NBロードスターはやめておけ(お勧めできません)

NBロードスターはやめておけ(お勧めできません)

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もし、快適な自動車趣味を求めているのであれば、あるいは昨今のネオクラシックブームに乗って「比較的安価なスポーツカーだから」なんて理由でNBロードスターを検討している方がいれば、私は「やめたほうがいい」とお伝えしなければなりません。

これは意地悪で書いているのではありません。むしろ、未来のオーナーさんの身に降りかかるであろう物理的、経済的、精神的な負担を、定量的なファクトに基づいて予言をさせていただきます。

マツダがかつて生み出したこのライトウェイトスポーツカーは、現代の自動車工学における基準や、現代人のライフスタイルに照らし合わせたとき、少しだけ「欠陥」ともいえる特性を抱えています。今回はNBロードスターに踏み出す前の心構えとして、あえて不都合な真実を紹介するトピックです。

注)私はNB乗りなので、あくまでNBロードスターを軸にした内容としていますが、別の旧車やネオクラシックに置き換えても、近しい内容になるかも知れません

ブルブル、ゆるゆる・・・振動がある(NVH)

現代の自動車開発において重要視される要素の一つに「NVH(Noise, Vibration, Harshness)」があります。騒音、振動、そして路面からの突き上げ。これらをいかに遮断し、乗員を外界から隔離するかが快適性の指標になっているのです。しかし、NBロードスターはこの指標において現在の目線では、けっこう厳しい素性を持っています。


「Noise(騒音)」

幌(ソフトトップ)という素材は物理的に「遮音」が不可能です。風切り音、それに伴うバタつき、隣のトラックが放つディーゼルノイズ、タイヤが路面を叩くパターンノイズ。これらが減衰されることなく、コックピットに座る人間の鼓膜を振動させます。高速道路を100km/hで巡航する際の車内騒音レベルは、一般的な現代車が60dB台(普通の会話レベル)であるのに対し、NBロードスターは平気で70dB〜80dB(地下鉄の車内やピアノの演奏レベル)に達します。これは「うるさい」ではなく、長時間の曝露(ばくろ)により疲労を招くレベルです。

「Vibration(振動)」と「Harshness(突き上げ)」

NBの設計年次は90年代のもの。オープンカーとしてのボディ剛性に問題はありませんが、剛性感の観点では現代の軽自動車以下です。特にスカットルシェイクと呼ばれる、オープンボディ特有の「ブルブルと震える現象(振動)」は、どれだけ補強を入れても完全には消えません。

路面のアンジュレーション(うねり)を通過するたび、または一定以上の速度域に達した際に、ステアリングシャフトやシートの座面を通じて20Hz〜50Hzの不快な振動があなたの身体を揺さぶります。また、ショートホイールベースにより直進安定性も若干の不安が・・・手に汗握る高速域でガタン(ブルブル)は正直ハラハラします。これは医学的にも、長時間の運転において腰痛や内臓疲労を引き起こす要因となり得ます。

助手席との会話は怒鳴り声になり、音楽はロードノイズにかき消され、目的地に着く頃には疲労困憊(こんぱい)が待っているかもしれません。この苦行にお金を払う覚悟はありますか?

安全性のリスク(衝突エネルギー)


物理法則において、運動エネルギーは質量と速度の二乗に比例します。現代のSUVやミニバンは、平気で車両重量が1.5トン、もしくは2トンを超えるものまで。対してNBロードスターは約1トン。仮に、交差点で現代の重量級車両と衝突(非弾性衝突)した場合、運動量保存の法則により、軽いロードスター側が弾き飛ばされ、より大きな加速度(G)を被ることになります。

NBロードスターの基本設計は90年代のものです。キャビンを守るための鋼板は存在すれど、サイドエアバッグはないし、ロールバーも標準装備ではありません。ドアの厚みは見た目以上にありますが、それでも側面衝突に対する物理的なクラッフルゾーン(潰れ代)は現在の目線では圧倒的に不足しています。

現代のクルマが「乗員を守る要塞」だとすれば、正統ライトウェイトスポーツであるNBロードスターは、軽さと引き換えに「薄い鉄板を隔てて生身で走っている」に等しい状態です。パッシブセーフティ(衝突安全)の観点からいえば、確率論的なリスクを許容することと同義です。もし、家族を乗せるクルマとしてみた際に、そのリスクに対する許容度は適正でしょうか?

維持費という名の底なし沼


熱力学第二法則・・・エントロピー増大の法則は、宇宙の万物に適用されます。形あるものは崩れ、秩序あるものは無秩序へと向かう。生産終了から20年以上経ったNBロードスターにももちろん、その法則が適用されます。

車体を構成する数千点のゴム部品、樹脂部品は加水分解と熱硬化により基本的には寿命を迎えています。「調子が良い」と思っている個体であっても、メンテナンスがされていない状態ではあくまで「動いている」だけであり、「設計通りの性能が出ている」わけではないでしょう。昨日は調子良かった気がしても、経年劣化によりいきなりぶっ壊れるのは日常茶飯事です。

サスペンションブッシュ → 硬化し、サスペンションのジオメトリー変化を阻害、あるいはガタを生む
冷却水ホース → 内側から腐食、ある日突然破裂してオーバーヒートを招く
電装系 → コンデンサーの液漏れ、ハンダのクラックによるECUの突然死
ボディの錆 → たとえばサイドシル(ロッカーパネル)の内部では、水抜き穴の詰まりにより、見えない場所から鉄が酸化鉄(錆)へ還元され、強度が失われていく

これらを「新車に近い状態」に戻す(レストア)には、車両価格とは別に相応のコストがかかります。しかも、これは「改造」ではなく、単なる「修理」です。つまり、マイナスをゼロに戻す作業であるならば、経済合理性(ROI)の観点からいけば、これほど非効率な投資案件はありません。もちろん燃費は言わずもがな。現行車両の半分ほどしかありません。

スポーツカーなのに「遅い」


カタログスペックにおいて1.8Lエンジンで145馬力(後期160馬力)、1.6Lエンジンで125馬力・・・しかも、カタログ通りのパワーが出ているかは怪しい状態です。現代では2.0Lクラスのミニバンでもこれ以上の数値を叩き出しますし、最新のダウンサイジングターボを積んだコンパクトカーの方が、低回転からのトルクバンドが厚く、シグナルダッシュではATのキックダウンに負けるでしょう。

絶対的な「速さ」を求めるなら、同じ時代のクルマであればホンダやスバルの方が絶対にお買い得なはず。NBロードスターのエンジン(B6/BP型)は、トラック由来の実用エンジンベースによる鋳鉄ブロックであり、ホンダVTECのようなドラマチックな高回転の伸びもなければ、ロータリーのような滑らかさもありません。4000回転を超えるとノイズと振動が増し、必死に回っている感じが伝わってきます。

高速道路の追い越し車線で最新のSUVやミニバンにパッシングされる屈辱。登り坂で軽自動車のターボモデルに煽られる悲しみ。サーキットは言わずもがな・・・ハンドリング勝負になる「下り坂」ならまだしも、パワーが前提となるステージならば「スポーツカーに乗っている」自負心は、現実の前に崩れ去るかもしれません。

それでも、なぜNBに乗るのか


ここまで私はNBロードスターのネガティブな側面を、なるべく客観的な視点から書き連ねてきました。

うるさく、振動し、危険で、金食い虫で、決して速くはないクルマ。論理的に考えれば購入する理由は1ミリもありません。「やめておけ」といわれて、「そうだよね・・・」と納得できるのであれば、賢明な判断です。他の素晴らしいクルマを選び、快適で安全なカーライフを送ることができるでしょう!

しかし、もし、ここまで読んでもなお「だからこそNBロードスターに乗りたい」思われていたら、あるいは、これら全ての欠点を「欠点」としてではなく、「機械との対話」として楽しめる準備ができているならば。ここからはロジックではなくエモーショナルな観点での例を書きましょう。なぜ、全ての欠点が「魅力」といえるのか。


NVHは「情報」である

遮音材の少なさは、タイヤがアスファルトを掴む音を、エンジンの脈動を、デフの唸りをダイレクトにドライバーへ伝えます。振動は、路面のμ(摩擦係数)の変化を掌に伝えます。現代のクルマがフィルターで濾過して捨ててしまった「雑音」のなかにこそ、ドライバーがクルマをコントロールするために必要な、純粋な「情報」が詰まっているといえるでしょう。

剛性感のなさは「しなやかさ」

ガチガチに固められたボディは、タイヤの限界を超えた瞬間に破綻します。しかし、NBの緩いボディはコーナーで適度によじれ、その「たわみ」がサスペンションの一部として機能します。限界領域が広く、穏やかで、クルマ全体が「今、曲がっているぞ!」と全身で表現してくれる。だからこそ限界まで攻め込める。その瞬間を我々は「人馬一体」と呼びます。

遅さは「使い切れる快感」

公道で300馬力のクルマでアクセル全開にすれば3秒で免許が飛ぶでしょう。しかし、たかだか100馬力ちょっとのNBロードスターであればシグナルダッシュでも、ワインディングでも、気兼ねなくエンジンをレッドゾーンまで回し切り、マニュアルトランスミッションであればパワーバンドを維持する喜びも味わえます。速いクルマに「乗せられている」のではなく、自分の技量でクルマを「走らせている」という実感。絶対的な速度ではなく、体感速度と操作密度におけるカタルシスがそこには存在します。

手がかかることによる「愛着性能」

自分の手で、時には仲間やプロの手を借りてでも、一つ一つの部品をリフレッシュしていく過程。それは単なる修理ではなく、自分だけのロードスターを作り上げる物語です。キーを捻り、クランキング音を聞いただけで「今日の機嫌」が分かるようになる。

純正部品供給は厳しくなっていますが、腐っても世界で約30万台(国内3万台)売れたクルマ、コストに目をつぶればまだ何とかなります。そんなトラブルを金銭的なコストから時間コストに置き換えて、代替案をアイデアで乗り切るもよし。それこそ機械製品がまるで生き物のようなパートナーへと昇華する瞬間といえるでしょう。付き合ってきた時間の分だけ愛着が育まれる。オーナーだけが味わえる特権といえるでしょう。

つまり「不便」を愛せるか


ロードスターのような趣味車、とりわけネオラシックを所有することは、現代社会が捨て去った「不便の中にある豊かさ」を自らの意思で選択する、そんな生き方を表明するようなものです。

夏は暑く、冬は寒く、雨漏りに怯え、異音に耳を澄ませる日々。それらの苦労を、たった一度の「とびきりのコーナリング」が、あるいは「夕暮れのオープンエア」が帳消しにして、お釣りがくるほど感動させてくれるでしょう。その瞬間のために、論理も、経済合理性も、快適性も、すべてをドブに捨てることができる狂気。その狂気を持った人間が、NBロードスターのようなネオクラシックのシートに座る資格を持つのです。

だから私はもう一度書きます。苦労が嫌ならやめたほうがいい・・・

それでも、あなたがもしこの「泥沼」に自ら足を踏み入れたいと願う変態(もちろん、最上級の褒め言葉です)であるならば。我々は両手を広げて、あなたを歓迎するでしょう。ようこそ!終わりのない、しかし最高に幸せなロードスターの世界へ。

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NBロードスター実態調査2025②「NBの悩み」

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