3台のロードスター、購入経緯(備忘録)

3台のロードスター、購入経緯(備忘録)

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このサイトをご覧になっている方はロードスターのオーナー、オーナーだった方、興味のある方、スポーツカーが好きな方などが多いと思います。そんな皆様は、愛車を購入した時の気持ちを憶えていますか?私は3台のロードスターを乗り継いでいるのですが、今回は個人的な備忘録を残しておこうと思います。

1998年 ユーノスロードスターVスペシャル(中古)


ロードスターを初めて知ったのは、ユーノスロードスターが華々しくデビューした中学生の頃にみたニュースでした(テレビか雑誌か失念しました)。当時はクルマには全く興味が無くて、大好きだったテレビゲームもガンダムもひと段落して(今は全部、また大好きになっています)、部活に明け暮れていたようなガキンチョでした。

興味を持ったきっかけは、街を走っていたオープンのロードスターを見かけて、映画や漫画のワンシーンのような衝撃を受けたこと。「お洒落でカッコいいクルマだなぁ」と素直に思い、でも高そうだから自分に縁がないだろうなぁと他人事のようにも思った、そんな記憶が残っています

それから時が過ぎ、いざ社会人となったことで比較的自由にお金が使えるようになりました。

ただ、それでもクルマを買うモチベーションは無く、移動は家族の軽自動車を借りても事足りていました。単なる移動手段だから動けばいいし、荷物が乗ればいい・・・当時の私にとって、クルマはその程度の存在でした。ちょっと欲しいと思ったのはワゴンRで、流行ってそうだし荷物が載るから・・・くらいの感覚です。


ただ、当時住んでいた栃木の片田舎ではクルマがないと自由な生活できないので、周りの友人たちが次々とマイカーを購入していきました。そういう意味ではとても環境に恵まれていて、皆が今でも名だたる名車を購入していったのです。

シビックタイプR、セリカ、スターレットターボ、CR-X、RX-7、MR-S・・・そんな友人たちを見て「スポーツカーは若くても乗っていいんだ!」と思うようになっていきました。

大きな転機となったのは、社会人2年目に付き合っていた彼女と破局を迎えたことでした。いざという時のために備えていた貯金も使い道がなくなり、それならばパーっと使い、どうせならナンパでカッコいいクルマを買ってやろうと思ったのです。

実は、友人間でロードスターは「オシャレぶってスカしている、クルマをわかってない奴が乗っている(※モテない男子理論)」と評価されており、勇気を出して親友に「実はロードスターが欲しいんだけど、どうすれば・・・」とこっそり相談しました。


すると、そもそもスポーツカー好きな友人たちですから「やっとお前も興味を持ったか!」みたいな流れになり、クラシックカーのような深緑のロードスターが欲しいと伝えたら、プレイステーションのコントローラーを渡されました。

初代PSにセットされていたのはグランツーリスモ(1)で、「ユーノスロードスターVスペシャル」を選択してくれて、操作させてもらい・・・ブラウン管モニター越しでもロードスターを運転できたことに、テンションが上がっていきました。

また、その時初めてユーノスロードスターがマツダのクルマだったことを知り、かなりの衝撃を受けました。ユーノスブランドはずっと外車だと思っていたのです・・・

購入すると決まれば話は早く、中古車情報誌を片手に(当時はインターネットで中古車検索は無かった)目当てのロードスターを探しはじめました。絶対条件は憧れの「深緑」でありつつ排気量が「1600cc」であること。テンロクを選んだのは、低排気量のエンジン(低スペック)の方が肩ひじ張らないで済みそうだし、燃費もいいだろうし、税金も安いだろうと、調べもせずに勝手に思っていたからです。(※そんな恩恵がないことは、購入後に知ることになりました)

なお、その時代には既に2代目マツダロードスター(NB)もデビューしていました。そもそも別の会社がマネしたクルマだと勘違いしていたことや、固定ヘッドライトの「甘い顔」がどうしても気に入らなく、資金も潤沢とはいえませんでしたので、そもそも選択肢に入りませんでした。

また、リトラクタブルヘッドライトをどうしても体験したくて、中古市場一択だったのです。


実際、当時ユーノスロードスターはNBへフルモデルチェンジ後だったことに加え、人気もひと段落していて市場にゴロゴロ投げ売りされていて、色とりどりのユーノスが物色可能でした。同じ形のM2はやけに高いけど、自分に関係ないと読み飛ばしたりしていて・・・そんななか、理想の一台が近所で売り出されているのを発見し、会社を適当に抜け出して真昼間から販売店へ足を運びました。

その日の事は今でも鮮明に覚えていて・・・まずは目当てであったネオグリーンのロードスターを見かけたときに、あまりのカッコよさに心がギュっとなりました。カギを借りて特徴的なドアノブを引くと、車内には独特の臭いが広がっていて、これはあとで分かったのですがレザー内装グレードの香りでした。

低めのシートに座りナルディウッドのステアリングを握った瞬間・・・「もう絶対、これしかない!」と、一目ぼれ。マニュアルトランスミッションなんて免許取得以来数年間乗っていませんでしたが、何とかなるでしょう。このクルマは自分と出会うためにここにある。そんな出会いだったのです。

でも、その気持ちを顔に出さないようにしてちゃっかり値切り交渉して、そのまま即決させていただきました。走行距離は約6万キロ、Vスペシャルにビルシュタインショックを履いてマツダスピードMS-01ホイール(緑)を装備する、今見てもイケてるモデファイがなされていた個体でした。

ちなみに当時はそんな知識も全くなく、(少しだけ両親にお金を借りて)乗り出し120万円でユーノスロードスターVスペシャルのオーナーになることができました。

NAロードスターが凄かったのは、最初はモテ目的で選んだはずのクルマでしたが・・・そんなこと以上に運転が楽しすぎたことです。所有して初めて「クルマってこんなに面白いんだ!」と感じたのでした。なにより、初めて自分でお金を出したクルマですから、「ネジ一本まで自分のもの」ということにテンションが上がり震えてもいました。

もともと模型製作が趣味な自分としては等身大のプラモデルを手に入れたようなもので、クルマはチューニングでもドレスアップでも「自分で触れる領域」の懐が広く、なんで今までこの世界を知らなかったんだろうと、かなり後悔もしました。

そうなると、しがらみ(彼女)もありませんから、ガソリンやパーツに給料をつぎ込む日々・・・その過程には失敗したやせ我慢モデファイもあれば、事故(貰い事故、自爆含む)をおこしたり、順風満帆ではありませんでした。

でも、相棒となったユーノスロードスターは単なる移動手段ではなく、愛車にすることで広がっていく世界を教えてくれた、大切な存在になりました。


一方で、クルマの「にわか知識」が増えてくると、もっと馬力が欲しいとか、ロードスターもロータリーやVTECを載せればもっといいクルマになるなんてアホな妄想を考えていた時期もありましたが、オーナーになって数年後、ふと「自分はロードスターの素性を全て楽しめているのか?潜在能力を使い切っているのか?」と疑問を持つようになっていきました。

モテ目的で決断したロードスターであったはずが、乗り味の良さの理由を知りたくて、いつの間にかメカやフィロソフィー(哲学)に興味が移っていったのです。そうなると、もう二度と新車のロードスターに乗る機会は無いかも知れないと危機感を抱き、NBロードスターの購入検討を始めたのでした。

2002年 マツダロードスターRS(NB3) 新車


今でこそライトウェイトスポーツのベンチマークであるロードスターも、NBロードスターの現役当時は国内販売が芳しくない状況でした。

実際、一般的には「いまさらロードスター?」「なんでロードスター?」なんて言われるのは当たり前で、ホンダS2000やトヨタMR-S、お洒落に乗るんならばMG-Fやフィアット・バルケッタなんて、(失礼ながら)マツダより信用のある他メーカーで近しい価格の同ようなクルマがゴロゴロしていたのです。


ロードスターのオワコンぶりはディーラーの扱いを見ても明らかでした(※RX-7も同じだった)。試乗車なんてないし、商談では頼まなくともぶっ飛ぶような割引提示をしてくれれるのです。

情報薄弱といったらそれまでですが、当時のインターネットで得られる情報は少ないし、雑誌でもロードスターは「初心者向けスポーツカー」として中古車中心で紹介されるような微妙な扱いで・・・密かに開発していたNCロードスターの情報なんて全く見ることもなく、ロードスターは本気でNBで終わると思っていたのでした。


したがって、ユーノスロードスターーVスペシャルの後継になるNBロードスターVSグレード(グレースグリーン)を検討すべくディーラーに足を運んでいたのですが、オワコンのロードスターという印象が抗えず、なかなか決断することができませんでした。

でも、幾度も通っていると情報も入ってくるもので、ディーラーからNBロードスターの「顔が変わる」とマイナーチェンジの情報を教えてもらいました。しかも、VTECのような流行りの可変バルブタイミングエンジンにアップグレードされるというのです!そうなれば、選択肢は走りのグレード1800cc「RS」一択しかありません。


しかし、マツダデザイナーのこだわりから緑系のカラー(グレースグリーン)はVSグレードにしか設定されない状態で・・・愛車のボディカラーは妥協はしたくなかったので、緑の「RS」が買えるまで購入を見送ることにしました。

途中、自分でオリジナル仕様を選択できるWebTunedサービスもスタートしましたが、インターネットでクルマ購入するなんて勇気は出ず、ブラウザシミュレーションを行う程度で終わっていました。

そんな感じで1年以上もたもたしていたら、ディーラーから次のマイナーチェンジ情報が飛び込んできました。2002年のマイナーチェンジ(NB3)では新色の緑色が追加されるというのです。

早速カタログを確認しに行くとスプラッシュグリーンマイカという、今までクルマでは見たことのないビビッドな緑色が掲載され、なおかつRSグレードも選択可能でした。そうなったら、最後のロードスター(になるであろう)を購入しないわけにはいきません。

交渉せずとも30万以上割引をいただき(!)、即決することになりました。なお、国内生産第一号のスプラッシュグリーンNBロードスターだった模様です。

納車は夏の終わりの日。あの時の興奮は忘れられません。遠目にみえてきたディーラーの駐車場で輝くスプラッシュグリーンは本当にカッコ良かった。納車前の傷確認でいきなりドアの角に傷がありましたが(マツダクオリティ・・・)、早く運転したい一心でクレームも見送りました。


1年で75,000km走り込むくらい大好きで、スプラッシュグリーンの乗り味は最高でした。しかし、ここまでの思い入れがあったのに、すぐ降りることになりました。それは翌年にRX-8がデビューしたからです。

当時、マツダのフラグシップはロータリーマシン。マツダスポーツカーファンであれば新進気鋭のRXシリーズにステップアップするのが「正しい道」と勘違いしていたことと、結婚して子供も産まれたので4人乗りにする必要があった事、たまたま経済的に余裕があったことから、NBロードスターを手放してRX-8へ浮気をしたのでした・・・

2012年 マツダロードスターWebTuned(NB3)中古車


時は流れ2012年、一度は降りてしまったNBロードスターでしたが、いつか絶対乗ろうと思っていました。スプラッシュグリーンを降りて10年以上経過し、クルマ趣味に紆余曲折ありましたが経験上で一番面白かったクルマが「NBロードスター」だったのです。

ただし、購入時期はぼんやり「子供たちが大きくなってからかな・・・」と思っていました。当時は次女も産まれたばかりで、彼女が成長した10年後くらい(2022年)を見越して、来たるべき日のために少しづつ「ロードスター貯金」を積み立てていました。

しかし、大きなきっかけがふたつありました。

ひとつは、地元栃木から埼玉へ転居した際に電車通勤になり、運転免許更新を失念し「失効」してしまった事です。もちろん仮免からやり直して、教習所に通うお金を惜しんで免許センターの一発試験に挑んでいたのですが・・・コレがとても手強かったのです。

中途半端にマニュアル運転の知識が残っていた弊害で、路上試験では落ちまくり(おかげで運転マナーを矯正することができました)、試験官にから「いまどき無理矢理マニュアル取る必要ないよ」なんていわれてプライドはズタズタ。三ヶ月ほどかけて、やっと交付された緑色の免許が本当に嬉しくて「ご褒美が欲しい!」と思ったのでした。


また、もうひとつの理由は東北大震災が起こったこと。震災を体験して(埼玉ではガソリン供給不安程度でしたが)「人生いつ何が起こるか分からない」と実感した事が、一歩踏み出すきっかけになりました。

10年後(2022年)にロードスターを買い直す時、20年落ちのNBロードスターで程度のいい個体は幾つ残っているのか。さらに震災後のクルマ業界は電気自動車やエコカー一辺倒になっており、スポーツカーは悪の象徴のようになっていたのです。

スポーツカーが絶滅する事がなかったとしても、一番乗りたいときにロードスターに乗っておかないと人生勿体なくないか。そう思い、腰を上げたのでした(10年後の今を思うと、本当にファインプレーだと思います)。

最終ゴールで「NBロードスターに乗る」気持ちは変わっていなかったのですが、爆安のNAロードスターを乗り捨てるつもりで数年乗ってからNBロードスターに鞍替えするか、最初からNBロードスターにするか・・・当時はNAロードスター(というか、スポーツカー)が捨て値だったので、そんな検討もできたのです。いい時代でした・・・

マストで探していたのは、降りてしまったスプラッシュグリーンのNB3ロードスターだったのですが、流石にレアモデルなのでその時は一台も巡り合えませんでした。そして候補に挙がったのは・・・

・NA:10万くらいの適当に安いやつ
・NA:Jリミテッド サンバーストイエロー
・NA:Vスペシャル ネオグリーン
・NB:後期型 RSかNR-Aの程度のいい奴(クリスタルブルーとかレアカラー)

これらを調べては販売店に交渉して・・・といった日々を重ねていたうちに目についたのが、今所有しているガーネットレッドマイカのNBロードスターでした。


ちなみにこの色はNB3ロードスターのテーマカラーで、同じくテーマカラーだったスプラッシュグリーンと兄弟といってもいい存在。10年前は緑が欲しかったので検討候補から外れたのでした。しかし、このガーネットレッドがあまりにもマニアックな仕様(NR-A&VS内装)で気になったのでブックマークにいれて眺めていたのです。

そんな折、妻に「またロードスターを買おうと思っているんだけど・・・」と家庭内交渉を行う場で神風が吹きました。

実は、購入対象はヤフオク個人売買のくっそ安いNAロードスター(ネオグリーンのリペイント)でいこうと思っていたのですが、それを壮絶に拒否されたのです。妻曰く「壊れてばかりのアレ(NA)に乗るのはもう嫌だ」と、ぐうの音も出ないご意見で・・・最初に私が乗っていたVスペシャルの印象が悪かった故の言葉でした。ただ、あれは個体が悪いのではなく、私が未熟さでぶっ壊していたのですが。

さらに「どうせ乗るんだったら、目がキリッとしている奴(NB)でいいんじゃないの?お金はもう少しは出すよ」とありがたいお言葉を頂戴することができ・・・そうなるとブックマークだったガーネットレッドも交渉のテーブルに乗せることが可能になるのです。

販売店交渉をおこなうと、当時所有していたAZ-1の下取価格も驚きの高値で売却することができ、あっさりとガーネットレッドのNBロードスター購入が成立しました。


実車を確認せずインターネット交渉のみで購入したガーネットレッドは、名古屋からはるばる埼玉へ運ばれてきました。納車後、超久しぶりに乗ったロードスターは、ドアを開けた瞬間にレザー内装の独特の匂いがして・・・まさに中古車店でユーノスロードスターVスペシャルに座った、あのときの記憶が蘇りました。

いざエンジンをかけると、聞きなれたイグニッションサウンドと心地よいシフトフィール、さらに全然速くないエンジン。でも、それがもの凄く心地いい。あぁこれはロードスターだ!俺はこのクルマに戻ってきたんだ・・・と、あっという間にロードスターが身体になじんでいくのを実感したのでした。

いつか再びロードスターに乗る・・・それを予定よりも早く実行していつの間にか10年。しかし、駐車場にたたずむガーネットレッドの車体はいまだに見とれています。

ほんの少しの勇気でだれでも幸せになれる・・・そんな言葉がユーノスのカタログに刻まれていますが、確かにそれ実感できています。ロードスターに乗っていて良かった!

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