ロードスターのレーシングストライプ

ロードスターのレーシングストライプ

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スピリットレーシング・ストライプ


2015年の正式デビューからすでに9年が経ったNDロードスターは、2024年にフルモデルチェンジではなくビッグマイナーチェンジを行いました。型式も新たにNDXRCからNDXRE(NDE型)となり、もう暫らく販売を継続することが見込まれそうです。

さらに、チューニングカーの祭典となる2024年1月の東京オートサロンにおいて、マツダスピード以来のメーカーチューンブランドとして【MAZDA SPIRIT RACING/マツダスピリットレーシング(以下MSP)】の発表とともに、かねてより登場を心待ちとされていた2リッターエンジンを積む「幌タイプ」のNDEロードスター【MAZDA SPIRIT RACING RS concept】の予告が行われました。

現時点でのアナウンスによると、200psのチューニングエンジンとともにサーキットでも楽しめる足周りをセットする・・・なんて話になっていますが、あくまでコンセプトの展示なので確定次項ではありません。

個人的なつぶやき(MEMO)

2リッターエンジンを積んだ幌タイプのNDロードスターはデビューの段階で日本市場以外で販売されており、当初は「国内導入はない」と断言される時期もありましたが、「いつか出るだろう」とユーザー間での予想合戦は後を絶ちませんでした。

実際、2リッターエンジンの出力向上が行われた18年(184ps化)、ロードスター30周年/マツダ100周年だった19年、最終型が出ると予想されていた22年と、【記念モデル扱い】でも販売できそうなタイミングはいくつかあったでしょう。

しかし、パンデミックや欧州紛争、電動化技術の台頭と内燃機関エンジンの終焉予測(一転して延命)など様々な経済要因がありました。そこでクルマに対する価値観が大きく変わり、まさかの「スポーツカーブームが戻ってきたこと」や、特別限定車「990S」のヒットなどの【神風】が吹いたことにより、モデル延命施策としてここまで時間がかかったのではないかな・・・と、個人的には予測しています。自動車メーカーは10年単位でロードマップを描きますからね。

メーカー系チューニングブランドとして名を馳せた正統な【マツダスピード】は消滅して久しいですが、オフィシャルブランドとなる「MSP」の展開は、NDEロードスター拡販における後押しとして十分すぎるバックアップになるのではないでしょうか。


正直、まだ登場していないクルマをとやかく書くのは野暮なので、改めて正式リリースを待つのが正解でしょう。

ただ、今回MSPブランドとして発表された「ロードスター」と「MAZDA3」には、エアログレーメタリックのボディにグレーの「レーシングストライプ」が施され、特別感あふれる精悍な姿が強調されていたことも印象的でした。

レーシングストライプとは


「レーシングストライプ」はボンネットやボディサイドに描かれるラインで、別途「ルマン・ストライプ」または「ラリーストライプ」とも呼ばれることもあります。

近年はスポーツカーに限らずボディの「カッコよさ」を添えるアクセントとして施されますが、もともとはレースですぐに識別できるよう【競技車両】に施されたものを指していました。なお「レーシングストライプ」という用語自体もルーツがあり、沿岸警備隊などの船舶に描かれた【ナショナルカラーの斜線】を指していました。


クルマに話を戻すと、最初にレーシングストライプが施されたのはカニンガム(Cunningham)のレースカー「C4R(1951年)」が起源とされています。白いボディに2本の平行な青いストライプはAiACr(FIA(※国際自動車連盟)の前身)に登録されたアメリカチームのナショナルカラーです。


レーシングストライプがより有名になったのは、「フォードVSフェラーリ」として映画化もされたルマン24時間レースに出場したシェルビー(Shelby)の「デイトナクーペ(Daytona Coupe)/デイトナコブラクーペ(1964年)」でしょう。王者フェラーリ250GTOを破ったその快挙は、米国連邦プログラムに基づきクルマとして最初の【国宝】となっています。


マッチョでグラマラスな青いボディ(インペリアルブルー)に白のストライプは、もうひとつのアメリカのナショナルカラーであり、その後のコブラや精神を継いだとされるバイパーにも同様のカラーリングがオマージュされていますね。


ちなみに市販車としてメーカー直々に施されたのは、1965年の「(フォード)シェルビーマスタングGT350(1965年)」と・・・


同じ時期のルノーの「ルノー8ゴルディーニ(Renault 8 Gordini)(1965年)」とされています。なお、ゴルディーニはルノーを扱う名チューナーであり、現在のルノースポールやアルピーヌのルーツのひとつになっています。

また、レーシングストライプは「バンブルビーストライプ(ボディを横方向に横断するストライプ)」や、ボディサイトに施される「サイドストライプ」、それらをグラフィカルなデザインに落としたものなど様々な進化を遂げ、近年はエボリューションモデルのアイコンとして様々なメーカーが「自信作」のデモカー(あるいは市販車)に施しています。

そういった意味でも、今回ストライプが施されたMSRブランドのクルマは「特別」であるといえるでしょう。

ロードスターのレーシングストライプ

レーシングストライプはそんなに「速くない」ロードスターであっても、スポーツカーボディを十分に映えさせてくれます。そこで、メーカーオフィシャルとして施されたストライプを並べてみましょう。


1994 Mazda Miata R-Package(NA)
北米のミアータにオプションで用意されたレーシングストライプです。現在でもアフターマーケットで定番のモデファイ(Rパッケージ相当)として販売されています。ラグナブルーメタリックにホワイトと、北米らしいシェルビーカラーのオマージュになっています。


1998 Mazda MX-5 GT-R(NB)
「MX-5 GT-R」はNBデビュー時にスイスで100台限定で提供されたパッケージです。レーシングストライプだけでなく、メッシュタイプのホイールやハードトップ(DHT)もセットになっています。ちなみに「赤いボディに白い差し色」はスイスのナショナルカラー。ハイマウントストップランプの縁取りやナンバープレートの後ろにまでストライプが施されている念の入れようは、流石ディーラー販売されていただけありますね。


2002 Mazda ROADSTER NR-A(NB)
現在も続いているワンメイクレース用に設定された「NR-A」グレードは、NBロードスター後期型より設定されました。コンセプトカーのイラストやカタログに描かれていた、オーガニックシェイプを強調するサイドデカールはリアフェンダーにかけてチェック柄になるおしゃれなもので、マツダディーラーでも購入可能でした。ちなみに当時価格で29,000円になります。なお、この写真はクーペのNR-Aコンセプトモデルとなる「RS COUPE NR-A CONCEPT」です。普通にカッコいいですよね・・・


2012 Mazda MX-5 GT Concept(NC)
「MX-5 GT CONCEPT」は欧州において高性能バージョンを提案したコンセプトカーです。2リッターMZRエンジンを205psまでチューニングで引き上げています。ちなみに欧州のNCロードスターはノーマルで158ps(英国仕様)、国内は170psです。


エンジンに合わせて吸排気、足周り、エアロ、ロールバー、もちろん軽量化といったチューンとともに、オレンジのボディカラーとでんだーから下回りまでぐるっと黒くシートワークが施されています。コンセプトモデルの車名を施されたストライプのセンスも秀逸です。

マツダUKからは「グッドウッド(※国際的なモータースポーツイベント)の来場者の反応を見て、市販化を検討する」とありましたが、残念ながら実現はしませんでした。何気にMSRのコンセプトモデルと共通点が多いですよね・・・


2012 Mazda MX-5 Roadster/Roadster-Coupe “Kuro”(NC)
英国限定車「KURO(くろ)」は幌200台、RHT400台が用意されました。欧州では限定車に日本語を使われることが多く、黒いミラーと濃色ボディカラーにはブラックレザー&赤ステッチの内装が施され、ハードトップも黒く塗装されることからこの名前が付けられているようです。つまり、国内限定車「BLACK TUNED」相当になります。


また、リップからサイドにかけて赤&銀のストライプデカールが施されており、MX-5の疾走感や軽快感を演出しています。ちなみに赤いボディカラーはピュアレッドではなく「ベロシティレッドマイカ」です。


2013 Mazda MX-5 Miata Club (NC)
北米限定車「Club」はその名の通り、トランプのクラブ(クローバー)の名前が付けられています。NC3ロードスターをベースにボディサイドへグラデーションのかかるストライプが施されています。また、国内と違ってマーカーはフォグ部分に格納されているのでサイドマーカーは存在せず、そこにバッジが施されています。

この「Club」シリーズは走りに関する基本要項がパッケージされていることもあり、NDロードスター(北米MX-5 Miata)の限定車にも引き継がれています。


2015 Mazda MX-5 Cup Concept (ND)
国内では残念ながら終了してしまいましたが、2003年のマツダスピードミアータカップから始まり、現在の「グローバルMX-5カップ」のコンセプトカーとして2015年に発表された、ワンメイクレース用のNDロードスターにはエッジの効いた魂動デザインを強調するストライプデカールが施されました。好評につき、限定トミカ等でも再現されていますね。

余談ですが、北米では初期MX-5(ND)を「ND1」、マイナーチェンジで出力向上したものを「ND2」と呼称し、混相することもありますが、基本的にワンメイク(同一条件)の都合上、別クラスでのレース集計がおこなわれます。


2016 MAZDA MX-5 ICON
「ICON(アイコン)」シリーズは欧州で販売されている限定車で、そのルーツはNBロードスターにまで遡ります。2016年モデルは白いボディカラーにソウルレッドのミラーとサイドストライプが施されています。なお、黒いボディカラーのモデルでは(ミラーとリップは赤くとも)ストライプは施されないようです。

クルマのボディをキャンパスに仕立てる


50年代のレーシングストライプから派生したピンストライプ文化や、70年代からのスポンサーロゴやカラーなどのステッカー/エンブレムチューン、90年代のバイナリーグラフィックなどクルマには様々な装飾が施されるようになりました。


特に00年代にはプリント技術の向上により、クルマ自体になテクスチャー(画像)を貼り付けることが可能になりました。


一般ユーザーでも手が届くコストが実現したことで「痛車」も徐々に一般化していき、センスの有無はさておいても「好き」を隠さない姿に、個人的には感銘を受けたものです。痛車ロードスターの有名どころでいえば、模型誌でも特集が行われた「エンジェルビーツ」「らき☆すた」NBロードスターあたりでしょうか。


あえてゴテゴテとデコレーションするのも、シンプルに飾るのも、ボディをキャンパスに仕立たアーティスティックな作品は見ていて飽きません。そういう意味で「線を入れるだけ」でも圧倒的にカッコ良くなるレーシングストライプなどはセンスが見所になります。クルマ趣味の世界は本当に奥深いですね。

<参考:主なナショナルカラー>

国コード 国名 ボディカラー ナンバー(ゼッケン) 主なメーカー、チーム
D ドイツ アウディ、メルセデス、BMW、ポルシェ
シルバーアロー
F フランス ブルー・ド・フランス アルピーヌ、ブガッティ、プジョー
GB イギリス ブリティッシュレーシンググリーン アストンマーチン、ベントレー、ジャガー、ロータス、MG
I イタリア ロッソコルサ(レッド) アバルト、アルファロメオ、フェラーリ、ランチア、マセラティ
J 日本 白に赤丸(日の丸) ホンダ、日産、トヨタ
USA 米国 ホワイトにブルーのストライプ
(カニンガムレーシングストライプ)
カニンガム、フォード、シェルビー
インペリアルブルーに白のストライプ シボレー、フォード、シェルビー

関連情報→

なぜNBロードスターの「トミカ」がないのか

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