この記事を読むのに必要な時間は約10分です。
丈夫なロードスターとはいえども、定期的なメンテナンスは必要です。
なぜなら、クルマは約30,000点の部品が集まっている機械であり、常に揺れたり、跳ねたり、熱くなったり、水をかぶったり、放置されたりと、過酷な環境に晒されているのも事実です。整備如何によって、クルマの寿命が変わるといっても過言ではないでしょう。
一方でガレージ保管しているので「乗っていないなら大丈夫では?」という考え方もあります。でも、クルマは稼働することによってバランスが取られているので、油脂類、樹脂類、構造材などは動かさないことによる固着のリスクが発生します。
そういう意味で、メンテナンス指定は年数と走行距離、二つの面で指定されていることが多いです。
ロードスターの定期メンテナンス
日本の公道でクルマを使うには、保安基準・・・つまり「自動車が安全な状態である」と、国が定めているレギュレーションに適合している必要があります。それを証明するためのエビデンスが「車検」があり、そのタイミングでメーカー指定、あるいは予防整備をおこなうのが一般的ではないでしょうか。
ただ、車検は(税金や自賠責保険など)それなりの出費がかさみます。際限なくコストをかけられれば問題ありませんが、趣味のクルマであれば、DIYなどでセーブしてコストを抑える・・・というのもよく聞く話です。
そこでひとつのベンチマークになってくるのが、メーカーが指定しているメンテナンス基準です。NBロードスターは基本的に丈夫なクルマですが、早生まれは20年以上前にロールアウトしているのですから、どこがボロくなっていてもおかしくありません。
そこで今回は、NBロードスター(&ミアータ)の取扱説明書に記載されているメンテナンススケジュールをご紹介します。
メンテナンススケジュールの前提
メンテナンススケジュールには「標準」「シビアコンディション」とふたつの記載があります。メーカーからの指定はかなりのマージンを確保してはいますが、表記にある基準を超えるのは、ある意味で「本当に気を付けたほうがいい」(壊れても責任が取れない)と判断できるでしょう。
自動車は同じ状況や環境で使用されるとは限りませんから、シビアコンディションという「本音」は結構重要なポイントではないでしょうか。ちなみに、その条件はメーカーの解釈により様々ですが、マツダでは下記のような項目をあげています。以下、ディーラー点検などで使用されるメンテナンスノートより抜粋です。
記号 | 条件 | 走行条件 |
A | 悪路 (凸凹路、砂利道、 雪道、未舗装路) |
走行距離の30%以上が次の条件に該当する場合 ・運転者が身体に衝撃(突き上げ感)を感じる荒れた路面 ・石を跳ね上げたり、わだち等により 下廻りを当てたりする機会の多い路面 ・ホコリの多い路面 |
B | 走行距離が多い | 20,000km以上/年(目安) |
C | 山道、登降坂路の 頻繁な走行 |
走行距離の30%以上が次の条件に該当する場合 ・登り下りが多く、ブレーキの使用回数が多い場合 |
D | 短距離走行の繰り返し | 一回の走行距離が短く、水温(各部の温度)が 低い状態での走行が多い走り方をする場合 ・8km以下/回(目安) |
E | 低速走行や アイドリング状態が多い |
走行距離の30%以上が次の条件に該当する場合 ・30km/h以下(目安) |
また、ロードスターはグローバルカーなので海外仕様の「Miata/MX-5」もメンテナンススケジュールが設定されています。面白いのは、海外仕様でも日本とほぼ近しい要件になっているところです。
海外のマニュアルには4種類のスケジュールがあり、厳しい順に(①カナダ・プエルトリコ/②北米以外/③北米/④オセアニア)といった順番になっています。また、全般的に「走行距離」だけでなく「使用年数」でも交換の指定があるのもポイントです。
なお、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)市場はクリーンな環境だからなのか、かなり緩やかな設定となっており、逆にカナダ・プエルトリコは標準設定でも日本の「シビアコンディション」以上の指定になっています。
そこで、海外スケジュールからのピックアップはシビアコンデションを「カナダ・プエルトリコ」、標準を「北米以外」でまとめてみました。
NBロードスター メンテナンススケジュール
項目 | 交換時期 | 国内 | 海外 |
タイミングベルト | 標準 | 100,000km | 100,000km/5年 |
シビア | 96,000km | ||
エアクリーナーエレメント | 標準 | 50,000km | 60,000km/3年 |
シビア | 25,000km | 56,000km/2.3年 | |
フューエルフィルター | 標準 | 100,000km | 40,000km/2年 |
エンジンオイル/フィルター SAE 10W-30 API SG,SH,SJ級 |
標準 | 15,000km/1年 | 10,000km/6ヶ月 |
シビア | 7,500km/6ヶ月 | 5,000km/3ヶ月 | |
マニュアルトランスミッションオイル SAE 75W-90 GL-4 |
標準 | 無交換 | 100,000km/5年 |
シビア | 48,000km/2年 | ||
オートマチック トランスミッションフルード 純正ATF(M-Ⅲ) |
標準 | 無交換 | 記載なし |
シビア | 60,000km | ||
デファレンシャルオイル SAE90 GL-5 |
LSDあり | 100,000km | 記載なし |
標準 | 無交換 | 80,000km/4年 | |
シビア | 60,000km | 48,000km/2年 | |
ブレーキフルード 純正(JIS-3) |
標準 | 2年 | 40,000km/2年 |
シビア | 8,000km/4ヶ月ごと点検 | ||
冷却水 | 標準 | 2年 | 2年 |
メーカー指定によると、エンジンオイル交換時はフィルターも同時に交換する指定になっています。また、国内のMTオイルは無交換指定になっていますが、海外ではスケジュールが刻まれています。ATオイルの記載がないのは、海外仕様のNBロードスターにはAT設定がないからです。
また、国内外で大きな違いとしてはブレーキフルードとフューエルフィルター(燃料フィルター)の交換頻度です。フューエルフィルターはガソリン精度の違いによるものですが、日本では10万kmごとであるのに対し、海外では4万kmまたは2年ごとの交換指定になっています。
もちろんこのスケジュールに沿っていれば大丈夫というわけではなく、下記の注意書きも記載されています。どちらにせよ、酷使している状況では気をつけなければいけません。
b)長時間のアイドリングまたは低速運転。
c)低温での長時間の運転、または短距離での定期的な運転。
車両がこれらのいずれかの条件で運転される場合は、推奨間隔よりもエンジンオイル/フィルターを頻繁に交換してください。
ハードドライブやマウンテンドライブ、湿度の高い気候で車両を使用される場合は、ブレーキフルードを毎年交換してください。
NBロードスター サービスデータ
メンテナンスは消耗品を交換したからOKというわけではありません。クルマのコンディションは刻刻と変化していきまから、違和感があった際に検証するための基準(サービスデータ)もマニュアルには指定されています。こういった定量的な数値はメーカーが長い時間とコストをかけて得た経験則ですから、非常にありがたいですね。
項目 | サービスデータ | |||
スパークプラグ | 型式 | B6型エンジン | マツダ | BP13 18 110 |
BP14 18 110 | ||||
デンソー | K16PR-U11 | |||
K20PR-U11 | ||||
チャンピオン | RC10YC4 | |||
RC8YC4 | ||||
NGK | BKR5E-11 | |||
BKR6E-11 | ||||
BP型エンジン | デンソー | K16PR-U11 | ||
K20PR-U11 | ||||
NGK | BKR5E-11 | |||
BKR6E-11 | ||||
電極の隙間 | 1.0~1.1mm | |||
バッテリー | 型式、容量 | 46A24L(S)32AH(5) | ||
ブレーキペダル | 遊び | 4~12mm | ||
床板との隙間(踏力15kg) | 95mm以上 | |||
クラッチペダル | 遊び | 5~13mm | ||
床板との隙間 | 65mm以上 | |||
パーキングブレーキ | 引きしろ(操作力10kg) | 5ノッチ | ||
オルタネーター ベルト |
たわみ量 (10kgの荷重) |
新品時 | 5.5~7.0mm | |
張り直し時 | 6.0~7.5mm | |||
張り直し限度 | 8.0mm以上 | |||
パワーステアリング ベルト |
たわみ量 (10kgの荷重) |
新品時 | 7.0~8.0mm | |
張り直し時 | 9.0~10.0mm | |||
張り直し限度 | 11.5mm以上 | |||
アイドリング回転数 | マニュアル車 | 800rpm | ||
オートマチック車 | 800rpm(Pレンジ) |
海外のマニュアルで指定されているメンテナンス
ここで紹介する項目は、国内ではディーラーの定期点検時(メンテナンスノート)に記載されているものとほぼ近しく、車検整備時に比較的発見&修理する項目になります。ただ、海外ではマニュアルの方で細かい指定がされています。ボディコンディションの項目は「随時チェックほしい」と書かれており、メーカーの親心を感じる面白いところです。
時期 | 点検項目 |
毎年(常時) | ボディコンディション(錆など) |
ナット/ボルト増締め | |
空気圧(スペアタイヤ含む) | |
6ヶ月/10,000km | 補器ベルト(※1) |
クラッチフルード | |
ブレーキディスク | |
パワーステアリングフルード | |
1年/20,000km | アイドリング |
燃料ライン | |
排気ガス | |
電装品(※2) | |
ステアリング(※3) | |
ブレーキライン | |
サイドブレーキ | |
ABSユニット | |
40,000km | スパークプラグ |
80,000km | マフラー |
100,000km/5年 | エンジンバルブクリアランス調整 |
※1 パワーステアリング、エアコンベルト | |
※2 ライト、ワイパー、ウォッシャー、パワーウィンドウ。 | |
※3 ギアハウジング、リンケージ、タイロッドエンド、アーム |
ただ、走りに関するところでロードスターの調子が悪いと感じたら、点検を行う際の参考になれば幸いです。人間は意外と動物的な「感」が残っているそうなので、「違和感」は結構正しいらしいですよ!
関連情報→