【注意喚起】酷暑のオープンカーは命がけ(熱中症)

【注意喚起】酷暑のオープンカーは命がけ(熱中症)

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酷暑のオープンカーは命がけ

夏といえばオープンカーの季節・・・と、近年は言えなくなってしまいました。2025年の日本は、6月下旬から梅雨前線が消滅し、全国で真夏日が連続する異例の異常気象に見舞われています。こんな高温多湿な状況で「オープン走行」を強行するのは、もはや自殺行為に等しいでしょう。熱中症のリスクを爆上げすることに繋がるからです。

正直、ロードスターは趣味のクルマなので、好きに乗ればいいと私は常々思っています。ソロオープンであれば自己責任で納得もできるでしょう。しかし、お恥ずかしい話ではございますが、かつて私は初夏のある日に「まだ大丈夫だろう」と高を括り、エアコンを付けずに窓全開のみで走行し、ロードスターの助手席にいた愛娘を熱中症にしてしまいました。この時期になると、家族に多大な迷惑をかけた【反省と経験】・・・つまり「日本の暑さを甘く見てはいけない」という教訓が、痛いほど脳裏に蘇るのです。

近年の酷暑は、もはや「如何ともし難い」レベルに達しています。

ユーノスロードスターが全盛期だった平成7年(1995年)頃、夏場(7月~8月)の東京における平均気温は約27度だったそうです。当時は少し涼しい地域であれば冷房機器の主流は扇風機、エアコンがない家庭も普通にありました。NAロードスター自体もエアコンはディーラーオプションでしたからね・・・

それが、令和になってからは30度を超えてくるのが当たり前、酷暑の35度も日常茶飯事に。地域によっては40度を突破することも珍しくありません。この状況でのオープン走行は、もはや「やせ我慢」では済まされないレベル。まさに「命がけ」で走る覚悟が必要です。

そもそも、日本で「真夏のオープン」は間違っている


オープンカーといえば海岸沿いを優雅にクルージングする、そんな素敵なイメージがありませんか?アメリカ東海岸にはマイアミ、西海岸にはロードスターデザイン発祥の地、カリフォルニアがあります。晴天のフリーウェイをオープントップにして駆け抜けるなんて、絵になる光景ですよね。

ただし、カリフォルニアは真夏(7~9月)でも平均気温が22度~23度と、日本の「春」くらいの気候です。降水量もわずかなので湿度も低く、生活する上でとても快適な環境とされています。実は、緯度は日本の福島あたりと同じですが・・・日本国内はどこでも「夏日」となると(涼しいイメージのある東北地方でも)30度を超えるのは当たり前、さらに日本独特の「湿度」の上昇も伴うため、国内外で夏自体のイメージに「大きなギャップ」があるのです。

したがって、「真夏にオープン」というのは、海外と国内では根本的に環境が違います。日本国内において海岸沿いを優雅にクルージングできるのは、極端な話、春や秋、あるいは早朝や夜間など、気温が落ち着く時間帯に限られるのです。

そもそも、日本でオープンカー文化が一般化したのは、約30年前にデビューしたNAロードスターの時代になります。つまり、それまでのオープンカーは、あくまでエンスージアスト(自動車愛好家)たちの世界でした。語弊を恐れずにいえば、エンスーは不便なことやトラブルを「楽しむ」ことができる人種です。不便なくらいがカッコいい、エアコンレス上等、やせ我慢は美学。熱中症くらいで不満をいうヤワさはなかったのです。でも、最近の酷暑においては、そんなことを言える状況じゃなくなってしまいました。

熱中症の原因、人間のメカニズム


ここからは熱中症のメカニズムをざっくり説明しましょう。

人間の身体は体温が上がっても、汗をかいたり皮膚表面から熱を逃がしたりして「体温を外へ逃がす仕組み」が備わっており、無意識に体温調節ができるようにできています。しかし、「体温上昇」と「調整機能」のバランスが崩れてしまうと、どんどん身体に熱が溜まってしまいます。このような状態を【熱中症】というのです。

国立衛生研究所の資料によると、熱中症は【気温25度あたりから患者が発生(段階的に増え)、31度を超えると急増する】そうです。なお、熱中症は下記の三つの複合的な要因が引き金になるとされています。くっそ暑い中、オープンで走っていたら、いくつも当てはまると思いませんか?

環境:高温、多湿、強い日差し、熱波の襲来、空気が循環していない、エアコンがない
身体:脱水症状、体調不良、低栄養、持病、高齢や肥満
行動:激しい運動、慣れない運動、屋外作業、水分補給できない状況

参考:環境省熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

仮に、この状況でオープン走行を頑張れた後でも、次に「日焼け」が待っています。紫外線マックスな中で肌を真っ赤に焼くのは、健康面からみても自滅行為でしかありません・・・

オープンカーの熱中症対策


繰り返しますが、熱中症の原因は【体温の上昇と調整機能のバランスが崩れる】こと。つまり、オープンカーの場合でも、「ヤバいな」と感じる予兆があれば、素直に幌を閉じて、水分を補給し、エアコンをガンガン効かせることを強くお勧めします。


また、駐車時にはサンシェードをしておくだけでもキャビンの温度は外気温マイナス5度になると言われています。紫外線によるインテリアパーツの劣化防止にもなるので、夏場には常備しておいた方がいいでしょう。安価なものであれば100円ショップで購入することもできます。

 
加えて、乗車前に換気を行うと、エアコンが涼しくなるまでのスピードが著しく変わります。やり方は簡単で、「助手席の窓を全開にして、運転席のドアを3~4回『バタン』と開閉する」だけです。車内の熱気を一気に外へ吐き出すので、「エアコンが効くまで窓全開」で走行するよりも早く車内を冷やすことが可能です。

ロードスターは国内だけでなく、北米や欧州でも展開するグローバルカーです。しかし、国内ではエアコンが標準装備となったのは2世代目のNBロードスターからであることからもわかるように、かつてはエアコン(冷風)よりもヒーター(温風)が重視されていました。

したがって、キャビンは北欧の厳しい冬季でもオープンが楽しめるくらい「温度が保たれる」構造になっています。センターコンソールからもエンジン(トランスミッション)の熱が伝わってきますしね……つまり、冷やすことよりも温めることに長けたクルマなのです。

いわば、寒い時期にオープンにしている方が「分かっている」人ともいえます。しかし、暑い日のオープンは本当に厳しいのです。その上で、どうしても夏場でオープンを楽しみたいならば、下記の心がけをおすすめします。

・こまめな水分補給
・無理をしない
・涼しい服装(&日焼け対策)
・帽子を着用する
・マスクはしない(熱中症リスクを高めます)
・困った時の連絡先を確認
・涼しい場所・施設に退避する
・スマホのアラート通知設定


特に、オープンカーで「涼しい服装」となると日焼け対策も必須です。

比較的涼しい気候の高原であっても、幌を閉じて走っていても、右腕だけは夏場の強い紫外線でガンガン日焼けをして痛い目にあいます。ランニング用のアームカバー(これも100円ショップで手に入ります!)をするだけでも全然違ってきますのでお勧めです。

また、日本人は黒髪が多いので頭部から熱を吸収しやすく、帽子をかぶるだけでも頭皮の温度は平均でマイナス7度ほど下がるといわれています。


また、NA以降のロードスターには風の巻き込みを防止する「エアロボード」が装着されていますが、オープン時にあえて「エアロボードを使わない」ことで、キャビンの風を循環させるテクニックもあります。可動式(取り外し式)なのは、そういった理由もあるのですね。


ともあれ、帽子や日焼け止めだけでなく、冷感ジェルシート(冷えピタなど)や飲み物などの熱中症対策品は、クルマに常備しておくことを強くお勧めします。


さらに、スマートフォンの防災情報アプリ(Yahoo!防災速報など)を通知設定しておくと、位置情報に基づいた自治体からの熱中症アラートを受け取ることができます。警告があった際には、素直に幌を閉めましょう。

なお、ロードスター自体もエアコンのスイッチを入れるとラジエーターの電動ファンが強制駆動します。これはオーバーヒート対策として有効なので、パワーは落ちるかもしれませんが、クルマの為にもONにしてあげましょう。

参考→https://mx-5nb.com/2024/07/29/extreme-heat/

熱中症になってしまったら


急に体調不良になったら、熱中症の疑いがあります。

めまい、失神、頭痛、吐き気、強い眠気、気分が悪くなる、体温の異常な上昇、異常な発汗(または汗が出なくなる)など、熱中症の疑いによる応急処置も重要ですが、以下にひとつでも当てはまれば、すぐ医療機関に向かいましょう。

・本人の意識がはっきりしていない
・自分で水分や塩分(ナトリウム)が摂取できない
・水分補給など、何らかの対処をしても症状がよくならない

「意識」がある軽度の状態であれば、まずは涼しい場所へ避難し、服を緩めて身体を冷やします。スポーツドリンクや経口補水液で水分を補給し、休息をとりながら回復を待ちましょう。

身体を冷やす際は、氷嚢(ひょうのう)や冷却ジェルシート(冷えピタなど)、濡れタオルなどを【首の両脇】【脇の下】【太腿の付け根の前面】に当てて冷やします。皮膚のすぐ近くにある太い血管を冷やすのが効果的だからです。ただし、少しでも判断に迷うことがあれば、速やかに救急車を要請しましょう。

ロードスターは楽しさを追求したクルマです。だからこそ、楽しさをスポイルするリスクは回避したいもの。どうしても夏場でオープンを楽しみたいのであれば、早朝や夜間など、気温が落ち着く時間帯がおすすめです。安全第一で、最高のオープンカーライフを楽しみましょう。

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