NBロードスター 海外仕様ユーティリティ

NBロードスター 海外仕様ユーティリティ

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今回はNBロードスターとMiata(北米仕様)、MX-5(欧州仕様)のちょっとした違いのご紹介です。

国内仕様と海外仕様の違い


歴代ロードスターはスポーツカーとして「走る、曲がる、止まる」の要件を満たすためのコストは惜しまずに注がれる一方、なるべくアフォータブル(安価に市場提供)にするため、他マツダ車とさまざまな共用部品を活用し、ライトウェイトスポーツとしての「軽さ」を実現させています。

人馬一体のハンドリングは「乗ったら良さが分かる」とされる通り、ロードスターならではの体験です。ただ、約30年支持された理由は、それだけではありません。

それは、ツーシーターでありながらも「普段使いが出来る」という事が、モデル継続できた理由のひとつであると開発主査は語っています。

一方、ロードスターはグローバルカーなので、「普段使い」のレベルは市場によって異なります。「軽く、安く」とセーブする一方で、最低限必要な要望がマーケットごとにあるのです。そこで今回は、国内ではお目にかかることの少ない、海外特有の機能(ユーティリティ)をご紹介します。

現在ではデフォルトになっている機能でも、NBロードスター現役当時(約20年前)では珍しいものだった回顧録でもあります。


前提としてNBロードスター(国内仕様)を確認すると、ステアリングラック脇の「使っていないスイッチホール」や、エアコンパネル下に「使いづらいポケット」が存在します。海外仕様ではここに機能集約されているのが特徴です。

MX-5 欧州仕様 ※一部Miata含む


1)バックフォグ(リアフォグランプ)
欧州では1975年以降、すべての新型車へ義務化れているのがバックフォグです。フォグ(霧)の名の通り、濃霧などで視界が制限される場合において、後方からの被視認性を向上させる目的で設置される「赤色の灯火」を指します。通常のテールランプよりも明るく、制動灯(ブレーキライト)と同等の明るさを持ちます。


バックフォグ装備の配置レギュレーションはセンターライン側になるので、左側通行の英国は右側に、それ以外の欧州仕様は左側のテールランプユニットにバックフォグが配されます。

保安基準ではヘッドランプまたはフロントフォグのスイッチが入っていないとバックフォグは点灯できず、ヘッドランプを消灯するとバックフォグは再度スイッチ入れて起動する構造が義務づけられています。


2)ヘッドライトレベリング

こちらは手動でヘッドライトの照射範囲(上下方向)を調整する機能です。乗員の増減や荷物の有無、走行時の加減速により、車両の前後傾斜があった際のヘッドライトによる周囲への眩惑防止、および必要な照射範囲の確保を図るものになります。


こちらは前期型(NB1)のコンソールになりますが、国内仕様のNBではシガレットソケット脇の「小物入れ」の場所に、左から「バックフォグ」と「レベリング」のスイッチが配置されています。


3)シートヒーター(後期型)
欧州向け仕様のMX-5後期型(NB2以降)にて採用された機能で、運転席・助手席別に使用することが可能です。その名の通り、シートに直接組み込むヒーターで、シートクッションの間に、電気抵抗タイプのユニットが組み込まれています。そのルーツは、寒冷地にて乗車直後の暖房用として開発されたもので、主暖房により室温が上昇するまでの間のつなぎや、室内を乾燥させずに暖がとれるというメリットがあります。


なお、スイッチは前期型で「バックフォグ」にあった場所に配され、バックフォグのスイッチ自体はステアリング脇の「フロントフォグ」スイッチの脇に移動しています。


4)イルミネーションコントロール(Miata含む)
メーターの照度を変えることの出来る機能です。光度により運転者の視力に負担をかけないための機能で、レギュレーションがあるわけではないのですが、海外では一般的な機能になります。場所はフォグスイッチの内側に配されています。


5)イモビライザー(Miata含む)
イモビライザーとは盗難防止装置です。始動キーの電子チップに埋め込まれたIDコードを車両側が照合し、一致すればエンジンが始動する仕組みです。したがって、合鍵でドアを開けエンジンを始動させようとしても、IDコードが一致しない限りエンジンを始動させることができません。また、認証処理はキーと車両間でトランスポンダ(認証回路)を介して複数回行われ、全ての認証が成功しなければエンジンは始動しません。

国内のロードスターは、マスターキーにIDが記載されているので、それをディーラーに告げると合鍵を作ってくれますよね・・・


6)ヘッドレスト
欧州の安全基準に沿ってNBロードスター前期型(NB1)まではシートが分割ヘッドレストで構成されていました(※NAロードスターも同じく分割されていた)。なお、NBロードスター後期型(NB2以降)はシートが世界共通仕様になり、ヘッドレスト一体型のものへマイナーチェンジされています。その影響で頭部保護の面積が広くなり、シートの背が高くなっています。

MX-5 Miata 北米仕様


1)サイドマーカーランプ
米国のレギュレーションにある、前後フェンダーの標識ランプです。点灯によりクルマがどちらを向いているか視認しやすくなります。フロントは黄色、リヤは赤色となっており、いずれもリフレクターとの組み合わせが必要になります。(他地域仕様ではリフレクターのみ)

余談ですがNCロードスター以降は、国内仕様ではマーカー自体が廃されています。


2)エアバックキャンセラー(助手席)
助手席のエアバックを意図的に作動停止する機能です。これは、エアバック展開時の衝撃でリスクが発生する可能性の高い、妊婦や小さな子供を乗せて走るユーザーへの配慮になります。特にNB後期型(3型以降)はISO-FIXチャイルドシート用のフックが標準装備されることから、ロードスターはそういったニードがありました。


ただ、自動車業界では子供は「後席に乗せること」を推奨しており、乳児用シートなど後ろ向きに取り付ける方式のチャイルドシートの助手席取り付けは不可としています。やむを得ず助手席にチャイルドシートを取り付けるときは助手席シートを一番後ろまで下げ、かつ前向きに取りつけ、エアバッグの機能を停止させるまでが一連のマニュアルです。

そのため、メーカーによっては「2シーター自動車のチャイルドシート装着は非推奨」「本車両へは子供を乗せないこと、子供は後席のある車を推奨」と明言しています(S2000やNSXなど)。


3)集中ドアロック
運転席側のロック操作だけで、助手席のロックも連動する機能です。Miataでは内貼りのドアハンドルに「集中ドアロック」のスイッチが配されています。理由としては様々あるでしょうが、運転中に子供がドアを誤って開けられないような配慮ということで、普通車では一般的な機能です。


国内のロードスターもグレードによっては「運転席と連動する助手席ロック」機能はありますが、ロックされていても手動で助手席の開錠は可能です。


4)クルーズコントロール
アクセルペダルを踏み続けることなく、セットした速度を維持する機能です。ドライバーの疲労軽減や、同乗者の快適性向上に寄与します。特に「グランドツーリング(まっすぐ長距離移動)」を行う北米では必須の機能とされています。


フォグランプ脇に「オン」のメインスイッチがあり、ステアリング右側のノブで速度調整を行います。なお、作動は25 mph(約40キロ)以上から設定可能です。余談ですが、左ハンドルの右側ノブにはウォッシャー関連の機能も配されています(日本と逆)。


5)パニックボタン(アラーム)(※Miata後期型)
キーレスコントローラーに配されており、ボタンを押すとロードスターから繰り返し警告音(クラクション)がなる防犯機能です。車両周辺に不審者や強盗が現れた時、周囲に自車のアピール、又はドライバーを守る為に使うとされています。(防犯であって盗難防止とは違う)キーレスが他地域仕様のコントローラーとは違うのが特徴で、マツダ車汎用部品になります。


6)緊急トランクオープナー
トランクリッドを内側から開く機能です。そのハンドルは暗闇の中でも光る材料で作られており、バンパーのMAZDAオーナメント裏側(トリムの内側)に配置されています。照らされた T字形のハンドルを引くことで開けることが可能になります。


最初、この機能の意味が理解出来なくて、何度も操作マニュアルを読み返していたのですが、理由が分かって少しぞっとしました。パニックアラームと同じく「いざという時」のリスク回避機能です。

まとめ


以上が国内仕様のNBロードスターでは目にすることのない装備でした。ちなみに国内仕様独自の機能としては「ウインドウ固定スイッチ」がありまして、窓の開閉を運転席脇のスイッチで止めることが可能です。


また、前期型のショップオプション扱いで、「いんじ蛍太君」という寒いネーミングのコーションランプを装着可能でした。こちらは走行距離に連動して、オイルやタイヤ交換の時期を知らせてくれるアラームになります。(その横はダミースイッチのホールになるようです。)

さて、ここまで紹介した装備はNBロードスター独自のものではなく、NAロードスターの海外仕様から存在した装備も多くあります。加えて、NCロードスター以降は、国内仕様でも採用される機能が多く存在します。


NBロードスター現役当時に国内で採用されなかった背景を考察すると、「欲しい」と思う機能でも、廃することによるコストダウンは「アフォータブル」に繋がりますし、「軽さは性能」であるライトウェイトスポーツにとっては、重くなるなら要らない、という正しい判断だったかと思われます。


そういう意味で国内仕様は、「ロードスター」である事に本当に拘ったプロダクトであると感じずにはいられません。コストダウンを喜ぶオーナーなんて、ロードスター特有の愛情かも知れませんけどね・・・

関連情報→

NBロードスターのボディカラー(海外編)

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