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日本の誇るライトウェイト・スポーツカー(LWS)ユーノスロードスター。初代のロードスターは、NAロードスター、MX−5(mark1)、Miataなどと呼ばれる、世界で愛されるスポーツカーです。
ロードスターは当時10数年と途絶えていたLWSというジャンルを再開拓し、ボクスター、SLK、Z3、フィアットバルケッタ、MG−F、MR−Sなど数え切れないフォロワーを生み出した伝説がありますが、それでも登場時は「ロータスエランのパクリ」とか「見た目だけのバブルカー」など、散々いわれていたことも事実です。
しかし、そこには”日本文化”にこだわり、魂を宿した数々のこだわりが有りました。今回はそのあたりをご紹介します。
試作プロトタイプ V705
アドバンスデザイン(先行デザイン)の前に、P729プロジェクトの試作プロトタイプとして有名なのが、こちら「V705」です。デザインベースはMANA(北アメリカマツダ)のDUO101というモデルで、製作は外部委託した英国IAD社が行いました。
実情は企画がなかなか進捗しなかったP729プロジェクトに対して「FRP外装の研究」という名目で作成され、実走行も可能なランニングプロトタイプとして市場調査を行うことになったのです。結果、米国のテスト調査で高い評価を得たため、そのまま正式なプロジェクト「J57」に移行することになります。
米国ではV705をさらにブラッシュアップしたアドバンスデザイン(先行デザイン)を作成し、プロダクトデザインのために広島本社へ回送されたそうですが・・・実物のアドバンスデザインはライトウェイトの要件に全然合わない大きさだったそうです。
そこで、プロダクトに起こす段階でホイールベースを大幅に短縮し、FRP外装は量産に不向きということで大幅にディティールを修正しました。おかげで広島と北米は険悪なムードになってしまったとか・・・
プロダクトデザインの作りこみ
プロダクトデザインの担当主査は田中俊治氏(故)。
かのマツダフラグシップモデル・初代センティアと同時並行でNAロードスターのデザインを行っていました。新しいクルマを生み出すのはとてもカロリーが必要で、当然デザインが煮詰まることもありました。その紆余国設の中で「日本車としてのあり方」を日本文化に見出して、それをデザインに積極的に取り込んでいくことで一歩踏み出せたそうです。
そのデザインソースは能面「若女(わかおんな)」。なめらか、かつ色気のある女性のラインをエクステリアへ積極的に取り込んで行きました。
ロードスターは光と影をコントロールして、曲面(円)とシンプルな線のみで構成し、余計なディティールを極力排していきました。そのシンプルな姿は、偶然にも「おでこのライン」がボンネット、「あごのライン」がトランクに繋がったそうです。なんとなく色気があるな・・・と感じるのは、日本人ならではの感性なのかも知れませんね。
インテリアは「茶室」から
インテリアは茶室のようなシンプルさを求めました。
LWSは「走り」に関する機能以外は良くいえばシンプル、正直には「コストをかけないこと」にチャレンジしました。高級車のセンティアをデザインする傍らで、コストダウンのためのアイディアをJ58(ロードスターのコードネーム)のためにひねり出していたとか。
日本文化のコダワリは、凝ったドアノブにも表れています。茶室に入るための「にじり口」のイメージで、背を低くして茶室に入る感覚(=非日常への入り口)の演出を意図しているのです。
また、ファブリックシートの柄は「畳」になっています。確かに変わった柄だな・・・と思っていましたが、いわれてみればそうなので、改めて目にすると感動できるはずです!
ニューヨーク近代美術館 永久収蔵
有名なのは分銅のデザインソースです。
これは楕円のテールランプの中で「ストップランプ」として機能するカタチに現れています。ユニット自体もバック、ウインカー、ストップと全ての機能が凝縮しているのは(当時)かなり技術的なハードルがあったそうですが、それをやり遂げた自信作になったそうです。
さらに、このテールランプユニットはニューヨーク近代美術館(MoMA)にも永久収蔵されています。なぜこのパーツなのかというと、クルマ全体の収蔵場所が取れず、結果として一番のお気に入りだったテールランプユニットを飾ってもらったそうです。なお、後日ボディソニックシート(畳柄のヘッドレストスピーカー付き純正シート)もカタログに加わり展示も検討されたのですが、そちらは実現していません。
参考リンク:https://www.moma.org/collection/works/91740
まとめ
ロードスターのエンブレムは筆文字になっており、車名のロゴにも日本文化を表したい想いから採用されています。もちろん北米仕様の「Miata」も筆文字になっています。
生けるレジェンドになったユーノスロードスターはそもそも「20年経っても陳腐化しないデザイン」という作り込みがされていました。歴代ロードスターの中で、未だに一番の人気を誇っているのも納得です。だって日本人ならば心ときめく記号がちりばめられていますからね・・・!
やっぱりNAロードスターはかっこいいです。
黒ロゴ
NA6前期型:69,823台
NA6中期型:80,369台
NA6後期型:18,664台
赤ロゴ
NA8シリーズ1前期型:21,340台
NA8シリーズ1後期型:7,817台
緑ロゴ
NA8シリーズ2:10,181台
2020年時点、国内登録数
21,465台
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