ロードスター(NB6C) 5MTの魅力

ロードスター(NB6C) 5MTの魅力

この記事を読むのに必要な時間は約7分です。

愛車が「楽しい瞬間」を言語化する


走る、見る、触る。メカをいじっても、洗車をしても、楽しい。クルマの価値観は様々あれど、とりわけ自分の愛車が最高だと思う瞬間ってありませんか。ただ、それを人に伝えるのはなかなか難しものです。

特に趣味車であるロードスターは多様なカスタマイズをされているので、【愛車の良さ】を聴かれたらどう答えようか・・・などと、いらぬ心配までしてしまいます。そこで今回は、NB6ロードスターにおける「気持ちよさ」の話です。

ロードスターは走って特に楽しいクルマであり、どの世代もその軸は変わりません。私自身も歴代ロードスターやマツダ車を乗り継いだことと、幸運なことに友人のロードスターをお借りする機会もあり、改めてそれを実感できています。そのうえで、愛車の【NB6C後期型】が「最高と感じる瞬間」っは何か?と振り返りました。

歴代ロードスターはどれも楽しい


スペック(数値的なデータ)でいえばパワーユニットはお世辞にも特出したものはなく、パワー(馬力)に至ってはカタログ値が出ているかも怪しいです。季節によりハードトップを装着するので兄弟車に比べて「重い」し、ブレーキもNR-AでNBとしては効く方ですが、現代のクルマにしては甘いです。


「オープンエア」の空気感や「シャープでクイックなハンドリング」はどのロードスターにも共通する良さなので、愛車が秀でている訳でもありません。実際にお借りした兄弟車はどれも最高に楽しめました。

そこで考えながら走っていたら、自分の愛車が「最高に気持ちいい瞬間」に気づいたことがあります。もはや身体の一部のように意識せず運転しているのに、脳にエンドルフィンが分泌される瞬間です。

それは格好良く表現すると・・・「シフトフィール」です。

NB6Cの美点「シフトフィール」


もうすこし具体的に書くと、マニュアルシフトのチェンジレバーを「1速 → 2速 → 3速」と段階的に上げていく瞬間であり、特に「2速 → 3速 → ステアリング操作」という一連の動作に加え、うなるエンジンサウンドと加速感(※決して速くない)がたまらないのです。


また、ブレーキを効かすために「4速 → 2速」へ落とし、エンジンブレーキをかけるとガサツにうなるB6エンジンと微妙に車体がアンチダイブ用する瞬間も最高です。


この一連の合間に「ゴクッ」と入る、程よい剛性感のあるシフトチェンジが歴代ロードスターの中で飛び抜けて気持ちいいです。シフトノブの適度な重さ、ウッドノブの感触、絶妙なギア比と相まって、このNB6は世界一のフィールではないかと勘違いしてしまいます。

NA6やNB8後期、更にRX-8前期、AZ-1といったマニュアル車を乗り継いだなか、下手くそなギアチェンジで「ギャ!」とギアを噛んでしまったり、固いシフトをダブルクラッチで2速に入れるなんてことは、日常的にありました。しかし今のNB6ではほぼシフトミスがありません。気持ちいいくらいゴクッ!と入ります。


私自身の走り方が変わったのが原因かもしれません。

初代愛車NA6ロードスターはVスペシャルのナルディウッド内装でしたが、ウッドパーツは手汗を抑えるのに慣れるまで大変でしたし、NB8後期のスコンと入る6速ミッションも増えたギアに興奮しましたが、クロスミッションだったので余計な操作が多かった印象です。しかし現在はウッドパーツでも手はベトつかず、狙った通りにシフトが決まります。

珠玉の5MT「M15M-D」


NBロードスターのミッションは1800シリーズの6速仕様はデビュー当時から話題のひとつであり、改良の歴史は多く記録が残っていますが、実は5速ミッションもNAロードスターから改良を受けています。

このミッションの45mmというシフトストロークは国産車最小であり、ショートストローク「M15M-D」型ミッションはNAからNCまで同じ型番でアップデートされました。また、ルーチェのトランスミッションを流用しているという話がありますが、当時のマツダではFRトランスミッションがルーチェしかなかったというのが実情です。実際そのまま流用されたのはミッションケースとベルハウジングくらいで、ほぼロードスター専用に再設計されています。

なお、NBロードスターは2速をダブルコーンシンクロ式へ改良しました。これはシフトスピードを速くできるとともに、あの「ガリッ!」をしないための、ダブルクラッチをせずともスムーズにギアチェンジする事が可能な機構です。


また、シフトストローク20mmと従来型よりも短くして、組み込みの精度を向上し、金属製のストッパーが接触するノブ上部での遊びを±6mmから±3mmに高め、ガタつきを抑えました。

シフトリンケージは、トランスミッションの延長ハウジングに組み込まれたサポートケーシングに取り付けられたコントロールロッドを採用しています。シフトロッドは、以前の3つではなく2つのブッシングでサポートされるようになりました。すべてのシフトロッドは低摩擦テフロンでコーティングされており、操作感をさらにスムーズにします。


ギアボックス内では、ギアの歯面、スプライン、面取りなどの多数のコンポーネントを再設計し、機械加工で最適化され、滑らかさを保ちつつもギアシフトのダイレクト感を得ることができます。またノブ自体も触感を改善させるための再設計を行っています。そして、加速中にリバースに入らないよう誤動作防止機構(ニュートラルに入れないとリバースは入らない)も付いています。

海外は6速MTが一部グレードにしか存在しなかったので、実は5MT押しであり、こういった技術情報が残っています。国内でも開発エピソードの中では「5速も楽しいですよ!」というエンジニアの発言もありました。

なお、NCロードスターでは2リッターのトルクに対応するために内部構造はもちろん、カウンターシャフトと3速ギアも強化されました。また、1~2速はトリプルコーン、3速にダブルコーン、4速にカーボンタイプのシンクロを採用し、よりシフトフィールを向上させているそうです。NCの5速MTも乗ってみたい・・・

また、5MTのギア比は初代NAロードスターからNCロードスターまで変更されていないのもポイントです。

NB6Cに一度乗ってほしい


しかし、そんな理屈は置いといて、気持ちいいくらいシフトチェンジが「決まる」のは正に人馬一体の瞬間です!

パワーがなくても、ボディが緩くても、リトラクタブルヘッドライトが無くても、この「気持ちイイ」走りを体感できるのが、NB6至福のひとときです。


実は、単にメカがこなれて、たまたま調子がいいのかも知れません・・・が、やはり愛車のシフトフィールは最高だと、ここ最近改めて実感しています。機会があればNB6Cのシフトフィールを体験いただければ幸いです!

関連情報:

NBロードスター(NB6C)のススメ

NBメカニクスカテゴリの最新記事