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今回はNBロードスターの重さの話です。LWS(ライトウェイトスポーツカー)といえば、この地球上に重力が存在する限り「軽さ」が絶対的な性能になります。
特にロードスターは、モデルチェンジ毎にエンジニアの拘りをみることができるのですが、世代が進むと重くなっていく・・・という印象になりがちです。では、本当に「重いのか?」という所を紐解いていきましょう。
前提として、NAロードスター
先ずは前提として、NAロードスターの車重を表にしてみました。カタログ記載数値なので若干の差異はあるでしょうが、やはり初期型は圧倒的に”軽い”です。ただし、NAロードスターはパワーステアリング搭載やボディ補強などのアップデートを重ねていったことと、最終型までエアコンがオプション扱いだった事実があります。特にNA8シリーズ2になるとエアバックも標準搭載され、車重は1,020Kgになりました。
当時の開発記事からの引用です
NBロードスターの軽量化
ロードスターは旧世紀中、エクステリア・デザインを変えない予定だったそうですが、2000年以降に施工予定だった衝突安全基準が早期実施され、98年の側面衝突要件に関して「骨格から変えなければいけなく」なり、それがフルモデルチェンジ、つまりデザイン自体の刷新に繋がりました。
そこでメカのアップデートも同時に行います。走りの「性能」を見直すために、ボディシェイク(振動)低減のための補強、動力性能向上の基礎であるサス取り付け部の剛性向上、当然ながらの衝突安全対策などを行いました。
しかし、単純にこれらの要件に応じると37kgの重量増になってしまいます。そこで、エンジニアは有名な「グラム作戦」を行いました。
NBロードスタープロモーション文章の引用
技術者たちは危機感を募らせ、さっそくあらたなウェイトリダクション(重量削減)作戦に着手、計3,600点に及ぶ部品を開発26部門のべ114名が計量し、さらなる軽量化の余地を探った。その結果196部品が重量削減の候補になり、サスペンションアームの肉抜きなどの「シェイプアップ」、エアコンの一部アルミ化など「材料置換」による重量削減に着手した。それでも目標にわずかに届かない。そこで、部品のユニット化による「機能統合」や、最新技術によってある部品の仕事を他部品に兼務させる「機能代行」など、あらゆる手段を講じて部品点数の削減と小型化を推し進めた。そしてついに、機能性とともに安全性・快適性を向上させながら、ライトウェイトスポーツの本質である「軽さ」を守り抜いたのである。
上のリストは軽量化アイテムのほんの一部。各項目をつぶさに見ればその徹底ぶりは明らかだが、技術者たちは「これがゴールだ」とは言わない。軽さの追求に終わりはないのである。
NBロードスターの重量
カタログによる実績はこちらになります。比較対象はNAロードスターのSr2(1020kg)がベンチマークです。NBロードスター1800cc(NB8C)は1030kgになるので、NA比10kg増となります。ただ、NBロードスターは前述のさまざまなアップデートを行っていることと、エアコン、エアバックは標準装備となっています。
解説によると、グラム作戦で除去できたのは約27kg。従来の静的剛性の考え方では、そこから10Kg増程度でボディシェイクをとめるには固定トップ(屋根)を付けるよりなかったそうす。しかし、コンピューターの進歩によるダイナミック領域の解析技術進(動的剛性検証)にかなり助けられることになり、目標達成ができました。
注目はNB6の標準車。安全基準を満たしながらエアコンレス、パワステレスで997kgだったそうです(カタログ記載は1000kg)。ちなみにNBロードスターの1600cc、つまりNB6CシリーズはどのグレードもNAロードスター後期と同じ車重です。
しかしNBロードスター後期型は、さらなるアップデートを行いました。ボディ強化に加え、RSグレードはエンジン自体も変更されています。(パワーウェイトレシオで相殺している)。
後期型の強化ポイントは以下の通りです。
c)フロントサスタワーバー(強化)
d)トラスメンバー
e)トンネルメンバー
f,g)リアクロスバー×2、リアバルクヘッド部コーナーゼット
まとめ
結論からいくと、徐々に重量が増していったNBロードスターではありますが、十分にエンジニアのコダワリを感じるとともに、時代に即したアップデートであったことを感じることができます。こと、NB6とNB8前期に関してはNAとほぼ同じ。NB8後期型は全体のバランスを踏まえたうえでの変更です。
また、そう考えると現行型のNDロードスターがいかに凄いか・・・ということも理解できます。やはりロードスターは並々ならぬパッションで作られているのです。
最後に、主査の貴島さんが【産経新聞・九州/山口版】で連載されていた「人国記」からNBロードスターの記事を引用してみましょう。
あれだけ売れると「ライトウェイトスポーツカーのスピリットがどうこう・・・」なんていうことに関心のない顧客の方が圧倒的に多くなります。その結果、「ドアが開けにくい」「トランクに物が入らない」「パワーがない」などという不満が販売サイドからどんどん伝えられる。しかし、この部分は厳しく対応しないと、あれこれと余分なものが付加されて鈍重なクルマになってしまう。それがモデルチェンジを失敗に終わらせる要因の一つです。
この種のクルマは「軽さ」が性能ですから、ライトウェイトスポーツカーとしての性能を落とす方向の変更は一切受け付けませんでした。つまり「運転席が狭いから大きくしろ」という要望は拒否したけれど、ドアの取っ手くらいは替えた。そういう線引きで挑みました。
ちょっぴり残念だったのは、初代に導入した「リトラクタブルライト」をやめたこと。これは「前方視界を妨げるものがあってはいけない」という欧州の規制が強化されたため、採用をあきらめたんです。ただその結果、ライトを動かすモーターなどの余分な部品を減らせて、これも軽量化につながりました。