても大丈夫なシートになっていますが、ほっておくと謎の汚れが蓄積されていくので、定期的に車内を清掃する必要があります。
オープンカーはインテリアも見所なので、汚れているとカッコ悪いのです。桜や落ち葉の舞い散る中オープンで駆け抜けるのは楽しいけれど、花びらや落ち葉をそのままにしていると、最悪虫が湧きます・・・
また、オープンドライブは何気に顔が汚れるので、自分は気にならなくともフェイスシート(顔を拭くアイテム)を用意してあると、パッセンジャーに喜ばれます。
視界が狭い
幌を上げれば全て解決しますが、閉じていると意外に前方視界が限定されます。特に交差点で最前列になった際は、位置の高い信号は首を傾げなければ確認できません。また、Aピラーが立っているからなのか、サンバイザーの遮光が機能しないことも・・・オープンでなくとも、サングラスが欲しくなる時があります。コンパクトな車体なので死角は少ないですが、ラフな運転をするとボディをするので注意です。
荷物が乗らない
オープンカーにしてはトランクルーム容量にこだわっているので、買い物や二人分の旅行鞄+お土産くらいの積載量は備えています。ただ、組み立て式の棚など「たまに運びたい大物」は厳しいです。また、サーキット用ホイールセットの積載は絶望的なので、最初から履いておく必要があります。
屋根を空ければいくらでも荷物が乗る・・・と思われるかもしれませんが、道路交通法では高さ3.8m規制がありますし、車体からはみ出てしまうとルール的にも重量配分的にも危険です。
ロードスターでそれなりに困る事
燃費はそこそこ
スポーツカーにしては燃費がいい方ではありますが、一般車の燃費で20km/Lを超える時代に、B型エンジンであれば10km/L前後、MZRエンジンであれば13km/l前後、スカイアクティブならもっとマシ・・・くらいです。特にNB8後期型からはハイオク指定になっているので、給油ごとにいい金額のレシートの明細を見ることになります。走りに特化したクルマですし、金額以上の楽しさがあると思う一方で、昨今のエネルギー価格上昇はしんどいですよね。
なお、NB3以前までは燃料警告灯が無いので、エンプティはメーター読みで「ヤバそう」という感覚で給油判断することになります。
想定外の維持費がかかる
パーツの経年劣化は普通のクルマと代わりませんが、「幌」が消耗品であることを忘れてはいけません。幸いパーツ欠品になってはいませんし、アフターパーツでカラフルな選択する楽しみもありますが、交換となると10万円以上の出費を覚悟しておかなければなりません。長く乗ると決めている場合は、幌交換の費用を念頭に入れておく必要があります。ちなみに、交換の際は幌だけでなく周りのパーツ(モールやレインレール)も含めたリフレッシュが最適です。
また、中古購入された場合は、前オーナーによるモデファイの痕跡があります。それが気に入っていれば問題ありませんが、戻そうとすると地味にコストがかかります。「走り」に関するパーツは欠品が少ない(もしくは代替品がある)のですが、細かいところが廃版になっていたり、オークションでプレ値が付いているのも歯がゆいところです。
防犯性能が低い
オープンカーが珍しかった30年前はたばこの吸い殻を投げこまれる悪戯があったそうですが、そうでなくとも幌はこうもり傘のような素材なので、カッターで容易に破くことが可能です。ND幌の天板はアルミシェルが格納されていても、Cピラー部分(折りたたまれる箇所)が弱点であることは変わりません。
国産車では珍しい車内ストレージ(グローブボックスなど)に鍵が付いているので貴重品をかくまうことも可能ですが、ツーリングの際の一時しのぎと考えたほうが安全です。
また、NA/NBロードスターの構造はシンプルなので、超簡単にピッキングされるリスクもあります。割り切って、出先ではオープンで放置しておいた方が、逆に人が寄ってこない気がします。
幸い、ロードスターは海外流通が多いことから盗難被害が少ないことでしょうか。また、ハードトップモデルにすればこれらの問題は解決できたりします。
今時の装備がない
基本的に「走り」に関するメカニズムに妥協はないクルマですが、時代と共に装備は変わっていきます。
一部の旧グレードにおけるパワステ・エアコン・パワーウインドウレス(ぐるぐるハンドル)は仕様と割り切れますが、NB後期までは燃料警告灯もキーレスエントリーもありませんでした。ただ、無ければ無いで旧車の「味」と捉えれば問題ありません。
また、古いロードスターであればあるほど安全装備がありません。カップホルダーやエアバッグはNB以降、ABS、ロールバー、DSCはNC以降、自動ブレーキはND中期以降など、世代が進むごとに架装が進んでいきます。
自分に必要ないよ!と思われるスポーツカー乗りは多いかも知れませんが、助手席に座る人や家族が運転することを考えると、心配になる人は多いのではないでしょうか。古いクルマには相応のリスクがあることを知っておいて損はありません。
ロードスターならではの困る事
車高が低い
純正車高なら輪留めでバンパーを擦らないと思われるかもしれませんが、若干でもスロープがあれば余裕で「ジャリッ」といきます。また、短いホイールベースは段差の大きな場所・登攀角度によっては慎重にならないと腹をこすります。
ただ、基本的に擦っているのは補強ブレースバーなので、走行性能にいきなり支障をきたすことは少ないですが、防錆塗装が剥げてしまうので定期的にケアをする必要があります。更に車高を下げるとすれば、いわずもがなです。
また、近年のSUVやトールワゴンは「座高」が高くなったからかヘッドライトの位置も高く、夜間は彼らのロービームが眩しいんです・・・
騒音はそれなりにある
一定以上のボディ剛性は担保されていますが「剛性感」は明らかに車体のコンディションで左右されます。
極端な話、グローブボックスに転がるものが入っていればカタカタなりますし、足周りがヘタっていればギシギシ鳴るし、特にNA/NBロードスターは窓ガラスの支点がヘタると横でブルブル鳴っているので、対策した方が気持ちよく運転できます(意外に幌はビシッとしている)。
また、ボディを軽くするために遮音材は少な目であり、ロードノイズは相当あります。高速巡行時のオーディオ音量や声量は大きめがデフォルトです。特に段差のギャップで起こるスカットルシェイク(ガタタン・ブルルン)を味とみるか、不安と感じるかは人により違うでしょう。
これらはハードトップを付ければある程度緩和されますが、今度は一定速度以上で風切り音が鳴ります。ただ、どれもボディ剛性不足よりはNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の範疇なので、対策を楽しむという考え方に切り替えたほうがいいかも知れません。経年劣化で錆びたりボロくなっているのはどうしようもありませんが・・・
意外と見逃しがちなのはマフラーサウンド。ノーマルでも結構いい音がしますので、住宅地で吹かすと近所迷惑になるので注意です。
知らない人に挨拶される
人によっては嬉しいことではありますし、観光地では気が乗っているので問題ないかも知れませんが・・・近年は対向車線のロードスターが手を振ってくることがあり、シャイな人はこれがキツいと思われます・・・目をそらして(見なかったことにする)スルーすればいいのですが、ノリの悪さというか、妙な罪悪感が残ります。
また、駐車場で知らない人から声かけられたり、ミーティング等でノリが合わない人(マウント取ってきたり、自分の話しかしなかったり)に会うかもしれません。誰もが陽キャラではないですし、こっちの気分が乗らないときは、スルーする必要も時があります。
価値観は人それぞれなので、受け入れるも受け入れないも自分次第なんですけどね・・・
敷居が高いと感じることがある
シリーズとしては約30年以上、ライトウェイトスポーツとしてはそれ以上の歴史を積んできたクルマなので、さまざまな情報が溢れています。メーカー発信はもちろん専門ショップやメディア記事など、基本的に調べれば何かを「知ること」はできます。特にインターネットではファンもアンチもいるので、何が真実かを見極める必要があります。
良いも悪いも「そういうものだ」というトーンが意外に多く、自分でノイズの取捨選択をする必要があり・・・めんどくさいなぁと思うことも事実です。もちろん、当サイトのうんちくなんて全く知らなくてもロードスターは十分に楽しいので、ご安心ください。
運転が上手くなったと過信する
床までアクセルを踏んでエンジンを使い切る楽しさ(=パワーはそこそこ)も、ニュートラルステアでシャープなハンドリングもロードスターの真骨頂ですが、イメージ通りに走れる弊害で自分の運転が上手くなったと過信してしまうことがあります。
ロードスターはある程度のマージンを許容してくれますが、少しでもラフに扱うと持ち前の反応の良さから想定外の挙動が生まれます。になります。また、ロードスターのノリそのままで他のクルマを運転することも危険です。じゃじゃ馬FFのトルクステアで曲がれなくて畑に突っ込んだりするので(私です・・・)、丁寧な運転を心掛けましょう。
ちなみに、サーキットユースでもない限りパワーに困ることはそうそう無いでしょう。
それ以上に「乗って楽しい」
つらつらと文句を書いていきましたが(心苦しかった・・・)、それで大きく困っているかというと、それ以上に「好き」が勝るのがロードスターです。不便であってもそれが分かっていれば問題はなく、冒頭にも書きましたがこれらのネガティブポイントを含めて楽しむことが、ロードスターと長く付き合う秘訣かも知れません。
実際、一過性の人気であればすぐに廃れてしまいますが、30年以上愛されている理由はあるはずで、決して速くはりませんが「人馬一体(=乗って楽しい)」をしっかり経験
できるのがロードスターです。
少しでも興味があれば、どの世代のロードスターでもいいので運転してみることをお勧めします。可能であれば、長い時間の試乗で・・・「運転が上手くなった気がする」はまさにドライビングプレジャーが体験できますよ!
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