NBロードスターの安全性能

NBロードスターの安全性能

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今回はNBロードスターの安全性能全般の話です。

NAロードスターからNBロードスターにフルモデルチェンジした経緯は幾つもありますが、特に重要だったポイントは国際レベルの安全基準に対応することでした。グローバルで展開するロードスター(MX-5)は、そこに適合できないと企画自体が成り立たなく、つまり継続販売ができないのです。

なお、2020年現在の自動車レギュレーションはより厳しくなっており、緩くなることは今後恐らくありません。それを踏まえた上で今回の話は、あくまで1998年当時の話であることをご了承いただければありがたいです。

では、NBロードスターデビュー当時の安全基準には何が必要で、NAロードスターからどう対策していったのかを紐解いていきます。

国際基準のベンチマーク(1998年当時)


まずは前提である「国際基準」、つまりベンチマークの解説です。

日本は1970年代から自動車の安全基準は欧州水準を目標にしていて、1998年には正式に「国連の車両・装置等の型式認定相互承認協定(1958年協定)」へ加盟をしました(UN/ECE/WP29)。そこでは以下6ジャンルの基準が定められています。

・騒音(GRB)
・排出ガス・エネルギー(GRPE)
・灯火器(GRE)
・ブレーキと走行装置(GRRF)
・安全一般(GRSG)
・衝突安全(GRSP)

なお、この要件はNBロードスターだけでなく、これ以降の歴代ロードスターにおいてもフルモデルチェンジでアップデートを重ねていく項目です。

このレギュレーションは詳細まで決まっていて、わかりやすい事例はサイドミラーの面積です。例えばNDロードスターもライトウェイトをうたうのであれば、もっと薄くて軽い軽自動車のミラーでもいいように感じますが、大きいミラーが装着されています。一方で国内販売専用の「S660」はとてもシャープなミラーになっています。

NBロードスターの変更箇所


NBロードスターにおいて変更されたのは前照灯(リトラクタブル → 固定ライト)をイメージする方が多いと思われますが、これ自体はヨー感性モーメントの低減につながるので、ライトウェイトスポーツとしてメリットになるアップデートです。

実は一番大きな変更であり、課題になったのは「安全基準」に対応するためのボディ強化でした。特にオフセット衝突(※ボディ前半分の衝突)と、側面衝突基準に対応するための構造刷新はとても難易度の高いものだったのです。理由は明確で、NAロードスター由来のシャシーを継続使用することが前提にあったので、ただでさえ余分なスペースがないところに、単に補強を加わえるだけだと重量増が発生するからです。

ライトウェイトスポーツは「軽さが性能」ですから、重量増は絶対に見過ごすわけにはいきません。実際、ボディ強化による単純な重量増は37kgになる見込みになりました。そこでネジ一本まで解析する「グラム作戦」という軽量化対策をおこない、そこから27kg減・・・結果的にはNAロードスター比で+10kgに収めることができました。まさにエンジニアの意地を感じるエピソードです。

パッシブセーフティ


NBロードスターは単なるボディ強化だけでなく、時代に即した安全装備も追加されました。パッシブセーフティとは「事故が起きたとき」に対応するための能力を指しますが、NBロードスターのボディは当時のマツダ高衝撃吸収ボディ「MAGMA」のノウハウが活かされました。なお、当時珍しかった衝撃吸収ボディMAGMAは「ランティス/323F」から始まったマツダの概念です。


つまり補強だけでは単なる重量増になるので、高剛性のトンネル部分はボディ中心に集め、その周りのフレームはクラッシャブルゾーンとして配しています。事故の際には前面をわざと潰すことで衝撃を分散させ、歩行者及びキャビンを守るのです。


これは前面だけではなく、リアも同様です。また、ボディ構造を見直すいい機会だったので、重量物(スペアタイヤ/バッテリー)を下方に移動してクラッシャブル兼トランク空間の確保と共に、低重心化にも貢献しました。クラッシャブルゾーンの確保によりエンジン/補器/タイヤなどがドライバーを潰すリスクを回避しているのです。


この影響もあり、NBロードスターのキャビンはNAロードスターと比較して若干狭くなっています(室内長(NA 935mm NB 865mm(−70mm))。なお、剛性配分を適正化できたことでNAロードスターに存在したキャビン後方のブレースバーを廃止しました。また、横転時にキャビンスペースを確保するために、Aピラー内には高硬度のパイプが内蔵されています。


また、側面衝突のレギュレーションに対応するためサイドインパクトバー、つまりドアの中に棒を入れているのですが、NAロードスターに入っている斜めのものだけでなく、ベルトラインにも1本追加されました。サイドシル自体も太く強化され、ドアの開口部を半円にしたことも剛性強化へ貢献しています。


側面バリア衝突はインパクトバーの折れ/移動においてNAロードスター比で最大50%低減することが出来ました。


また、ドアの構造材にはソフト素材である衝撃吸収パット(肘掛できる部分)を採用しています。細かいアップデートではNB3以降はAピラー内装部分のクラッシュパット面積が増えています。


NBロードスターはエアコンレス・オーディオレスの「標準車」でさえ全車にエアバッグが装備され、シートベルトにダイレクトクランプ・ロードリミッター付きシートベルトを採用しています。実際、試しにシートベルトを素早く引っ張るとテンションがかかるはずです。


なお、後期型のステアリングはエアバッグの「マツダマーク」がプリントになっています。これは恐らく、コストダウンと軽量化を兼ねているものとおもわれます。余談ですが、RX-7(FD)も同じステアリングを装備しています。(左:デミオ(デミオは立体バッジ)/右:後期ロードスター)

アクティブセーフティ


アクティブセーフティとは「性能で安全性を担保する」という意味です。つまり、ロードスターのコントロール性を高めること自体が「安全に走る」機能になるという考え方です。

そこでサイドミラーの形状変更がなされました。ミラーにレインガター(筋)を設け雨水を誘導し、鏡面に水滴が付くのを低減させています。デザインの関係上、NAロードスターよりも前寄りにミラーが取り付けられていますが、視野確保のために角度の微調整を電動で行うことが可能になりました。視認性を高めることが安全に繋がる、ということです。


幌のスクリーンにはガラスを採用し、標準車以外はデフォッガー機能も備えています。後方視界はNAロードスターのビニールスクリーンとは比較にならないクリアさを保ちます。また、幌の構造自体を見直して軽量化も達成しています。

参考:

NBロードスター幌の話 その2(NB幌)


危険回避の機能として4W-ABSも用意されました。NBロードスターはECU(コンピュータ)が16bitになったので、かつての「使えなかった」ABSよりも細やかな仕事が可能になっています。(AT車には標準装備、NB4まではオプション扱い)


地味に便利だったのが、オーディオユニット(DIN)を上部に移動させたことと、エアーコントロールスイッチをダイヤル式に変更したことです。視線移動を少なく、特にスイッチ類は前面を見ていても感覚で操作が可能になりました。

安全性能のまとめ


以上、国際レギュレーションに基づいたNBロードスターの対応状況でした。なお、NCロードスターへのフルモデルチェンジは、エミッション規制(環境対応)だけでなく安全基準・・・サイドエアバッグに対応する要件を満たすためでもありました。NBロードスターで達成できなかったのは「スペースが稼げない5ナンバーの限界だった」と貴島主査も回顧しており、その対応のためにNCではボディサイズが拡大されました。

安全性を保つことは、ロードスターがモデル継続をするために必要な処置です。ロードスターを「続ける」ことを決意したマツダは、真摯にレギュレーションへ取り組み、その結果が今の歴史に繋がっています。今回はNBロードスター中心のエピソードでしたが、歴代ロードスターのこのあたりを読み解くと、奥深い話が見えてくるはずです。

それでは最後に、衝突安全達成の映像をご確認ください。

関連情報:

NBロードスターは軽いのか?

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