無駄を削いだNBロードスター(C-1)

無駄を削いだNBロードスター(C-1)

この記事を読むのに必要な時間は約7分です。

貴島さんのインタビューも、もともとの趣旨である「NBロードスター」の話に入っていきます。一応お断りしておきますが、NBロードスターは約20年前のクルマです。一部、ぶっちゃけすぎな内容は笑って読んでください。

貴島さんのプロフィールはこちら

NBロードスターの開発背景


NBの開発スタッフは、感覚的にほぼ100%(NAから)継続していたと思う。何人か退職した人はいたけれど、慣れた人間がいいから継続してやってもらった。一緒に実験をやったスタッフは、アメリカへ行ったり、ヨーロッパ行ったり、アウトバーン走るときなども、NAのことを知っている連中だった。


クルマの開発にはだいたい4年はかかる。まず、新車を出すには国から出てくる燃費規制とか安全要件などの草案、つまりレギュレーションを見直す。それによってモデル継続できるかフルチェンジするのかの、大枠の予定を決めることができる。特にフルチェンジをする時は、それを見越したレギュレーションが絶対にあるので、エアバックをどのタイミングで入れることが可能かなどの予定を見越していく。


また、サイクルの長いスポーツカーは熟成もしなければならない。だから、新車の段階でそのあたりも見越して、常に不満なところ、改善しなければならない事を洗い出している。実は、クルマは新車の段階で「3年前の技術」で出来ている。そこで、以降の3年間の中で新技術や素材を入れるタイミングを既に見ている。したがって、新車の段階でマイナーチェンジの予定は出来ている。


マツダの開発は必ず「前のモデルの新車」と「新しいプロトタイプ」を比較する。素人が乗った時、プロトタイプの方が楽しくならなければオファーはしない。当然だけど、前のモデルよりも劣ったものを出すのなら、前のモデルを続けた方がいいから。

NAよりもNB、NBよりもNCが優れているというのは、もちろん総合評価の話になる。部分的には先代の方が良いというのは当然ある。マツダにはそれが判定できる「匠のテストドライバー」がいて、三次のグローバルロード、世界の道を模擬した場所で走り込んでいる。それが引き継がれてきた伝統になる。

リトラクタブルヘッドライトの廃止


NBでリトラクタブル(ヘッドライト)を止めたのは、フランスのレギュレーションで前方下方視界の要件を満たすためだった。つまり、リトラが上がっている状態が駄目になってしまった。しかし、日本もアメリカもその要件は無かったので、本気でNAをそのまま並行販売するプランも考えていた。

ただ、生産を考えたらリトラを止めるだけでボディや外板、つまりスタイリングのやり直しが必要になる。生産台数がそんなに多くないものが二種類存在するとなったら、NAの開発費が償却してタダみたいなものになっていても、部品管理がとても煩雑になる。当時、実は中国が欲しがっているから売るか?なんて話もあったけれど、そんな事は出来ないと結論づけて、フルに変える道を選んだ。

NAと共通の骨格


NBの基本骨格はNAだから、強度を取っている部分はフレームとリアフェンダーまでになる。ドアボンネットもフェンダーも強度は関係なく、いわば蓋になる。つまり全部デザイン的なものになる。


NAとNBで共通のボディ、全く同じ外板があるのをご存知だろうか。リアウインドの後ろ、幌を止める「きのこのフック」が付いているあたり。NAもNBもあそこの板は同じになっている。その部分は強度部材であり、そこからデザイン展開もしているから共通にしてある。幌が共有できるのも、あのラインを合わせてあるからになる。デザインが違うリアフェンダーは溶接で留めてあるけど、中のフレームも一緒になっている。もっといえば、中の継ぎ目も一緒にしてある。

NBを作っているときの上司はフォードから来た役員だった。最初は小さいNAのサイズではアメリカでは売れない、ワイドなボディや馬力を上げろと主張をしてきた。しかし、フォードのスタッフもマツダに来てしばらくしたら「うち(マツダ)のクルマは・・・」と、こっち側についてくれる。だから最後は、私たちの主張を受け入れてくれた。


デザインの決定は世界で行ったデザインクリニックでの感度を計って決めていった。丸目の案もあったけれど、ロードスターデザインの文脈で考えれば、悪い線ではないと思っていた。

NBにジャガー的なテイストが入っているなんて話があるけれど、それは後付けであってデザインの段階でそんな話はなかった。日本では一部で評判が悪かったけれど、NBはイギリスでNAより売れている事実がある。あの流麗なスタイリングを「ミニジャガー」と呼ぶようになっていたのが背景にあると思う。

無駄を削いだデザイン


ところが、開発中はアメリカからデカいデザインのものが運ばれてきていた。ホイールベースは一緒だけど、幅が広い3ナンバーサイズだった。それを林さん(※)が一生懸命小さくしてくれて、それでも3mmだけ幅が大きくなってしまったと頼まれた(笑)。

※林浩一氏:NBロードスターチーフデザイナー


たかが3mm(※片側1.5mm)とはいえ、ハイライトを綺麗にクレイモデラーが作っていて、ここから変えるのは難しいのと、5ナンバーサイズに収まったからまあいいかと。ただ、日本の諸元表記は5mmごとなので、幅1,680mm記載になっている。


NBの肩がいかっているところ(※リアフェンダーの盛り上がり)はとてもいいでしょう?私はデザイナーではないけれど、主査だから林さんがデザインの方向性を聞いてくれる。それで林さんと議論して「もう少し絞ろうや」とやっていた。

しかし生産技術の現場では、このレベルになるとプレスが打てるか分からないとなって、それなら500万円出すから雑型作って打ってみろとか、どうすれば可能性が見えるかの調整を行なった。プレスを打てるこのラインがOKならばと、生産車に取り込んでもらった。

フェイスリフトは販売スタート前に決まっていた


NB1のヘッドライト・デザインは1年少しで変えてしまった。これは当時のデザイナーのトップが写真(※発売前のNB1)を忍ばせてディーラーで得意げに見せたら、マツダの売れなかったクルマ・・・クレフとかMX-6をイメージさせるといって総スカンを食ったから(笑)。


それで帰ってくるなり「貴島来てくれ、この目玉は変わらんか?」といってきた。既にカタログなど全て揃っていて冗談じゃない、変わりませんといったら、販売スタート前から顔を変える指示が決定した。

次回に続きます

NEXT → NBは儲かったから還元した(C-2)

NBは儲かったから還元した(C-2)

インタビュー企画カテゴリの最新記事