NBロードスター、ガレージキット制作(NBトミカ)

NBロードスター、ガレージキット制作(NBトミカ)

この記事を読むのに必要な時間は約13分です。

歴代ロードスターの中で、唯一「トミカ」化されなかったNBロードスター。実は、チャンスがなかった訳ではないのですが、もろもろの理由で選定候補から落選したことは別のトピックで解説させていただきました。

参考:なぜNBロードスターの「トミカ」がないのか
https://mx-5nb.com/2022/08/08/nb_tomika/

ただ、ロードスターのホビーを語るうえでやはり外せないのが「NBロードスターのトミカ化」。実は私もNAロードスターを改造して作ろうとパテ盛りを行っていたのですが、なかなか形にできずにいました。そんな折、トミカ(マッチボックス3インチ)サイズのNBロードスターを掲載した【でらいら氏】の一枚の写真がSNSで話題になりました。


もちろん、数多のモデラーがトミカ・リスペクトを作成することはお約束になっていたのですが、同氏はこれをガレージキット化する・・・とアナウンスされたのです。


ちなみにガレージキットとは「自分自身で造りあげた原型をもとに、型取り・生産する手作りの模型」です。いいなぁ、カッコいいなぁなんて思っていた折、ご縁によりサンプルキットをお預かりすることができたので、私も全力で作成してみようと思います!

NBトミカ風キット、原型チェック


キット内容は基本的にボディとキャビンの2パーツで構成されています。その造形はトミカ(マッチボックス3インチ)サイズながら、NBロードスターと分かるオーガニックシェイプ(オーガニックフォーム)のボディが再現される、ところどころに「愛」を感じる造形でした。ただ、ガレージキットは通常のプラモデルよりも作成に若干手間がかかります。

レジンキャストは仕様上「気泡」が発生したり、接着にコツがいるので、その処理をいかに楽しめるかがポイントになっていくのです。なので、まずは完成形のイメージを持って作業をおこなうと良いでしょう。


また、キットにはシャシーとフロントガラスを用意する必要があります。そのドナーとなるのは、先日販売されたマテル社のホットウィールシリーズ「HHF02ベーシックカー ’91マツダMX-5ミアータ」を流用します。


まずはホットウィールの分解を行います。ボディ裏面のカシメ2ヵ所をリューターやドリルで削り取れば、パーツ単位の分解が可能になります。キットをそのままシャシーに当て込んでもきちんとハマらないので(ガレージキットとはそういうもの)、干渉する部分のバリを削り取って調整していきます。小さいキットなので手元が緩むと余計なところを削ってしまうので、慎重に!


とりあえず形にしてみると・・・マッチボックスサイズのNBロードスターが降臨し、なかなかテンションを上げてくれます。完成イメージを得たところで、作業工程を逆算して手を動かしていきます。

NBトミカ風キットのコンセプト

この絶妙に「ゆるい」造形はNBロードスターの「実車」に近づけるため、より追い込むことも可能ですが、キットのコンセプトはあくまでトミカのリスペクト。その意図を原型制作された【でらいら氏】にコメント頂きました。

こだわりポイントとしては、「当時のトミカっぽさ」「絶妙な似てなさ」を敢えて出してみたかったというところです。

NBが現役だった2000年頃のトミカには、今の目で見れば「これがこの車種・・・?」と思うような造形のトミカが少なからずあります。一方、今となってはそんな似てなさが古いトミカの味にも繋がっていると思います。今回はそうした「味」を表現できれば良いと思いました。特にフロントは「間違ってないけどちょっと違う」位の造形になった所で造形を完了としました。


また、昨今の3インチミニカーブームの中で、いずれNBの3インチミニカーとしても完成形が登場するとも考えました。そこで、多少似ていなくてもトミカのような温かい雰囲気のミニカーとできればよいのではないかと思い、製作しました。

つまりこういった意図がわかれば、それに応えなければなりません。キットは「NBトミカが発売されていた世界線」というマルチバース想定で、造り込んでいきたいと思います。

NBトミカ風キットの下地処理


トミカっぽく見せるためには、ボディの艶が重要になっていきます。したがって、下地処理は特に気合を入れて行います。

まずは、各種スジボリをノミやタガネを使ってキットのボンネットラインなどを彫り込んでいきます。これは、サフェーサーなどでラインが埋まらないようにするためです。小さなキットに鋭利な刃物を施すので、作業は慎重に行います・・・老眼が辛い。


その後、レジンキャスト複製時にはどうしても油分(離型剤)が表面に残りますので、台所用クレンザーと歯ブラシでガシガシ洗います。

 
状態の目安としては、水を弾く撥水状態が「親水状態」になればオッケーです。心なしか指ざわりも変わっていきます。


乾いたら、造形の都合で発生した気泡を各種マテリアルで埋めていきます。今回は瞬間接着剤とプラリペアを活用しました。また、仮組の段階でソフトトップカバー部分が小さく感じたので、1mmのプラ棒で一回り大きくしてみました。

また、キットの開口部(キャビンの境目やサイドシルなど)をなだらかに、エッジが出るはずのキャビン縁などを削って成形していきます。この工程は完成時に大きく影響するので、大胆かつ慎重に行いましょう。

 
いったんグレーのサフェーサーで全体の凹凸を確かめます。すると、追い切れていなかった表面のざらざらや気泡が見えてきますので、あたらめて溶きパテ(筆塗りサフ)などで埋めて、400番、600番、800番と耐水ペーパーで磨いていきます。

 
サフ→磨き(&スジボリしなおし)の工程を繰り返し、表面がなだらかになったと思ったところで白のサフェーサーを吹いて、1日以上十分に乾燥させたのち、2000番の耐水ペーパーで全体を「ひと撫で」して下地処理は終了です。

NBトミカ風キット、塗装作業

 
こちらのキットはキャビン内の小物(ステアリング)が造形されていないので、プラ棒を使って3本スポークを自作してみました。また、シフトノブも適当な伸ばしランナーをキャビンのパーツに張り付けておきます。気にならなければ必要のない作業ですが、こういった小物が完成品を引き立てるんですよね・・・

また、キット作成の方向性は「トミカ・スタンダード」と「カスタム」でいこうと思います。そこで、キャビンのパーツは「セミグロスのブラック内装」と「VS系統の明るい内装」で塗装を行いました。タイヤの付くシャシーもサフェーサーでコートしたのちに、セミグロスブラックで塗装しています。


キャビンはトミカ準拠で行くと「単色」が正解ですが、明るい内装は原型の造り込みに敬意を表して塗分けを行いました。これらの後にセミグロス(半艶)トップコートで表面のイメージを整えておきます。

 
さて、ボディカラーですが・・・愛車のガーネットレッド(ワインレッド)で塗りたくなるところですが、ここはグッと我慢しました。

したがって「もし、NBトミカがあったら」のマルチバース路線を貫くために、NB1の「エボリューションオレンジ」とNB2の「クリスタルブルーメタリック」をイメージした、NBロードスターのテーマカラーを塗ることにしました。

この段階でお気づきかも知れませんが、NB1をイメージしたキットはフォグランプを埋め、サイドミラーを削っています。これは、歴代ロードスターのトミカではサイドミラーがオミットされいるので、並べた時に統一感があるように(泣く泣く)切削しました。したがってNB2(クリブル)方は原型の良さを活かす方向性にしてあります。(※なお、原型の【でらいら氏】はNBトミカの特徴づけとして、あえて造形を加えています)


塗料は模型用スプレーで行いました。15分間隔で薄く・ふわっと3回ほど色を乗せることで奇麗なボディが仕上がります。焦って塗り重ねると塗料が垂れるので注意です。さらに、光沢(グロス)クリアーで2回ほどコートしておきました。

NBトミカ風キット、造り込み


クリアーコートを1日以上乾かしてから、ディティールの描き込みを行います。

NAロードスター(94年発売)のトミカに準拠するならばテールランプは「赤一色」が正解ですが、NCロードスター(06年発売)のテールは描きこまれており・・・特徴の少ないNBロードスターはテールランプを描くと一気に「表情」が見えるので、あえてディテールアップの方向でいきました。前期型と後期型の違い、上手くいきましたでしょうか!?


また、ヘッドランプやサイドマーカーを塗装したのち、ふたたび光沢(グロス)クリアのトップコートで塗面をセーブしておきました。トップコートが乾いたら、グリルとリアのベルトラインを描き込んで、ボディの作業はいったん終了です。

 
タイヤは、たぶんどの家にも転がっているジャンクのトミカから拝借しました。

一見同じように見えるトミカのホイールも様々な大きさがあるので、サイズを吟味しながらシャシーにセットしていきます。ただ、ホットウィールのシャシーにはトミカタイヤはホイールベースがスカスカになるので、タイヤの裏柄にブラバンで「かさ増し」を行っています。

 
ここまできたら「箱」も再現したくなるもの・・・そこで実箱と見比べてパワーポイントで造り込んでみました。ちなみにトミカ箱のサイズは目測で「780mm × 390㎜ × 270㎜」、通し番号の「98」はNBロードスターのデビュー年です。


100円ショップで購入できる厚手光沢ペーパーにプリントして組み立てれば・・・まさにアレの完成です。これを見つけた妻が「またこんなに大量に買ってきて!」と訝しげにしていましたが、自作であることを伝えて難を逃れました(本物がひとつ混ざっていますが)。

何度も夢見た、NBロードスターがトミカの仲間に・・・


そんなわけで完成です!まずはスタンダードモデルを想定したNBロードスター「エボリューションオレンジマイカ(NB1)」イメージ。キットのフロントフォグを埋めていますが、グリルはオーバルではなくそのままの造形になっています。

内装はセミグロスブラック、サイドマーカーは模型的な見せ場(差し色)としてあえて塗りました。ちなみに黄色系と黒は相性がバッチリなのと、実車のエボリューションオレンジは明るい内装が選択できなかったんですよね・・・


もう一台はガレージキット素材の良さを活かした「クリスタルブルーメタリック(NB2)」イメージ。箱のトミーロゴが青いのは、本物の箱も丁度2000年前後(NB2デビューの年)に変更されたからです。

NCロードスターのトミカはピラーが塗装されているので、こちらもどうするか迷ったのですが、シミュレーションをしたら「トミカっぽさ」が無くなってしまうので、あえてオミットしました。ちなみにタイヤはNB1と比較して、若干大きめなものを履いています。


リアビューはこんな感じです。NB前期型と後期型の違い・・・分かりますでしょうか。キャビンにあるエアロボードの造形がNBロードスターっぽさを際立たせています。ただ、前期型のシートバックを低くすべきだったことは塗装した後に気づきました。考証が甘さが恥ずかしい・・・


あの時夢見た、トミカのNAロードスターと並べてみました。NAのシンプルなボディラインと比較してNBのオーガニックシェイプが映えます。違和感がないのは原型の良さですね!


ロードスターのトミカネタでは鉄板で夢想される兄弟たちと並べて。カラフルに見せたかったので、NAトミカは後期レギュラーの「ネオグリーン」にしています。


手元にあった歴代ロードスターを並べてみました。駐車場やミーティングジオラマを作りたくなります!


最後に、同じ身体を持つアバルト124スパイダーとロックスターも。ここまで来ると壮観です!


以上、NBトミカ風ガレージキットのご紹介でした。残念ながらトミカのレギュラーラインナップ入りできなかったNBロードスターですが、もし販売されていたら・・・という歴史のIFを感じていただければ幸いです。


なお、2023年にはホットウィールブランドでNBロードスター(MX-5)後期型がラインナップ入りする情報があります。それも楽しみですが、私たちが見たかったのはトミカの適度にゆるかわいい姿。それがファンメイドであっても実現できたことは嬉しく思います!


ちなみに、このガレージキットは、でらいら氏が販売をしています。ある程度のスキルが必要なキットではありますが、間違いなく愛がこもっていますので、興味のある方はTwitterでDMを送ってみてください。

関連情報→

なぜNBロードスターの「トミカ」がないのか

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