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ロードスターにはフライングM(マツダ・カモメマーク)やMAZDA/Roadsterのロゴバッジなど、ブランドや愛称を示すロゴマークが加飾されています。ただ、よく目を凝らしてみるとその他にも多くの文字列が隠れているのをご存じでしょうか。
その正体は、世界各国の保安基準適合を表すもの。一見ただの文字列に見えますが色々な意味が示されていて、パーツの仕様を確認をすることも可能です。近代のクルマでは目立たないように隠して刻印されることが多くなりましたが、NBロードスターの時代のクルマでは見える位置に以下の認定規格が示されているのです。
刻印 | 認定規格 |
JIS | 日本産業規格 |
自 | 国土交通省 保安基準 |
E | 欧州ECE |
DOT | 米合衆国運輸省 |
SAE | 米国自動車技術者協会 |
そこで今回は、NBロードスター後期型(NB3)に刻印されている文字列をご紹介をします。
ロードスターのウインドウガラスにある文字列
ロードスターのキャビンではフロント、サイド、リア(もしくはハードトップ)にガラスが使われています。一見透明にみえるガラスであっても、実は細かく仕様が違っており、そのすべてが記載されているのです。なお、私のロードスターは日本板硝子株式会社(ガラスメーカー)のパーツが採用されており、「NIPPON SAFETY」のメーカーロゴも刻印されています。
以下、ガラスにおける共通の記載事項です。ロードスターはグローバルカーなので日本、欧州、米国すべての認証を得ており、欧州ではベルギーにて全て申請されていたようです。私の持つハードトップ(DHT)はNAロードスター時代のものですが認証番号が一緒なのもポイントです。NBロードスターは幌のガラススクリーン以外はNAと共通パーツであることが分かります。
共通記載 | 意味 |
JIS | 日本工業規格 |
DOT23 | 認定番号(日本板硝子株式会社) |
AS | 米国認証ANSIマーク |
NSG.M XXX | ガラスの指定識別番号 |
E6 | 欧州認証識別(ベルギー) |
43R-XXXXXX | 欧州認証番号 |
これらの記載項目を元に、各種仕様を判別することができます。
①フロントガラス
フロントガラスの刻印は、助手席側Aピラーの根本に刻印されています。ここで確認できるのは以下の通りです。
製品名 | LAMIPANE GGN |
AS1 | フロントガラスに使用可能 |
M411 | 4(合わせ 4.7~5.3mm) 1(グリーン・UVグリーン+グリーン) 1(合わせガラス30mill膜) |
LP | 合わせガラス |
フロントガラスは破損したときに飛び散らないように「合わせガラス」となっていて、フロントガラス専用認証を取得しています。また、緑色ベースのUVカット加工になっているのも、指定識別番号から分かります。
②サイドウインドウガラス(助手席側)
製品名 | DGN |
AS2 | フロントガラス以外に使用可能 |
M405 | 4(強化 4mm) 0(グリーン・UVグリーン+クリアー/グリーン・UVグリーン) 5(強化ガラス・撥水コーティング付き) |
TP | 強化ガラス |
サイドウインドウの刻印は、リアよりの後端に刻印されています。NB3ロードスターでは撥水コーティングが施されており、その記載が入っています。
③三角窓(助手席側)
製品名 | DGN |
AS2 | フロントガラス以外に使用可能 |
M31.05 | 31(強化 3.1mm) 0(グリーン・UVグリーン+クリアー/グリーン・UVグリーン) 5(強化ガラス・撥水コーティング付き) |
TP | 強化ガラス |
三角窓も同様に認証を得ており、支柱後端に刻印がなされています。NB3なのでサイドウインドウと同じく撥水コーティングされているのと同時に、若干薄く加工されていることが分かります。
④幌のリアウインドウ
製品名 | THERLITE-T |
AS2 | フロントガラス以外に使用可能 |
M31.58 | 31(強化 3.1mm) 5(グレー+クリアー/クリアー) 8(強化ガラス・熱線入り) |
GB | 中国国務院規格 |
ガラス単品ではそれなりに重量のある幌のリアウインドウは、フロント/サイド周りと違ってグレーのガラスが採用されています。また、熱線プリント入り仕様であることも、指定識別番号から読み解くことができます。面白いのは、JIS規格を得ていますがこのパーツのみ中国製であることです。
⑤ハードトップのリアウインドウ
製品名 | THERLITE-T |
AS2 | フロントガラス以外に使用可能 |
M358 | 3(合わせ・強化 3mm) 5(グレー+クリアー/クリアー) 8(強化ガラス・熱線入り) |
TP | 強化ガラス |
ハードトップの湾曲したリアウインドウももちろん認証を得ています。刻印は運転席側の右下にあります。幌リアスクリーンと同じくグレー(スモーク)が若干入っていることが分かります。
ヘッドライトにある文字列
NBロードスター後期型のヘッドライトは丸目異形4灯式(ハイビーム/ロービーム/ウインカー/ポジション)となっており、よく目を凝らすと刻印が隠れています。面白いのは、「HB4」など指定バルブも記載されているので、いざという時の灯火交換で指定部品がわかります。なお、現在はここまで細かく刻印されているクルマは少ないので、90年~00年代スポーツカーのアイデンティティといえるかもしれませんね。
なお、NBロードスターのヘッドライトの構造材は、飛び石などに強いポリカーボネイトが採用されています。
04HCRPL→ | ECE(欧州)で定めるハロゲンランプ規定「ECE No8」の04改定シリーズに適合。 右矢印(→)は左側通行に対応という意味 HCRは「4灯式ヘッドランプ」、PLは「プラスチックレンズ」 |
E13 | 欧州識別番号(ルクセンブルク) |
17.5 | 最高光度のリファレンス値 |
9832/9833 | ECE欧州審査機関の取得番号 |
A02← | シグナルランプ(ポジションランプ含む)規定「ECE No7」の02改定シリーズのAカテゴリー適合 車体外側の規格に適合しているため「←」の矢印が入る |
KOITO | 株式会社小糸製作所のメーカーロゴ |
100-01937 100-61639 |
ヘッドランプ型式のデバイス番号 |
JAPAN | 日本製 |
HB3 | 適合バルブの型式番号。ランプごとに適合バルブ型式が記載されている |
ヘッドライトは小糸製作所製品で、ルクセンブルグの認証を得ていることが分かります。特に、ハイビームとロービームは細かい規定があるので、多くの刻印を確認することができます。
自 | 国土交通省の保安基準「前照灯の型式指定基準」に適合 |
HCHR-45 | 「HC」は4灯式ハロゲンヘッドランプの「すれ違いビーム」 「HR」は4灯式ヘッドランプの「走行ビーム」 共に「ECE No.112&8」適合、45は付与番号 |
SAE HRIP99 | SAE認定、「HRIP99」は4灯式走行ビームに適合した付与番号 |
ウインカー周りには、国土交通省や北米認証のロゴが刻印されています。NBロードスターはすべてのライトが統合されているので、ユニットひとつの中で刻印も多くなっているのも特徴です。
リアコンビネーションランプにある文字列
リアコンビネーションランプは日本の市光製作所による製品となっています。NBロードスターのテールはヘッドランプと同じく多くの機能(ストップ/テール/ウインカー/バック/バックフォグ(※欧州)/リフレクター)が統合されている重要な保安基準部品なので、それらの規定をクリアした刻印がなされています。欧州認証はフロントと同じくルクセンブルクで取得していました。
余談ですが、グランツーリスモ7のフォトモード(高解像度レンダリングモード)では、これらの刻印が再現されているのでも話題になっていますね。(※現時点でNB
NBロードスターは未登場・・・)
9821 E13→ |
欧州識別番号(ルクセンブルク)ECE規格認定 「→」は、リアコンビネーションランプの明るさ性能要件の適合方向 付与番号9821 |
バックランプとウインカーの上部に、ちょこっと欧州認証が記載されています。なお、矢印は左右対称です。
AR00 | 「AR」とはバックランプ ECEで定める「ECE No23」の00改定シリーズに適合 |
F00 | 「F」とはリアフォグ MIN150cd~MAX300cdの明るさ性能を満たしている ECEで定める「ECE No38」の00改定シリーズに適合 |
IB02 | 「IB」とは「リフレックスリフレクター:RR」 ECEで定める「ECE No3」の02改定シリーズに適合 |
2a01 | 「2a」とは「リアターンシグナルランプ」(※「2」はリア) ECEで定める「ECE No6」の01改定シリーズに適合 |
R-S102 | 「R-S1」とはダブルフィラメント電球によりストップ/テールを兼ね備えるもの ストップとテールが別の場合は「RS1(ハイフンなし)」となる ECEで定める規定「ECE No7」の02改定シリーズに適合 |
各機能における認証番号が全て記載されています。ランプに配置されている機能と同じ順番で刻印されているところが面白いですね。
DOT | 米国の法規である「FMVSS」に適合 |
SAE P2 ARIST 99 |
「A=RRリフレックスリフレクター」「I=ターンシグナル」 「R=バック」「S=ストップ」「T=テール」 「P2=識別ランプ」 99は付与番号 |
ランプの下には、北米の認証番号が記載されています。こちらは機能の順番ではなく、決められた記号での認証記載になっています。
ICHIKOH 4917 JAPAN |
市光工業株式会社 製品番号4917、日本製 |
日本の刻印は国土交通超の認証番号記載ではなく、メーカーロゴと製品番号といったシンプルな構成になっています。なお、素材は飛び石などの心配がないことから、アクリル樹脂製になっています。
ハイマウントストップランプ
08 S3 | 申請デバイス番号 |
E13 0342 | 欧州識別番号(ルクセンブルク)ECE規格認定、付与番号9821 |
KOITO 286 61852 |
株式会社小糸製作所 デバイス番号 |
SAE 03 96 | SAE認定、「03 96」はハイマウントストップランプ適合、付与番号 |
DOT | 米国の法規である「FMVSS」に適合 |
トランクに配されているハイマウントストップランプにも記載があります。こちらは小糸製作所製であることが分かります。
その他灯火類
NBロードスターには他にも小さい灯火類があり、もちろん認証番号を得ています。
フォグランプ
CIBIE | シビエ(現ヴァレオビジョン)ブランドロゴ |
SAE F01 | SAE認定、「F01=フォグランプ」 |
B E2 026719 |
ECEランプ「B」クラス(フォグランプ) 欧州識別番号(フランス)ECE規格認定 取得番号026719 |
純正フォグランプは100年以上の歴史を持つフランス・シビエ製のフォグを採用しており、認証番号ももちろんフランスでした。また、このランプは規格品なので他車種にも採用されている、信頼性の高いパーツです。
サイドターンシグナル(ウインカー)
01 5→ | ECEサイドターンランプ規定適合 「→」車体前方を示す |
E24 0025 | 欧州識別番号(アイルランド)ECE規格認定 取得番号0025 |
I.L. | I.L. Motorsport(ドイツ)ブランドロゴ |
私の愛車はクリアタイプのターンシグナルに交換しているのですが、保安基準適合品として認証を得ています。なお、ECE規格は日本の保安基準のベンチマークより上のクラスになるので、基本ECE規格をクリアしていれば公道使用において問題ありません。
バンパーガーニッシュ(サイドマーカー)
自R-798 | 国土交通省の保安基準適合「R」はリフレクター(反射板) 798は付与番号(左右共通、リアは799) |
TOP | 上部を示す |
1A | ECE「1A」カテゴリー(サイドマーカーランプ) |
E2 02 88116 |
欧州識別番号(フランス)ECE規格認定 取得番号02-88116 |
KOITO 230-61317 |
株式会社小糸製作所 デバイス番号 |
JAPAN | 日本製 |
SAE AP2 87 | SAE認定「AP2=マーカーライト」付与番号 |
日本国内ではリフレクター(厳密にはバンパーガーニッシュ(飾り))扱いになるNA/NBロードスターのサイドマーカーですが、北米ではマーカーライトとして点灯するので、その規定をクリアしています。私の愛車はマツダ純正のクリアタイプマーカーに変更していますが、メーカー純正なので国土交通省公認の保安基準適合マークが付いています。
どちらにせよ、これらの刻印は最近のクルマでは(表立って)見かけることのなくなった文化。意味を知っても意味はないかも知れませんが、多くのメーカーによってクルマはできているんだなぁと、ロマンを感じていただければ幸いです。
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