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自動車税の時期に思うこと
5月になると届く「自動車税」通知は、一般公道を利用する身としては必要経費として捉えるべきコストです。だって、スポーツカー乗りの私たちが一番公道を楽しんでいるといっても過言ではないですからね。アスファルトだって無料じゃありません。
また、新車登録から13年経過したクルマの税額が上昇するのは財布に厳しいけれど、これは排出ガス(排気ガス)が地球環境に悪影響を与えるからというロジックです。ちなみに、電気自動車やハイブリッドカーなどのエコカーは、重課税の対象から外れるそうですが、ロードスターのようなスポーツカーはその限りではありませんね。
電池を作る方がCO2排出量が多いとか、古い機械を維持する方がエコだとか様々な意見はあるかもしれませんが、それは別の話なので横に置いといて・・・ここで気になったのが他国における税金制度です。
日本はクルマの維持にお金がかかる・・・なんて、思うのも癪なので、今回はベンチーマークとして「2003年式のマツダロードスター(NB6C及び、同等スペックの車両)」を2025年に所有する場合に課される【年間税額】について、主要都市における調査を行ってみました。
なお、税制は各国により大きく異なります。車齢、排出ガス性能、車両重量、エンジン排気量、さらには各都市、地域の政策(環境対策、交通量抑制など)によって大きく変動するのです。日本やシンガポールのように車齢に応じて税負担が増加する国がある一方で、欧米では排出ガス基準や利用状況に応じた課金となる傾向がありました。
ベンチマーク NBロードスター(NB6C:2003年式)
本調査は「2003年式マツダNB6Cロードスター(NR-A)」をベンチマークに、2025年時点での年間税負担を計算しています。北米などNB6Cが販売されていなかった地域については(※NB8Cのみの販売だった)、この仕様に即した計算をしています。あくまで当サイトの調査になりますので、細かな差異があることは留意頂ければ助かります。
・モデル年式:2003年
・2025年時点の車齢:22年
・エンジン排気量:1600cc (1.6L)
・エンジン出力:約125馬力 (約93kW)
・車両重量 (空車重量/乾燥重量):1050kg (約2315ポンド)
・燃料種類:ガソリン
・CO2排出量:193g/km
この数値は、同年代の1.6L NBロードスターのデータに基づくものであり、英国やドイツ、フランス(新規登録時のMalus税)など、CO2排出量に基づく税制を持つ地域での計算に用いられます
・排出ガス基準:Euro3
2003年モデルの欧州仕様車の場合、Euro3基準に適合しています。これはドイツのKfz-Steuer(自動車税)や、その他低排出ガスゾーンへのアクセス可否に関連します
課税(費用)範囲
本調査は2025年における年間または定期的に発生する、車両の所有、運行に関連する税金、義務的費用を対象としています。具体的には自動車税(日本)、道路税(英国等)、車両登録更新料、重量税、排出ガス関連税、および義務的な検査費用(該当する場合は年額換算)を含んでいます。輸入関税や初回購入時の取得税など、一時的な税金は範囲外としています。
通貨および為替レート
各地域での税額は現地通貨で提示します。比較分析のため、これらの金額は日本円(JPY)に換算します。換算には2025年5月時点の為替レートを用いています。
1ユーロ (EUR) = 163.4 日本円 (JPY)
1英ポンド (GBP) = 193.5 日本円 (JPY)
1オーストラリアドル (AUD) = 93.0 日本円 (JPY)
1シンガポールドル (SGD) = 111.9 日本円 (JPY)
1ニュー台湾ドル (TWD) = 4.8 日本円 (JPY)
日本における自動車関連税(2025年)
「2003年式NB6Cロードスター」を2025年に所有する場合、日本国内では自動車税(種別割)と自動車重量税が課されます。これらのは車両の排気量、重量、そして車齢に基づいて算出され、特に旧車にはご存じの通り重課制度が適用されます。
自動車税(種別割)
自動車税は、毎年4月1日時点の車両所有者に対して課される地方税です。税額はエンジンの総排気量によって決定されます。NB6Cの排気量は1600ccであるため「1.5リットル超2.0リットル以下」の区分になり、さらにガソリン車の場合は新規登録から13年を経過すると環境負荷が大きいとみなされ、約15%の重課がなされます。2025年時点で車齢22年となるNB6Cは、この対象となり、年間自動車税額は45,400円になります。
自動車重量税(※車検時に支払うもの)
自動車重量税は、車両重量に応じて課される国税です。通常は車検時に次の車検有効期間分(自家用乗用車の場合は通常2年間)をまとめて納付します。NB6Cの車両重量は1,050kgであるため、「車両重量1トン超1.5トン以下」の区分に該当します。
自動車重量税も新規登録から13年経過、さらに18年経過の段階で税率が引き上げられます。2025年時点で車齢22年となるNB6Cは「18年超の区分」に該当するので、この区分における2年自家用の自動車重量税額は37,800円。したがって、年額換算(1/2)では18,900円となります。
自賠責保険料(※車検時に支払うもの)
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、法律によって加入が義務付けられる強制保険です。税金ではありませんが、車検時に更新が必須なので固定費の一部とみなせるでしょう。保険料は車種や保険期間によって異なり、若干の変動があります。2024年初頭時点での自家用乗用車(24ヶ月契約)の保険料は約17,650円(※2025年の保険料は現時点では未確定)、これを年額換算すると約8,825円になります。
日本における年間税負担および義務的費用の推定総額
費目 | 根拠 | 年額(円) |
自動車税(種別割)(重課適用) | 排気量1.5L超2.0L以下、13年超 | 45,400円 |
自動車重量税(重課適用) | 車両重量1t超1.5t以下、18年超(みなし年額換算) | 18,900円 |
自賠責保険料(推定) | 24ヶ月契約(みなし年額換算) | 8,825円 |
年間合計 | 73,125円 |
参考)その他維持にかかる費用(上記金額意外)
車検時には上記(自動車重量税、自賠責保険料)の他に、検査手数料(印紙、証紙代)および整備工場やディーラーに支払う検査代行手数料や整備費用が発生します。特に整備費用はクルマのコンディションによって大きく変動します。直接的な税負担ではありませんが、車両維持における重要なコストであることを留意する必要があります。また、任意の自動車保険料、駐車場代、燃料費なども想定されるでしょう。
日本の税制は、旧車に対して経済的負担増を課しており、これはNB6Cのような趣味性の高い車両であっても例外ではありません。愛好家にとっては「モダンクラシック」の価値があるかもしれませんが、現行の税制度上は単に「古い車」として扱われ、今後ドイツの「Hナンバー(ヒストリックナンバー)」制度のような税制上の優遇措置も期待できなさそうです。
北米における自動車関連税制 (2025年)
ニューヨーク(アメリカ合衆国、ニューヨーク州)
ニューヨーク州の制度は、重量に基づく登録料と地域固有の追加料金、そして年次の安全検査、排出ガス検査で構成されています。車両の古さ(22年)により追加料金が発生することはありません。
対象車両 2003年式マツダ・ミアータ(1050kg/2315 lbs)
登録料(2年間、重量別)
車両重量2315ポンドは「2251-2350 lbs」の区分に該当し、2年間の登録料は37.5ドル、年換算 37.5ドル÷2=18.75ドル
ニューヨーク市固有追加料金(2年間)
車両使用税 (Vehicle Use Tax) 30.0ドル、年換算15.0ドル
MCTD追加料金 (Supplemental MCTD Fee)50.0ドル、年換算25.0ドル
州検査料(年間)
①安全検査 10.0ドル(10,001ポンド未満の小型車)
②排出ガス検査 (OBD II、1996年以降の車両) 27.0ドル(ニューヨーク都市圏)
年間検査費用合計 10.0ドル+27.0ドル=37.0ドル
18.75ドル(登録料)+ 15.0ドル(市使用税) + 25.0ドル(MCTD追加料金)+ 37.0ドル(検査料) = 95.75米ドル、日本円換算(95.75ドル × 145.2円) 約13,900円
ロサンゼルス(アメリカ合衆国、カリフォルニア州)
カリフォルニア州は固定料金と車両価値に基づく料金(VLF、TIF)の組み合わせになります。隔年のスモッグチェックは環境基準遵守の重要な要素です。車両の古さはVLFを通じて「価値の減価」の影響はありますが、登録料自体の加齢ペナルティはありません。VLFが時価評価額に基づくため、NB6Cのような旧車はこの部分の負担が軽減されます。
対象車両 2003年式マツダ・ミアータ
車両重量1050kg、推定車両価値3,000ドル → 約45万円とみなします
年間登録料 (Registration Fe) 74.0ドル
カリフォルニア州高速道路パトロール料 (CHP Fee) 年間32.0ドル
車両ライセンス料 (VLF – Vehicle License Fee)
車両市場価値の0.65%、推定価値3,00ドルの場合19.5ドル、車齢11年超で減額されますが、22年落ちの車両では最低料率に近い想定で計算します
交通改善料(TIF – Transportation Improvement Fee)
車両価値に基づくもの、0~4,999ドルの車両で32.0ドル
道路改善料(RIF – Road Improvement Fee)
2020年式以降のゼロエミッション車が対象であり、NB6Cには適用されません
スモッグチェック料 (隔年)
8年超の車両に義務付け、2000年式以降の車両は検査料65.75ドル+証明書料8.25ドル=計74.0ドル、年換算37.0ドル
74.0ドル(登録料) + 32.0ドル (CHP料) + 19.5ドル (VLF) + 32.0ドル (TIF) + 37.0ドル (スモッグチェック年換算) = 194.5ドル、日本円換算 194.5ドル × 145.2円 = 約28,237円
欧州における自動車関連税制 (2025年)
ロンドン(英国)
ロンドンの年間税となるVEDはCO2排出量に基づいて決定されます。また、ロンドンのような大都市ではULEZ(日々の利用料)を「排出ガス基準を満たさない車両」に対する経済負担として課しています。これは都市部における大気質改善を目的とした政策です。
対象車両 2003年式マツダ・MX-5(1600cc、CO2排出量193g/km、Euro3相当)
車両物品税(VED – Vehicle Excise Duty)年間
・2001年3月1日から2017年3月31日までに登録された車両はCO2排出量に基づく
・CO2排出量193 g/kmは、税区分バンドJ (186-200g/km) に該当
・2025/2026年度のバンドJの年間税率は395ポンド
超低排出ゾーン (ULEZ – Ultra Low Emission Zone) 料金
(ロンドン市内、ゾーン内走行時日額)
・2003年式ガソリン車(Euro3相当)は、ULEZ基準(ガソリン車はEuro4以上)を満たさない
・ゾーン内を走行する場合の日額料金12.50ポンド(約2,419円)※年間固定税ではなく、利用に応じた費用
渋滞税 (Congestion Charge)
(ロンドン中心部、課金時間帯のゾーン内走行時日額)
・日額料金 15ポンド(約2,903円)※ULEZ同様、利用に応じた費用
・日本円換算 395ポンド × 193.5円 = 約76,421円
※ULEZおよび渋滞税は、利用頻度により年間で大きな追加費用となる可能性高い
ベルリン(ドイツ)
ドイツの自動車税は単純明快で、エンジン排気量と排出ガス基準に基づきます。都市部のアクセス規制は存在するものの、一度「環境ステッカー」を取得すれば、車両が車検を満たす限り追加費用は発生しません。
対象車両 2003年式マツダ・MX-5((1600ccガソリン、Euro3排出ガス基準)
自動車税(Kfz-Steuer)年間
・2009年7月1日以前に初回登録されたガソリン車(2003年式が該当)の税額は、エンジン排気量(100cc単位)と排出ガス基準(Euro基準)に基づいて算出される
・Euro3基準のガソリン車に対する税率 100ccあたり6.75ユーロ
・計算(1600cc / 100cc) × 6.75ユーロ = 16 × 6.75ユーロ = 108ユーロ
環境ゾーンステッカー(Umweltplakette)
・ベルリンには環境ゾーン (Umweltzone) が設定されており、ゾーン内への進入には適合ステッカーが必要です。Euro3ガソリン車は通常、緑色のステッカー(Grüne Plakette)を取得可能。これは一回限りの購入費用(約5~15ユーロ)であり、年間税ではありません
日本円換算 108ユーロ × 163.4円 = 約17,643円
※ドイツは税額単体で見ると安価に見えるが、保険料や燃料費(リッター275円)など、変動要素が高い
アジア・オセアニアにおける自動車関連税制 (2025年)
シンガポール
シンガポールは基本税率が高く、車齢に応じた大幅な追加料金が課されるため、旧車の所有コストは高額になります。これは、狭い国土の都市国家における車両台数の抑制と、より環境性能の高い新車購入を促すための政策とされています。
対象車両 2003年式マツダ・MX-5(1600cc、2025年時点で車齢22年)
年間道路税(Road Tax)
基本道路税(排気量1,001cc~1,600ccのガソリン車)
・6ヶ月分の計算式 [$250 + 0.375×(EC−1,000)] × 0.782 ※ECはエンジン排気量(cc)
・1600ccの場合 [$250 + $0.375 × (1600 – 1000)] × 0.782 = [$250 + $225] × 0.782 = 475 × 0.782 = 371.45シンガポールドル(6ヶ月分)
・年間基本道路税 $371.45 × 2 = 742.90シンガポールドル。
車齢10年超車両に対する道路税追加料金
・車齢22年は「14年超」の区分に該当
・追加料金率 道路税の+50%
・追加料金額 $742.90 × 0.50 = 371.45シンガポールドル
$742.90 (基本) + 371.45 (追加料金) = 1,114.35シンガポールドル
日本円換算 $1,114.35 × 111.9円 = 約124,680円
シドニー(オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)
ニューサウスウェールズ州の登録関連費用は固定の登録料、重量ベースの車両税、変動の大きいCTP保険料、そして安全検査料から構成されます。車齢による重課はありませんが、CTP保険料は車両や運転者のリスク要因によって変動します。
対象車両 2003年式マツダ・MX-5(車両重量1,050kg)
年間登録料 (Registration Fee) 79豪ドル※全車両一律
年間車両税 (Motor Vehicle Tax – 自家用、車両重量別)
・車両重量1050kgは「976~1154 kg」の区分に該当、自家用の場合の税額 308豪ドル
強制第三者賠償保険(CTP – Compulsory Third Party Insurance “Green Slip”)年間
・車両登録に必須。保険料は車両、運転者情報、地域等により変動
・2003年式マツダMX-5、運転者40歳、無事故無違反、シドニー(郵便番号2000)での車庫保管と仮定
・保険料は大きく変動し、約427~742豪ドルの範囲とされていますが、正確な見積もりは公式の「Green Slip Price Check」を使用する必要があります。今回は中間推定値として575豪ドルを使用、変動要素と捉えます
年間安全検査料(”Pink Slip” / e-Safety Check)
5年超の多くの小型車で登録更新に必要、小型車の検査料 49豪ドル
79豪ドル(登録料) + 308豪ドル(車両税) + 575豪ドル(CTP推定) + 49豪ドル(安全検査料) = 1,011豪ドル
日本円換算 $1,011 × 93.0円 = 約94,000円
台北(台湾)
台湾の年間車両関連税は、エンジン排気量に基づいた牌照税(ばんしょうぜい)と燃料費に課される、比較的シンプルな体系です。旧車であることが年間税に影響することはありません。
対象車両 2003年式マツダ・MX-5(1600cc)
年間牌照税 (Vehicle License Tax)
自家用小型乗用車、排気量1201cc~1800cc 7,120ニュー台湾ドル
年間燃料費 (Fuel Tax)
自家用小型乗用車、排気量1201cc~1800cc 4,800ニュー台湾ドル
7,120ニュー台湾ドル (牌照税) + 4,800ニュー台湾ドル (燃料費) = 11,920ニュー台湾ドル
日本円換算 $11,920 × 4.8円 = 約57,300円
趣味車における税金の現実
都市 (国) | 現地通貨での 年間推定総税負担額 |
日本円換算 (約) | 米ドル換算 (約) | ガソリン価格 日本円換算 (約)/L |
|
日本 | 73,125円 | 504 USD | 177.9円 | ||
ニューヨーク市 (米国) | 95.75 USD | 13,900円 | 96 USD | 119.47円 | |
ロサンゼルス市 (米国) | 194.50 USD | 28,237円 | 195 USD | 183.64円 | |
ロンドン (英国) | 395 GBP (VEDのみ) | 76,421円 | 526 USD | 259.33円 | |
ベルリン (ドイツ) | 108 EUR | 17,643円 | 122 USD | 274.77円 | |
シンガポール | 1,114.35 SGD | 124,680円 | 859 USD | 415.21円 | |
シドニー (オーストラリア) | 1,011 AUD (CTP変動あり) | 94,000円 | 647 USD | 167.25円 | |
台北 (台湾) | 11,920 TWD | 57,300円 | 395 USD | 125.46円 |
※2025年5月時点の算定
NB6Cロードスターのような発売から20年以上経過した「モダンクラシック」とされる車両も、多くの税制下では単なる「古いクルマ」として扱われ、特別な配慮がなされることは現時点でありません。
ドイツのHナンバー(ヒストリックナンバー)制度のような、一定年数(30年以上)を経過した文化財的価値のある車両に対する税制優遇措置の対象となるには、NB6Cはまだ車齢が若く、標準的な旧型車と同様の税負担、あるいは環境負荷や安全基準の観点から重課税の対象となっていました。
特に、欧州の大都市圏においては固定税金以上に、低排出ガスゾーン(LEZ/ULEZ)や渋滞課金ゾーンへの利用料が経済的負担となっているようです。NB6CのようなEuro3相当の車両は高額な利用料の対象となるか、あるいは乗り入れ自体が制限されており、日常シーンでの利用が低減せざるをえない実情もあるようです。
旧車所有の負担は経済的な問題であるだけでなく、各国の環境政策、産業振興、交通インフラ維持といった多様な政策目的が複雑に絡み合った結果として形成されています。私たちにとって価値のある車両も、現時点ではまだまだシビアにみられているのが現状のようです。税金が高いのは財布が寂しくなりますが、世界的な傾向をみていると仕方がないのかも知れませんね。
さて、そう考えると日本の税負担は思うほど高いわけではないかも・・・知れませんね。ガソリン車が乗れるうちに、楽しんでおきましょう!
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