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今回は、NBロードスター現役当時の時代背景をふまえた、他社のライバル車種をご紹介します。
NBロードスターは1998年1月(平成10年)から2005年7月(平成17年)まで、約7年半販売されました。
当時の世相を振り返ると、国政は小渕内閣、森内閣、小泉内閣が担っており、バブルの傷跡から少しずつ景気も盛り返し(GDPも回復基調)、好景気に向かう「空気」を感じた時代です。
自動車業界も1995年の規制緩和以降のチューニング文化が花開き、メーカー各社がフラグシップだけでなく、比較的買いやすいスポーツカーまでラインナップを揃えてくれました。もちろんNBロードスターもその中の一台になります。
それでは、まずNBロードスターから軽くおさらいをしていきます。
マツダ ロードスター(NB6C/NB8C) 1998年~2005年
駆動方式:FR
車重:990kg~1120kg
排気量:1597cc~1839cc
馬力:125ps~172ps
ボディ形状:コンバーチブル/クーペ
乗員:2名
価格:165万円~325万円
当時のNBロードスターにおける一般的な評価は、初代NAロードスターと比べてよくいえば熟成、悪くいえばエクステリア(ヘッドライト)が変更されただけの「ちょっと前に流行ったクルマ」という位置付けでした。
余談ですが、一部評論家先生には「焼き直しで進化がない」とまでいわれていて、現在4代目(NDロードスター)までモデル継続していることを思うと、壮絶なブーメランを受けていると思います。
ロードスターの競合はライトウェイトクラス、スポーツカー、小排気量、オープンといったジャンルが中心になりました。実際、当時の日本市場は各メーカーのスポーツ/スペシャリティカーが百花繚乱状態で、ユーザーはいくらでも自分の好みを選択することができました。
中古車まで含めるとキリがなくなってしまうので、ここからは当時「新車で買えた」ライバルを追ってみたいと思います。
トヨタ MR-S(ZZW30) 1999年~2007年
駆動方式:MR
車重:970kg~1010kg
排気量:1794cc
馬力:140ps
ボディ形状:コンバーチブル
乗員:2名
価格:168万円~240万円
いわずと知れたトヨタの放った刺客、NBロードスター最大のライバルです。先代「MR2」はクーペボディが主体でしたが、後継車は「MR-S」と名前を一新しライトウェイト・オープンスポーツとして生まれ変わりました。なお、海外名は「MR2」のままになっています。
コンポーネンツは初代ヴィッツシリーズのものを前後逆にしてミッドシップシャシーに仕上げています。エクステリアはミニチュアボクスターと揶揄されることもありましたが、今見ると「ダイハツコペン」と同じく前後シンメトリーのモチーフである味わい深い造形と、豊富でカラフルなボディカラーが特徴です。なお、ハンドリングの味付けはトヨタのマスタードライバー成瀬弘氏が関わられています。
また、国産車で初めてSMT(シーケンシャル・マニュアルトランスミッション)が採用され、AT限定免許でもMTを操作できることが話題になりました。
日産 シルビア(S15) 1999年~2002年
駆動方式:FR
車重:1200kg~1330kg
排気量:1998cc
馬力:165ps~250ps
ボディ形状:クーペ/コンバーチブル(ヴァリエッタ)
乗員:4名
価格:177万円~289万円
大型化して批判を受けた先代(S14)から一転し、原点回帰のために5ナンバー化したボディサイズと、S13以降の歴代シルビアのデザイン・アイデンティティを継承しスマッシュヒット・・・と思われましたが、カルロス・ゴーン氏就任時のリバイバルプランにより、日産のスポーツクーペはラグジュアリーへ方針転換。
販売期間が3年という、かなり早い段階でリストラをされてしまいました。一方、その恩恵で「フェアレディZ」が復活を果たすのですが、それはまた別の話です。
コンパクトサイズではありますがS13由来のポテンシャルを持つFRということで、ドリフトマシンとして今も現役で活躍しています。ノーマル車両にいたっては、プレミア価格がつくことも珍しくありません。ロードスターとはスペシャリティクーペ、FRスポーツというジャンルで競合になりました。
オープンモデルの「シルビア ヴァリエッタ」は当時珍しかったメタルトップで、デザインよりも技術力を優先していた印象はありますが、かなりレアなモデルです。
ホンダ シビックタイプR(EK-9) 1997年~1999年
駆動方式:FF
車重:1070kg
排気量:1595cc
馬力:185ps
ボディ形状:ハッチバック
乗員:4名
価格:199万円~219万円
この時代において、世界一のテンロク(1600cc)ユニット「B16B VTECエンジン」を備えたタイプRシリーズは外せません。マツダのエンジニアですら「ホンダさんのエンジンにはかなわん」といわしめたパワーユニットをグローバルCセグメントという実力を持つ「シビック」に搭載し、速さだけでなく実用性まで折り紙つきです。
チャンピオンシップホワイト、赤バッジ、レカロシート、モモステ、チタンパーツ・・・という専用装備は、同じホンダ車でも「タイプR風モデファイ」としてリスペクトされる仕様です。現行の「タイプR」はFF最速を目指すホットハッチになってしまいましたが、初代「シビックタイプR」は信じられないくらいのバーゲンプライスでした。
また、2世代目「シビックタイプR(2001年~2005年)」は2リッターのパワーユニットを搭載して車格が上がってしまい、ロードスターとは客層が違っていくことになりました。
ホンダ インテグラタイプR(DC2(DB8) 1995年~2000年
駆動方式:FF
車重:1060kg~1100kg
排気量:1797cc
馬力:200ps
ボディ形状:クーペ/ハッチバック
乗員:4名/5名
価格:228万円~257万円
当時のホンダ・タイプR戦略は飛ぶ鳥を落とす勢いで走り屋を虜にしていきました。3世代目インテグラ、特に「インテグラ タイプR」は通称「インテR」と呼ばれ、1800ccのNAエンジンの最高峰として、今でも神格化されています。
ロードスターのキャラクターとは対極のようにみえますが、スペシャリティな5ナンバースポーツカーとして、当時は近しいキャラクターとされていました。なお、DB8という5ドアモデルも存在します。
ホンダ インテグラ(DC5) 2001年~2004年
駆動方式:FF
車重:1180kg~1190kg
排気量:1998cc
馬力:160ps~220ps
ボディ形状:クーペ
乗員:4名/5名
価格:174万円~273万円
スペシャリティクーペの「インテグラ」はこの時代、4世代目へフルモデルチェンジを行いました。
特にベースグレードである「タイプS」でも160馬力を誇り、速さという点ではロードスターよりも圧倒的に格上な存在でした(※一方「タイプR」は「RX-8」と比較されていました)。ただ、乗り味の良さという点で甲乙つけづらい存在として競合になりました。
初期モデルは当時のホンダフェイスであるティアドロップ・ヘッドライトでしたが、後期型はプレーンな造形に変更され、スペシャリティ感が若干薄れてしまいます。なお、先代と同じくNA(自然吸気エンジン)のFFマシンとして頂上的な存在であることは変わりません。
ホンダ S2000(AP1/AP2) 1999年~2007年
駆動方式:FR
車重:1240kg~1260kg
排気量:1997cc~2156cc
馬力:242ps~250ps
ボディ形状:コンバーチブル
乗員:2名
価格:338万円~399万円
車格では明らかにこちらが上ですが、オープンカーとして競合したのが唯一無二のホンダFR「S2000」です。下手なクルマよりも堅牢なボディ剛性は、オープンカーではなくレーシングカークラスとさえいわれています。
ぱっと見いい値段になりますがオンリーワンのパーツが満載なので、本当に採算が取れているのか?と、常にいわれていました。しかし、初期型では高回転域にセットされたエンジンが街乗りでトルク不足とされ、後期モデルは排気量を上げつつもトルクに振って、馬力も若干下げています。なお、一部駆動系パーツはロードスターをアップデートしたものをマツダが提供しています。
名作「湾岸ミッドナイトC1ランナー」によると、「S2000」の価値はシャシーでもエンジンでもなく、パワーを逃さずカチリと決まる珠玉の6速ミッションであるというエピソードがありました。
ロードスター乗りの視点からいえば、エンジンもさるところながら電動ソフトトップの採用により車格を上に感じていました。また、速さにこだわっているのにそこで軽量化しないところにキャラクターの迷走も感じました。