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今回は約20年前になる、1997年の新型ロードスター(NBロードスター)スクープ情報をご紹介します。
1997年のロードスター、時代背景
97年といえばバブル経済崩壊後のマツダ黒歴史、5チャンネル戦略を立て直すためフォードより社長が就任し、その象徴としてブランドロゴが近年の「フライング・M」に変更されました。
実は、マツダ本当に経営大丈夫かよ!?という空気が国内では蔓延しており、セブンもロードスターも無くなるのではないかと噂されるような状態です。実際フォードはロータリーを続けるための方法を示唆してくれるのですが、それはまた別の話で。
そのような中、次世代ロードスターの噂がチラチラと出てくるのですが・・・国内では絶大に愛されていたユーノス・ロードスター。
もとよりミレニアム(2000年まで)デザイン凍結宣言をしていたことと、次世代ではチャームポイントのリトラクタブルヘッドライト廃止の噂や、大排気量・大型化の予想もあったりして・・・当然既存オーナーからはポジティブではない反応を受けます。
しかし、その「空気感」の記憶は、記録がほとんど残っていません。なによりもヤバそうなマツダの特集を組む雑誌なんて当時はほぼない状態です。
北米のガチサイト、miata.net
しかし、海外の超有名なミアータサイト(miata.net)に、20年前のNBロードスター発表前のアーカイブが保存されていました。その内容があまりにも熱かったので、ここにご紹介させて頂きます。
先ずはスクープをまとめた記事よりご紹介。一部相違もありますが、次世代ミアータに対する渇望を感じる素敵な内容です。文章は意訳になりますので、英語力のある方は笑ってください。
参考リンク:https://www.miata.net/
98~99年にリデザインされる!
’99?!? That’s what we hear from our sources. The release will still come in ’98, but it will be called a ’99 model. Does that mean there won’t be a ’98 Miata? We don’t think so.
Probably the most common question that passes through Miata.net is “What does the new Miata hold in store?” Unfortunately, Mazda doesn’t share much information with us (or anyone else, for that matter.) They’re keeping a very tight lid on the Miata redesign. But still, there are a few things we’re fairly certain of as well as a few other things that we and others speculate about.
98~99年にリデザインされる!
99年!?私たちにそんな噂が聞こえてきました。実際は98年にリリースされるようですが、それは99年モデルと呼ばれるようです。では、98年にミアータの名が消えてしまうのかというと…?そんな事はないようです。
最も多いMiata.net上の質問は「新しいミアータが継続販売されるのか」ということでしょう。残念ながらマツダは、ミアータの再設計に関してまだ口を固く閉ざしています。しかし、我々が確信しているいくつかの情報を共有します。
1 Curved doors similar to the M Speedster and the M Coupe.
2 Non popup headlights similar to the MX-3.
3 Slightly more aggressive styling – a bit wider.
4 A bit more power (around 140 hp) combined with a 60 pound weight reduction.
5 Shorter shift throw. 6-speed gearbox in Japanese market only.
6 Glass rear window.
7 Room for 2 golf bags in the trunk. Spare tire lowered, but still inside car.
8 200 Watt Bose Stereo system.
9 Retains Miata “character”. Everyone who has seen it loves it.
<かなり確信できること>
1 MスピードスターやMクーペに似た湾曲したドア 。
2 リトラクタブルは廃止、MX-3に近いヘッドライトに。
3 若干ワイドでアグレッシブなスタイリング。
4 若干のパワー増量(約140馬力)と60ポンド減量。(142psと27キロ減)
5 よりショートストロークなシフト。日本は6速MTのみ。
6 ガラスのリアウィンドウ。
7 トランクには2つのゴルフバッグが入る。スペアタイヤをより底に配置。
8 200ワットBoseステレオシステム。
9 ミアータ(Miata)のキャラクターは継続。一発でそれとわかる愛おしい姿に。
Mクーペとはその名のとおりクーペ・コンセプト。MX-3は和名AZ-3・ユーノスプレッソです。軽くなる予想は、グレードにより正解だったりします。かなり精度の高い情報ですね。
フィールド・レポート
こちらは「次世代ミアータ」のマーケティング・クリニックに参加された方のレポート。メモもビデオも禁止だったそうですが、その洞察力に驚嘆するばかり。これもまた熱い!
Mark Wold took part in a marketing survey which featured roadsters. There in the group was the new Miata! Most of Mark’s findings coincide with the other things we’ve heard. Here’s Mark’s report:
OK. Let me first say that what I was taking part in was definitely a market research program for determining marketing styles. For comparison values, they had us go over 6 vehicles: BMW Z3, Jeep Wrangler, Ford Mustang Convertible, VW Cabrio, Mitsubishi Eclipse Convertible, and a 1999 Miata. We were not asked one bit about how we liked or disliked the actual cars and comparisons only existed if it was brought up during an answer. For all they were asking, they could have just as easily given us an original style Miata. The jest of their questions were targeted at finding out what “IT” is that draws us to a Miata. If asked why we prefer to go out and drive a Miata and answered “I just love it!”, they followed with “What is IT?”. My overall impression was that they have the 1999 Miata pretty much set in stone, but without the proper marketing, they won’t be able to regain some of the market that has been lost to other convertibles that have come out since the Miata was first introduced.
Please remember that cameras and recording devices were not allowed and that everything that I report here is from memory. I spent a lot of time going over as much as I could, making mental notes about what I saw. We were not able to test drive the car or any of the other cars, that were there for comparison, as this was market research to help them figure out how to sell the car, not for making refinements or changes in its functionality. All that said here it is!
<フィールドレポート>
マーク・ウォルドは「ロードスター」に関するマーケティング調査に参加、なんとその中に新しいミアータもありました!マークが目の当たりにした事は、殆どが事前にあった噂と一致しています。レポートは以下の通りです。
オーケー。私が参加したのは間違いなくマーケティング方針を定めるための調査プログラムでした。そこには比較対象としてBMW・Z3、ジープラングラー、フォード・マスタング・カブリオ、VWカブリオ(ゴルフ)、三菱エクリプス・コンバーチブルがあり、99年式・新型ミアータも含め6台が用意されていました。
私たちは比較対象に対して(新型ミアータが)好きか・嫌いかなど優劣を問われるようなことはありませんでした。彼らが聞いてきた全ての質問が、ミアータ独自の方向性をシンプルに、明確にするためもののようでした。
彼らは冗談交じりに「これ」がミアータだったとして、どんな点に魅力を感じるのかを調査するのが今回の目標であると言うのです。そして、あなたのミアータをドライブする魅力は「どんなところにあるのか?」とくり返し聞いてくるのです。
私の99年ミアータの印象は堅実かつプリティ。しかし早く販売を始めなければ初代ミアータが築き上げてきたコンバーチブルの市場が、他に奪われてしまうとも感じました。
ここでは勿論カメラや録音機器は許可されていませんから見たものは記憶に留めるしかありません。そこで私はできる限り多くの時間を過ごし、頭の中に叩き込みました。
尚、そこにあった比較車種や「ミアータっぽいもの」の試乗はできませんでした。今回はクルマのマーケティング手段を調査するためで、マシンの乗り心地を試す場ではなかったからです。これが調査の概要です。
正面から眺めて最も分かり易い違いは、現在のターンシグナル・スペースに鎮座する涙型ヘッドライトアセンブリです。もはやパカパカのドア(リトラクタブル)は存在しません。このアセンブリはアンバーパーキング/ターンシグナル・ライトが中央寄りで、ヘッドライトは外側にありMX-3と非常に似ています。
ロングノーズなボンネットは、それらとマッチするように形状が変更されています。また、フードの中心にある小さな塊(パワーバルジ)は健在。もちろんマツダ・ロゴは新しく、現行車と同じ場所に配置されています。
前から見下ろすと、フロントバンパーの淵はワイドな峰になっていて、フロントタイヤが綺麗に隠れるようになっています。側面に回るとバンパーの峰がフロントタイヤの後ろ、ロッカーパネルに沿ってわずか連続し、ドアの後端付近でゆっくりと消えていきます。そしてリアタイヤの前でもう一度小さなフレアが始まるのです。
ドアそのものはまるでスピードスターにあった、イラストのような流麗なラインなっています。ドアノブは従来の引き出しの式からポップアップ式に変更。サイドミラーも変更されており、ポッド型から翼のようなアプローチに変わっています。これは理にかなっているのかな?
後ろにまわり最も顕著な差は、トランクからデッキ(リアフェンダー)にかけて曲面を活かした、RX-7を彷彿とさせるカタチになっています。中央にあるブレーキランプ部分が丘になっていて、そこにも新しいマツダ・ロゴが鎮座しています。
ラジオアンテナはフェルリッドより後ろ、左後端1/4あたりに配置されています。ナンバープレート部分にあった従来のプラスチック・ガーニッシュはリアバンパーと同一成型。バンパーにはテール外端にかけてシームライン(パーテンションライン)がありません。テールライトは一見同じように見えますがアンバーは中央にあり、それを赤いレンズで囲っています。電源供給がされていなかったので灯火状態は確認出来ませんでした。
エンジンベイを覗くと1.8と表示されていますが、それ以外は現行車との違いはわかりません。しかし、ペラペラドア(リトラクタブル)のハードがない分、ちょっと余裕があるようにも見えます。
背後を回ってトランクを開くと、いくつもの驚きが。トランクの底が深くなってスペアタイヤ、ジャッキ、ジャッキクランクが収まるようになっているのです。一般のクルマと同様に、タイヤ・ジャッキの上にファイバーボードがあり、その上は内装材で綺麗に覆われているのです。
トランク底の四角い空間には、小さなプラスチックドロップ(水抜き穴)が組み込まれていたり、右側にはバッテリーを配置するための井戸も掘られています。ただし、そこにバッテリー以外のものを組み込むことは難しそうです。
今さらながらのスペアタイヤは採用されるようですが、それはより底に配置されてファイバーボードパネルで蓋をされる。つまりトランクスペースは今までよりも1つ上のレベルの、より大きなストレージを確保しているのです。
ガチンコのディティール考察(ほぼ正解!)
着座して気づく大きな変化はガラスのリアウィンドウでしょう。今回はソフトトップにブーツが装着されていたので、確認するために幌を閉めることはできませんでした。しかし、ガラスかどうか確認するためブーツの下を覗くと簡単に確認が取れました。
コックピット(リア)ブレースバーは、リアデッキ両端に跨るプラスチック・カバー(※エアロボード)に変更されています。したがって後部スペースに物を置いた際、ハード・ブレーキ時に前方へぶっ飛んでくることを恐れなくて良さそうです。このプラスチックパーツは、垂直にスナップするので防風装置だと思われます。パーツ上端がシートの上部、頭に重なる部分にあるので風を遮ることができるのです。
座席は標準のファブリックタイプで、助手席側は運転席側と同じ。背中にポケットもありません。センターコンソールは側面を蝶番で接続されているので外れることはありません。それを持ち上げると後ろにはトランクとフェルキャップを開くためのレバーがあります。その前面は一体型のカップホルダーになっていますが、カップでも缶でもそれを置くためには蓋を開けっぱなしにしておく必要があります。
小型のパワーウィンドウ・スイッチは、従来型よりも僅かにコンソールに余裕が出来た恩恵から、サイズも大きく、前方部分に配置されました。スイッチの前にはカバーを備えた金属製の灰皿が組み込まれており、プラスチック部分から取り外せるようになっています。灰皿のサイズは大体1.5×2.5インチくらい。
ダッシュボードの中心には従来通り円形で2つの通気孔で少し高い位置に感じます。通気孔の上はボリュームのある造形で、ハザードスイッチはその間に留まり、その下にオーディオユニットがあります。私の記憶が確かならばエアコンはスライダー式ではなくノブを回すタイプのものでした。エアコンの下にある小さなパネルにはLEDのスイッチがあり、助手席側のエアバッグを制御出来るようです!(海外にはキルスイッチが存在する、ただし市販時は別部分)
グローブボックスは同じように見えますが、ドライバー側は若干の変化が見られます。電動ミラーの制御装置が従来とは異なる場所で四方制御できそうです。クルーズコントロールスイッチは、現在の押している状態のみで作動するプッシュボタンではなく、常にオン/常にオフを選べるロッカースイッチになっています。
計器クラスターは、燃料、水温、油圧(たぶん偽物)、タコメータ、スピードメーターとともにほぼ同じ場所にあります。私は自分のオドメーターやトリップメーターを見ることはないのですが、中央に小さなLCDディスプレイが装備されていました。ゲージ面の書込みは、Arialタイプのイタリック(斜体)で大きく異なる印象です。
My overall impression is that if I were out to buy another car, I would not discount this model due to any of the changes. The changes are for the most part subtle. Not necessarily good nor bad. I for one don’t mind having the current barn doors but think the new lights look very appealing. As with the current cars, each new/different feature will have with it a following of lovers and haters.
内装のパネルは、アームレストがプラスチック成形に変更されています。小さな小物入れも底に沿ってプラスチック成形されています。私は現行車のスピーカーを覚えていませんが、ダッシュのベンチレーターにそったラインにプラスチックに成形されたツイーターよりも若干大きめなスピーカーが装備されていました。
全体的な私の感想は、モデル変更されたこの子は、大きな値引きされなくても他のクルマより魅力を感じます。今までのモデルチェンジはほとんどの場合微妙な出来が多いです。でも今回の出来は良いとも悪いともいえません。
現行車がそうであったように真新しく見たことのないモノや価値感にはすごい愛好家も、むしろ嫌悪する人もいるでしょう。ただ、私は今のペラペラドア(リトラクタブル)1台しか所有していませんが、新しいヘッドライトは新鮮で魅力的に感じます。
熱い想いが伝わってくる
如何でしょうか。実際に語られているのは不動モデルに触れるクリニックなので、エクステリアの話が中心です。NBロードスターをじっくり見ることのできる今となっては、パーツひとつひとつを感激しながら、何よりも新型ミアータは存在しているよ!というレポートは嬉しいモノを感じずにはいられません。
そしてついに97年末、東京モーターショーで新型ミアータ(ロードスター、MX-5)はワールドプレミアを迎えることになります。その話はまた次回。
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