NCはインチダウンしたかった(D-3)

NCはインチダウンしたかった(D-3)

貴島孝雄さんインタビューの続き、NCロードスターのエピソードです。人馬一体のため、軽さは性能、アフォータブルで誰でも手に入るように、そして時代の要件・・・ロードスター再構築するにあたって、NCはより作り込まれていきました。

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油圧パワーステアリング


NC当時は電動ステアリングがどうしてもリニア感が出なくて、わざわざ油圧にした。(※RX-8は電動ステアリング)

電動はスピードコントロールで、あえてモーターのトルクを落とす逆制御、抵抗っぽいものができるから、そうやって味を作っていく。ただ、タイヤから来ているリターナビリティ(※直線を維持しようとする力)そのものが来ているのではなくて、電動的にそれを作っている。つまり、フリクションを作ることは出来るけど、自然なものではないから人間は分かってしまう。

エンジン(※制御ECU)の8ビット、16ビットみたいに分解率が上がって、リニアというかアナログに近い制御ができれば違ったかも知れない。

幌のセンターロック


幌のロックが左右でなくなった理由は、左右になくても充分いけるとなったし、使い勝手も向上するから。ただ、あの構造はカバーが気になっている。レバーそのものをデザインして、変なカバーなんて付けず一発でロックするのを作れ!といったのに「できません」となった。鬼の貴島でいったけど(笑)、それでも出来ないというから、無理やり進めて量産が遅れてはいけないと、あの形になった。

アルミトランク


NCでトランクをアルミに出来たのは、エイトと共有で残念ながらボディが大きいから、他のところで重量を下げなければいけなかったから。そこで・・・トランスミッションが内製化出来たから、あれでコストの調整ができた(笑)。NBのようにA社で作ったもの、つまり外から買ったものだと高い。でも、先方の儲け分が全部こっちに入ってくるからコストを他に回すことができた。(※RHTは鉄のトランクです)


コストといえば、組み立てラインも全体最適で考えなければならなかった。ロードスター専用ラインなんてないから、デミオと同じところで組む。だから、ロードスターの設計もその辺りの組立要件を取り込む。

つまり、マツダの設計者というのは、それに合わせる知恵をしぼり努力をする。だからロードスターは儲かる。これが儲かるような作り方という事になる。

マルチリンクサスペンション


フロントサスペンションはダブルウィッシュボーンだけど、リアは進化したマルチリンクサスペンションを採用した。ダブルウィッシュボーンではアッパーアーム、ロアアーム「2本」だったものを、ロアのアッパーとトーをコントロールする「5本」になっているのがマルチリンクになる。

前後コンプライアンス(※ばね支持の柔軟性)を取っても、トーが変化しないような構造が取れるのがマルチリンクの良さで、乗り心地もいいし、機能的に自由度があるから性能がいい。ただ(NC専用開発とはいえ)値段は高くなるし、ブラケットも考えたら少し重いかもしれない。

実はNBと同じ重量


エイトがベースだから、NCのボディはポテンシャルがありすぎる。意地でホワイトボディはNB比で1.6キロ軽量化ができたし、エンジンも軽くなっているけれど、結果的にNBよりも重くなったのは、タイヤとホイールのせいになる。


私はもっと経を小さくしたかったけれど、ブレーキも大きくしたので15インチが入らなくなった。そこで16インチで良かったけど、仕方なく(※大経タイヤがスポーツカーのトレンドだった)17インチを履いている。単純に大きいホイールとタイヤで2キロずつあるから、インチダウンすればNBとほぼ同じ重さになる。

RHTに関して


RHTは時代の要件だった。それまでも、幌だと切られてしまうので盗難が怖いとか、雨漏れの心配が・・・なんて声があった中で、プショー(※206CC)のヒットがあった。

実はNBを使ってべバスト(電動トップ製作メーカー)に電動ハードトップを作ってもらい、機動実験も行っていた。丸っこい鉄兜みたいなやつでカッコ悪かったけれど、格納出来るところまでは確認できた。


それで、NCの幌と同時デビューさせようと進めていたら、試作を見に来たフォードのジェイ・メイズ(※)が、サイドのライン(ベルトライン)が出ていて気に入らない、下げなさいと「やり直し」をいってきた。

※ジェイ・メイズ氏:フォードグローバルデザイン・クリエイティブ・オフィサー 参考リンク

変えろとなったら彼らのルールでは絶対やらなければならないが、その修正を行っていたら同時に出すことが無理になってしまい、大変だった。


ただ、RHTは屋根を全て格納できること、つまり「ロードスターのスタイル」であることにこだわった。実際に上手く出来たと思うし、RFはもうもう少し出来なかったのかな、とは思う(笑)。屋根を開けると重心が下がるからハンドリングも良くなるし、ある意味でNCのベストモデルだと思う。

次回に続きます

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https://mx-5nb.com/2020/01/12/kijima2017-15/

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