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LAオートショー「デザイン・チャレンジ」
マツダの先進的なプロジェクトに割り振られる「MX(Mazda eXperimental)」シリーズ。「MX」と名の付くクルマは、MX-5(ロードスター)のような市販車だけでなく、様々なマツダのコンセプトカーにも名づけられました。
そのなかで、とりわけ未来志向なコンセプトカーとして発表されたのが「MX-0(ゼロ)」です。
2010年、世界経済はリーマンショックの傷(景気後退)からやっと回復の兆しがみえていました。ただ、その時のエネルギー需要の教訓から、ガソリンをバカスカ垂れ流して環境破壊をするよりも、よりエコロジーで環境性能を追求する流れが自動車業界にも起きていました。
そこで、年末に開催された北米LAオートショー(ロサンゼルス)にて行われた「デザイン・チャレンジ」コンペは「1000ポンド(約453Kg)のクルマ」というテーマに決まりました。
単に軽量化や環境性能(エコ)の追求だと退屈なイメージが湧いてしまいますが・・・ここからは自動車メーカーのデザイナーの腕の見せ所で、各社が本気になってスタイリッシュなコンセプトカーを発表していったのです。SFの世界に出るようなペーパープランではありますが、未来に向けた各社のフィロソフィーを発表する場となったのです。
2010 Mazda MX-0 Concept
Make | Mazda |
Model | MX-0 |
Concept year | 2010 |
Production year | 2020 (theoretical) |
Engine | electric motors |
マツダMX-0(ゼロ)は、マツダ北米デザインスタジオ所属9人のデザイナーにより提案されたコンセプトカーです。
そもそも、日本の自動車メーカーはコンパクトカーや軽自動車など、軽量なクルマの生産実例をいくつも持っています。特にマツダはライトウェイトスポーツカーであるロードスター(MX-5)を手掛けていることもあり、「MX-0」のベンチマークをロードスターにしました。
もちろん、重量が約1,000kgのロードスターを半分の重さにすればいい・・・なんてものではなく、デザインチャレンジに即した「MX-0」3つのビジョンが、プレスリリースされています。
Mazda’s longtime commitment to low weight is driven by the belief that effortless cornering and acceleration should be at the heart of every car we design. Our featherweight icon – the Mazda MX-5 Miata, tipped the scales at a little over 2,300 pounds in its first generation. Starting with the MX-5 as a benchmark, the design team has carried out a systematic process of reduction and consolidation. In this process, we have redesigned each component in the Mazda MX-0 to carry out the functions of several MX-5 components, effectively replacing a multitude of MX-5 parts with fewer, simplified ones. Innovative lightweight materials have been used extensively to obsessively lower weight.
ゼロウェイト
長年にわたるマツダの軽量化の取り組みは、設計する全てのクルマの「軽快なコーナリング」と「それによる加速」に寄与する信念に基づいています。
私たちの軽量級のアイコンとしたマツダMX-5ミアータ(ロードスター)は、初代で2,300ポンド強(約1,050kg)の重量でした。それをベンチマークにして、設計チームは部品の削減と統合を体系化しました。マツダMX-0の各コンポーネントの再設計プロセスにより、いくつかのMX-5の機能を再現し、MX-5と同じ機能のパーツを統合したパーツに置き換えました。革新的な軽量素材もふんだんに使用したことで、大幅な重量減を実現しています。
Aimed at the global market of 2020, and with projected volume of 500,000 units annually, the Mazda MX-0 would have positive effects on the world’s environment and economy by way of less energy consumption and minimized use of raw materials. High-volume, automated manufacturing of sustainable, inexpensive composites coupled with clean-running drive trains are the key to both low weight and high-volume production.
ゼロカーボン
マツダMX-0は世界市場にて2020年に年間50万台を計画しています。エネルギー消費の削減と原材料の最小化により、世界における環境と経済にプラスの効果をもたらします。「安価な複合材料」の自動製造の技術を持続することは、クリーンな走行ドライブトレインと相まって、「軽量」と「大量生産」両方を達成する鍵となります。
At the heart of the Mazda MX-0 is its purpose as a driving beast. Its ultra-light mass is pushed by high-torque electric motors. High power-to-weight is where a Mazda comes alive. Impossible acceleration and instant cornering is the result. It’s more like flying than driving. Zero hindrance. Driving bliss.
ゼロ質量(=最高速度)
マツダMX-0の心臓部は、まるでドライビングビースト(野獣)のようです。超軽量な質量は高トルクの電気モーターによって駆動し、ハイパワーウェイトレシオなマツダが復活したのです。ありえないほどの加速と俊敏なコーナリングが実現しました。結果、運転するよりは「飛ぶ」ような体験を生むことになりました。このクルマのドライブは何の困難もなく、あなたを至福に導くでしょう。
以上、とんでもないドリームプランかも知れませんが、コンセプトカーはそれくらいハッタリが効かないと面白くありません。2020年生産予定というハッタリもマツダらしい発表です。
現在の価値観では遥か先の未来にしか見えませんが、50年後?100年後の内燃機関エンジンが消滅した世界線では、こういったスポーツカーに「MX」の名が付いて、残っているのかもしれません。馬車は消滅したけれど、競馬のサラブレッドは生き残り、進化している・・・なんて話にも繋がりますね。
なお、MX-0のプロモーションビデオも残されています。「ダブルウィッシュボーンでFRで50:50」とかそんな呪縛を退いて、あくまで超軽量な未来のスポーツカーをどうやって実現するか・・・と語っているところが見所です。
その他メーカーの「軽量級」コンセプトカー
この「デザイン・チャレンジ」コンペは、エコカーばかり発表されて若干冷えていたコンセプトカーの界隈に一石を投じたのは間違いなく、他メーカーも面白いコンセプトカーを発表しているのでご紹介します。
トヨタ「NORI(海苔)」
シャシーやボディーにオーガニックな素材「海苔」を使用し、軽量化を実現しています。
ホンダ「Air」
ジェットコースターとスカイダイビング用のウィングスーツにヒントを得たデザインになっています。圧縮空気を利用した駆動システムが特徴です。
日産「iV」
究極の素材「クモの糸」を合成し、その特徴を活かしてフレームを構築しています。
スマート「454WWT」
フレンドリーでとてもかわいい、おばあちゃんのようなロボットにより組み立てられるのが特徴です。クルマだけではなく生産プロセスに踏み込んで、より良い環境性能を実現します。
ボルボ「Air Motion」
単純な構造と、強力な圧縮空気モーターを使用し駆動します。
キャデラック「Aera」
AeraとはAero(空気) + Era(時代)を合わせた造語です。その名のとおり超軽量化されたボディーが特徴になります。
メルセデス「Biome」
見た通り、自然との共存がテーマです。植物栽培のプロセスを模して自動車を製造していきます。
マイバッハ「DRS(電力車)」
究極のエコエネルギーである「人力」を活用。スタイリッシュ(ほぼ)人力車です。
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