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下手な社外品よりも軽いロードスター純正アルミホイール。デザインの美しさの傍で、メルセデス製も割れるマツダのテストコードをクリアする堅牢さと、裏側はエグい肉抜きがなされています。なお、初期採用の14インチはアフォーダブルであるためです。
純正アルミホイールのこだわり
今回はNA/NB純正アルミホイールのトピックです。
「軽さは性能」とするロードスターですから、感性モーメントにも関わるバネ下重量・・・つまりアルミホイールにも相当なこだわりを持って開発されました。
マツダには自動車業界で最も厳しいとされる足周りのテストコードが存在するそうです。30年前の話ではありますが、メルセデスのアルミホイールですら合格するものがない「縁石乗り上げ」において、幾度もデザイン修正をおこない開発されたNA純正のアルミホイール。
比較的短期間でデザインされたそうですが、一番スポーティに見えるスポークタイプにこだわりました。しかし、テストをクリアするために当初のデザインから大幅に変更され、スポーク数を増やしつつ、肉厚を最小にまで落とし、軽量化を行いました。
しかし、開発最終段階で10%の重量軽減が課せられ、オリジナルデザインではそれが達成できないとホイールメーカーからの回答がありました。そこで8本スポークから7本スポークに平井主査の判断で変更し、重量もコストも達成できた・・・というエピソードが残されています。
オリジナルデザインをひとりで行った田中俊治氏は「デザイナーの了解もなしにデザインを変えるとは!」とクレームを付けたそうですが、重量軽減と厳しい設計基準をアルミメーカーが保証するとのことで、怒りの鉾(鉾)をおさめたそうです。
これはNB後期型の16インチホイールですが、そんなエピソードが残っている通り、純正アルミホイールを裏面からみると、多くの肉抜き穴が確認できます。
さて、そんなロードスターの純正ホイールを以下より振り返っていきます。なお、小数点以下は四捨五入しているのと、製造差分があるので、あくまで参考値としてご覧ください。
NAロードスターの14インチホイール
スチールディスク・ホイール:8.2kg
14×5.5 J 4H 100 45
主な装着車:ベースグレード(NA)/標準車・Mパッケージ(NB前期)/WebTuned(NB後期)
鉄製の規格品、いわゆる「鉄チンホイール」です。アフターマーケットの商品で交換する前提とされており、実物を見る機会は少ないかもしれません。後述するアルミホイールよりも約4割重いということもあり、どっしりと落ち着いたハンドリングになるとされています。
7スポーク・アルミホイール:5.6~5.7kg
14×5.5 JJ 4H 100 45
主な装着車 NA6:スペシャルパッケージ/Vスペシャル/Jリミテッド
NAロードスター専用に開発されたアルミホイールです。オリジナルデザインは8スポークだったものをコスト削減と軽量化を達成させるために7スポークにリデザインされました。当時、海外市場ではメーカー標準アルミホイールデザインの評判がいまいちだったなか、現地でとても好評を得たそうです。
なお、国内はホイールセンターに「ユーノス」のバッジが刻印されていますが、海外ではマツダ旧ブランドシンボルが描かれています。
BBS OEMアルミホイール:4.1~4.8kg
14×6 JJ 4H 100 45
主な装着車 NA6:Sスペシャル
ゴールドカラー:Sリミテッド
より走りに特化したグレード「Sスペシャル」系に装着されたホイールです。ビルシュタイン・ダンパーと共にメッシュタイプのBBSホイールで“その気”にさせてくれました。このホイールは製造公差があるのか、重量の差分が広いことで知られています。なお、ユーノスロードスターのショップオプションとしてデビュー当初より選択は可能でした。
7スポーク・アルミホイール:4.8~5.2kg
14×6 JJ 4H 100 45
主な装着車 NA8:スペシャルパッケージ/VスペシャルType1/SスペシャルType1/JリミテッドⅡ/Gリミテッド
NA8シリーズより、標準アルミホイールのデザインが刷新されました。NA6に負けず劣らずロードスターにマッチングした、洗練されたデザインです。メッキ加工されたバージョンも存在し、シリーズ最後まで架装されました。面白いのはSスペシャルで、Type1は14インチですがType2は15インチがチョイスされます。
このホイールは少なくとも裏面の肉抜きが3バージョン確認されており、重量差分の幅が広いことも確認されています。
7スポーク・アルミホイール:4kg
14×6 JJ 4H 100 45
主な装着車:M2 1028(NA8)
バフ研磨 :Vホイールスペシャル・タイプⅡ/SRリミテッド
Vスペシャル・タイプⅡを中心にバフ研磨(鏡面加工)された純正14インチは、飛びぬけて「軽い」ことが確認されています。これはフルオプション仕様だった同モデルの重量増を避けるための処置だったと類推されます。
また、M2 1028のものはこの素体にブラック塗装をしているものになります。ロードスターに架装された14インチとして最も軽いものとして、もはや市場に出回ることは少なく塗装を施したフェイクには要注意です。なお、他のM2は15インチを履いています。
NBロードスターの14インチホイール
スチールディスク・ホイール:8.2kg
14×5.5 J 4H 100 45
主な装着車NB6/8:標準車(前期)/Mパッケージ(前期)/WebTuned(後期)
NBでも目にすることは少なかったスチールホイール。海外ではこの状態で出荷され、現地で独自のアルミホイールに変更し、「現地限定車」として販売されていました。
5スポーク・アルミホイール:5.7~5.8kg
14×6 JJ 4H 100 45
主な装着車 NB6/8:スペシャルパッケージ/SP/S(前期)/VSシリーズ/M(後期)/YSリミテッド/クーペ
NBロードスターのグラマラスなラインに合わせて、力強いデザインの14インチホイールがデザインされました。アルファロメオのような、欧州車にも似合うデザインです。エレガンスグレードのVSには最後まで装着されており、ベーシックなロードスターの足まわりは14インチであることが分かります。
なお、製造メーカーはエンケイとユーモールド(現:宇部興産)の2社が存在し、刻印や販売価格が違います。重量差があるのもそのためです。刻印部分はホイールを裏返さなければ分かりません。
純正14インチホイール まとめ
なお、14インチの選択肢としては、フォルテクスのワイヤーホイール(モナーク)などもショップオプションで購入可能でしたが、今回は納車時に装着されていたものをご紹介しています。
ロードスターのデビュー当時、14インチホイールが選ばれた理由は明確でした。ライトウェイトかつ、アフォーダブル(手軽)に楽しむスポーツカーとしての価値を提供するロードスターにおいて、当時の乗用車で標準採用されていた・・・つまり、気軽に(安価に)タイヤ交換が可能だったからです。
2020年現在では、軽自動車も16インチを履く時代になったので、逆に選べるタイヤが少なくなったといわれていますが、初代ロードスターのハンドリングは14インチで評価されていたことも大きなポイントです。その乗り味を試す機会がありましたら、ぜひ楽しんでいただければと思います。
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