ロードスター「スピードスター」コンセプト

ロードスター「スピードスター」コンセプト

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スピードスターとは


「Speedster」・・・スピードスターという言葉は、辞書では「スピード狂、非常に速いドライバー、速いクルマ」と訳されます。一方、クルマのジャンルとしての「スピードスター」となると明確な定義はなく、「オープンカー」がロードスターやスパイダーといわれるように、「軽くて速いクルマ」に対するペットネームとして採用されることが多いようです。

そのルーツは今から約100年前、歴史的な量産車「T型フォード」時代にまで遡ります。ギンギンにチューニングしたエンジンをストックフレームに搭載する「走り」を追求したカスタムカーを指していました。

Speedster: A Definition
A Speedster is a simple but powerful car meant for speed, fun, and adventure.

スピードスターの定義
スピードスターは、スピード、楽しさ、冒険を目的としたシンプルだがパワフルなクルマ。
出典:https://www.classicspeedsters.com/


なお「T型フォード」は現在も愛好家が多く存在し、もちろん「スピードスター改造パーツ」も販売されています。100年前のクルマが公道をはしってるなんて、米国自動車文化の懐の深さを感じずにはいられませんね。また、そんな背景から歴代ロードスターにもスポーツカーとして定番の「スピードスター」へモデファイしたコンセプトカーが存在します。

1994 Miari(NA)


「ミアリ」と愛称がつけられたこのクルマは、モントレーヒストリック(クラシックレースカーイベント)に展示されたコンセプトカーです。その意味は「Miata(ミアータ)」に「Ferrari(フェラーリ)」をかけています。


そして、このクルマをベースにして「M Speedster」が製作されました。

1995 M Speedster Concept(NA)


ニューヨークオートショーにて発表された「Mスピードスター」。このデザインを担当したのは、Miataオリジナルデザイナーのひとり、トム俣野氏です。

ボディカラーは「キャンディアップルレッド」というオリジナル塗装であり、この鮮烈な赤はスピードスターに欠かせないカラーリングとなります。ブリティッシュスポーツに英国のナショナルカラーとなるダークグリーンが用いられるのと同じ、文化背景があるようです。

エクステリアにおいては、ハーフサイズのウインドシールドとビルトインフォグランプが目につきますが、ボディサイドからリアフェンダーにかけて、よりコークボトルシェイプが強調されるフェンダーフレアに調整されています。この躍動感がある造形はRX-7(FD)やNBロードスターに引き継がれることになります。


パワートレインのチューニングも抜かりなく、スーパーチャージャーを施した1.8リッターSOHCエンジンは200馬力を達成、215/50/15のヨコハマAVSという、当時でもかなり珍しかった太いタイヤを履いています。また、ノーマル車におけるソフトトップ収納部はヘルメットの収納ハッチに改装されています。


好評だったこのクルマは現存しており、スピードオレンジにリペイントが施され、米国マツダのイベントブースで定期的に展示されています。

2000 Mono-Posto(NB)


「モノポスト」はラスベガスSEMAショーにて展示された、NBロードスターがベースとなったスピードスターです。

なお、当時はフォードアンブレラ(傘下)だったマツダですが、フォードがグループ全てのブランド(フォード、ボルボ、リンカーン、アストンマーティン、マーキュリー、ジャガー、マツダ)をひとつのパビリオンで表示したことも話題になりました。


イメージソースは1950年代のレジェンダリースポーツカー「jaguar D-Type」や「Lotus 11」の耐久レーサー仕様であり、ヘッドライト、テールランプ以外、全てのエクステリアを作り直しています。


インパクトのあるボディはリアフェンダーからバンパーまで大胆に一体成型を行っており、リアの視認はカウルにマウントされるバックミラーのみ。グリルはNB前期型(NB1)では採用されなったマツダファミリーフェイス(五角形グリル)であったりと、見どころが満載です。


SEMAショー自体がカスタマイズカーイベントであることもあり、メカも市販カスタマイズパーツにてチューニングが施されています。HKS製インタークーラーターボ190馬力、18インチホイール、センターマフラーと、軽くて速いスピードスターとなるアイコンが揃っています。

なお「モノポスト」とは、ラテン語で「シングルシーター」を意味する言葉になります。

2009 MX-5 Superlight Concept(NC)


20周年を迎えたMX-5に対して、欧州フランクフルトモーターショーでは初代(NA)をリスペクトした「超軽量」バージョンとして製作されたスピードスターが「MX-5 スーパーライトコンセプト」です。


ドナーとなったNCロードスターはヒーターユニットも含めて、走行性能に不要な部品はすべて取り外されました。アウタードアハンドルも廃されており、ドアの開口は内側にある革のプルを使用します。ただし、iPodのドック(今や懐かしい・・・)が装備されているのは、走る喜びは「音楽の楽しみ」も含むということなんですね。今や当たり前となったシリコンオーディオですが、純正デッキより圧倒的に軽くなるのもスピードスターらしい解釈といえるでしょう。


なお、極端なチューニングはなされておらず、スペックとしては1.8リッター(125馬力)5MTと、欧州MX-5のみに供給された軽量版MZRエンジンが採用されています。ただし「軽さは性能」ですから、車重を995kg(▲115kg)までのダイエットに成功しており、太いトルクで伸びやかに吹け上がるMZRエンジンを持って、ロードスターの素性を生かしたスピードスターに仕上がっています。

2015 MX-5 Speedster Concept(ND)


NBの「モノポスト」と同じくラスベガスSEMAショーにて発表された「MX-5スピードスター」は、1950年代のオープントップ・スポーツカーをイメージソースにした、走行性能以外の部分をほぼ全て取り払ったNDロードスターのコンセプトカーです。ボディカラーは「ブルーエーテル」で仕上げました。エーテルとはSFなどでも同じみの光の触媒を表す言葉ですね。


北米仕様のパワーユニット(※スカイアクティブ2.0リッター)に変更はありませんが、量産車と比較して30mm低くなるコイルオーバーサスペンション、レーシングビート・センターマウントエキゾースト、アルカンターラインテリア、カーボンファイバー・ミューレンデルタシートなどのモデファイがほどこされ、車重は943kg(▲115kg)にまで抑えられています。


黄色いタイヤマーカーとあえて主張をしないゼッケンなど、ヴィンテージモータリング意識したモデファイは、とてもセンス良くまとまっています。

スピードスターまとめ


走りに振っているとはいえ快適なオープンカーを提供する「ロードスター」に対して、スピードを追求するためハードな軽量化やチューニングを行うのが「スピードスター」であり、フェラーリやポルシェなどのメーカーも最新モデルにおいてスピードスター・コンセプトは幾度も発表されています。

国内であまり見かけないモデファイですが、海外で絶大な人気を誇るの歴史的背景を持っているのが、スピードスターという存在なんですね。

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