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マクドナルドのハッピーセットにかつてラインナップされていたNDロードスター。手のひらサイズ(1/43)でとても可愛いのですが、リサイクルショップでは投げ売られていることが多く・・・折角なのでディテールアップをしてみました。弄っても楽しいロードスター!
マクドナルドのハッピーセット、その意外な歴史

そもそも、あの黄色いMマークが提供する「ハッピーセット」。
その歴史は意外に深く、海外では1979年に「Happy Meal」として誕生。日本国内でも1987年からスタートしています。実に30年以上の歴史があるわけです。もともとは子供向けの食事セットという位置づけで、価格もワンコイン+α程度とリーズナブル(かつては350円~500円ほど)。さらに1セット購入ごとに「ドナルド・マクドナルド・ハウス」へ寄付されるという、社会貢献の一面も持っていることは、意外と知られていないかもしれません。
約1ヶ月サイクルで入れ替わるオマケ玩具は、子供たちの流行を映す鏡です・・・が、時に我々のような「大きなお友達」の心をも鷲掴みにするラインナップが登場するから油断なりません。Webサイトで次回のラインナップをチェックするのが、密かな楽しみだったりします。
トミカ・ブランドの参戦と「スポーツカー」の復権

ハッピーセットの歴史における転換点のひとつに、2014年から始まったタカラトミー「トミカ」とのコラボレーションがあります。当初は「働くクルマ」が中心でしたが、2017年頃から風向きが変わりました。全8種類のうち約半数がスポーツカーに割り当てられるようになったのです。これは、ミニバンやSUV全盛の時代において、スポーツカーの復権を願う我々にとっては嬉しいニュースでした。
その流れに乗って2017年4月、満を持してNDロードスターが登場します。

このハッピーセット・トミカ、実は通常のダイキャスト製トミカとは異なり、ボディがプラスチック製。しかし、これを逆手に取ってサイズアップが図られており、スケールは1/43に近い。つまり、飾った時の存在感は本家トミカ以上なのです。
素材にはヨーグルト容器などにも使われるポリプロピレンが採用されており、子供がラフに扱っても壊れにくい堅牢さを持っています。ただ、塗装が乗りづらい素材であることや、コストの兼ね合いで細部はシール再現となっているのが、モデラー心をくすぐる「伸びしろ」と言えるでしょう。
リサイクルショップは「宝探し」の場

このハッピーセット版NDロードスター。登場から数年が経過しているので新品入手は困難です。しかし、役目を終えた彼らは、リサイクルショップのジャンクコーナーの中でひっそりと次のオーナーを待っています。実際、私もこれまでに数回、100円(税別)という破格でサルベージに成功しています。
頑丈な作りなのでボディ自体は無事なことが多いのですが、ロードスターならではの弱点があります。それは「幌」の欠品。実車でも幌のトラブルは付き物ですが、トイでも同じとは皮肉なものです。
このモデル、フロントガラスと幌パーツが一体成型されており、サイドミラーまでもが幌側に付いています。つまり、幌がないと単なるオープンカーではなく、フロントガラスもミラーもない「未完成のなにか」になってしまう。実寸換算で43mmにもなるこのパーツの有無は、プロポーションに致命的な影響を与えます。もしサルベージする際は、「幌あり」個体を狙うのが鉄則です。
さて、せっかく手元に来たロードスター。珠玉のトミカアレンジを活かした塗装でアップデートしてあげましょう
分解という名の「レストア」開始

先ずは分解を行います。
通常のトミカ同様、シャシー裏からカシメられていますが、ここは三角穴の特殊ネジが使われています。専用ドライバーがなくても、先細のラジオペンチで慎重に回せば外せます。ここは焦らず、メカニックのような手つきで。

ネジを外しても、すぐには開きません。内部のフレームが癒着していることが多いのです。ここは少し勇気を持って、シャシーを引っ張ります。「バキッといきそう」と不安になりますが、ポリプロピレンの粘りを信じてください。多少歪んでも、最後にネジを締めればシャシーの形状は戻せます。

ボディやフロントガラスは修正が厳しいパーツなので、あくまでシャシーを外すことに徹しましょう。
ハッピーセットに魂を

<下地塗装>
相手は難敵ポリプロピレン。そのまま塗料を吹いても食いつきません。まずは万能下地剤「ミッチャクロン」でしっかりと足付けを行います。 その上で、ボディカラーを乗せていきます。選んだのは、タミヤの「ピュアーメタリックレッド(TS-95)」。NDロードスターの象徴であるソウルレッドを再現するには、粒子の粗さと深みが必要ですが、この缶スプレーは1/24ロードスター専用に開発された色なので、かなりいい感じに発色します。ダマにならないよう、薄く、何度も塗り重ねるのがコツです。
関連情報→
https://mx-5nb.com/2019/11/24/guraburo-mam07/
<部分塗装>

ボディが乾いたら、いよいよ魂を入れる作業。灯火類の筆塗りです。 ここで重要な発見がありました。当初、ヘッドライトをシルバー一色で塗ってみたのですが、どうにも「顔」が締まらない。改めて実車の資料を確認すると、NDのヘッドライトハウジングはブラックアウトされており、その中にプロジェクターが鎮座しているのです。

「目は口ほどに物を言う」とはよく言ったもので、ここを修正するだけで一気にクルマとしてのリアリティが増します。ベースを黒で塗り、プロジェクターの銀、そしてリフレクションの白を入れる。これでマツダのデザインテーマ「魂動」が宿ります。テールランプ、ウインカー、内装も面相筆でタッチアップ。トミカらしくあえて墨入れはせず、清潔感を重視しました。

こだわりポイントはAピラーと幌の質感の差です。Aピラーはボディ同色の艶あり黒、対して幌はキャンバス地を表現するために艶消し黒を選択。筆運びを横方向にすることで、布の繊維感のようなテクスチャを表現してみました。
<仕上げ塗装>
最後にクリアー塗装でコーティング。テールランプにはクリアレッドやオレンジを上塗りし、奥行きを出します。エンブレムの再現は・・・私の筆スキルの限界により割愛しましたが、雰囲気は十分に伝わるはずです。
ハッピーセット・ロードスター、再誕

塗装を終えたボディにシャシーを組み込んで完成です。
ハッピーセットのオマケとはいえ、造形の素性がいいことがわかります。

塗装を終えたボディにシャシーを組み戻せば、完成です。 どうでしょう、この佇まい。元がハンバーガーのオマケとは思えないほど、素性の良さが際立っています。

特に幌の質感を変えた効果は絶大で、オープンカー特有の「屋根を開ける楽しみ」すら予感させます。幌パーツを外して内装を覗き込めば、ロールバーやセンターコンソールも塗装によって立体的に浮かび上がります。畳まれた幌部分も艶消し黒で塗ったことで、ちょっとしたリアリティに繋がっています。

1/43というスケールは、眺めてよし、手に取ってよし。 高価なレジンモデルは触るのを躊躇してしまいますが、こいつならガシガシ触って、様々な角度からそのラインを楽しむことができます。これこそ、クルマを「愛でる」原体験に近い喜びかもしれません。

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