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相手に合わせて会話は変わる
好きな映画は?好きな漫画は?好きな本は?好きなアニメは?
例えば少し仲良くなった相手と、こんな話題になることがあります。でも、返答はそうそう簡単ではないはず・・・なぜなら、時や場所、立場や環境、関係性や相手の「濃さ」によって、話す内容を微妙に変えると思うのです。
濃さって何かといわれたら、例えば「シン・エヴァンゲリオンの評価はどうでした?」って聞かれて、相手がガチかどうか判断うやつです。取り急ぎ「○○さんにとってのエヴァの好きなところは?」なんて聞いてみます。そうでないと、痛々しい空気になってしまうからです。
同じように、我々クルマ趣味の界隈では避けられない話題が「好きなクルマは?」とか「なに乗ってるの?」なんて質問です。そこでNBロードスター気に入ってるなんていえば、続いて「どんなところがいいの?」なんて流れになるはず。
そこで「ヨー慣性モーメントが・・・(早口)」「小型軽量でFRは・・・(早口)」「ブリティッシュライトウェイトスポーツが(早口)・・・」なんていきなり暴走しても、ウンウンうなづいてくれる人は稀だと思います。
先方がクルマ趣味を理解しており、ある程度の前提知識があれば問題なさそうですが、普通は「何だコイツめんどくさ」と思われてもおかしくありません。そもそもNBってなんだよ?スニーカーか?なんてことになっているかもしれません。
私自身、当ウェブサイトでウンチクを垂れている身ですから、持っている知識は全身全霊で語りたくなるし、できれば共感して欲しいなんて甘いことを思っています。アクセスが増えれば承認欲求は満たされますし・・・ネット社会で「イイね」「グッドボタン」なんて客観的な指標も存在します。チヤホヤされると一気に鼻が伸びてしまいます。
でも、これはかなり危険ですよね。こういった成功体験(?)は、日常生活においては毒にしかなりません。暴走してしまうと、たまに見かける「自分の話ばっかりしている痛い奴」になってしまうでしょう。コミュニケーションは相手とのキャッチボール。そこを見極めないと大怪我します!
そこで今回は「NBロードスター(NB6C)がお気に入りである」という前提をもって、想定回答をつらつら書いていこうと思います。もちろんリアルのコミュニケでは少しアレンジがはいるでしょうが、基本的にほぼ近しいことをいうはずです。ある意味、このサイト著者の偏屈さを共有できればと思います。
NBロードスターにおいて・・・
①良さとか楽しさってどんなところ?
②不満とか嫌なことはないの?
③どんなところを気にいってるの?(見た目)
④どんなところを気に入ってるの?(ユーティリティ)
⑤どんなところを気に入ってるの?(メカ)
上記どれが相手のツボに入るか(共感を得られるか)を想定しながら、著者なりの回答です。
普通の人への回答:肩ひじ張らずに楽しめる
①肩ひじ張らないオープンカー
中古車でもまだ比較的リーズナブルだし、気軽にオープンカーが楽しめる存在です。修理する部品も何とかなるし、そもそもあまり壊れません(嘘)。私のような裕福ではない家族持ちであっても、環境が許せばお金をかけず・・・つまり肩ひじ張らないでオープンスポーツカーを楽しめるのが魅力です。
②積載量は要確認
個人的には、日常使いでの不便は意外に少ないのですが・・・所詮は2シーターなのでトランクの容量、つまり積載性は確認したほうがいいかも。2Lサイズの水をダースで買っても段ボールが乗らなくて、箱を分解する羽目になりました。燃費もレギュラーでリッター10前後くらいだから、今の時代ではガソリン代もそれなりにかかります。幌は意外に雨漏は少ないけど、ほっとくとボロくなるのでいつか交換する必要があります。
③セブンに続くボディライン
当時は派手なスポーツかーのライバルも多かったので、クラシカルな雰囲気(古臭い)で不人気だったけれど、うねうね抑揚の効いたボディラインは今時のクルマに存在しないので、実車は一見の価値ありです。有名なRX-7(マツダスポーツ)のデザイン系譜にあるので、特に後ろのタイヤ(フェンダーフレア)やトランクあたりの造形に注目してください。
④オープンカーらしい味わい
なんといっても幌がいい感じです。ふたつのアタッチメントを外すだけで直ぐにオープンカーにできる手軽さや、雨が当たると傘のようなポツポツした音が鳴るのが味わい深いんです。ダッシュボードやコンソールに「鍵」が掛かるのもオープンカーならではの仕様かも。パワーウインドウスイッチが中央にあったり、サイドブレーキが助手席側に付いているのも珍しいですよね。
⑤運転がうまくなったと錯覚する
クルマ自体がコンパクトで軽い(軽量)ので、少し走って角を曲がるだけで軽快さを感じることができます。また、ハンドルやアクセルに機敏に反応するから、クルマが思った通りの動きをしてくれる感じがします。ロードスターではこれを「人馬一体(=乗って楽しい)」というのですが、その言葉通りそれが気持ちいいんです。実はATであっても乗り味は一緒なので、こちらでも十分に楽しめます!
そこそこ知っている人への回答:90年代スポーツカー最後の世代
①90年代スポーツカー最後の世代
ロードスターの有名な「人馬一体(=乗って楽しい)」という乗り味は、初代から現行型まで基本的に同じです。むしろ、NBは電子制御もそこそこな90年代スポーツカーの最後の世代なので、アナログセッティング、つまりエンジニアの秘蔵のレシピで「楽しさ」を作りあげているのが見所です。あの時代のクルマを比較的アフォーダブル(お手軽)に楽しめるのはNBロードスターが最後であり、今がチャンスと思っています。
②控えめにいって「安全」ではない
カタログスペックのパワーがそもそも出ていない、のんびりしたクルマです。衝突安全ボディですが、目に見えるセーフティはABSとエアバックくらいしかなく、万が一のリスクを覚悟して自己責任で乗るクルマです。このご時世で補修パーツも値段が上がっているので、維持にはある程度の覚悟が必要かもしれません。
③分かりやすいスポーツカールック
NBロードスターは先代ユーノスロードスター、センティアからはじまり、RX-7やプレッソなど90年代のマツダにおけるデザインテーマ「ときめきのデザイン」系譜における最後の一台になります。クルマをフォルム全体で魅せるのが特徴で、分かりやすいスポーツカールック・・・ロングノーズ・ショートデッキ、コークボトルシェイプを採用していることに注目してください。リアフェンダーフレアのセクシーな抑揚や、ウイングレスでもカッコいいダックテールなんて色っぽいですよ。
④古き良きオープンカーらしく
走るための機能に全振りしているクルマなので、インテリアもオープンカーらしく対候性を考慮した素材であったり、最低限のユーティリティしか付いていません。ただし、演出は忘れていないのでシンプルなT字型ダッシュボードや円形ルーバーは古き良きスポーツカーのDNAを継いでいます。実はヒーターがガンガン効くので、冬のオープン走行が最高に楽しいです。
⑤床までアクセルを踏んで欲しい
縦置きエンジンのFRレイアウトなんて現代では高級車しかないレアな駆動方式ですが、そんな後輪駆動のハンドリングを手軽に味わるのが魅力のひとつです。操舵系はほぼアナログ制御なのでダイレクトなレスポンスを楽しめるし、100馬力程度しか出ていエンジンなので、床までアクセルを踏んでビンビンに回すことができます。決して速くはないけれど、人馬一体を体験して欲しい!
ガチな人への回答:まずはトランクルームを見て
①自分の腕が試せます
バブル時代(90年代)の日本車は、メーカーをまたいであらゆる分野で「世界一」を目指していました。NBロードスターはそんな日本車の最後の世代であり、職人がアナログセッティングで極めた奇跡の乗り味を楽しめます。デビュー時は先代よりも「重くなった」「安定志向になった」なんていわれたけれどとんでもない。グローバルカーとして欧州寄りのセットに変えただけで、基本的なメカは同じです。追加されたドライバー補助はABS(しかも一部のグレードのみ)くらいだし、むしろ「軽さは性能」であることと、自分の腕を試せます。
②メンテナンスコストの覚悟が必要
ボディ剛性は必要最低限ありますが、剛性感はそれほど高くありません。経年劣化で発生する錆を始め、年式相応にあらゆるパーツがいきなりぶっ壊れるので、ある程度のメンテナンスを行う時間やコストの余裕が必要です。保安基準強化(車検)でかつてOKだったパーツもNGになることがあり、自身のアップデートも必要です。その分きちっと仕上げると、クルマはシャキっとしてくれます。
③最後の5ナンバースポーツ
国産車最後の5ナンバーサイズ・オープンクーペであり、決められたサイズのなかで薄いボンネットやロングノーズ・ショートデッキを実現したプロポーションは奇跡的で、とても美しく仕上がっています。後期型のコントラストインハーモニー(5角形グリルデザイン)を取り入れたマツダファミリーフェイスはRX-7と共通であり、素直にカッコいいブランドアイコンの魅せ方です。かつて無個性といわれたフラップ型のドアハンドルも、今やポルシェなどの高級車がデザイン回帰して採用しているのは面白いところです。
④オープンカーならではの造り
グレードに合わせてエレガント、スポーティ、カジュアルというデザインテーマが設定されており、オープンカーならではのコーディネートが演出されています。注目して欲しいのはシートバックで、オープン走行時にでいきなり雨が降ってきてもすぐに対応できるよう、あえて全車ビニール素材が採用されています。シートを前に倒して駐車しているロードスターは「分かっている人」なので、見かけたらその人から面白い話が聴けるでしょう。クラシカルな三角窓もキュートですが実益を兼ねていて、これはオープン時の清流効果やAピラーの振動や漏水を防止する意図があります。
⑤トランクルームを見て欲しい
注目して欲しいのはトランクルームです。マットをよけると床面をくりぬいてバッテリーとスペアタイヤが収まっています。重量物を低く・中央に行うレイアウトを意図したもので、当時の国産車でもここまで変態的にこだわるのはGT-R(33以降)やNSX、S2000くらい。たかが200万の量産スポーツカーでこれをやりきるマツダの姿勢に驚愕できます。機会があればバンパーを外した姿も必見で、オーバーハングに重量物がほぼないスッカスカであることが分かります。つまり、慣性モーメント低減のための仕様です。重めなパワステや5MTのダイレクトなセッティングはご褒美で、操作するだけで脳汁が溢れてきます。
同類への回答:NBを知らないなんて勿体ない!
①ユーノスの最終進化モデル
生きるレジェンド、ユーノスロードスターの最終進化系であるところが大きな魅力です。オリジナルから15年熟成させたシャシーセッティングは、歴代ロードスターの「乗り味」を比較するのであれば、体験しておかないと絶対に損です。NBは見た目で損をした世代ですが、もともと中身で勝負することを意図したクルマです。ちなみにNBロードスターは以降の「全てのマツダ車」におけるハンドリングのベンチマークに設定されています。
②トラブルを楽しむ器量が必要
強いていうならリトラクタブルヘッドライトの廃止が残念でしたが、走行限界域を上げたセッティングもユーノス派の人にとっては、いうほど「ひらひら」に感じないので不満かも知れません。また、突然色々な部分がぶっ壊れるので、オーナーにはトラブルを楽しめる器量が必要です。
③実は「元に戻した」デザイン
先代はレギュレーションで固定ヘッドライトができず、代替案としてターンシグナルランプ(フロントウインカー)を配置したけれど、NBロードスターはそれを「元のデザイン」に戻しているのがポイント。ある意味でオリジナルデザインに回帰しているのです。また、ユーノスから3mm(片側1.5mm)しか全幅は変わっていないのに、実車では印象が大きく異なるところも見て欲しいです。実はサイドミラーの位置が前方に移設されて、機能性向上だけでなくデザインでスピード感を強調したりと、細やかにスポーツカールックを作り込んでいたりします。
④先代より圧倒的な質感向上
インテリアは先代から圧倒的に質感が向上しています。特にドアが厚くなり「重い音」で閉まるようになったことに注目してください。実は、室内空間が先代よりも若干タイトになっていますが、普通は気づかないかも知れませんね。後期型のリトラクタブル・カップホルダーはセンターコンソールの有効な使い方として特筆すべきアイディア。場所柄、コーヒーウォーマー(保温)の役割も兼ねています。
⑤現行型に匹敵するポテンシャル
バンパーの裏面が塞がれていたり、各種アームが太くなっていたりと、見えないところでクルマとしての信頼度を高めています。ボディ底面の堅牢なブレースバーのおかげで、キャビン周りもスッキリしました。直進安定性も向上しているのでロングツーリングでも疲れにくく、ハードトップを装着すると、曲げ、ねじり剛性ともNDロードスターのレベルになれるオマケつきです!
以上、つらつらと書きましたが、もちろんこれが絶対ではありません。会話する相手の趣味嗜好、例えばどんなジャンルのクルマが好きか、どんなカーライフを送っているのか、その他趣味はないのか・・・などに合わせて内容はアレンジされていきます。脳みそは密かにフル回転しているんです。
以上、しょうもないトピックでしたが・・・今後、人工知能が色々答えてくれる時代になっていくなかで、アナログ世代最後のアーカイブとして、生の声が残せればと思います。まーいろいろ講釈を垂れましたが、ひとことでいうと「NBロードスターはいいぞ」です!
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