この記事を読むのに必要な時間は約5分です。
最近は何かとトヨタがアツいです。特に話題の「GRスープラ」ですが、デビュー時のプレスリリースには面白い記載があり、一部で話題になりました。
「GRスープラ」のプレスリリースでは、「ホイールベース(W)をトレッド(T)で割った比率が1.55」というものが強調されていました。この数値はレビューサイトによってはスポーツカーの「黄金比」とまで書かれています。(※プレスリリースではそこまで吹いていませんが)
このW/T比率に関しては、ロードスターの「ヨー慣性モーメントの低減」でも取り上げました。
貴島さん(NBロードスター開発主査)の言葉をお借りすると、クルマの諸元で注目すべきは、ホイールベースとトレッドであり、これはユーザーでは手を入れられない「メーカーでしか設定できないもの」で、いわば「走りのDNA」とされています。
GRスープラのプレスリリース
さて、GRスープラのプレスリリースを引用させて頂きますと・・・
・卓越したハンドリングや安定したコーナリング姿勢を実現するため、「ホイールベース」「トレッド」「重心高」の3要素を最重要ファクターと捉え、ピュアスポーツカーとしての理想を追求しました。
・ホイールベースは、2シーターに割り切ることで86よりも100mm短い2470mmを実現しています。
・それにより、ホイールベースとトレッドの比は1.55という、他の量産スポーツカーと比較してもトップレベルの小さい数値を達成しており、優れた回頭性に寄与しています。
こんな事書かれていると、比較したくなります・・・そこで、まず「GRスープラ」も含め、各種スポーツカーのホイールベースをトレッドで割って計算してみました。
ホイールベース/トレッドの比較表
まずはスープラチームと、マツダチームのW/T比較表です。
素性でいきますとGRスープラは新型Z4とプラットフォームを共用しますので、歴代BMWのオープンカーも並べてみました。
なお「GRスープラ」の諸元はグレードによって違い、SZ(ベースグレード)はZ4と同じトレッドで、1.528という数字になります。
この表ではRZグレードをベースにしていまして、諸元を読みといて面白かったのは、FR駆動なのにMRやRRのように、フロントがワイドトレッドになっていたところです。
注目すべきBMW陣は、新型Z4がホイールベースを大胆に縮めてきたことが分かります。つまり、同じ「オープンスポーツカー」枠でも大胆にキャラクターを変えてきたことが分かります。
こちらは歴代ロードスターの比較表です。後輪のW/T値(E/G列)をご覧いただきたいのですが、この数値だけを見ると「GRスープラ」の1.55は「NCロードスター」と「NDロードスター」の中間あたりになるようです。ボディサイズはともあれ、GRスープラ(Z4)の素性はハンドリング寄りということがわかります。
表を可視化してみた
さらに可視化をしてみます。「走りのDNA」を指すホイールベースとトレッドは、それらを線で繋ぐと四角形になるのですが、その四角が進行方向へ長ければ「直進安定」寄りで、幅が広ければ「ハンドリング重視」になります。
一応補足ですが、これはあくまでホイールベースとトレッドの比率なので、実車のハンドリングはボディサイズや重量、それにともなう重心高やヨー慣性・重量配分など様々な要素が絡むことも付記しておきます。あくまで参考値としてみてください。
A80スープラとGRスープラ(A90)は骨格から異なり、特に新型はハンドリング重視のマシンになっているのはプレスリリースにある通りですが、この図で比較すると新世代(NC/ND)ロードスターに挙動や乗り味が近いことが想定されます。さらに、ロードスターよりもハイパワーですから、「曲がって速い」クルマになっていそうです。
こちらはマツダチームの比較表です。「AZ-1」が極端に長く見えますが、これは軽自動車レギュレーションを最大限活用しているので、直進安定を稼ぐために目いっぱいホイールベースを伸ばしていたことが分かります。(それでもまっすぐ走らないのはご愛敬・・・)
ロードスターよりもRX-7の方がホイールベースを稼いでいますが、これは120馬力1トンと280馬力1.2トンというクルマのバランス差なのでしょう。数値だけを並べて「曲がりやすい」といういい方は乱暴かもしれませんが、諸元や出力を可視化すると、よりクルマの意図しているキャラクターが読み解けます。
まとめ
実はパワーウェイトレシオを踏まえると、2リッターNDあたりはスープラのベースグレードといい勝負なのかもしれません(SZ 7.1、ND2L 5.8・・・先方はターボ付いているけど)。見た目はともあれ、スープラのハンドリング、ロードスター乗りにはしっくりきそうですね。
参考: