ロードスターRFに「RHT」の片鱗を見た

ロードスターRFに「RHT」の片鱗を見た

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2016年3月23日の「ニューヨーク国際自動車ショー」にて、ついにNDロードスターの「RHT(仮)」と噂をされていた固定ハードトップモデル「ロードスターRF」が世界初公開されました。


ロードスターRFに対する反応は、純然たる「RHT(仮)」を待ちわびていたファンからも賛否両論(悲喜こもごも)でしたが、結果的には近年稀にみるスポーツカーのヒットモデルとなっています。単純にカッコいいですからね。

そこで今回は、ロードスターRFが発表される直前までのファン備忘録をお送りします。

2015 MX-5 spider


2015年11月3日に開催された「2015 SEMA(Specialty Equipment Market Association) Show」にて、2台のNDロードスターをベースにしたコンセプトカーが展示されました。


「Mazda MX-5 Spyder(スパイダー)」「Mazda MX-5 Speedster(スピードスター)」の2台は、あくまでショーモデルというふれこみですが、高い完成度はショーで高評価を得ることができました。


特に「スパイダー」は、NCロードスターでもコンセプト展示されていた「ビキニトップ」とよばれる簡易型の幌を採用しました。その流麗なラインは、かつてマツダが特許出願をしていた画像を彷彿とさせるものでした。

新型ハードトップの特許出願


こちらがNDロードスターの発表前、つまりNCロードスター時代にマツダが出願していた「新型RHT(リトラクタブル・ハードトップ)」の特許画像です。この画像によるとルーフは分割収納で、ハイマウントストップランプは屋根側に来るようになっています。


上記「スパイダー」をモノトーンにしてみると、特許画像に近しいラインになることが分かります。NDロードスター(幌)のデビュー時にはリアの腰高感が指摘されていましたが、特許画像を踏まえるとRHTを想定しているラインに違いないと、ファンの期待値が高まりました。


実際に線画を合成してみると、なるほどイケそうです。流麗なクーペボディがカッコいい。


ただ、実際に発表された「ロードスターRF」は、ファストバックスタイルであることは変わりませんが、ハードトップを全て収納することを断念し、ルーフの一部が開閉するタルガトップ形式になりました。


これはルーフを収納するためのスペース不足をデザイン力で乗り切った、素晴らしい力作だと思います。

特許はどこへいった?


しかし、あれだけファンを沸かせた特許画像は何だったのか・・・となるのですが、実はやはり検討されていたことが「ロードスターRF」プロトタイプ展示会にてメディアに共有されました。その開発エピソードにて「分割格納型ハードトップ」の案を公開したのです。


こちらのバージョンはRF量産車と近しいCピラーが残るメカですが、分割ラインが異なります。これを見てもトンネルバック(※マツダではバットレスと呼ぶ)タイプのルーフを残すために試行錯誤していたことがよくわかります。

 
そしてこちらが特許画像に準じた完全格納タイプです。若干寸詰りのデザインですが、NCロードスターRHTが好きな方は完全格納になるので「アリ」と判断されるのではないでしょうか。

トップが格納された後、縁の隙間には蓋が閉じる・・・というものですが、さすがにメカが複雑すぎるので採用には至らなかったそうです。なお、ポルシェボクスターは幌で同じ動作を行う機構が付いています。


このあたりは百聞は一見にしかずで、ムービー解説をみるとRFメカの凄さがよくわかり、とくにエンジニアの解説がとてもシビれる内容になっています。特にリアフェンダー境目の自然なラインが目を引きますが、その実現には苦労があったそうです。

ようこそ、ロードスターRF


2015年のNDロードスターのデビュー時は何度も「原理原則」という言葉を用いた解説があって、よくいえば伝統的、悪くいえば堅苦しい感じ(めんどくさい感じ)だったのが気になっていました。

しかしロードスターRFは「ロードスターらしさ」ではなく「NDロードスターらしさ」を提案してきた、素晴らしいデザインとメカに仕上がった逸品でした。それは現在の市場評価を聴いても明らかです。

最後に、RF発表時の中山主査のコメントを引用して締めさせていただきます。

「ロードスターRF」中山主査のコメント(引用)
オープンスタイルが基本となるソフトトップモデルに対し、ハードトップを持つロードスター RFはクローズドスタイルの機会が多くなります。だからこそ、クローズ時のシルエット、すなわちキャビンの美しさにこだわり抜きました。

ソフトトップモデルが正統ライトウェイトスポーツとしての魅力をストイックに研ぎ澄ましたものだとすれば、このクルマは誰もが美しいと思える“小さな”スポーツカーの姿を、何ものにも捉われることなく素直に表現したもう一つのロードスターです。


なお、RFの開発時には「NBロードスタークーペ」の姿があったことも述懐されています・・・

関連情報:

歴代ロードスター クーペコンセプト(Coupe1)

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