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創刊100年以上の老舗メディア「AUTOCAR」
エンスージアストの国、英国では「AUTO CAR(オートカー)」という世界最古の自動車雑誌/メディアが存在します。創刊は1895年ですから、2024年時点でなんと129年前。現在は本家英国だけでなく世界15か国でライセンス出版がおこなわれ、日本国内でも2003年に「オートカー・ジャパン」がスタートしましたが、紙媒体は残念ながら2015年に休刊となり、以降はWeb版で運営されています。
その紙面を飾る人気名物企画のひとつに、その年に現行販売されているクルマで「最も楽しかったクルマ」の一番を決める「Best Handling Car」という記事があります。近年では「Britain’s Best Driver’s Car」と名称が変わましたが1989年から現在まで続いていて、老舗雑誌らしく言葉を選ばず、忌憚なく、そして厳選なる判定が行われます。
このランキングの面白いところは、自国車を贔屓(ひいき)にするわけではなく、価格や性能でもなく、あくまで「最高に楽しかったクルマ」に徹して評価をしているところです。アワードになったクルマやメーカーはプロモーションに活用するくらい、名誉ある賞となっているのです。
Britain’s Best Driver’s Car(Best Handling Car) | ||||||
1989 | Porsche 944 S2 | DEU | 2007 | Audi R8 | DEU | |
1990 | Mazda MX-5 (NA) | JPN | 2008 | Nissan GT-R | JPN | |
1991 | Honda NSX | JPN | 2009 | Lotus Evora | GBR | |
1992 | Honda NSX | JPN | 2010 | Porsche 911 (997) GT3 RS | DEU | |
1993 | Porsche 968 Clubsport | DEU | 2011 | Porsche Cayman R | DEU | |
1994 | Porsche 911 (993) Carrera | DEU | 2012 | Toyota GT86 | JPN | |
1995 | Lotus Esprit S4S | GBR | 2013 | Porsche 911 (991) GT3 | DEU | |
1996 | Lotus Elise | GBR | 2014 | Ferrari 458 Speciale | ITA | |
1997 | Ferrari 550 Maranello | ITA | 2015 | Ariel nomad Supercharged | DEU | |
1998 | Ferrari 550 Maranello | ITA | 2016 | Porsche 911 (991) R | DEU | |
1999 | Ferrari 360 Modena | ITA | 2017 | Porsche 911 (991) GT3 | DEU | |
2000 | Porsche 911 (996) Turbo | DEU | 2018 | McLaren 600LT | GBR | |
2001 | Lotus Elise Series 2 | GBR | 2019 | Ariel Atom 4 | GBR | |
2002 | Lamborghini Murcielago | ITA | 2020 | Ariel Atom 4 | GBR | |
2003 | Mazda MX-5 (NB) | JPN | 2021 | Porsche 911 (992) GT3 | DEU | |
2004 | Noble M400 | GBR | 2022 | Porsche 911 (992) GT3 | DEU | |
2005 | Porsche 911 (997) Carrera S | DEU | 2023 | Porsche 911 (992) GT3 | DEU | |
2006 | Porsche Cayman S | DEU |
歴代アワード車両を並べてみると納得な面子ではないでしょうか。日本車もかなり健闘していて「NA/NBロードスター」「歴代NSX」「R35GT-R」「GT86」といったメンバーが連なっています。
もちろんノミネートには「セリカ」「スープラ」「GRヤリス」「シビックタイプR」「インプレッサ」「ランサーエボリューション」そしてもちろん「MX-5(NC/ND)」も参加しており、トップではなくても別の様々なアワードを受賞しています(近年のアワード枠は細かくて追いかけづらい)。
異色なのは、日本ではなかなか見る機会がないアリエルのクルマで、そのなかでも「ノマド」はホンダのiVTECエンジンを積んでいるライトウェイトスポーツだったりします。
ここ数年はパンデミックの影響や電動化技術にリソースが降られたため新たなスポーツカーが少なく、結果的に「ポルシェ911GT3」が強い状態ではありますが、それでもフェラーリやロータスなどの名だたる歴代勝者のなかで際立つのが、ライバル車と比較して飛び抜けてアフォータブルな存在となる1990年と2003年の「MX-5(ロードスター)」です。
特に2003年の「MX-5(=NBロードスター)」受賞は、ロードスターの開発テーマでもある「愉しさ=Fun」が強く評価されていることから、貴島元主査(当時)の回顧録や、山本元主査のNC開発エピソード(※当時は副主査)でもたびたび触れられるエピソードになっています。
ただ、デジタル化された「AUTOCAR」においてこの記事はアーカイブされておらず、今回はその詳細をご紹介します。ブリティッシュライトウェイトスポーツをベンチマークにしたクルマが、本家英国の自動車文化においてポルシェを差し置いて「最高に楽しい」と評価された、そんなストーリーです。
AUTOCAR 「300万円以下のベスト・ハンドリング・カー(Autocar’s best sub-£15k driver’s car)」「ベスト・ハンドリング・カー2003(Best Handling car 2003)」より引用
前哨戦:300万円以下で買えるベストハンドリングカー
300万円以下で911に勝つ!
Autocar’s best sub-£15k driver’s car
AUTOCAR 2003年4月30日号(JP8月号)より引用・意訳
クルマ好きにとってポルシェ911はいつの時代もベンチマーク。憎たらしいくらい正確に動くマシンは「スポーツ・ドライビング」の何たるかを語る際に、乗り越えなければならない存在。
でも、同じドライビングプレジャーを「もっと安く」手に入れられるなら、それに越したことはありません。だって仮に1000万円持っていたとしても、クルマに全額つぎ込む必要が無いに越したことはありません。
そこで今回は現実的な金額・・・つまり300万円(sub-£15k)前後で買えそうなクルマを選び、それを容赦なくランキングすることにしました。テストの前に念を押したいのは、最速のクルマが必ずしもベストでは無く、ドライビングプレジャーが最も大きな評価基準になることです。
テストは2.7kmのテクニカルなクローズド・サーキット。本誌(AUTO CAR)ロードテスターのほか、BBC放送(英国)で人気な“ドリフトの達人”ティフ・ニーデル(左)と、現役BTCCドライバー、フィル・ベネットの二人が強力な助っ人として参加してくれました。
判断基準はラップタイムではなく、あくまで「Fun(愉しさ)」「Performance(出来栄え)」「Value(費用対効果)」のバランスで評価を行います。クルマの出来が良くても「面白くない」、もちろんその逆の評価も忌憚なくディスカッションされました。
エントリー車両は25台、まずは11位まで
Autocar’s best sub-£15k driver’s car 2003 | |||||||
300万円以下で買えるベストハンドリングカー2003 | 参考:2003年当時 £円換算 | 189.27 | |||||
11~25 | |||||||
Lank | Model | Fun | Performance | Value | LAP | £ | 円換算 |
11 | Opel Astra GSI | 7 | 8 | 6 | 1:28:25 | 149.9 | 314.7 |
12 | Ford Mondeo 2.0 | 7 | 6 | 7 | 1:30:11 | 146.7 | 308 |
13 | VW Lupo Gti | 6 | 7 | 7 | 1:31:20 | 102.9 | 216 |
14 | Citoroen Xsara VTS | 4 | 5 | 6 | 1:30:12 | 149.1 | 313.1 |
15 | Ford Street Ka | 6 | 5 | 7 | 1:34:40 | 124.9 | 262.2 |
16 | Smart Roadster | 6 | 5 | 6 | 1:34:53 | 122.6 | 257.4 |
17 | Seat Leon Cupra | 4 | 6 | 7 | 1:31:05 | 136.2 | 286.1 |
18 | Proton Satria Gti | 4 | 5 | 7 | 1:30:24 | 118.3 | 248.5 |
19 | Skoda Octavia vRS | 3 | 6 | 7 | 1:31:64 | 136.2 | 286.1 |
20 | AlfaRomeo147 2.0 | 4 | 4 | 6 | 1:30:00 | 138.1 | 290 |
21 | Seat Ibiza Tdi Sport | 3 | 6 | 4 | 1:32:09 | 118.0 | 247.9 |
22 | ToyotaYarisT-Sport | 3 | 3 | 6 | 1:32:24 | 62.3 | 130.8 |
23 | MG XR160 | 3 | 6 | 3 | 1:29:09 | 132.3 | 277.8 |
24 | Daitatsu Storia X4 | 4 | 4 | 5 | 1:33:61 | 66.2 | 139 |
25 | Smart Brabus Cabrio | 2 | 1 | 3 | 1:49:62 | 129.1 | 271.1 |
この企画の参加車両は全25台。スポーツカーを始めホットハッチからセダンまで、なかなかエンスージアスティックなラインナップです。全てを紹介するのは長くなるので、まずは11位~25位までのご紹介です。個人的には日本国内で販売に至らなかった「Street Ka」が疾走する姿がツボに入りました。それにしても、今の時代に街で見かけたらシビれてしまう名前が並んでいますね・・・!
300万円以下のベストハンドリングカー「トップ10」
「プジョー106」「プジョー206」「シトロエンン・サクソ」「フォード・フォーカス」など、ラリーで活躍するホットハッチが場を賑わすなか、とても健闘しているのが「トヨタ・セリカ」。エンジンを使い切ってテールスライドをかませればミニよりも楽しくて当然だ!と、日本車乗りであるならば嬉しいコメントが記事を飾ります。
Autocar’s best sub-£15k driver’s car 2003 | |||||||
300万円以下で買えるベストハンドリングカー2003 | 参考:2003年当時 £円換算 | 189.27 | |||||
TOP10 | |||||||
Lank | Model | Fun | Performance | Value | LAP | £ | 円換算 |
1 | Mazda MX-5 1.8 | 10 | 8 | 10 | 1:29:78 | 116.5 | 244.6 |
2 | Honda Civic Type-R | 9 | 10 | 8 | 1:26:56 | 120.0 | 252 |
3 | Renault Clio Cup | 9 | 9 | 8 | 1:27:03 | 118.0 | 247.9 |
4 | Citoroen Saxo VTS | 9 | 8 | 9 | 1:27:55 | 99.0 | 207.9 |
6 | Caterham1.4 Classic | 9 | 7 | 8 | 1:28:87 | 138.1 | 290 |
6 | Peugeot 106 Gti | 9 | 9 | 8 | 1:27:86 | 107.1 | 225 |
7 | Toyota Calica 1.8 | 8 | 6 | 8 | 1:29:96 | 96.2 | 202 |
8 | Mini CooperS | 6 | 7 | 8 | 1:28:90 | 123.8 | 260 |
9 | Peugeot 206 RC | 7 | 7 | 7 | 1:28:65 | 未定 | 未定 |
10 | Ford Focus ST170 | 7 | 7 | 7 | 1:29:71 | 142.9 | 300 |
そして、最後までベスト1の座を競ったのは2代目「シビックタイプR(LA-EP3)」。サーキットでは超軽量な「ケータハム(スーパー7)」を差し置いてダントツの速さであると評されています。今でこそシビックタイプRは高性能・高級路線となってしまいましたが、当時は手の届くクルマだったんですよね・・・ちなみにパフォーマンス項目の評価では唯一の10点満点でした。
そして、一方で唯一「Fun(楽しさ)」の項目で10点を獲得したのが「MX-5(マツダ・ロードスター(NB))」。その評価は以下の通りです。
ウィナーは「Mazda MX-5」
優勝はなんと「Mazda MX-5!」ドライビングプレジャーとは絶対的な速さでもなく価格でもありません。あまりにも長い付き合いだったから、真の姿が見えなくなっていたのかもしれない・・・と言い訳しなければならないが、我々は「予想外」の結果ながら、わずかな手直し(マイナーチェンジ)をするだけで10年以上生産されている「MX-5」を今回のウィナーとしました。
このクルマの評価は、ストップウォッチとは全く関係ありません。ドライビングプレジャーと絶対的な数字は必ずしも結びついていないことを、「MX-5」は見事に証明してみせました。
実際「MX-5」はタイトな90度カーブと高速コーナーが組み合わされたコースでは1分30秒台ともがいており、タイム的にはとても上位とはいえませんでした。ところが「MX-5」がピットレーンに戻ってくると、毎回テスターの間でキーの争奪戦が、それも一日中起きたのです。我々はテスト2日目の朝にリアタイヤを交換してくれるタイヤショップを探し回る羽目になりました。
「MX-5」はアフォーダブルに手に入るクルマとしては最もドライビングの楽しみが味わえる一台であり、レーシングドライバーでなくてもその能力のほとんどを引き出すことが可能なクルマです!
ボディ構造を鑑みれば、これほどの走りを見せるその秘密に納得がいきます。最初からルーフを持たない前提の強固で軽量なモノコックボディ、FRという正当的なパワートレーン、ダブルウィッシュボーンのサスペンション、そして控えめなタイヤサイズと、それを滑らせるのに必要十分なエンジンパワー。
インテリアは味もそっけもないし、エンジンもいささか洗練性に欠けますが、そうしたマイナス要素を補って、余りあるプラス要素がいくつもあります。ステアリングの繊細なリムは指先に常にインフォメーションを与え、ずんぐりしたシフトレバーはカチカチ決まり、サスペンションは驚くほどソフトでありつつも挙動は安定しています。何より特筆すべきは、スロットル(アクセル)でコーナーリングがいかようにもコントロールできる点にあります。
もう異論はないでしょう。「MX-5」こそ満場一致で決まった300万円で買える最も愉しいクルマです。恐る恐る911を走らせるくらいなら、ロードスターで思いっきりドリフトかましましょう!
10年ぶりに乗ったような気がするが、私は自分が見落としていた、このクルマの偉大なる魅力にすぐに気づいた。見事なシャシー・バランスと思い通りに操れる素晴らしいステアリング・フィール。なんて素晴らしいクルマだろう!
参考)この「MX-5」は2003年式EU版ですがスペックは若干日本と異なります。エンジン型式こそBP-Z3ですが(国内仕様BP-VE)、5MTかつ15インチ・ホイールの仕様になります。走りに厳しいお国柄に合わせたチョイスといえるでしょう。ただ、ダンパーやアライメントなどのセッティング自体は全世界統一仕様になっています。
本当にステアリングを握ったからこそ書ける自動車愛あふれる文章。ロードスターがどうこうというよりも、他のクルマを紹介する内容も素晴らしい。ともあれ、NBロードスターの素性を端的に表現している素晴らしい内容でした。
本編:AUTOCAR「ベストハンドリングカー」2003
ベスト・ハンドリング・カー 2003
Autocar BRTAIN’S BRST HANDRING CAR
2003年8月26日号(JP10月号)より引用・意訳
Best Handling Car 2003 by AUTOCAR | |||
Alfa 147 GTA | Mercedes-benz E55 | ||
Ariel Atom | Mini Cooper S Works | ||
Astra GSi | Mitsubishi EvoVIII FQ300 | ||
Audi S4 | ○ | Noble M12R | |
○ | BMW Z4 | Pagani Zonda | |
○ | Caterham R400 | Palmersport JP1 | |
Elise 135R | ● | Porsche 911 GT3 | |
Focus RS | Porsche Boxster | ||
Ford Sport Ka | Peugeot 206 GTi 180 | ||
GDT70 (Lola replica) | Radical SR3 LM | ||
Honda Accord 2.4 Type S | Renault Clio V6 | ||
○ | Subaru Impreza Type-C | Skoda Fabia RS | |
Jaguar XJR | TVR 350C | ||
○ | Lamborghini Murcielago | Vauxhall VX220T Sprint | |
◎ | Mazda MX-5 (Miata) | Volvo S60R | |
Mazda RX-8 | Westfield XTR2 | ||
○→Finalist7 ●→Best2 ◎→Best1 |
「300百万円以下」の決定後、オートカーでは「ホットハッチ」「中型サルーン」「スポーツカー」「スーパーサルーン」「WRXレプリカ」「スーパーカ」と7部門から32台から選出し、評価試験が行われました。参加リストはなかなかの顔ぶれ、日本車としては「MX-5」の他に「RX-8」「インプレッサ」「ランサーエボリューション」の名も確認できます。
そして、各種項目によるテストで点数が付けられ、ファイナリストとなる7台が選出されました。「ポルシェ911 GT31(996)」「ノーブルM12」「ケータハムR400」「ランボルギーニ・ムルシエラゴ」「スバル・インプレッサ・スペックC」「BMW Z4」、そして「マツダMX-5(NBロードスター)」です。ラップタイム表記では、もちろんMX-5がダントツで遅い・・・!
さらに最良の2台としてガチンコバトルになったのが「ポルシェ911GT3」と「MX-5」。ちなみにベストハンドリング・テスターは下記6名。肩書きは当時のものですが、そうそうたるメンバーです。
ジャスティン・ウィルソン(ジャガーF1ドライバー)
佐藤琢磨(BARのF1ドライバー)
マイケル・ベントウッド(BMW BTCCドライバー)
フィル・ベネット(プロトンBTCCドライバー)
マーティン・アンダーソン(ロータス車両力学のテクニカルマネージャー)
そして、見事2003年の「ベストハンドリング賞」を獲得したのが「MX-5(=NBロードスター)」です!下記に当時のコメントを意訳しました。
ベストハンドリングカー「MX-5(2003)」受賞理由
既にオートカー「£15K未満(300万円以下のベストハンドリングカー)」のタイトルホルダーでもある「MX-5(マツダ・ロードスター)」。思いっきり振り回せるパワーウェイトレシオが本当に気持ち良かった。ステアリングフィールは正確で、ターンインはスパッと決まり、その足は4輪がしっかりと地面を捉える。
コーナーリングをこれほど気持ちよく自由自在に操れるクルマは他にない。ショートストロークのシフトフィールも抜群で、クルマ全体からあふれるフィーリングは、ドライバーを虜にする世界観を持っている。自分の操作とクルマからのフィードバックが完璧にシンクロしているのだ。したがって我々は「MX-5」を全てのクラスで最も優れていると評価した。
ポルシェ911と拮抗するNBロードスター
テスターは「ポルシェGT3」では「速さ」の限界ギリギリまで応えてくれた。一方「MX−5」は決して速いクルマではないが、あらゆる領域でクルマ自体を「楽しむ」事ができたのが勝因に繋がった。「MX−5」はイギリスで1990年に先代が販売されて以来、£15K未満(300万円以下)のクルマのなかでも常にベスト・ハンドリング・カーであり続けた。
“Here is a photograph of former F1 racer Tiff Needell driving a Mazda MX-5 quite beautifully. It’s perfectly balanced on the throttle, drifting gently towards the apex of the corner with a trace of opposite lock to keep things in check.
You can be sure Tiff is enjoying himself, because he loves driving the MX-5.
We all do – that’s why it beat a Lamborghini Murcielago and a Pagani Zonda to win our Best Handling Car award this week”
上の写真は元F1レーサーのティフ・ニーデルが「MX-5」を華麗にドライブしているものだ。スロットル操作で絶妙なバランスを保ちつつ、次のコーナーへドリフトで攻めていく。ティフがこれほど「MX-5」を楽しんでいる姿を見れば、この評価は確信できるだろう。これが「ランボルギーニ・ムルシエラゴ」や「パガーニ・ゾンダ」をも打ち破り、ベストハンドリング・カーを勝ち取る事ができたことの全てだ。
マツダ「MX-5」は、販売開始から13年で世界に60万台以上販売されている。「MX-5」シリーズのクラシカルなデザインとFRレイアウトは、「手頃な価格で購入できるスポーツカー」のブーム再燃に繋がり、他メーカーもそれに追随していった。
Popular for its looks and driving dynamics the Mazda MX-5 brought fun back into motoring; no longer were motorists enclosed in a ‘tin box’, there was the freedom to throw off the roof and enjoy the sunshine. Suddenly motoring became more than just getting from A to B and owners started driving just for fun, an emotion long forgotten.
そんな「MX-5」のルックスとドライビングダイナミクスは、多くのファンを魅了し所有欲を満たし続けている。ブリキの箱で窮屈にしていたドライバーは、やっと屋根を開けて太陽を楽しむ自由を得た。突然あらわれた「MX-5」を手に入れることができたオーナーは、長いあいだ忘れていた「走る歓び」を取り戻し、楽しさの虜になってしまったのだ。
“The Mazda MX-5 offers as much pleasure as a Porsche 911 GT3 regardless of how fast you drive it,” enthused Autocar.
最速のドライブはならば「ポルシェ911GT3」であるが、それ以上に「マツダMX-5」は日常域全ての運転が楽しいものになっている。それがAutocarからの回答だ。
世界一になったNBロードスター
AUTOCAR 2003年10月号(JP)より引用
スポーツカークラス予選3区では、エリーゼが善戦。Z4もなかなかでした。
しかしMX-5のハンドリングの良さは頭一抜けていました。
決勝にコマを進めたのはポルシェ911GT3(996)とマツダMX-5(ロードスターNB8C)でした。この2車が決勝に勝ち残ったのです。しかし、片や現行のポルシェ911の中でも最も硬派で、最もドライバー指向のモデル。片や200万円台で買える日本車。それを直接比較などできるのでしょうか。
ただ、結局のところ、その作業は思いのほか簡単でした。この2台のどちらに軍配を揚げるか、我々は長い時間をかけて議論を交わし、結論が出ないままテストコースを後にしました。しかし編集部に戻った時には腹が決まっていたのです。
純粋にハンドリングのみを評価するという今回のテストの原点に立ち返ったとき、すべては明白に見えてきました。我々が求めていたのは、ドライバーの意志に対してリニアに反応し、喜びを与えてくれるクルマです。その両方を、ドライバーの資質やコーナリングスピードに左右されることなく提供してくれるクルマこそ、このハンドリング・テストの勝者なのです。
この視点に立ち戻ったとき、GT3の持つアドバンテージ・・・素晴らしいドライブトレーンが生む途方もないスピードと、そのスピードがもたらす喩えようのない興奮・・・は意味を持たなくなりました。つまり911GT3を走らせる楽しみは、そのスピード自体から得られる楽しみの分を差し引いて考えねばならないという事なのです。
純粋なハンドリングの観点からいって、911GT3は極めて満足ができるクルマです。しかし、その醍醐味を味わい、リアの荷重を保ち、クルマを走行ラインから外さないようにするには、然るべき腕前と然るべき場所を必要とします。
一方、マツダMX-5は、ワインディングロードを愉しく走りたいと思う普通の腕前のドライバーに対しても従順で、大きな満足感を与えてくれるのです。その素晴らしい特性は、今回我々が招いた類い希な才能を備えたドライバー(彼らはその直前までGT3を本気になって走らせていた)をも大いに楽しませてくれたのです。
したがって勝者はマツダMX-5です。300万円以下で買えるベスト・ハンドリング・カーは、究極のベスト・ハンドリング・カー世界チャンピオンでもあったのです。
いかがだったでしょうか。どんな場所でも「走る歓び」が得られるロードスターという、エンスージアストの国である英国においてのような評価を頂いたという事実は嬉しくなってしまいますよね。欧州ではNAロードスターよりもヒットしたNBロードスターですが、先代から熟成された賜物であったといえるでしょう。余談ですが、近年はNDロードスターも「ベスト・ドライビングプレジャー」のアワードを獲得しています。
ちなみに、2000年代以降のマツダでは全車において「人馬一体(=乗って楽しい)」という評価基準を取り入れています。そのハンドリング評価項目では「NBロードスターの限界(J07の限界)を上まらない」というものがあり、NBロードスターは今でもマツダの走りのベンチマークになっているのです。そして、そのDNAは今日のNDロードスターにまで繋がっています。
余談ですが、それだけ評価されたNBロードスターも、中古市場では投げ売り状態・・・機会があれば、ステアリングを握ってみて欲しいです。AUTOCAR本誌の記事でも近年は「ベストハンドリングカーが最新のiPhoneよりも安く買える」と中古の「MX-5(=NBロードスター)」を紹介しているのは笑ってしまいますが、当時は「世界一楽しいクルマ」であったことを、あたらめてお伝えさせていただきます。
そんな素敵な記事の紹介でした。
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