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生産100万台を突破して「最も売れた2シーターのスポーツカー(Best-selling two-seater sports car)」として2016年4月22日にギネス世界記録を更新したロードスター。
余談ですが本件は2024年時点で継続申請は行われていないのか、ギネス世界記録のWebサイトでは結果なし(404エラー)になっています。ただ、基本的には挑戦から証拠物提出までの有効期限が1年間であることや、年間5万件以上の申請があるため再認定に時間がかかるなどのハードルもあるようです。※2024年時点で全世界120万台は売れている
さて、本稿記載時点で2024年も終わろうとしていますが、昨年までのロードスターにおける各種スコア累計はどのような状態なのか、可能な限り情報を集めてみました。一部予測値も入りますので、あくまで参考値としてください。情報ソースはマツダ会社概況、EPC2、MARKLINES等のデータより算出をしています。
ロードスター/MX-5 グローバルスコア(2023)
ロードスター/MX-5 グローバルスコア | ||||
2023末時点 | 生産台数 | 世代割合 | 販売台数(※) | 世代割合 |
NA | 431,506 | 35.6% | 421,207 | 35.1% |
NB | 290,123 | 24.0% | 279,296 | 23.3% |
NC | 231,632 | 19.1% | 230,590 | 19.2% |
ND | 257,952 | 21.3% | 253,314 | 21.1% |
計 | 1,211,213 | 1,198,937 |
※NA/NBともに販売台数は約5,000台オンされると思われるが、詳細を追えず。
【情報ソース】欧州マツダ概況/EPC2を基にした独自集計
まずはグローバルスコア全体像です。
生産台数と販売台数における差異は、市場に流れるまでの時間差や、実験・研究などに使われたクルマが含まれるからです。また、海外ではイヤーモデル制を取っているので、まとめて年間販売見込み台数がディーラーへストックされます。生産台数も販売台数もNDロードスターはNCロードスターを抜いており、このままのペースで推移すれば数年以内にNBロードスターを超えてくることが予想されます。
NDロードスターのフルモデルチェンジは当初2026年頃と予想していましたが、2024年の電子プラットフォーム刷新(※ND3)はフルモデルチェンジ並みの仕様変更でもあるので、少なくとも2028年までモデル継続すると思われます。そうなると2015年のデビューから13年以上経過するので、最も長い期間販売するロードスターになりそうですね。※海外市場ではエンジン仕様変更がなされた2018年以降のモデルをND2、2024年以降のモデルをND3と呼称します
また、生産台数は既に120万台を超えており、ギネス世界記録で達成した記録は現在進行形で更新されていることが分かります。
ロードスター/MX-5 グローバル生産台数(暦年ベース)1998-2023
ここからは暦年ベースの生産台数集計です。ロードスターは年間30,000台(2,500台/月)売れれば成功とされていますが、ユーノスロードスター(NA)のヒットはさておいて、NBもNCも基本的には健闘をしていたことが分かります。2008年と2011年に大幅に数字が落ちるのはリーマンショックによる世界的不況と、東日本大震災による物資不足や、生産優先順位の影響です。
また、NC2ロードスター(2007〜)の頃は猫も杓子も「燃費」「積載量」が重視された、スポーツカーのような趣味車は悪の象徴となる冬の時代でした。さらに、本来は2012年のフルモデルチェンジが予定されていましたが、フォード資本の撤退によりフルモデルチェンジの企画がリセットされ、急遽NCロードスターの延命処置(NC3)が行われました。
つまり、マツダに限らず日本経済自体が立て続けに窮地を迎えていたなか、ブランドピラー(象徴)としてロードスターを継続生産してもらえたことは、感謝しかありません。一方、海外に目を向けると国内市場と状況は異なり、一定以上の支持があったことが読み解けます。
ロードスター/MX-5 グローバル生産台数 | |||||
NA | NB | NC | ND | 合計 | |
1989 | 45,278 | 45,278 | |||
1990 | 95,640 | 95,640 | |||
1991 | 63,434 | 63,434 | |||
1992 | 52,712 | 52,712 | |||
1993 | 44,743 | 44,743 | |||
1994 | 39,623 | 39,623 | |||
1995 | 31,886 | 31,886 | |||
1996 | 33,610 | 33,610 | |||
1997 | 24,580 | 2,457 | 27,037 | ||
1998 | 58,682 | 58,682 | |||
1999 | 44,851 | 44,851 | |||
2000 | 47,496 | 47,496 | |||
2001 | 38,870 | 38,870 | |||
2002 | 40,754 | 40,754 | |||
2003 | 30,106 | 30,106 | |||
2004 | 24,232 | 24,232 | |||
2005 | 2,675 | 27,275 | 29,950 | ||
2006 | 48,389 | 48,389 | |||
2007 | 37,022 | 37,022 | |||
2008 | 22,886 | 22,886 | |||
2009 | 19,341 | 19,341 | |||
2010 | 20,554 | 20,554 | |||
2011 | 14,995 | 14,995 | |||
2012 | 15,400 | 15,400 | |||
2013 | 11,639 | 11,639 | |||
2014 | 12,246 | 12,246 | |||
2015 | 1,885 | 30,022 | 31,907 | ||
2016 | 40,101 | 40,101 | |||
2017 | 38,861 | 38,861 | |||
2018 | 27,452 | 27,452 | |||
2019 | 26,179 | 26,179 | |||
2020 | 21,492 | 21,492 | |||
2021 | 23,129 | 23,129 | |||
2022 | 27,137 | 27,137 | |||
2023 | 23,579 | 23,579 | |||
合計 | 431,506 | 290,123 | 231,632 | 257,952 | 1,211,213 |
先代比 | 67.2% | 79.8% | 111.4% |
近年最大のトピックは2020年に起きたパンデミックです。生産・流通をはじめとした世界的な経済活動の打撃により、それまで堅調だったNDロードスターにも影響が出たことが分かります。ロードスターに限りませんが、この頃から納車待ち期間が「半年待ち」が普通にあるうる時代となりました。
同時に、この時勢による価値観の変化は「趣味にお金をかける」「自分らしく生きる」ことに作用し、特に内燃機関で駆動するエンジンをICE(インターナル・コンバッション・エンジン:internal combustion engine)と呼称するようになり、EV(電動化自動車)もBEV(Battery Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug in Hybrid Electric Vehicle)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)と細分化され、全自動車の電動化カウントダウン(見切り発車)が、「今しか買えない」純ガソリンエンジン・スポーツカーのセールスに結びつきました。
既に5代目NEロードスター(仮)は電動化技術を採用すると公式にアナウンスされており、NDロードスターは内燃機関(ICE)の最終モデルとして確定しています・・・が、2023年末から中国製EVの台頭(=欧州メーカーの衰退)により、電動化一辺倒だった自動車業界のシナリオが書き換わろうとしています。
また、モデル末期と思われていたNDロードスターも2024年の大型マイナーチェンジにより延命が確定され、生産能力の回復とともに需要が急回復する、驚異的な状況が続いています。
すでに周知されているとおり、NDロードスターは2リッター幌やファイナルモデルが控えています。2022年時点のマツダは2026年までに全車へ電動化技術を採用すると宣言していましたが、さらなるマイナーチェンジでハイブリッド化されるかも知れませんね。ハイブリッドモデルであればマニュアルトランスミッションも継続されるでしょうし、現時点の人気を鑑みればモデル継続でも「売れる」でしょうから、じっくりNEロードスターを開発して欲しいですね。
ロードスター/MX-5 グローバル販売台数(暦年ベース)1998-2023
ここからは市場ごとの販売台数リザルトです。もともと北米市場向けに企画されたロードスターですが、注目したいのは欧州市場です。NAロードスター時代はディーラー網が整備されていなかったことから台数は出ていなかったのですが、リトルジャガーとされたNBロードスターやNCロードスターは「ライトウェイトスポーツの本家」となる欧州で、北米よりも支持されていたことがわかります。
なお、生産台数と販売台数は連動するので、前項と同様に2008年~2011年(リーマンショック/東日本大震災)あたりで数値は大幅に落ち込みます。その後において国内市場は回復の兆しが見えませんでしたが、海外では一定の需要が継続できていたことに注目です。
ロードスター/MX-5 グローバル販売台数 | |||||||
年 | 日本 | 北米 | 欧州 | 太洋州 | 中国 | その他 | 合計 |
1989 | 9,307 | 25,879 | 0 | 657 | 0 | 0 | 35,843 |
1990 | 25,226 | 39,850 | 9,267 | 1,455 | 0 | 0 | 75,798 |
1991 | 22,594 | 34,196 | 14,050 | 698 | 0 | 0 | 71,538 |
1992 | 18,648 | 27,241 | 6,632 | 499 | 0 | 0 | 53,020 |
1993 | 16,779 | 23,089 | 4,824 | 453 | 0 | 0 | 45,145 |
1994 | 10,828 | 22,573 | 5,019 | 404 | 0 | 0 | 38,824 |
1995 | 7,171 | 21,108 | 7,174 | 196 | 0 | 0 | 35,649 |
1996 | 4,409 | 18,966 | 9,585 | 241 | 0 | 0 | 33,201 |
1997 | 3,537 | 17,812 | 10,480 | 206 | 0 | 0 | 32,035 |
1998 | 10,174 | 20,890 | 16,831 | 1,310 | 0 | 0 | 49,205 |
1999 | 4,952 | 18,936 | 21,130 | 1,354 | 0 | 30 | 46,402 |
2000 | 4,644 | 19,627 | 19,268 | 1,038 | 0 | 33 | 44,610 |
2001 | 4,211 | 17,757 | 16,368 | 924 | 0 | 6 | 39,266 |
2002 | 2,934 | 15,622 | 19,670 | 698 | 0 | 34 | 38,958 |
2003 | 1,520 | 11,999 | 18,934 | 540 | 0 | 11 | 33,004 |
2004 | 1,646 | 10,501 | 13,885 | 483 | 0 | 248 | 26,763 |
2005 | 3,657 | 10,658 | 9,852 | 743 | 0 | 353 | 25,263 |
2006 | 4,067 | 18,479 | 19,402 | 1,468 | 0 | 827 | 44,243 |
2007 | 3,845 | 16,888 | 18,899 | 1,170 | 0 | 772 | 41,574 |
2008 | 1,858 | 12,384 | 13,252 | 639 | 0 | 610 | 28,743 |
2009 | 1,947 | 8,767 | 9,709 | 521 | 720 | 474 | 22,138 |
2010 | 1,120 | 7,106 | 10,317 | 440 | 652 | 431 | 20,066 |
2011 | 1,104 | 6,286 | 8,147 | 315 | 284 | 446 | 16,582 |
2012 | 941 | 7,016 | 7,207 | 159 | 75 | 438 | 15,836 |
2013 | 768 | 6,334 | 6,113 | 178 | 46 | 331 | 13,770 |
2014 | 595 | 5,256 | 5,813 | 118 | 18 | 362 | 12,162 |
2015 | 8,509 | 9,221 | 6,881 | 917 | 1 | 979 | 26,508 |
2016 | 6,126 | 10,368 | 14,145 | 1,577 | 0 | 2,351 | 34,567 |
2017 | 7,005 | 12,438 | 16,039 | 1,459 | 0 | 2,832 | 39,773 |
2018 | 5,331 | 9,785 | 13,787 | 820 | 454 | 1,761 | 31,938 |
2019 | 4,717 | 8,527 | 14,378 | 442 | 47 | 1,774 | 29,885 |
2020 | 4,413 | 9,323 | 4,833 | 457 | 0 | 1,300 | 20,326 |
2021 | 5,369 | 11,563 | 7,004 | 744 | 0 | 1,433 | 26,113 |
2022 | 9,567 | 6,845 | 5,327 | 495 | 0 | 1,931 | 24,165 |
2023 | 5,991 | 10,011 | 7,281 | 653 | 0 | 2,088 | 26,024 |
合計 | 225,510 | 533,301 | 391,503 | 24,471 | 2,297 | 21,855 | 1,198,937 |
市場割合 | 18.8% | 44.5% | 32.7% | 2.0% | 0.2% | 1.8% |
※欧州は東欧・西欧合計、大洋州はオセアニア地域、その他は日本と中国を除く累計
面白いのは2015年以降のNDロードスター販売動向です。
ローンチ後は北米市場よりも欧州市場の方が堅調に推移していたのですが、2020年のパンデミックを契機にガクっと崩れてしまいます。ただでさえ環境規制が厳しくなってスポーツカー継続が減退しているところに、ウクライナに端を発した欧州情勢不安(2022年~)によるエネルギー価格の高騰も重なり、なかなか厳しい状況が継続しているようです・・・
物価高騰は国内にも影響が出ており、ガソリン単価が約160円/Lとリーマンショックや東日本大震災の時よりも高値更新を続けており、さらに欧州では円換算で約250円~270円/Lとなっているようです(これでも一時期よりは落ちついた)。為替換算(円安)を指し抜いても、欧州では一時期EVシフトを推していたこともあり、趣味車にとって厳しい状況であることが分かります。
一方、国内市場では趣味車(スポーツカー)の復権に加え、NDロードスター「990S」グレードのスマッシュヒットにより、2020~21年は納車待ちが多かったとはいえ、2015年のデビュー時よりも「売れている」とんでもない事なっています。特に2022年は海外よりも日本市場が一番売れており、これはユーノスロードスター(NA)でも実現しなかった快挙です。ただし、これは海外市場のレギュレーション対応や、一部グレード廃止のために輸出が滞った可能性もあり、翌年には海外需要も回復の兆しがみえています。
ちなみに、国内におけるNDロードスターの目標販売数は9,000台/年(幌750/月 RF250/月)です。2024年にはマイナーチェンジとともに、昨今の物価高による価格改定があったのですが(Sグレード:2,689,500円→2,898,500円)、魅力が継続していることから売り上げダウンにはなりませんでした。
なお、2024年モデルはパーキング・アシスト・ユニット制御プログラムの修正リコールが行われ、11月上旬から一時受注停止になっていました。それでも11月までの累計で9,051台(幌6,817/RF2,234)が売れている、素晴らしい成果を上げています。
ロードスター・シェア分析(2023)
2023末時点 | 世界販売台数(※) | 国内販売台数 | 世界での 国内シェア |
||
母数 | 1,198,937 | 世代割合 | 225,510 | 世代割合 | 18.8% |
NA | 421,207 | 35.1% | 118,499 | 52.5% | 28.1% |
NB | 279,296 | 23.3% | 30,717 | 13.6% | 11.0% |
NC | 230,590 | 19.2% | 19,266 | 8.5% | 8.4% |
ND | 253,314 | 21.1% | 57,028 | 25.3% | 22.5% |
※NA/NBともに販売台数は約5,000台オンされると思われるが、詳細を追えず
国内ではNAが圧倒的に「売れた」ことは周知の通りですが、NDロードスターは既にNBやNCをぶっちぎって売れています。ただし、NBやNCに魅力がないわけではなく、時代背景によりNDの販売に追い風(ブースト)がかかっている結果ともいえるでしょう。特に、国内ではNBやNCがレアな存在となるので、ゆくゆくはプレミアに繋がるでしょう。
また、2022年末のマツダイベントにて先代までの国内登録車数が公表されています。母数の多かったNAロードスターは約2万台がナンバープレートを付けているようですが、注目すべきはNBロードスターです。知らぬ間に「国内で最も少ない」ロードスターになっていました。むしろNCロードスターはまだまだ現役で頑張っているようです。
2022時点 | 国内販売台数 | 世代割合 | 国内残存数 (登録車) |
残存率 |
母数 | 219,643 | |||
NA | 118,499 | 54.0% | 20,723 | 17.5% |
NB | 30,713 | 14.0% | 13,793 | 44.9% |
NC | 19,283 | 8.8% | 15,530 | 80.5% |
ND | 51,148 | 23.3% | – | – |
以下は、ロードスターの世界シェア割合です。ロードスター(MX-5)は北米向けでありつつも、20周年記念車(NC)、25周年記念車(NC)や30周年記念車(ND)などの限定車割り当てでもわかるように、日本よりも欧州市場の方がスコアを稼げる状況であったことがわかります。人気に時代が追いつき、35周年記念車(ND)は期間限定とはいえ受注生産モデルになるのは嬉しいですね。
逆に、8割以上が海外需要になっているとはいえ、国内にしかないロードスター(NBクーペやWebTuned、各世代のNR-Aや現行「S」「990S」シリーズなど)を大切にしてくれているのも嬉しい事実です。「日本のスポーツカー」を設定してくれるマツダの心意気に感謝です。
ちなみに「その他」地域にはアラブ首長国連邦、クウェート、サウジアラビアなどが含まれます。ミリオネアに可愛がられているMX-5が約100台ほど(特にNCロードスター)がいたようです。一方で、中国市場向けに輸出されていた時期がありましたが、昨今のチャイナリスクによりテストマーケティング程度の数しかでていませんでした。
グローバル・マーケット割合(2023) | |
日本 | 18.8% |
北米 | 44.5% |
欧州 | 32.7% |
太洋州 | 2.0% |
中国 | 0.2% |
その他 | 1.8% |
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