NBロードスター 脚回りの話(NAロードスターの特性編)

NBロードスター 脚回りの話(NAロードスターの特性編)

前回はダブルウィッシュボーン形式の特性、「メカニカルグリップ」に関するトピックをお伝えしました。ダンパーが抜けていても、タイヤがプアでも「よく曲がる」メカの素性をロードスターは持っているのです。

マツダ・スポーツカーの哲学


マツダスポーツカーの前提としては、コスモスポーツや歴代RX-7などの歴史がありました。

その走りにおける「第一条件」は、パワーでも豪華装備でもなく「操って楽しいクルマ」を志すこと。ドッカン加速で直進を突っ走るのではなく、コーナーを意のままに駆け抜けることに「走る歓び」があると定義づけています。

なお、日本語における「歓(よろこ)び」とは、声を上げて喜ぶ(=感性に触れる)こととされています。

さて、RXシリーズや歴代ロードスターには一貫して、以下の条件を定めています。

・フロントエンジン、リアドライブ(FR)であること
・ライトウェイトであること
・前輪、後輪の重量配分が50:50であること
・ヨー慣性モーメントが小さいこと
・重心高が低いこと

NAロードスターが意図したセッティング


もちろんクルマというのは脚回りだけではなく、エンジンやシャシーなど様々な要素のトータルバランスで成立しています。これらを踏まえたうえで、NAロードスターのセッティングは下記の要件を盛り込んでいきました。

①ステアリングに忠実でリニアな挙動
②手首の動きにダイレクトに反応するクイックな応答性
③カッターナイフで切るが如くの高速直進安定性
④ステアリングでもアクセルでも自由自在に操れる、限界付近のコントロールの良さ


パワーユニットがお世辞にも強力でないロードスターにとって、「走る歓び」を得るためにはスポーツカー哲学の通り「ハンドリング」に集約されていきます。

そこでロードスターのセッティングは、ダブルウィッシュボーンの持つ自由度を活かしたジオメトリー設定が行われました。

サスペンションのジオメトリーとは


サスペンション機構におけるジオメトリーとは、リンクやアームの(幾何学的配置による)動きを指しています。具体的にはキャンバー、キャスターなどのホイールアライメント、ロールセンターなどのロール特性、アンチダイブ、アンチスクォト(荷重移動抑制)などを、計算や実走をおこないセッティング(調整)していくのです。

フロント・リアともに短いアッパーアームと、長いロアアーム。それを結ぶハブキャリアで構成されているロードスターのダブルウィッシュボーンは、サスペンションがストロークするときの上下アームが動く軌跡の違いにより、キャンバー角に変化が起きます。その特性もとに、ロール角の調整(味付け)を行っていきました。

そういった操舵安定評価試験の走行後、タイヤ面の温度を分析して、ショルダー面(脇)ではなくトレッド(面)に温度差が少ない状況を試行錯誤していきました。つまり、タイヤの「面積」を使い切ることのできる、メカニカルグリップの素性を活かせるセッティングを作り込んでいったのです。


また、シャープなハンドリングを実現するために、サスペンション剛性も最適化しました。その恩恵として、適度なコンプライアンスステア(路面状況のフィードバック)を得ることが可能になります。同時にブッシュ特性も前後で調整し、コーナリング中はタイヤがトーインするように設定しました。これがクイックハンドリング特性に直結していったのです。

ブッシュはゴム製のパーツではありますが、アームの中に配されているのでいちいち分解はできません。そこで、試験中はブッシュに割り箸を刺して「硬さ」を調整し、ベストとなったものを「製品の硬さ」にフィードバックしていったそうです。

ダンパーの減衰力は「操舵安定性」評価路と「乗心地」評価路の走行におけるピストンスピードに着目しました。結果、低速域操舵安定(コーナーリング)寄りの特性、つまり低い速度領域でも曲がろうとする特性としていきました。

感性に訴える「乗り味」


一方で、生産性も意識しています。

一般的にダブルウィッシュボーンは、構成パーツが多いためメンテナンスにも手間がかかるとされています。そこでサスペンションアームやクロスメンバー、ダンパーユニットやマウントラバーの金型を、左右や前後で共通パーツを使うなど、ストラット形式と同程度のコストや軽さ、生産性を実現させました。

結果として生まれたのは、実用走行域において適度な緊張感を生む「リニアなハンドリング」。実用走行でも限界が容易に掴める特性なので、「自らのテクニックでコントロール」することを味わえるクルマに仕上ったのです。


その感性に訴える乗り味はロードスターの代名詞になり、現在に至るまで語り継がれるロードスターシリーズのベンチマークになっています。いろいろ蘊蓄(うんちく)を書きましたが、要するに「コンビニ行くのにちょい乗りするだけでも楽しい!」のがロードスターなのです。


ただ、この初代NAロードスターのハンドリングは印象が強すぎて、兄弟たちの呪いにもなっていきました・・・

これらを踏まえたうえで、実は脚回りのセッティングを変更しているNBロードスター。次回に続きます。

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