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サプライズは突然に
好きな人しか刺さらない超ニッチなロードスター情報を束ねる当サイトですが、定期的に「感想」「記事リクエスト」「ロードスター購入報告」などの、嬉しい激励(げきれい)を頂戴しております。国内だけでなく、海外のMX-5/Miataオーナーからも声掛けをいただくのは、インターネットコミュニティの強みを感じます。ホント、いい時代になりました。ご連絡をいただいた皆様、あらためて、いつもありがとうございます!
そのようななか、かつてNBロードスターに乗っていたオーナーさんから「ミニカーが見つかったので、よろしければさし上げましょうか?」といったご連絡をいただきました。
正直、詳細が記載されたGoogleフォームのメッセージ欄を二度見しました。なぜって、それは単なるミニカーではなくNBロードスター「10周年記念車」のオーナーにだけ配布された、特別なギフト(贈り物)だったのです。こんな機会は願ってもありませんので、当然そのミニカーをお迎えをさせていただきました。当時のロードスター文化を示す重要アイテムのひとつにも関わらず、実物をそうそう目にするものではありませんからね。
そして、届いた荷物の封を開けるとさらにサプライズが・・・それは、ミニカーと同じく10周年記念車オーナーに送られた、セイコー製のクロノグラフが同封されていたのです。オークションでも中々でないこのアイテムたち。折角なのでNBロードスターアーカイブ流に紹介をさせていただきます!
参考リンク)ロードスター10周年記念車
https://mx-5nb.com/2025/03/03/10th_anniversary/
セイコー「V657-6140」
SEIKO V657-6140
このクロノグラフ(ストップウォッチ機能が付いた腕時計)は、ロードスター10周年記念車のオーナーに贈呈されたギフトです。セイコー製キャリバー「V657」をベースにしたバリエーションのひとつで、ロードスターのためだけに作られた特別仕様となっています。アナログ時計とデジタル表示が融合した、いわゆる「デジアナ」タイプで、90年代後半からこういう多機能なクロノグラフが流行りました。
外装(ケースやブレスレット):海外向けモデルなどで広く使われていたデザインのものを流用、バンドは「MAZDA」ロゴが入る専用品
特別仕様(カスタマイズ):限定車専用色「イノセントブルーマイカ」を再現、仕様地により「Roadster/Miata/MX-5」のロゴ
キャリバーV657は主にスポーティさを推したモデルに活用され、「SEIKO International Models(海外向けクロノグラフ)」や「SEIKO ALBA(若者向けブランド)」で多様されたムーブメント。なかでもレトロフューチャーデザインで人気を博した「AKA(アカ)」シリーズが有名です。時計データベース上でも専用型式となっている「6140」は「Mazda OEM」となっており、文字盤やバンドなど専門部品は廃盤となっています。
SEIKO 7N82-0610
また、海外(欧州・北米)ではペアウォッチのギフトセットとなっており、こちらはセイコー・ルキアシリーズと同じアナログクォーツ「7N82」ムーブメントを採用した専用腕時計が制作されました(7N82-0610)。Miataのロゴと「MX-5 MAIATA 10TH ANNIVERSARY」の刻印が施されたお洒落な仕上がりとなっています。
さて、今回お預かりクロノグラフは本体のみ。前オーナーからは「ベルト交換後に保管しっぱなしで、動くかどうかわからない」との報を頂きましたが、そこは天下のジャパンクオリティ。電池交換(&シール交換)で無事に動き出しました。
また、ベルトはオリジナル相当のメタルバンドを取り付けるか迷いましたが、懐中時計にすることができるキットを見つけたので、こちらを採用することにしました。程よいガジェント感が出せたと思います。オリジナル状態ではありませんが、末永く可愛がってあげようと思いす。
エムテック製 「10周年記念車」
エムテック(M-TECH)とは、トイメーカー「エポック社」が96年~00年代まで取り扱っていた1/43スケールのミニカーブランドです。
当時、高価で高精細な海外製モデルカーが主流となりはじめたなか、「国産車」を「手頃な価格」で、しかも「リアルな造形」でモデル化してくれました。そのコンセプトはロードスターの精神(=アフォーダブル)に通じるものもありましたが、残念ながらメインストリームには上がれずブランド廃止となってしまいました。
エムテックのNBロードスターは、特にプロポーションの捉え方と程よいデフォルメに味があります。近年のデジタルモデリングによる精緻さもいいのですが、当時(おそらく)アナログで制作されていた「温かみ」や、「あの頃の空気感」を持つ造形で、NB特有のグラマラスな曲面をうまく再現しているのが特徴です。三角窓やサイドミラーの処理など、見どころも満載です。
仕様によっては、このサイズでは珍しいドライバーが付いており、左右のドアが開閉するギミックもあるのでオープンカーならではのインテリアを確認することができます。完璧すぎないちょっとしたユルさ。それがまた、このエムテックシリーズの魅力といえるでしょう。
当初はNBロードスターのテーマカラーとなる「エボリューションオレンジマイカ(金)」「グレースグリーンマイカ(濃緑)」2色のみのラインナップでしたが、何を血迷ったのか限定品(Limited Edition)として、NBロードスター前期型(NB1)のカタログラインナップ全色が追加販売されました。また、海外ではMX-5仕様(左ハンドルモデル)も流通していたようです。
さて、そんな「10周年記念車」ミニカーですが、当然ながら専用色「イノセントブルーマイカ」やバフがけされたホイールが忠実に再現されています。この深みのある青は10周年記念車だけの特別な色、ミニカーといえどもその輝きは格別です。また、インテリアもシートや幌に施されたブルーの差し色が再現され、コストがかかっていることが分かります。
なお、当時は10周年記念車のオーナーであれば、マツダのパーツ用品として取り寄せることが可能だったようです。また、エポック社公式「MCC会員(エムテック・コレクターズクラブ)」向けに、数台プレゼント提供があったことも確認できています。
前オーナーによると「塗装の程度が悪い」とのことでしたが、確かに一部ブリスター(塗装面のぶつぶつ)や剥がれが確認できました。これは当時における塗装の下処理や、経年劣化でどうしても発生してしまうものです。ただし、模型用塗料でレタッチを行うことで目立たなくなりました!
10周年記念車という最高のピースを迎えたことで、エムテックのNB1がここまで集まったら・・・これはコンプリートするしかありません。そこで、残る「あの子」を制作したいと思います。
1/43 エムテックNBロードスター「NRリミテッド」
手元に取り寄せたのは、以前ジャンク扱いで購入していたグリーンのNBロードスター。セットとなるドライバーと運転席側の内装(ドア内張)が紛失していたものでした。内張自体は「おゆまる」とポリパテによる複製により復活させており、この子を改修ベースにします。
まずは分解できるところまで完全にバラバラにして、リムーバー(塗装はがし剤)で外装を剝がしていきます。でも、なかなか剝がれていかなかったので、最終的には耐水ペーパーでボディを磨きこみ、ダイキャストの下地をだしていきました。
このままでは塗料が乗らないので、ミッチャクロン(下地剤)→黒のサフェーサーを塗布し、そこにタミヤの「マイカレッド」を塗り重ねていきます。ワインレッド系の色味は黒立ち上げを行うと、いい感じになるんです。
途中、塗装ブース(玄関先の段ボールの上)で本体がこけてしまって、トランクの角が大惨事になりましたが・・・ペーパーで表面を馴らして再塗装。何とかリカバーすることができました。1日以上塗料を乾かして、コーティングのためにグロスクリアを塗り重ねました。
仕上がったボディに、窓枠やエンブレムを描きこんでいきます。繊細な作業なので、老眼にはきついです・・・最後にもう一度グロスクリアでコーティングしたのち、分解とは反対の手順でボディを組み立てていきました。
そんなわけで完成、エムテックのNBロードスター「NRリミテッド」仕様です!こちら、私の愛車(ガーネットレッド)のボンネットの上で撮影していますが、いい感じのワインレッドに仕上がっているでしょう?折角なので、次項ではエムテック製NBロードスターの全色をご紹介しましょう。
エムテック・NBロードスター(NB1)パレード
エボリューションオレンジマイカ
MC-03A:46230-5(ドライバー付き)
この鮮やかなオレンジはNBロードスターを象徴するテーマカラーのひとつです。進化した人馬一体の乗り味と、その躍動感を表現するに相応しいカラーといえるでしょう。このミニカーを手にすれば、NBが駆け抜けるワインディングロードの情景が目に浮かぶようです。
グレースグリーンマイカ
MC-03B:46240-4(ドライバー付き)
深緑のロードスターはNAロードスターの「ネオグリーン」を彷彿とさせつつ、明るいタン色のインテリアとの相乗効果で、NBの持つより洗練された雰囲気を際立たせるマイカグリーンです。素性の良さと、長く愛されるスポーツカーとして、まさに「分かっている」エンスージアストが選ぶ一台といった趣です。
シャストホワイト
Limited Edition:46370ー8
クリーンで爽やかな印象のシャストホワイト。このミニカーを眺めていると、青空の下を風と共に駆け抜けるロードスターの情景が目に浮かびます。純粋な「走りの楽しさ」を追求するロードスターのキャラクターを表現しているカラーといえるでしょう。
トワイライトブルーマイカ
Limited Edition:46380ー7
深く美しいトワイライトブルーマイカ。この色は、夕暮れ時の空に照らされたクルマの姿を想像させ、ドライバーがクルマと対話しながら走る、そんな深い時間を感じさせてくれることでしょう。
ハイライトシルバーメタリック
Limited Edition:46390ー6
シャープでメカニカルな印象のハイライトシルバーメタリック。この色は、NBロードスターの細部にわたる「技術」へのこだわりを想起させます。ライトウェイトスポーツとして生まれた、その精緻なメカニズムが透けて見えるかのようです。
クラシックレッド
Limited Edition:46400ー2
ロードスターのイメージカラーとして継がれた「クラシックレッド」。赤色はクルマに生命感を与える情熱の色で、ロードスターの普遍的な魅力を手のひらで感じさせてくれるでしょう。飾っておくだけで、その空間に「走る歓び」のスピリットを感じさせてくれます。
ブリリアントブラック
Limited Edition:46410ー1
艶やかなブリリアントブラックは、NBロードスターの持つ流麗なボディラインを一層際立たせます。ブラックのミニカーは光の当たり方で表情を変え、見る者を飽きさせない魅力があります。夜のワインディングロードを静かに、しかし力強く駆け抜けるロードスターの姿を映し出しているかのようです。
イノセントブルーマイカ
非売品
澄み切った空のような、透明感あふれるイノセントブルーマイカ。NBの研ぎ澄まされた走りを、どこまでも広がる青い世界へと誘うかのようです。ロードスターがもたらす開放感と、どこまでも走り続けたいという欲求が湧き上がってくることでしょう。
エムテック製のミニカーはNBロードスターが持つ「走る魂」の凝縮であり、それを手のひらで感じさせてくれる貴重な存在です。ぜひ、それぞれの色に込められたエンスージアスティックな思いと共に、ミニカーを愛でていければと思います。なにより、前期型とはいえNBロードスターの全色が卓上に揃うのは、それなりにテンションが上がっていきます。この小さなロードスターのアーカイブを残せただけでも大満足です。
最後に、10周年記念車のギフトをお譲りいただいたF様、本当にありがとうございました。さて、机の上のロードスターを眺めるのはこれくらいにして、本物の相棒と一緒に走りに行ってきますかね・・・!
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