ゲームボーイの「ロードスター」

ゲームボーイの「ロードスター」

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あらゆる特異点、1989年(平成元年)


1989年(昭和64年、平成元年)の日本といえば、バブル経済まっしぐらの好景気。我らがロードスターをはじめ、スカイラインGT-Rやレガシィ、セルシオなどの名車が誕生した、国産自動車の歴史における特異点として良く語られます。

ただ、この年は自動車だけでなく、様々なヒット商品が生まれた年としても知られています。ざっと書くだけでも・・・

・ハンディカムTR-55(ソニー)
・クイックル(花王)
・ハチミツレモン(サントリー)
・おとなのふりかけ(永谷園)
・鉄骨飲料(サントリーフーズ)

既にブランド消滅したものもありますが、未だ定番商品として店頭にならんでいるものもあります。そして、当時のギークだけでなく、全国のゲームファンに衝撃を与えた初代「ゲームボーイ(任天堂)」が発売された年でもあります。

伝説のゲーム機、ゲームボーイ


ゲームボーイ(GAME BOY)は、1989年4月21日に任天堂が発売したROM交換方式の携帯型ゲーム機。任天堂の携帯ゲームとしてはゲーム&ウオッチに次ぐ商品で、開発は「枯れた技術の水平思考」の名言で有名なヒットメーカー、横井軍平氏(故人)が開発されたことでも有名です。

当時はファミコンに次ぐ高画質な次世代ゲーム機、メガドライブやPCエンジンなどがすでに普及しており、任天堂もこれらに対抗したスーパーファミコン開発の噂を匂わせていた状況でした。そのようななかゲームボーイは乾電池駆動でモノクロ型(4階調)液晶というロースペックで、任天堂社内ですら「今さらモノクロで売れるのか」と期待しない声もあったそうですが、結果的に世界累計で5,000万台近くを出荷しています。


何より、場所を選ばず(といっても初代はバックライトは無し)スーパーマリオやポケモンが遊べるだけでなく、湾岸戦争でアメリカ軍に提供されたのち、空爆で倒壊した兵舎から発見されたゲームボーイが正常に動作したエピソードなど話題に尽きることはなく、2005年まで16年間に渡ってゲームボーイ・シリーズとして市場に君臨していました。

ロードスターの発売期間と併せると、初代NAのデビューからNB最終型まで同じようにマイナーチェンジを繰り返しながら「現役」だったレジェンドマシンになります。

ゲームボーイ版「ロードスター」


ゲームボーイがメガヒットした背景には、携帯で遊べる利便性だけではありません。ゲームは高画質・高音質な次世代機に対応するために開発コストが嵩んでいったなか、「枯れた技術」・・・つまり、ファミコン時代に培ってきた、比較的ハードルの低いソフト開発のノウハウが活かせたこともあり、様々なメーカーがゲームボーイ市場に参入していきました。


そんななか1990年10月19日に発売されたのが、ゲームボーイ専用ソフト「ロードスター」です。

テーマはもちろん前年から大ヒットをしていた「ユーノスロードスター(NA)」であり、それを題材にしたレースゲームとして仕上がっています。もとになるゲームでは違うクルマだったかも知れませんが、ブームにあやかってロードスターをフューチャーしたことは間違いありません。

 
発売元のトンキンハウスは、教科書を始めとした教育インフラを提供する老舗出版社から始まったゲームブランドで、ファミコン時代は「けいさんゲーム」などで世の中の親にゲームの大切さを広めてくれた偉大なメーカーです。ブランド末期にはギャルゲーのリリースも行っていましたが、残念ながら現在はゲーム事業から撤退しています。


注目すべきは、自動車を題材にしたゲームは現在に至るまで(有名どころでは「グランツーリスモ」など)様々なメーカーから発売されていますが、コンソール(ゲーム専用機)において単一の自動車ブランド(ペットネーム)を用いたゲームは、以下のように数えるほどしかありません。

1989 ユーノスロードスター・ドライビングシミュレーター:AC/ナムコ
1990 ロードスター:GB/トンキンハウス
1993 JAGER XJ220:MCD/ビクター音楽産業
1999 F355チャレンジ(※2含む):AC,DC,PS2/セガ


自動車を題材にしたゲームは登場車種のバリエーションが訴求点のひとつに挙げられますが、ジャガーやフェラーリと同等に「ロードスター」は一点突破で勝負できたブランドであり、当時のユーノスロードスター・ブームがいかに凄まじいものであったかが分かります。

ゲームボーイ版「ロードスター」プレイ内容

 
このゲームはトップビュー(見下ろし方)で展開するレースで、Aボタンがアクセル、Bボタンがブースト(つまりターボ)と、いきなり現実よりもハイスペックなマシンになっていますが、誤差の範囲でしょう。実際、非常にシンプルなゲーム内容になっていますがそれだけにコーナーの駆け引きが熱く、一部のレトロフリーク界隈ではRTA(クリアまでの実時間)で盛り上がっています。

  
ゲームでは6人のドライバーから選択でき、微妙にステータス表示は異なりますが・・・差異はほぼありません。コース設定はサーキットのほかに、海岸線やダート(2週目)などバラエティに富んでおり、路上にはスリップ要因になるオイル、無敵、回復など、実在のレースと同様に(!?)様々なアイテムが落ちていますので、拾い・除けながら攻略していくスタイルです。

 
また、ピットインすることによりステータスは大幅に回復し、ボタン連打でピットクルーを急かすことができます。クラッシュ時にはドライバーが外に投げ出されてしまうので(ロールバー無しの漢仕様)連打で愛車まで駆け戻りましょう。ちなみに、車体がアザーカーに接触するとボディ疲労が進み(いわゆるHP)、その状態でクラッシュするとゲームオーバーです。まさに人馬一体ですね!

レースで一位になれば愛車がパワーアップできる、勝利者にやさしいレギュレーションなのも現実同様です(!?)。20コース攻略モードで300ポイントを稼げれば「裏コース」が出るそうですが、その領域に到達するにはかなりのテクニックが必要です。ちなみに、通信ケーブルを活用すれば二人同時プレイ(対戦)も可能です。

 
ロードスター成分に疑義ありそうなゲーム内容ですが、デモ画面ではみんなが大好きなユーノスロードスターの勇士を拝むことができます。当時はモノクロ液晶画面の向こうに憧れのオープンカーがいるだけで、高い満足度を得ることができたのです。


なお、このゲームで最も評価されているのはレースクイーンの女の子。ゲーム内容よりも気合の入っているグラフィックに、当時のキッズたちはこれでご飯3杯いけました。

その後、このGBソフトは・・・


ロードスターはいわゆる日本車としての愛称なので、同ゲームが海外展開をする際にタイトルを「MX-5」や「Miata」にしたかといえばそんなことはなく、ローカライズされないまま(※ゲームボーイはリージョンコードがない)提供されたようです。したがって、一部のミアータファンからはコレクションアイテムとして所持されています。


一方、このソフトは1996年に発売された「スポーツコレクション(トンキンハウス)」内にも改めて収録されました。このカートリッジは当時流行した「〇in1」系のソフトで、それまで同ブランドで発売されたシーサイドバレー、ボクシング、サッカー、ドッジボーイといったスポーツゲームのひとつとして「ロードスター」が収録されています。つまり、ロードスターは「スポーツカー」であることがゲームの世界でも実証されたことになります。


ちなみに、これらのソフトはプレミアがついているかといえばそうでもなく、ソフト単品は1,000円ほどで購入可能です。ただ、パッケージ完品(ソフト、箱、説明書、アンケートはがき)のものは、それなりの価格が付くようです。


ただ、いつ何時何があるか分からない世の中です。ロードスターコレクターを志す方は、(エミュレーターでダウンロードとか、野暮な話は抜きにして)一本押さえておいても損はないかも知れません。


トップビューでちまちましていたレースゲームも、今やドライビングシミュレーターとして超絶リアルなグラフィックで、バーチャルで技術を培ったプレイヤーがリアルレースに出場する時代になりました。本当に凄い時代になりました・・・

ゲームの出来はともあれ、クルマのペットネームがタイトルとして通用するくらい流行の中心になっていた「ユーノスロードスター」。その人気を垣間見ることのできるゲームソフトのご紹介でした。

関連情報→

ユーノスロードスター・ドライビングシミュレーター

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