NCロードスター(NCEC2型)試乗記

NCロードスター(NCEC2型)試乗記

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先日NDロードスターをお借りした際、自分の了見の狭さを実感しました。そうなると、やはり歴代ロードスターを体験しなければ、なかなか見えてこないものもあります。そこでNCロードスター乗りの友人にお願いすると快諾を頂けました。

また、私自身はNB6(NA6とNB8後期も乗っていました)のオーナーなので、その前提でのインプレッションになります。あくまで私見ではありますが、様々なステージを走ってきたのでレポートをさせていただきます。

MAZDA ROADSTER(NCEC)RS
車格: オープン 乗車定員: 2名
全長×全幅×全高: 4020×1720×1245mm 重量: 1,120kg
ホイールベース: 2,330 mm トランスミッション: 6MT
ブレーキ: ベンチレーテッドディスク/ディスク タイヤ: 205/45R17 84W
エンジン型式: LF-VE[RS] 1998cc 種類: 水冷直列4気筒DOHC
出力: 170ps(125kW)/7000rpm 燃費(10・15モード) 13.0km/l
トルク: 19.3kg・m(189N・m)/5000rpm 燃料 無鉛プレミアムガソリン

お借りしたNCロードスターの概要


先ずはお借りしたNC2のざっくりしたスペックです。グレードは幌RSのレザーパッケージ。2リッター170馬力のNC型中期モデル(通称NC2)で、前期モデルからはフェイスリフトやエンジンチューニングが行われました。ボディカラーは専用色の「サンフラワーイエロー」。

オーナーの主なリファイン項目としては足周りの剛性を高めるニーレックスの「ナックルサポート」と、オートエグゼの「貴島スペック」サスペンションキット、そして16インチにインチダウンを行っています。

NCロードスター 速すぎる?


走りの第一印象はやはり「速くてビビる」です。普段125馬力のB6エンジンを駆る私としては、いつものアクセル感覚だとめっちゃ速度が出てしまいます。エンジン特性を並べてみると、私のNBは(初代ロードスターをほぼ変わらない)B6エンジンなのですが、NC2のMZRエンジンは出だしから最後までトルクフルな特性で、しかも後期型だから上まで使い切れます。(※ちなみに図中のJPN AはS2000)

電動スロットルに関しては賛否両論らしいですが、正直私は全く違和感ありませんでした。むしろ、後からスペックを調べて気づくくらいのオンオフをなめらかに拾うフィーリング。

トランスミッションはクロスレシオの恩恵もあり、繰り返しますが全領域でトルクフルかつカチリと決まります。お約束の2速でダブルクラッチなんてもはや過去の話、でも個人的には6速はいらないかな。感覚的にはNBの街乗り3,000回転シフトアップが、だいたい2,200回転で(吹け上がりも含め)同じペースになりました。

NDロードスターは「踏み込むと速い」ですが、NCは「気づかず速い」です!ここは排気量の差によるキャラの違いでしょう。(NDに2リッターを求める気持ちもわかります・・・!)

ボディが大きい?スペック比較


ここでスペックを比較してみます。パワーウェイトレシオでみると、NB後期RSとほぼ同じ(NC後期は6.6)で、NCはボディサイズが拡大したとよくいわれますが、NBと比較しても車両感覚に変化はなく、ぶっちゃけ幅は全く気になりません。見た目は大きく見えるのですが、走らせるとコンパクトであることがわかります。

ちなみに車重に関してはNB8後期RSはABSを付けると1090kgなので、NC2との重量差は20Kg(※NCはABS標準装備)、子供ひとり分くらいのウェイトは、パワーで十分(以上)補っています。

車幅に伴いキャビンスペースもボディ拡大(NB比+40mm)の分だけ相対して広くなっていますが、その分の恩恵は衝突安全基準の確保(サイドエアバッグ)と同時にラゲッジスペースに生かされています。NBはマイナーチェンジでどうしてもサイドエアバッグが積めず、モデル廃止になった要因の一つにもなっています。

なにげに4本のドリンクを置けるのは素晴らしい!また、あまり語られることが少ないのですがNDと同じく片手で車内から幌を開閉できます。

すごく意外だったのはオプション装備の「サウンドエンハーサー(※RSには標準)」がめっちゃいい仕事をします。重量増になるユニットなので正直いらないのでは・・・と思っていたのですが、3,000回転あたりから「音の演出」が入り、ノーマル給排気でも十分に気分を盛り上げてくれます。バルクヘッドに1気筒分押し込められているエンジンも、変質的ともいえるマスの集中化へのコダワリを感じ、オーナーシップをくすぐりましょう。

さまざまな走りのステージにて


街乗りに関しては言わずもがな。2,000回転とちょっとでNB6と同じ軽快さなのが非常に複雑な気分でしたが、高速走行の安定性たるや笑っちゃいます。結構な速度でオープンにしていても風の巻き込みは適度で、かつオーディオの音や横の人間との会話も成り立ちます。しかも、ホイールベースが伸びた恩恵か真っ直ぐ安定して走ります!NDは慣れるまで若干違和感があったし、NBは・・・(←100km/hまでは安定)。

では、ワインディングの感覚はいかがなものかと走り込みますと(足周りとタイヤが良かった可能性もありますが)間違いなく”いつもの”感覚+αで破綻なく走り抜けます。コーナーリングスピードは目視で10%以上速く行けました。

余りにも踏ん張るので、けっこうイジメてみたのですが私の走りでは限界にまで行きませんでした・・・ちなみに、90度ターン(信号交差点)でNDは若干尻がブレイクしたのですが、NC2の恐ろしい安定ぶり!

ブレーキがまたいい仕事をするんです。微妙なタッチも読み取るし、ガツンと踏んでも余程でなければABSが効くこともありません。ちなみにNBに乗り直したとき、いつもは気にならないNR-Aブレーキが甘いと感じました・・・ただ、ホイールベース延長のせいか、NBの感覚では転回に切り返しが必要でした。違和感があったのはそこだけです。

思わず声を出してしまう


何よりも一番衝撃を受けたのは、速さにビビリながら走っていたのは最初の10分ほど。そのあとふと気づくのですが、身体に「馴染んでいる」のです!ちなみに実燃費はリッター13。あれだけ回して、NBよりもあっさり高スコアでショックを受けました・・・

速度領域も、エンジン特性も、間違いなく向上しているのに、このハンドリングは自分がよく知っている「ロードスター」そのものです。これは、本当に乗ってみなければわからない感覚かもしれません!iPhone6Plusに、いつの間にか慣れている感じに近いかも!

自然に”いつもの”運転間隔・車両感覚になっており、しかも速く走れるので、本当に笑顔になって「凄い!」と、声を出してしまいました。ND型が新世代のロードスターならば、NC型はまさに慣れ親しんだ”貴島”ロードスターです。特にNBに乗っている人であれば、ものの数分でいつもの感覚が蘇るはず。これって凄いことじゃ無いですか!?

なぜネガティブな評価が?


では、なぜネガティブ(?)な評価が多い気がするのか。それは「重さ」の感覚への意見が多い気がします。実際のスペックでは先代からの重量増を鑑みると、下手なエアロの付いているNA/NBより余程軽いのです。

しかしオーバルデザイン(樽型の体型)は角度によって太ましく見えるのは事実です。特に、クオータービュー(斜め)は車体が大きく見えます。これは、当時の想定ライバル車(Z4やフェアレディ)に車格を合わせるための苦渋の判断だったのではないかと勘繰ってしまいます。

でも実際に真横からみると、全体のバランスでは歴代ロードスターでもっともスリムに見える形になっています。しかも、オーバーハングは軽量化のためにバッサリと先端や角を削っています。

ドアが厚く重いのも車重があるのでは無いかと誤解を生むポイントです。重厚感があって「バタン」と閉まるので、とても質感が高いと感じるのですが、NAロードスターの時計に触れるようなカチャリとしたドアノブと、「バーーーン」と閉まる軽いドアを知っていると、どうしても重いと勘違いされがちです。ちなみにNDのドアも厚いのですが、NCの教訓からかびっくりするくらい軽く開閉します。

また、ボディ剛性がノーマル状態で非常に高いので、質感の上がった走り自体が重くなったと誤解を招きそうです。これはNDロードスターも同様だったのですが、まっすぐ走るだけではすぐに「軽さ」の恩恵を感じません。曲がると初めて「ヤバイ!!」と気づくのです。

この辺りが、例えばNAロードスターを知っている人がNBを飛び越してNCに乗ると感じる誤解なのかな…と思われます。しっかりしていることをネガに感じるなんて面白いですよね…逆にNCやNDの方がNAに乗ると、チープすぎて驚くと思います(でもそれがいい)。

楽しさの基準はそれぞれでしょうが、NAの楽しさは(以下、褒め言葉ですよ)しょぼいエンジンを緩々のボディで、効かないブレーキを気にしながら、気を張らなくのんびり走れる。それを自分なりに乗りこなすところに美学があると思います。(それも最高に楽しいし!)

そのくせNCは剛性は有るし走ると速い。最初からある程度完成されていることに拒否反応があるのはいままでの歴代車の苦労を考えると仕方が無いです。しかし、だから楽しくない?のではなくて、ロードスターの目指していた方向の一つであることは間違いないのです。

当時はスポーツカー冬の時代


マツダにも功罪があると思います。大ヒットしたNAを尻目に、スポーツカー冬の時代に突入しつつあった当時、売れる見込みの少ないNBやNCは、試乗車をディーラーに置くことがほぼ有りませんでした(当時、見たことありますか?)。つまり、新型のロードスターが出てもじっくり試乗する機会がないので正当な評価を受ける機会が少なく、かつて乗った牧歌的なNAを思い出してNCにちょい乗りして違うと感じて・・・なんて悪循環があったことが想像つきます。

それでイベント事あるごとに「ロードスターはマツダの魂」なんて、当時あんなひどい扱いをしておいて、どの口が言っているのだろうと失笑をかったくらいですしね・・・なので、現在全国のマツダにND試乗車があるなんで凄い時代になったものです。

まとめ


だからこそ、ロードスター乗りであれば一度はNCロードスターを体験してみるべきだと思うのです。ライトウェイトスポーツへの恐ろしいまでの拘りと情熱は、歴代ロードスターどれも共通です。これは、今回の試乗でとても大きく感じました。本当に走りにシビれたのです。

そのうえで、これからロードスター乗りになるオーナーさんが求める方向性によっては、NDではなくてNCであるという可能性が十分ありえます。

で、今回写真を撮った中でいちばんのお気に入りはこちら。例えば自分にとって一番のロードスターを選択するのは、ぶっちゃけエクステリアデザイン(見た目の好み)でいいと思うのです。その上で、この最高なハッピースマイルが許せるならば、NCロードスターはとても素敵な相棒になるのではないでしょうか。

それらを踏まえ、一度でいいので、NCロードスターの走り、味わってみて欲しいものです・・・最高のロードスターである事に違いはなかったですよ!

当サイトでは、ロードスターのガチンコレビューを行なっています。我こそはという殊勝な方がいらっしゃれば、ご一報いただけるとありがたいです!
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関連情報:

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