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きっかけはナルディウッド・シフトノブの経年劣化
私の愛車はNB3ロードスターの「VSコンビネーションB」相応のベージュ内装が設定されています。その特徴のひとつとして、明るい内装の「差し色」として今では採用されることがなくなったナチュラル素材となる、ナルディの【ダークウッドパーツ】が採用されていることがあります。クラシカルかつスポーティなコーディネートは、発売から20年以上経った現在でも色あせることはありません。
ところが20年も経てば経年劣化は避けられないもの。シフトノブにプリントされていた「5MT」のシフトパターンは擦(かす)れていき、ナルディバッジも(物理的に)色あせていました。しかも、やたら汚く見える・・・
とりあえずクルマからシフトノブを外して様子を見ると、バッジには微かにナルディロゴ(NDマーク)が残っていたので「経年劣化を楽しむのも味かもしれない」と、コンパウンドで磨いたのですがどうもビンボー臭い・・・そこで補修を決意しました。
ただ、いきなり本番作業を行うと、補修中はクルマの日常使いができなくなってしまいます。そこで、幸いにもジャンク扱いのナルディパーツを手に入れることができたので、練習を重ねていきました。作業を行った季節は晩秋ですが、比較的過ごしやすい気温(20℃前後)が続いた時期に行いました。
シフトノブ土台の作成
まずはシフトノブを磨くためのマテリアル(ヤスリや塗料)を用意します。また、ナルディウッドのシフトノブは適度に「重く」かつ「丸い」ので、作業性を上げるために固定することにしました。
そこで、ホームセンターにて重めな【T字ステー】と、マツダシフトノブの規定サイズ(M10)となる【長いボルト】を購入しました(ちなみにシフト固定のピッチは1.5mm)。長いボルトを中央に固定して、角にはステーの高さを揃えるボルトを配置。簡単な土台の完成です。
これがまた意外にいい「重さ」で安定していて、後日はシフトノブを飾るインテリアとして重宝しています・・・
・各番手の紙やすり(空研ぎ、水研ぎ兼用)
・各番手のスポンジヤスリ
・マスキングテープ
・シリコンオフ
・無水エタノール
・クリアコートペイント(自動車用)
・マットコートペイント(模型用)
・土台(シフト固定用)のボルト&ステー
「水性ウレタンニス」および「屋外用スプレーニス」を用意しましたが、結果的に今回の作業では上手く活かすことができませんでした
レベル1 ナルディダークウッド「6MT」シフトノブの補修
驚くほど破格でお迎えできたジャンク扱いのナルディ・ダークウッドシフトノブ。プリントされているシフトパターンは「6MT」かつダークカラーなので、愛車と同じNB3系のロードスターもしくはNRリミテッドに架装されていたパーツと思われます。
何故ジャンク扱いだったのかといえば一目瞭然、シフト上部のクリア層がパキパキに剥がれているからでした。また、正面のナルディロゴ(NDマーク)もクリア層が黄化しています。
ただ、それ以外は奇麗な状態を保っているので、まずは根元のメッキ部分を傷つけないように、マスキングテープで覆っていきます。
あとは勇気を持って、スポンジヤスリでひたすら磨いていきます。グロス(艶あり)パーツを傷つける背徳感は半端ないですが、奇麗に仕上げるためには仕方がありません。
なお、ナルディバッジはクリア層を剥がすと奇麗なプリントは生きていました。なお、ウッドパーツの洗浄はシリコンオフやパーツクリーナーは乾燥が早いので使用できましたが、「水研ぎ」は水分を含むので相性が悪いようです。つまり「空研ぎ」の作業がお勧めです。
パーツをある程度磨いていくとクリア層が剥げていき、下地のマホガニーウッドが見えてきました。ここで気づいたのは、ダークウッドシフトノブの色はウッドそのものではなく、下地よりも若干明るいニスで調整されていたことです。ただし、下地もダーク寄りの色味なので「このままでいいじゃん!」と、この時は思っていました。
失敗1
とりあえず頭部分のクリア層を完全に剥がすと、下半身のニス塗装が生きている部分との境目が目立ってしまったのですが・・・クリア塗装を重ねれば色合いが落ち着くと思って、そのまま作業を進めていきました。下地磨きがひと段落したら「屋外用のウレタンニス」を薄吹きで重ね塗りをして、乾燥のために放置しました。
しかし、ニスが乾燥すると・・・シフトノブの頭が「河童の皿」のように目立ってしまいました。また、磨いた木目で問題はなかったのですが、下半身に残したクリア層とニスの相性が悪いようで・・・このまま艶出しを行っても微妙な出来になると判断し、ニス塗面を全てヤスリで削り落としました。
失敗2
剥げてしまった頭部分の違和感(色の差)を無くすため、同じ色味となるニスをホームセンターで探すと「オールナット」カラーが近しいイメージでした。マホガニー素材なのにオールナット(くるみ)色にするのは忍びないですが、出来が良ければ問題ありません。
しかし、木目部分のニスは乗ってくれましたが下半身のクリア層(元の塗装を残した部分)との相性が悪く、かつニスの重ね塗りではマホガニー独特の色合い(光に反射すると金色に見える)が消えてしまうので、塗ったニスは改めて全て削り落としました。
リカバリーは模型由来のテクニックで
最終的には、シフトノブの頭部分をヤスリでさらに磨き込んで広げ、境目でグラデーションがかかるように(元の)クリア層を調整していきました。また、全体的に塗料が乗りやすいように軽く1500番で表面を整えました。
その後、自動車外装補修用のクリアーを15分毎に6回ほど薄く塗り重ねて、塗膜を強くしていきました。本音では塗膜がより強い「ウレタンクリア(2液タイプ)」を吹きたかったのですが、スプレータイプのウレタンクリアは24時間で使い切らなければならずコストと作業性の関係から、普通のクリアーを吹いています。
クリア層の研ぎ出し
ただし木目へのクリア塗装は一発で決まらず、年輪でボコボコしています。
そこで、幾日か寝かせて塗面を乾燥させた後に、改めて全体をヤスリ1500番で一皮剥いていきます。表面がなだらかになったら改めてクリア塗装を吹く・・・という作業を、表面がなだらかになるまで複数回重ねました。
いわゆるカーモデル(自動車模型)では「研ぎ出し」というテクニックです。ある程度納得できる艶が出たら、最後にコンパウンドで磨いて完成です!
シフトパターンのプリントは消えてしまいましたが、それ以外は「いつものナルディ」に戻りました。個人的には想定以上のリペアを行うことができ、お気に入りのパーツとなりました!
レベル2 ナルディウッド「エボリューション」シフトノブの修復
本当にたまたまですがレベル1の作業を行っていた時期に、あのナルディ「エボリューション」シフトノブのジャンクを手に入れることができました。こちらはロードスター専用ではありませんが、かのユーノスロードスター「Vスペシャル」でも純正採用されていた、由緒正しいシフトノブです。
このパーツがジャンクな理由も一目瞭然。全体のクリア層がカスカスでかつ、全体にヒビが入っていました。また、特徴的なデザインのゴムグリップ部分は加水分解でベタベタに・・・正直バッチいです。
ゴムパーツの処理
そこで、まずは加水分解の対処をおこないます。海外製ゴムパートのベタベタ取りといったら「無水エタノール」です。ウエスに適度に含ませてゴムパーツのベタベタを拭き取っていきます。
一応シフト根元のゴムパーツは上手く奇麗になりましたが、グリップ部分はエタノールで溶けてしう予想外の展開になったので、別の手段で仕上げていくことにします。
クリア層の剥離
また、カスカス・パリパリになっていたクリア層は模型分解で重宝する「パーツセパレーター」が役に立ちました。下手にヤスリでクリア層を落とすよりも、隙間にセパレーターの先端を刺してパリパリ剥がす方が効率的に作業ができました。また、ナルディロゴもクリア層を剥がしたら、ラッキーなことに元の色は健在でした。
クリア層を剥がしたら、全体的にヤスリで表面をなだらかにしていきます。ちなみに、エボリューションのマホガニーウッドを削ると、中学校の技術室(木製の作業台)で嗅いだ懐かしい匂いがしました・・・
しかしグリップ部分のゴムパーツは一筋縄ではいきませんでした。なぜなら、パーツクリーナーでもシリコンリムーバーでも溶けてしまい、そのうえマホガニーの筋(木目)に染み込んでいくのです。一旦外して作業ができないか試したのですが千切れそうで危険です。そこで、ゴムパーツごとクリアペイントを重ねていくことにしました。
クリア層の復活&ゴムパーツの処理
レベル1の補修と同じく15分間隔で複数回クリア層を重ね、完全硬化したあとに一皮むいて研ぎ出し・・・といった作業を重ねていきます。ゴムパーツもクリア塗装でカッチカチに固めてあるのでベタベタも解消しました。
しかし、このままでは「エボリューション」の味が無くなってしまうので、最終仕上げの前にゴムパーツ以外をマスキングして、模型用の「マットコート(艶消し剤)」を複数回重ね吹きました。
そんな訳で、リペア完了した「エボリューション」がこちら。少しだけゴムグリップ部分が溶けて染みていますが、パッと見だと分からないので、勝手ながらアリとします。売り物にはならないでしょうけどね・・・
レベル3 ナルディダークウッド「5MT」シフトノブの補修
最後に本番、本命として愛車に架装されていたナルディ・ダークウッド「5MT」シフトノブの作業を行います。
WebTunedグレード、もしくは純正ショップオプションでしか購入できないレアパーツではあるのですが・・・製造されて20年も経つとシフトパターンは擦れ、斑(まだら)状のクリア浮きが発生しています。私の手、汚れているんですね・・・
ナルディバッジを外す
まずは模型用のパーツセパレーターを使ってナルディロゴのバッジを外していきます。ちなみに弾性がある両面テープっぽい素材で張り付けてありました。
しかし、雑な作業によってバッジが収まる部分の角が欠けてしましました。そこで模型用エナメルクリアを面相筆で拾って、欠けてしまった部分にボテッと塗料を乗せていきました。一回だと塗面が痩せてしまうので、複数回同じ作業を繰り返します。なお、現在クリア系の補修素材はクリアレジンやクリア瞬間接着剤などもあるので、それでも対応可能でしょう。
クリア層の剥離(慎重に)
レベル1補修の際はマホガニーウッドの下地になるまで(クリア層+ニス塗面)剥離を行いましたが、今回は可能な限り元の塗装や「5MT」の刻印を残せないかチャレンジしてみます。
まずは、比較的浅い番手のヤスリ(800番)で表面のクリア層のみを削っていきます。慎重かつ大胆に、ニスの塗面を傷つけないように作業をすすめ、シフトノブの上面に出ていた斑(まだら)模様と塗面に僅かな隙間ができました。
その隙間にパーツセパレーターを差し込んで、クリア層のみを剥離していきます。全体を剥けるかと思ったら下半分はクリア層は密着層が生きていたので、剥がせるギリギリを攻めていきます。
境界の段差はパーツクリーナーを吹きながら状況確認をしていきます。濡れた状態で艶が出るならばクリアを拭いても大丈夫です。「5MT」の刻印は金色の文字は削れてしまいましたが、下地に描かれたものは残すことができました。
クリア層の復活
シフトノブ全体の塗面を1500番のヤスリで一皮剝いてから、別途購入していたナルディ(ND)バッジをはめ込みます。そして、クリアペイントを15分間隔で8回ほどでしょうか、塗り重ねていきました。
このままでは「クリアが残っている部分」と「剥がした部分」の段差が残っているので、2日ほど放置して完全硬化させた後に、段差部分をヤスリで削ってなだらかにしていきます。
その後、改めてクリアを吹き重ね表面を整え・・・乾燥させて段差を削るのを4回ほど繰り返しました。すると、やっと気にならないレベルまで復活させることができました。
最終的にコンパウンドをかけ、表面のヌルっとした艶を復活させて完成です。
復活、ナルディダークウッド・シフトノブ
練習のためとはいえ、気づけばナルディウッドのシフトノブが手元に3本・・・どれも素人補修なので完璧とはいえませんが、いつも手にする愛車のパーツが復活できたことは、想定以上に嬉しいものでした。
ちなみに、一番大変だったのは「待ち時間」。塗面が乾かないと次の作業に入れないのですが、すぐに削り作業を行いたくてヤキモキするんですよね。ヒートガン等で強制乾燥させてもいいのですが、ウッドが割れたら笑えないので自然乾燥で我慢しました。なお、本来は1週間ほど乾かすのがベストとされています。
正直、補修のプロフェッショナルには笑われてしまうでしょうが・・・意外とDIYでも何とかなるんだなぁと実感できました。明日からのドライブでシフトチェンジをする度に、パーツの愛着が深まっていく気がします!
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