【NB20th】欧州基準のNBロードスター(G-1)

【NB20th】欧州基準のNBロードスター(G-1)

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今回は2代目NBロードスターの開発エピソードです。以前のインタビューとかぶる部分があるかも知れませんが、それだけ記憶に残るエピソードであったこととご留意頂ければと存じます。

さて、NAロードスターからNBロードスターへフルモデルチェンジを行った主な理由は、目前に迫っていた21世紀の自動車安全規制(レギュレーション)とされています。ライトウェイトスポーツカーといえども販売を継続するには、その要件を満たす必要があるからです。

一方「敵ではなかった」フォードではありますが、新型ロードスターの開発において「より売れるスポーツカー」とするため、上位層からの意向を下していこうとしてきました。そのような中、どう開発を進めていったのか。

以下よりインタビュー本編に入ります。

参考:貴島孝雄氏プロフィール
→ https://mx-5nb.com/2019/12/29/kijima2017-0/

ロードスター主査に指名されて


目の前に座っていた平井さんが退職すると聞かされる同時に、RX-7とロードスターの主査を兼任することになった。「何時ですか?」と聞いたら本当に急で、今月で終わりとのことだった。本部長はこの事実を知っていただろうけど、平井さんが大分大学の教授になることが確定するまで発表できなかったのかも知れない。

いきなりロードスターの主査ができたのは、もともと初代から開発に関わっていたことが幸いした。そもそもシャシーで問題があれば対応をしていたし、ジャーナリストから足回りの話を聞きたいとなったら、平井さんに頼まれてそこへ同席をしていた。

1800cc(NA8sr1)の企画は平井さんがやっていたのだけど、エンジンの吹けがよくない事は分かっていて、16ビットのコンピュータで対応(NA8sr2)したのがロードスター主査として、私の最初の仕事だった。


その時、NBへモデルチェンジをする企画はどこまで進んでいたか・・・モデルチェンジは排ガス規制や衝突安全などのレギュレーション変更が要因になる。5年後の変更が想定されれば、猶予期間やインターバルを見越して「いつまでに変えよう」と計画していく。

だから、主査に指名された時には既にNBのプランがあった気がする。しかし、同時に行なっていたセブン(RX-7)のモデルチェンジが多忙すぎて、細かく紐解いていかないと思い出せない。

海外からのフィードバック


NAもヘッドライト(欧州灯火規制)の要件がなければ、もっと熟成して売り続けたかった。ただ、あれだけ売れたNAだが、ドイツからはアウトバーン走行レベル、200km/hでの文句をいってくる。日本の高速道路ではせいぜい150km/hのスピードしか出さないが、海外レベルのフィードバックに対応することで海外レベルの熟成になっていくし、ヨーロッパで売れないものは、ヨーロッパレベルの物にならない。

NAはアウトバーン180km/h、つまり限界付近の安定性が低かった。だからNBの足はアライメントも含めてしっかり熟成させた。


当時のフルモデルチェンジといえば、足回りも含めて【全て変更する】ような時代だったけれど、ロードスターにおいてはNAの味を熟成するだけで十分いけると判断した。NAからNB、フルモデルチェンジでも足回りをそっくり使ってサスペンションを熟成させたのは、マツダでも初めての試みだと思う。

開発費は、仮に1000億利益の計画で200億投資を上程すれば、会社からは根拠の提示が求められる。口だけで「できる」なんていっても説得は無理だから、それまでの実績や信用も必要だし、こちらもリスクもあるのでプロビジョン(設備・施設)のマージンも取っておく。

200億の許可があっても180億で進めれば、仮に190億になっても10億少なくて良かったとなる。突然起こる失敗は読めないから、先に手を打つというのがフォードの手法だ。もちろんNB開発は、全て予算内に収めて開発することができた。

アメリカからの提案


ロードスターの販売は、アメリカが一番の市場になる。したがって最大限に優先するのは残念ながらアメリカで、日本はその次になる。欧州からの意見も聞かないわけではないが、ドイツ、イギリス、フランスとあるから、欧州は一くくりではなく全て別の国とみている。

NB開発当初、アメリカマツダからコンセプトカーが送られて来たのだけど、それが「とんでもないサイズ」だった。幅1.8メートル以上だから3ナンバーよりも大きく、マスタングのクラスをオープンで作れといわんばかりの物で、拡大・パワーアップ路線の提案だった。


ここで林さん(※林浩一氏:NBのチーフデザイナー)が手腕を発揮した。彼はNA時代の直後まで、デザイナーとしてアメリカの自動車文化やテイストを学びに行っていたから、向こうの事情もわかっていた。そこで「林さん、これは違う。1mmたりともも大きくしないでくれ」とロードスターのコンセプトを理解してもらったら、林さんも「このモチーフを残した格好で5ナンバーにする」と約束してくれた。

しかし、「貴島さん、頑張ったけれど3mm大きくなった」といってきた。日本の諸元表記は5mm単位になるから、NAからプラス3mm、1,683mmだと1,685mm表記になる。それでも幅1,700mmを切って5ナンバーになったので、許可をした。


NBはアメ車というよりも、ジャガーとか外国人の好みの恰好になっている。トランクのラインもNAと全く違うダックテールだし、肩(ベルトライン)が張っている感じを出すために、林さんがフェンダーの形に苦労しながらもこだわった。

近年のアウディはNAロードスターに近い味、変な抑揚のないデザインが多い。でも、外国のデザイナーがやりたいのは、NBのようなウェーブとかダックテールな感じになる。面を切ったようなものではなく、「塊(カタマリ)」で全体を考える。それがマツダデザインの特徴だった。

補足:

マツダ車は基本的にグローバル販売されるものであり、主な市場は北米になります。つまり、商品として成立させる基本要件は、米国で受け入れてもらうための「お題目」が必要です。初代NAロードスターの「お題目」は、働く女性をターゲットにした【セクレタリーカー】市場向けの提案でした。

しかしクルマとしての「本音」は、本格的なライトウェイトスポーツを現代技術で復活させることでした。結果として、妥協なき開発姿勢から生まれた走りの楽しさが、メインターゲットの女性だけでなく、エンスージアスト全般にまで評価されたのは事実の通りです。

したがって、フルモデルチェンジを行うにあたり、NAロードスターが【支持された理由】を見直した際、拡大・パワーアップ路線ではなくLWSとしての「人馬一体」、つまりキープコンセプトを貫くという選択を開発陣は下しました。これが「1mmたりとも大きくしないでくれ」というエピソードに繋がります。

また、NBロードスターの開発で一番最初に行ったのは、足回りのセッティングを「戻したこと」でした。実は、初代から「走り」のベンチマークはアウトバーンなどスピードレンジが高い欧州をエンジニアは見越していましたが、テストチームによりクルマの味付けが最終段階で【意図的】にコーナリング重視にセッティング・・・スピードレンジを低く再セッティングされていました。それをNBロードスターで「戻した」とのことです。

そんなNBロードスター開発の話は、次回に続きます。

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