NCロードスターRHT(NCEC2型)試乗記

NCロードスターRHT(NCEC2型)試乗記

実際のところ、乗ってみなければ判らない。今回はNCロードスターの大本命ともいえるグレード、RHTをお借りすることが出来ました。その上でNA、NBのオーナーだった私の独断と偏見のレポートをしたいと思います。

ロードスターに電動ハードトップ?


最初にお断りをしておくと、このRHTというグレードは「マツダ・ロードスター」に何を求めるかで評価が二分します。したがって、ポジティブな言葉はネガティブに置き換えることもできるのです。

さて、全ロードスターのベンチマークになる初代ユーノスロードスターNA6がヒットした最大の要因は、あらゆる料理に変貌する「ベストな素材」であり続けたことにあると思います。軽く、小さく、格好良く、速く、安く、快適に・・・そして、その後のロードスターはモデルチェンジを経ていくたびに、少しずつクルマとしての完成度(快適度)が上がっていきました。これは過去オーナーが拒否反応を示すのも当然です(だって今まで、自分好みになるように苦労していたんですから)。

だからといって、最初からカンペキな条件が揃っているRHTを頭ごなしにマツダ・ロードスターとは「違う」と判断するのは早計です。

一番の理由はマツダ自らがリリースした最強グレードであることであり、この良さを知るからこそ、自分の愛車に対する再評価も出来るはずです。それを踏まえたうえで駄文をお読みいただければありがたいです。

お借りしたロードスターの概要


さて、今回お借りしたグレードはNC2のRHT-RS。パワーリトラクタブルハードトップで6MTという貴重なグレードです。

なぜ貴重かと申しますと、NC後期はRS以外のグレードがATになり、かつ7~8割が幌よりRHTが売れたとの事(海外では半分ずつ出たそうです)。国内では50代以降のオーナーにRHTは受け入れられたそうです。

また、今回はオーナーさんが結構なチューニングをしていたので、エンジンのインプレッションはNC標準でなかったのもポイント。給排気からハイカム、ECU、足回りといじってあったのでめちゃ速い・・・エンジン特性はトルクよりも回転重視になっていますので、回すと特に速い!

出力は違えどもNDのスカイアクティブ・エンジンに印象が近かったことも記載しておきます(ここまで速いロードスターに乗ったのは初めて)。

ただ、私自身がヘタレなのでスピードに関するベンチマークは参考にできません。あくまでRHTの素性を読み解いていければと思います。ちなみにぬりかべぇさんのNCを知っている人への補足ですが、マフラーはノーマルに戻してもらっています!

幌とRHT、見た目の違い


通常(幌モデル)との最大の違いは「電動ハードトップ」が搭載され、それに伴う車重の増加(37キロ増)と、足回りセッティングの変更。ちなみにNA/NBのDHT(デチャッタブルハードトップ)装着は20キロ増なので、それを踏まえ重いとみるか軽いとみるか・・・

デザイン面で、屋根とリアデッキ(ルーフ収納部)の変更がわかり易いですが、トランクも幌モデルのアルミから、鉄に変更(プラス3キロ)になっています。

こちらデザイン的にはNBのダックテールに近しく「造形の都合で鉄になった」という開発者発言がありますが、恐らくはコスト増を控えるための苦渋の選択と思われます。(価格設定はアルミを鉄にするだけで解決することが多い・・・と、貴島主査はおっしゃっていました)。そのあたりの割り切りは、想定ユーザーにあわせてなのでしょう。

車庫保管だったオーナー様には申し訳ないけれど、ラッキーなことに(!)お借りした当日は悪天候。翌朝は洗車から愛でることになりました。ここでひとつ感動したのが「屋根を拭いている」という事実!

通常のロードスターは幌なので、その行為自体が無いんですよね(その分速く洗車が終わる)。そこに加え、屋根にキャラクターラインが入っていることをお恥ずかしながら知りませんでした。シンプルだと思っていたNCの造形ですが、意外と色っぽい演出でテンションが上がります。

リトラクタブルハードトップのメカ


もっとも衝撃を受けたのが、幌モデルと違うCピラー(でいいのでしょうか?)周りのチリの良さ。あまりの精度の高さは時計のような精密工芸を連想させ、所有欲を満たしてくれます・・・貰っていないけれど。

普段から隙間が空いているNA/NBの牧歌的(割り切りともいう)な造形も味があるのですが、ここまでキッチリしているのはロードスターもここまで来たか・・・と感動します。この話、オーナーに伝えたら「普段からコレなので気づかないです・・・」といわれました。実際に私も洗車しなければ気付かなかった!

ハードトップの収納部も萌えます。パーツが折り紙のように収納される様は、開閉スピードもさる事ながら、その滑らかさに「動きの質感」を感じさせてくれます(嬉しくて何回も開け閉めしちゃいました)。

ちなみに屋根の主な素材はSMCで、こちら従来型のハードトップやAZ-1のボディパネルと同じ素材。だからといって塗装精度が低いわけどもなく、軽量かつ剛性のあるこのパーツは、いくらハードに走ってもガタピシいうことは全くありません。

快適すぎて驚きます


もとから剛性感が段違いに良くなったNCロードスター、ハードトップを閉めるその空間はクリアなオーディオとよく効くエアコン。

また、あまり語られることが少ないですがシフトノブやステアリング、内装パネル、クラッチの“踏ん張り”といった身体が触れる部分は様々な“質感”のチューニングがされていることに気づきます。これは自分のNBに乗り直した際に、より感じることができました(どちらが好きかはもはや好みレベルですが)。

もちろんルーフを収納してもトランク容量は十分!この日常性を担保することは、ロードスターが生き残ることが出来た勝因の一つであると、貴島主査はおっしゃっていますね。

トップ開閉スタイリング比較


もとよりドロップヘッドクーペをモチーフにしたルーフは、幌に比べてCピラーが前進しているので、キャビンの小ささにも伴い、ギリギリのラインでテンションを保っていることが判ります。

リアデッキにあるハイマウントストップランプの位置が、本来の「幌モデル」の継ぎ目になるのですが、そこにキャラクターラインを設けてトランクまでの長さを感じさせない演出になっています。
ある意味、屋根を閉じているこの姿はもっともRHTらしいともいえます。

ルーフを開けると紛れもなくNCロードスターです!

実はルーフを収納するためにリアフェンダーからトランク周りまで作り直されているのですが、いわれなければ気づかないレベル。リアデッキが幌モデルに比べて高くなっているので、地味にエアロボードの造形も変更。むしろ、微妙なリアデッキの逆かさが抑揚を産んでセクシーですらあります。

RHTのリアデッキは「バスタブに浸かっているようだ」という表現もあるそうですが、屋根が空いた開放感はそんな野暮なことをいうのがアホ臭くなる。それくらい「ロードスター」しています。

ルーフ開閉で走りは変わるか


さて、ここからが本題です。チューンしていても変わらないパッケージング、屋根の開閉で走りが変わるか検証です。ラッキーだったのは、お借りした翌日は天気が回復し、路面状態も良好。そこで、暫くルーフを閉じて走行を行って身体を慣らしつつ、いつもの「道」を屋根を開閉させながら走り込んでみました。

エンジン特性に関しては先に触れたとおり高回転へ弄ってあるので、低速トルク自体は前回の幌NCよりも大人しめでしたが、それでも3200回転から恐ろしく吹け上がるので、3速ホールドでも峠を走り切れちゃうくらい余裕のあるセッティング。

なのでルーフを閉じていても、ぶっちゃけオーディオもクリアだしエアコンは効くし(!)、流しモードでもぜんぜん走りを楽しむことが出来ました。気になったことがあるとすれば、私の腕がヘボいのでエンジン出力が勝り、アンダーステア気味の走りだったことを追記しておきます。

その後、ルーフを開けて走ってみると・・・人間の感覚って凄いですね。わかりやすく挙動が変わります!

数値的なデータでいうと、クローズ状態で50:50だった重量配分がオープンで49:51になるそうなのですが、そんな理論は置いといて、重心が下がるのとリアが若干重くなるのでトラクションがかかるようになります。

ざっくりいうと、加速シーンで踏ん張ってくれるので、明らかにコーナースピードが変わります。

街乗りレベルではここまでクネクネ曲がることがないので、そんなに違いを感じることは無かったのですが、峠だとここまでクルマの性格が変わるのか!と走りながら笑顔になってしまいます。

実際は屋根が開いているので感性が刺激され、興奮しているのかも知れませんが、RHTで走るときは屋根を開けたほうが明らかに楽しいと個人的には思います。これぞロードスター!

正直ルーフが重いといっても数キロレベルだと思うのですが、屋根の上に荷物が乗っているのと、その屋根が腹の中に収納されて、重心が下がっている状態でこの挙動変化。あらためて、オーバーハングを極力削って重量物を中央に収めたというNCの「パッケージ哲学」を体感することが出来たのが大きな発見でした。それくらい違います!

では、このオープン/クローズをお手軽に楽しめ、かつ快適、速いというロードスターを良しとするのか、それとも拒否反応があるのかでNCの好みが変わるといっても過言ではありません。
ライトウェイトにそんなものはいらん!!もっと軽くしろ!という意見も一つの考え方だと思います(その回答が幌モデルでしょう)。

しかし、よく考えてみると「いつでもお手軽に屋根を開けて、肩肘張らずに走る」というライトウェイト・スポーツの楽しみ方でいえば、RHTは究極のロードスターではないでしょうか?
様式美に拘るエンスーアジストな考え方も嫌いではないですが、RHTのおかげでお気軽オープンカーでもあるマツダ・ロードスターの新たな世界が広がったのも事実です。

まとめ


冒頭にも書きましたようにロードスターは、オーナーの価値観(求めるもの)によって様々な姿が存在します。それに合うか・合わないかで評価が大きく変わる傾向にあります。そのなかでも多分、NCのRHTは一番端っこにある存在で「めっちゃ好き!」と「絶対にダメ!」がはっきり分かれているのではないかと思います。

マツダデザインを語るフレーズで「便利なだけでは愛着はわかない」という言葉があります。その極端な例が歴代ロードスターだと思うのですが、感性エンジニアリング、つまり感情に訴える「人馬一体」感がロードスターの本質ではないでしょうか。

その上で、このRHTロードスターの本質は「電動ハードトップのプレミア感や快適さ」よりも、走りのキャラクターを二つ持つ点が最大の贅沢ではないかと私は思います。だからこそ、機会があればRHTの走りを確かめることをお勧めします!

ロードスターに初めて乗る人ならばオープンが気軽に楽しめる、プリミティブな感情を刺激してくれますし、ロードスター乗りであるならば、本質を知っているからこそ、より楽しめるはずです。そして、自分の愛車が今以上に好きになるはずです!

そして、欲しくなっちゃったときは・・・頑張ってください(シャキッとした子は今しか買えませんよ)。生涯の相棒たり得る「最高のロードスター」のひとつであることは間違いないです!

関連情報:

NBロードスター(NB6C)のススメ

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